表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

91/758

第91話「無理やりのルール変更」

農地を襲ったゴブリン1,000体をリオネル達冒険者と村民一体となっての討伐。

大勝利に湧く明るさから一転し、急直下!

リオネルが告げた、「ゴブリン2,000体生存!」の一報は、キャナール村の村民達へ重く重く、のしかかった。


しかしリオネルは、自身を含めた冒険者4名のみで討伐の遂行にあたるという。


一体どうやって!? 

たった4名だけで、いかにゴブリン2,000体を倒す!?

超人的なリオネルが居るとはいえ……という疑問。


確かにリオネルは単身突っ込み、農地へ襲来したゴブリン1,000体を圧倒した。

しかし今度は更に『倍』の大群が相手なのだ。


加えて!

まだ懸念もある!

広々としたオープンな農地を襲撃したゴブリンと、戦うのとは勝手が違う。

奴らの本拠である、暗く深いであろう未知の『洞窟』を攻めるという、

大きな不利もあるのだ。


モーリス、ミリアン、カミーユは、大きな期待と大きな不安を……

そしてパトリス達村民は、一縷の望みという、すがるような視線をリオネルへ向けて放って来た。


「モーリスさん、現場を調べた上で俺が考案した作戦を、提案しても宜しいですか?」


「ああ、決めたよ」


「え? 決めた?」


「うむ、宜しく頼むというのは、逆だ。こちらのセリフさ、そうだろう?」


「モーリスさん……」


「今回の戦いで、指揮を執るのはリオ君だ。申し訳ないが、とことん頼らせて貰う! 君が立案した作戦の説明、指示を宜しく頼むぞ!」


「は、はいっ! 了解です! じゃあ、やらせて貰います」


「うむ!」


リオネルはモーリスへ申し入れをし、OKを貰ってから言い放つ。


「皆さん、お聞きください。……これから、俺達の宿舎で『作戦会議』を行います。作戦参加者の俺達4名、そして村長のパトリスさん、自警団の方からは、数名ほどのご参加をお願いしたいと思います」


という事で、宿舎の空き家において、早速作戦会議が行われる。

進行役も、『作戦立案者』のリオネルとなった。

一連の流れを見たモーリスが、今回の討伐に関しては、

「リオネルへ全面的に任せる」という指示を改めて出したからだ。


結局参加者は、リオネル、モーリス、ミリアン、カミーユ、パトリス、自警団員3名の都合8名となる。


パトリス、自警団員3名に参加して貰ったのは、まず作戦の共有、そして情報の収集である。

アルエット村の時同様、土地勘が全くないリオネル達にとって、洞窟内部を始め、何らかの情報があれば全てプラスとなるからだ。


幸い、ひとりの自警団員が洞窟の情報を持っていた。

アルエット村村長クレマン同様、その自警団員は少年の頃探検したそうである。


その自警団員から、いろいろ聞き取りをした結果……

洞窟内部は結構広く、深さも相当だと言う。

但し、出入り口はリオネルが確認した1か所のみ、他にはないそうだ。


さてさて!

ここからが、リオネルの立案した作戦の披露となる。

誰もが真剣に無言で聞いている。


モーリス、ミリアン、カミーユは自身の命が、

パトリス以下村民には村の未来が、それぞれ懸かっているからだ。


「このまま待っていれば、奴らはいずれ数を頼んで攻めて来ます」


「………………」


「対してこちらは援軍は来ずに少数。まさに多勢に無勢そのものです。これが奴らのルール、数で押し切ろうとします」


「………………」


「まともに正面から戦ってはこちらが全く不利です。勝つ為には、そのルールを無理やり変える作戦を立てなくてはなりません」


勝つ為に「多勢に無勢」から、

「少数でも自分たちが勝てるルールへ無理やり変える」そういう作戦を立てる。


リオネルはそう前置きし、話し始める。


「座して待たず、先手必勝! あいつらが今日受けたダメージが癒えないうちに、こちらから攻撃を仕掛けます! とどめを刺してやるのです!」


おおおおおおお!


リオネルが言うと、パトリスも含め、無言で聞いていた村民達から小さなどよめきが起こった。


「明日の朝早く、俺達4人はゴブリン討伐に洞窟へ出発します。俺達が出発したら、万が一の敵襲に備えて、門を固く閉めてください。ゴブリン以外の魔物、人間の賊が襲って来るやもしれません。パトリス村長以下自警団の方々は、村でがっちり守りを固めながら、いつでも戦えるようスタンバイして貰います」


リオネルはそう言うと、更に話を続ける。


「ここからは俺達の作戦の具体的な説明です。洞窟に到着したら、まず、出入り口の両脇に、モーリスさんの地属性魔法『土壁』で囲いを作って貰います。ゴブリンが洞窟から出てくる際、バラバラに分散しないようにして、こちらから攻撃する時、(まと)を絞りやすくする為です」


