第767話「ナタリーさん、大事な話があります」
蠅団の団員全員が戻ってから、約40分間ほどで、
その全団員への処罰が完了。
当然ながら、ボスのマチアスも最後に悪夢の責めを受け、半狂乱……
壊れる寸前に……
ここまで、団員達の惨状を見て、待つ恐怖もたっぷり感じていたから、
効果は絶大であった。
それを平然と見守るリオネル。
横恋慕の勘違い男ガエルの手先となり、その指示通りに実行したとしても、
何度も何度もナタリーをひどく怯えさせた蠅団に対し、
リオネルの怒りは凄まじいものがあったのだ。
ただ、魔法でケアはしていたとはいえ、あまり地獄の悪夢を見せ続けてしまうと、団員どものメンタルが完全に崩壊する。
なので、彼らが悪夢を見ていたのは、各自が実質5分ほどであったが……
リオネルが全快の回復魔法を使い、目覚めてから、正気に返ると……
悪魔に責められて苦しみ抜いて死んで、しれっと生き返って、
また責められて苦しみ抜いて死んで、またまたしれっと生き返ってと、
もう二度と、あんな無間地獄の悪夢は見たくない!!
確かに俺達は罪を犯した。
地獄に堕ちるのも仕方が無い。
だが、少しでも責めが軽くなるのであれば、どんな事でもする!!
犯した罪を償いたい!!
と、マチアス以下団員全員が口をそろえ、リオネルに絶対服従を誓った。
しかしながら、ここまで蠅団が犯した罪は多岐にわたり、
どれもが、とても重い。
もしも罪に問われ、法の下に裁かれるのならば、
服役を始め、素直に受け入れるようにと、リオネルは命じ、
対して、悪夢に……地獄の責めに恐れをなしたマチアス達は、
少しでも罪を償えればと、これも、あっさり受け入れたのである。
こうして……リオネルは王都の最大組織たる愚連隊、
蠅団を完全に支配下に置いた。
リオネル自身は意識していなかったが……
装着している至宝『ゼバオトの指輪』が、人心の掌握にも、
その絶大な威力を発揮していたのだ。
さてさて!
そこから、全員総出で、汚れに汚れた大浴場の掃除。
全員がやったから掃除はあっという間に完了。
次に……
夢とはいえ、地獄の責め苦に、くたびれ果てた感のあるマチアス以下団員を前に、
リオネルは蠅団の『新たなボス』として就任、
訓示、新たな方針を告げ、改めて結団式を行った。
話した訓示の内容を要約すると……
悪逆、無頼の限りを尽くした現蠅団は本日で消滅。
当然、団名も蠅団を廃止し、ガラリと改名。
但し、名前はすぐに変えず改めてという事に。
そして、様々な仕事を行う、健全な『総合商会』として、再出発する事になった。
今後のルールとして、ナタリーへつきまとって、脅したなど、
犯罪行為の全てが厳禁で、二度と行わないのは勿論、
ありとあらゆる非合法ギリギリな『しのぎ』も全て廃止。
新たな仕事はといえば、後ほど確定させるとして、
例えばだが、真っ当な警備、真っ当な飲食店、そして各所の清掃などなど、
全て合法的な商売へ即座に転換。
転換に時間がかかるものは、とりあえず休業。
また商売転換に伴う、休業、退職する従業員への、
補償金の支払いも、蠅団の資産を使い、責任をもって行う。
王都市民への償いとして、
研修、訓練を兼ねた早朝の掃除、及び防犯パトロールの実施。
共に、無償のボランティアで行う事。
ちなみに防犯パトロールは、
王都の治安を預かる衛兵隊との兼ね合いもあるから、すぐに実施をせず、要調整。
これから、細かい部分を詰め、必要な事が生じたら追加する。
とりあえず基本方針は以上。
だが実際問題として……
リオネルが新組織に『かかりきり』になる事は不可能なので、
今後の事を考え、業務になれたマチアスを『ボス代行』に命じ、
今まで通り、彼が『新組織』を動かすことを命じた。
