筋肉セイギ、私ガンバル 2
「オルちゃんは、年上とかどう思う?」
「う〜ん。僕は人それぞれ。個人の考えだと思うな〜。まあ汚血と結婚した、純血もいるくらいだし。
年齢差な〜んて、大したことないでしょ〜」
「そんなに器が大きいのは、貴方だけだと思うわよ?」
汚血はオルデランを、純血はシルティアのことを指している。
ハーレムちゃん、オルデラン、シルティア、ディノンの三人プラス一柱は、食堂にてナルを待っていた。
シルティアとディノンは、大量の食事の準備をしている。
「そうか〜い? 流石に髭が生えたお爺さんを、連れてきたら、驚くけれど〜も。
精霊様も、それくらい常識あるでしょ〜?」
「大丈夫! 心配しないで!」
満面の笑みで、拳を握る。
「大丈夫かしら?」とシルティアは思ったが、口には出さない。
ガチャ。
「お! 来たわね」
満身創痍のナルがメイドに付き添われ、部屋に入ってくる。
「おまたせ、しま、した」
ゆっくりとした歩みで、椅子に座る。
「相変わら、ず。凄い」
目の前には大量の食べ物。
骨付きの巨大な肉の塊。魚まるごとの蒸し焼き。大皿に入れられたポタージュスープスープ。一斤のパン。
などなど大量に並べられた、それら。
顔が青ざめるのを感じる。
「さて、頂きましょう」
「……筋肉ノ、タメ」
そう言い聞かせて、口へ運び始めた。
「というか〜、精霊様。ナルくんの訓練は、基礎だけでいいのか〜い?」
「んん、そう。今はね!
今後は、もっと実践的なことも、取り入れたいと思う。
けれどソイルちゃんたちに任せるのもなー」
ハーレムちゃんは、口にパンを運びながら喋る。
「それなら〜、レノとディノンに任せると良い。
二人は強いからね〜」
全員の目が二人に行く。
レノは一生懸命、首を横に振る。
「お任せ頂ければ。
ただし、半殺しまでは容赦を。手加減は苦手で」
ディノンは悪い笑みを浮かべる。
「駄目だろっ」
パシッ。
勢いよく叩かれる。
「実際、強いのは本当ね。
私も守ってもらった身だから」
シルティアも加勢する。
オルデランは頷き、レノは首を振り続ける。
「『絶対零度』に褒めて頂けるとは、光栄の至り。
今度、お手合わせをしたいものです」
「だから駄目だろっ」
「ナルちゃん、大丈夫そう? スープが掬えてないわよ?」
シルティアがナルの、クタクタな様子を見て言う。
「え、あ、本当だ」
弱々しい反応。
「ブフッ。アダッ」
「ンフフ、大丈夫では無さそうだね〜」
ディノンはレノに一瞬で叩かれる。
オルデランは堪えていたが、笑みが漏れた。
「大丈夫よ! ナルちゃんは、ハーレムちゃんの最高傑作のドリンクで復活したから!」
「……いえ、それが一番辛かったです」
「ええ!?」
ハーレムちゃんは、反応良く答えた。
食堂には、温かい家族団らんがあった。
そして全員が食事を終えたところ。
「ハーレムちゃんから、今後の方針を発表します!」
腕を上げ、宣言した。
「「おおー」」
オルデランとディノンの声。
他は、それを聞いて拍手。
「さて! ハーレムちゃんは、約大月、たくさんのことをしました。
その中でナルちゃんには、学校を休んでもらい、肉体改造に励んでもらった。
成果は、ご覧の通り」
ナルの体は、基礎筋肉と体力がついた。
筋肉の「キ」の字も知らない令嬢が、始めたのだ。大月で大きな成長だろう。
「あら本当ね。女の子でも、こんなになるのね。
私も筋トレしてみようかしら?」
シルティアがナルの筋肉を触る。
「お腹周りのダイエットにもなるわ」
「あら、そうなの」
「ん!?」
シルティアとレノが好反応を示す。
「そしてナルちゃんは、来月に『騎士科』へと編入します!」
「ええ!?」
「っ!?」
自身のお腹を触っていた二人は、目を見開いて、ハーレムちゃんを見た。
オルデランとディノンは、知っているようで頷いている。
当の本人は、ボヤーと心ここにあらずという風だ。
「精霊様、騎士科って、女の子よ?」
「前例は無いよね〜」
オルデランは、柔らかな口調で補足する。
女は女らしく。姫君をイメージ。
男は男らしく。騎士をイメージ。
これは国の一般常識として、根強く刻まれている。
それ故に、中学、王立中央学院の騎士科に、女生徒が在席したことは前例がない。
そもそも在席しようにも、女性は子供の頃から、肉体労働をしない。男性は女性に代わり、辛い思いをして、養う必要がある。
貴族も男性ばかりなのも、そういう理由からだ。
これは『女性蔑視』ではなく、「女性に辛い思いをさせない」という、文化であり、お国柄なのだ。
「女は心強く、男は力強く」
「女へ苦しいをさせるな」
「女を見殺しにしたならば、自決せよ」
この三箇条は、一人の女性により広められた。
四大国家、建国以前、世界を支配した大帝国。
そのトップである『女帝』が生み出し、「唯一の功績」とも言われている。
なので「ペンより重いものを持ったことがない」と他国ではジョークとして言われる。
だが本当に持ったことがない、者もいるのだ。
閑話休題。
シルティアは、そんな状況を理解して、心配したのだ。
ちなみにオルデランは、ハーレムちゃんから提案された時、「いいっすね〜。やりましょ〜」と即賛成だった。
「大丈夫。ナルちゃんなら問題ないわ。
そのための肉体改造よ。
正直、足りない気もするけれど……」
当然、シルティアは心配そうな目になる。
「ハーレム様。具体的には、何をすれば?」
本人は意を決していたようだ。
シルティアは諦めた顔をする。
「ふ〜ん。いい顔ね。
そしてハーレムちゃんからの指示は……」
全員の目が集まる。
「特になし!!」
そう言い、胸を張った。
全員が崩れる。
「これは〜、おもしろ〜い精霊様だ」
オルデランには好印象だったようだ。
「何時も通り、ナルちゃんが、ナルちゃんでいること!
以上。解散!」
夕食後、ナルは、すぐにヘッドで寝てしまった。
食堂に残ったのはナル以外の四人プラス一柱。
レノやディノンも席に座る。
「精霊様、お話を聞かせて貰いましょ〜」
オルデランの言葉で、ハーレムちゃんは喋りだす。
「シルちゃんは、令嬢教育をお願いね」
「知っていたとは」
シルティアは、王家の血筋であることから、第三皇女の令嬢教育係も担当している。
ハーレムちゃんは、口角を上げ、グッドと親指を上げる。
「オルちゃん、局の仕事は小月に二日のみにさせて。体力的に限界だと思う。
変に無理しそうだからね」
「まったく。そのと〜り、ですな〜」
オルデランは頷く。
「そしてレノちゃんたち『禁色』ね。
引き続き、騎士科と令嬢科の調査を。
もう何個か、お願いがあるから。それは後でね」
「精霊様は人使いが荒いからな〜。まあ〜、禁色の子たちは、新たに仕事が貰えて喜んでたけ〜れど」
「はい。新たに問題も。修整します」
「アハハ! 本当に、レノちゃんは勤勉ね」
ハーレムちゃんだけでなく、全員が笑みをこぼす。
「それで、騎士科でターゲットにしてるのは……。この三人!」