軽く息を吐き、リオネルは更に言う。


「土壁の長さは10m、高さは5m、厚さは1mくらいで生成して頂きます。これを左右にひとつずつ、配置するのです。いわば馬の視界を(さえぎ)遮眼革しゃがんかくのような効果を見込みます」


補足しよう。

遮眼革しゃがんかくとは……

馬が前方へ走る事だけに集中出来るよう、眼の側面を衝立(ついたて)(おお)う。

その結果、余計なモノが一切視界に入らないようにする『馬具』である。


つまり、リオネルは、この衝立の部分を、洞窟の出入り口の両脇へ土壁として造るよう、モーリスに頼んだのだ。


結果、ゴブリンの視線はリオネル達が居る前方だけに向くというわけだ。

そしてリオネルが告げたように、ゴブリンの分散を防いで密集させ、攻撃魔法で狙いやすくする。


「モーリスさん、魔法による土壁の生成、宜しいですか?」


「うむ、了解! お安い御用だ」


「それと俺達の陣地の前にも、攻めて来るゴブリンを(はば)む防護壁を作って貰います。こちらも長さは10mですが、高さは1,5m、厚さは1mくらいです」


「ああ、リオ君、となると、都合3か所の土壁か。それくらいの数と大きさならば、私の魔力量には問題ない。攻撃魔法も充分撃てる!」


「OK! 次です。モーリスさんが土壁を作ってから、洞窟へ、冒険者ギルドで造られた魔導発煙筒をぶち込みます。既にゴブリン渓谷のゴブリン、某所でオークの巣にも使い、大きな有用性を確認済みです」


この場の全員への説明だが……

モーリスは、自分とミリアンとカミーユが確認しながら進めた方が、

更に理解が及ぶと考えたに違いない。


合いの手を入れ、リオネルをフォローする。


「おお、リオ君、そうか! 成る程! 私達4名は、リスクを避けて洞窟内へは入らず、この発煙筒で、奴らを外へいぶし出すというわけだな」


「はい、奴らを洞窟外へおびき出して、罠にかけます」


「ほう、罠か」


「はい! ゴブリンどもが発煙筒で苦しみ洞窟外へ出ます。しかし左右を土壁で阻まれ、分散が出来ない。狙いを定めずとも命中率が格段に上がります」


リオネルは、アルエット村でオークに対して実施した作戦を、

更にバージョンアップした形で使おうと考えていた。


「成る程!」


「無防備で密集した状態で、俺達が遠くから攻撃魔法で狙い撃ちし、数を減らして行きます。少数で多勢を倒せるようにします。まともに戦い勝てないのなら、ルールを変える。これが多勢に無勢で勝つ為、俺達に都合を良くする『無理やりのルール変更』ですっ!」 


おおおおおおおおおおおおおおおお!!!!


多勢に無勢で勝つ為の、無理やりのルール変更。


リオネルがはっきり言うと……

パトリスも含め、今度は村民達から、大きなどよめきが起こったのである。

いつもご愛読頂きありがとうございます。


※当作品は皆様のご愛読と応援をモチベーションとして執筆しております。

宜しければ、下方にあるブックマーク及び、

☆☆☆☆☆による応援をお願い致します。


東導号の各作品を宜しくお願い致します。


⛤『魔法女子学園の助っ人教師』

◎小説書籍版第8巻が2/19に発売されました!《ご注意!第8巻のみ電子書籍専売です》

(ホビージャパン様HJノベルス)

既刊第1巻~7巻大好評発売中!

第1巻から8巻の一気読みはいかがでしょうか。


◎コミカライズ版コミックス

(スクウェア・エニックス様Gファンタジーコミックス)

☆最新刊第5巻が4/27に発売されました! 

コミカライズ版の一応の完結巻となります。

何卒宜しくお願い致します。


既刊第1巻~4巻大好評発売中!

コミックスの第1巻、第3巻、第4巻は重版しました!

皆様のおかげです。ありがとうございます。

今後とも宜しくお願い致します。


また「Gファンタジー」公式HP内には特設サイトもあります。

コミカライズ版第1話の試し読みも出来ます。


WEB版、小説書籍版と共に、存分に『魔法女子』の世界をお楽しみくださいませ。


マンガアプリ「マンガUP!」様でもコミカライズ版が好評連載中です。

毎週月曜日更新予定です。

お持ちのスマホでお気軽に読めますのでいかがでしょう。


最後に、連載中である

⛤『帰る故郷はスローライフな異世界!レベル99のふるさと勇者』《連載再開!》

⛤『絶縁した幼馴染! 追放された導き継ぐ者ディーノの不思議な冒険譚』

⛤『頑張ったら報われなきゃ!好条件提示!超ダークサイドな地獄パワハラ商会から、やりがいのある王国職員へスカウトされた、いずれ最強となる賢者のお話』


も何卒宜しくお願い致します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