話の後、マチアス、幹部達からは更に不明点をいろいろ聞かれたが……
時間が無いので、一旦打合せを切り上げた。
そう! まだまだ肝心な事が残っている。
最大の問題、諸悪の根源たるデスタン伯爵三男ガエルの、
『証拠取得』の段取りを組まねばならないのだ。
マチアスとのサイン入り契約書は、決定的な証拠ではあるが、
更に万全を期す。
この問題を完全にクロージングする為には、
『ガエルの言質』という、決定的な証拠が必要だと、リオネルは考えている。
蛇のように執念深いガエルは、ナタリーがなびかないと見るや、
散々、つきまといと脅迫の嫌がらせを仕掛け、終いには、このアジトへ誘拐、
脅迫と大金、そして暴力まで使おうとして、
無理やり愛人にする計画まで立てていた。
リオネルから見れば、絶対に許しがたい行為であり、
当初、ガエル、手先となった蠅団ともども、
あらゆる手を使って徹底的に叩き、潰し、
最後は法的な厳罰に処すという考えであった。
ただ、所詮、予定は未定。
状況がガラリと変わるのは良くある事。
その場合、リオネルは臨機応変に動き、対処するのは変わらない。
リオネルの強大な力と夢魔法の影響、
そして至宝『ゼバオトの指輪』の効能効果とはいえ……
蠅団のボス、マチアス以下団員どもは、恐れ入り、大いに反省、
出来る限り罪を償い、これからは、真人間になると誓ってくれた。
こうなれば、マチアス達に全面協力して貰い、
ガエルから、決め手となる自白――『証拠』をゲットする事に。
まあリオネルからしてみれば、実は、この状況も想定済み。
なので、作戦はほぼ決まっている。
そんなこんなで、ここまで話を進め、時刻は午後4時30分をだいぶ回っていた。
まもなく、ナタリーの仕事が終わり、迎えに行く時間だ。
ここからは、被害者であるナタリーの意見も入れた方が良いし、
作戦遂行には、協力も必要であるから。
「マチアス」
「はい! ボス!」
「良いか? 先ほど出した俺の指示に従い、ボス代行として、お前がすぐに動け。念を押すが、犯罪行為やそれに近いグレーな物は厳禁。そして、みかじめ料を取る事を即座にやめる事。風俗、飲食店のぼったくりも即座にやめ、まっとうな店にしろ。業務転換に時間がかかるなら休業するように。従業員へのケアも忘れずにな!」
「は! かしこまりました!」
「これらの動きを出来る限り目立たないようにやれ。特にガエルには絶対に悟られるな。あいつは明日以降、罠にかける、お前達の協力を得てだ」
「は! その通りに致します!」
「これらの動きを察知し、もしも敵対組織が変にちょっかいを出して来たりしたら、対処する」
「了解です!」
「よし! 外せない用事があるから、俺はとりあえずここを出る! 後は頼むぞ! 改めて連絡を入れる!」
「イエッサー!」
という事で、リオネルは蠅団のアジトを出たのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
蠅団のアジトを出たリオネルは、
ひとり速足で人けのない路地へ入り、しれっと転移魔法を発動、
一気にアンセルムの宿の裏庭へ跳んだ。
その裏庭には3人の人影があった。
そう! 先に念話連絡を入れておいたので、
裏庭にはヒルデガルド達3人がスタンバイ済みであったのだ。
リオネルの報告を聞いたヒルデガルドとミリアンは満面の笑み。
当然、元気いっぱい、かすり傷ひとつ無く無事。
ブライムがしっかりと、女子ふたりを守っていてくれたらしい。
3人は元気に声を張り上げる。
リオネルが単身、蠅団のアジトへ乗り込み、難なく制圧。
それが当たり前だ、と思っていながらも、
無事で帰還した事に安堵し、素直に嬉しいのである。
