第80話「旅は道連れ」
ゴブリンの脅威がなくなったので……
モーリス達は、食事の支度を再開した。
念の為、リオネルもバージョンアップした索敵で周囲を探る。
大丈夫!
四方800m以内に、敵は見当たらない。
ゴブリンが襲撃して来た時、モーリス達の支度は殆ど終わっていた。
なので、すぐ食事となった。
実は……
会話の終了後、リオネルは辞去しようとしたが、無理やり引き止められた。
目的地が、冒険者の街ワレバットだと告げたら、これも『縁』だから、
モーリスから「ウチの馬車に同乗し、一緒に行こう」と熱心に誘われたのだ。
「どうしようか?」と迷った。
いろいろ考えたが、答えは出ない。
最後は……自分の直感に任せる事にした。
『内なる声』は……彼らと同行せよ、と告げて来る。
決めた!
彼らと一緒に、しばらく旅をしよう!
リオネルは自分の直感に従う事とした。
「ずっと」というわけではない。
だが、とりあえず一緒にワレバットへ向かう事としたのだ。
「同行はOKだ」と返事をしたら、モーリス、ミリアン、カミーユ全員が喜んでくれた。
歓迎されていると思えば、少し心が軽くなる。
さてさて!
リオネルは、既に食事を終わらせており、満腹であった。
仕方なく……
モーリス達が食事を摂る傍らで座り、リオネルは貰ったお茶を飲む。
食事をしながら、話は弾む。
先ほど名乗ったので、話題は各自のプロフが中心となる。
リオネルへ質問が集中したのは言うまでもない。
モーリスは感心しきりだ。
「ふむ、リオネル君は荒くれぼっち……じゃなかった! 疾風の弾丸のふたつ名通りだ。凄い速度で移動し、見事な風の攻撃魔法を使いこなす。それに武闘僧の私から見て、葬送魔法も格闘術も見事だ」
「ありがとうございます……あの、荒くれぼっち……面白がって、わざと言ってますよね、モーリスさん」
「ははははは! ま、い~じゃないか! ジャストアジョークだ! あと、ゴブリンどもの足止めをしたのは……威圧の技だな?」
モーリスは驚きながらも、しっかりとリオネルの戦いぶりを見て、観察していた。
ただ、特異スキル『フリーズハイ』レベル補正プラス15に関しては、見抜く事が出来なかったようである。
「はい、そうです」
リオネルは、『威圧』だと肯定のみした。
スキルの話等、詳しい内容は明かさない。
リオネルは基本、スキルを秘匿する方針を決めている。
魔法や特技も自然に発覚したり、必要に応じて使って露見する以外は、公開しない。
心から発する波動で分かる。
この3人は、悪人ではない。
だが沈黙は金、余計な事は言わないが、花である。
そんなリオネルを、モーリスは感嘆して見つめる。
「若干18歳、デビュー1か月でランカーとは驚いた! 素晴らしい才能だ。ふむ、シールドバッシュと格闘も得意な風の魔法剣士というところだな」
ミリアンとカミーユも尊敬の眼差しで見つめて来る。
「カッコいいわ! 疾風の弾丸かあ……リオネルさん、凄いですね。私も早くランカーになりたいわ」
「そうそう! まさに疾風の弾丸っすよ! リオネルさんの速さ、そして強さは目の前で俺達、見届けましたよ!」
ひどく褒められたが、リオネルは驕らない。
モーリス、ミリアン、カミーユのポジション、スペックをさりげなく尋ねる。
「疾風の弾丸なんて、全く柄じゃない。俺はまだまだですよ。……ところでお三方はどういう立ち位置なんですか?」
ここで、リオネルがいう『立ち位置』とは、職能や冒険者としてのタイプの事。
モーリスは、笑顔で応える。
「うむ! 私はランクBの冒険者、ランカーで地属性の魔法使い、メイスを主に打撃武器を好む元創世神教会の司祭で、武闘僧だ。当然回復魔法、葬送魔法も使う。ミリアンとカミーユを一人前の冒険者にしたいと考え、冒険者の本場、ワレバットの街へ行く途中なんだ」
次にミリアンが、
「私は水の魔法使い、水の攻防魔法を、それに回復魔法も使えるわ。武闘僧であるモーリスさんの指導を受けて、格闘技も得意なのよ! 馬にも乗れるよ! もっと強くなりたいから、ワレバットで冒険者登録して、頑張りたい」
そしてカミーユも、
「俺は、魔法を使えないけど、すばしこいし、馬にも乗れる! 剣は勿論、師匠直伝の格闘が得意だ。罠の解除、鍵開けも好きだし、シーフになりたいから勉強、修行中さ。姉ちゃん同様、ワレバットで冒険者登録するんだ」
……成る程。
3人のポジションとスペックは大体分かった。
モーリスが格闘は勿論、各種魔法も得意な武闘僧。
そしてミリアンとカミーユは、ふたりともモーリスの弟子。
ミリアンが格闘が得意な水の魔法使いで、治癒の魔法も使いこなす。
カミーユは俊敏で戦えるシーフ、罠の解除、鍵開けも得意。
今後の予定は……冒険者見習いのミリアンとカミーユが、
ワレバットで冒険者登録をした上で、修行。
冒険者として、一人前になるまで、師匠のモーリスが面倒を見る……という事。
更にモーリスは言う。
「リオネル・ロートレック君、正直に本音を言わせて貰えば、疾風の弾丸と呼ばれる才あるランカーの君が居れば、とても心強い。リスクは減るし、弟子であるミリアンとカミーユの良い勉強にもなる」
「はあ……」
「悪いようにはしない。ランカーである事も考慮し、待遇面では好条件も出そう! 私達と、クランを組む事を考えておいてくれないか? もしもリオネル君が希望すればだが、ミリアン、カミーユとともに、私の持つ知識や技術、葬送や治癒回復の魔法も教えよう」
……成る程。
そこそこ使える仲間と教師補助役の確保。
それがモーリスの本音だ。
結構割り切った人かもしれない。
でも……はっきり本音を言ってくれる方が安心だし、信用出来る。
それに、モーリスからいろいろ学べば、今後の為、役立つ知識と経験が得られるやもしれぬ。
リオネルは、いろいろと考えた上で答える。
「申し訳ありませんが、クランメンバーになるのは、ご遠慮します」
「ほう、何故かね?」
「はい、俺は、ずっと『ぼっち』、いえ、ソロでやって来て、しばらくはそのスタイルで行こうと思っています。王都の支部でもマスター、サブマスターにもクラン所属を勧められましたが、お断りしました」
「ほう! そうだったのかい。じゃあ仕方ないね」
「ええ、ですが、王都でやったように、条件が折り合えば、共闘するとか、臨時のクランメンバーにはなります。それで構わなければ」
リオネルの『提案』を聞き、モーリスは受け入れる。
「ああ、共闘もしくは臨時のクランメンバーか。分かった、それでOK、了解だ。ここで断って、君との縁を切りたくないからな」
モーリスはそう言うと更に、
「今後の事はいろいろと相談しよう! 本当に悪いようにはしないさ。それに旅は道連れというじゃないか。とりあえずワレバットまで、共に行こう」
と、微笑んだのである。
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