『お疲れ様です! リオネル様!』
『リオさん! お疲れ様!』
『お疲れ様です! リオネル様! さすがのお手並み! ブライムは大いに感服致します!』
対して、リオネルも柔らかく微笑む。
『ああ、お待たせ。皆も、お疲れ様。先ほども報告を入れたように、愚連隊の蠅団は俺だけで完全に制圧し、更生するよう段取りを組んだ。後は、大元たるガエルの処理で、仕事は残り半分だ。それも早いうちに片を付ける。さあ、ナタリーさんを迎えに行こう』
そして現在の時刻は午後4時40分。
蠅団の制圧に少々手間がかかったが、まあ予定通り。
ここでリオネルは、念話で『ある連絡』をナタリーへ入れた。
連絡をした上、リオネル達は速足で、冒険者ギルド王都支部へ向かう。
ナタリーを迎えに行くのだ。
時刻がいわゆる『ラッシュ』の直前なので、
本館1階はどんどん冒険者の数が増え、混雑の様相を呈している。
そんな様子を横目にして、所属登録証を提示して名乗った上で、
受付経由で申し入れ。
許可を得てから、リオネル達はナタリーの部署がある事務所内へ。
1階ロビーで退勤して来るナタリーと待ち合わせしても良いのだが、
ナンパや興味本位から、見知らぬ者達にアプローチされ、
面倒な事になる可能性もあるから、それを避けたのだ。
ちなみに、ギルドマスターから事前に許可を得ている為、
リオネル達の事務所内の入りに問題はない。
そうこうしているうちに……午後5時となり、ナタリーの仕事は終了。
5時15分となったところで、席を立ち、後片付け。
ロッカールームへ移動し、制服を着替え、帰宅の身支度を終えたナタリーが、
事務所内で待つ、リオネル達の前へ姿を現した。
仕事が終わった解放感とともに、頼もしいリオネル達が現れ、
安心しきっている感のナタリーは笑顔で、
「お疲れ様です! リオネル顧問! 皆様も! リオネル顧問のご指示通り、明日休暇を取りました」
と声を張り上げ、深く頭を下げた。
対して、リオネルも「お疲れ様です、ありがとうございます」と笑顔で応えた。
ヒルデガルドとミリアン、ブライムも全員、笑顔だ。
既に蠅団のつきまとい、そして脅威が潰え、
安心出来る事となった状況を説明し、伝えてあげたい。
ただ、オープンなこの場で詳しい話をするわけにはいかない。
「ふう」と軽く息を吐いたリオネルは、
「ナタリーさん、大事な話があります」
「え? 私に? 大事な話、ですか? 先ほどのご連絡と関係がありますか?」
「ええ、あります。ここですぐに話す事は出来ませんが、良い話と悪い話の両方です」
「良い話と悪い話の、両方ですか」
「はい、ですが事態は良い方向には向かっていますから、ご安心ください。すぐに避難先へ戻り、夕食を摂りながら、ゆっくり話しましょう。今朝同様、帰路も俺達が警護しますので」
「分かりましたわ、ありがとうございます」
ナタリーを送ってから、リオネルが動いてくれたに違いない。
礼を言ったナタリーは、更に嬉しそうな笑顔となった。
会話内でアンセルムの宿屋と具体的に告げず、『避難先』としたのは、
第三者にナタリーの行き先を特定されない為。
蠅団どもの接触は無くなり、
周囲の第三者達に不穏な波動を発する者は皆無だが……万が一を想定してである。
「勝って兜の緒を締めよ」とばかりに、リオネルは絶対に油断せず、
慎重を期したのである。
いつもご愛読頂きありがとうございます。
※当作品は皆様のご愛読と応援をモチベーションとして執筆しております。
宜しければ、下方にあるブックマーク及び、
☆☆☆☆☆による応援をお願い致します。
東導号の各作品を宜しくお願い致します。
⛤『魔法女子学園の助っ人教師』
◎小説書籍版既刊第1巻~8巻大好評発売中!
《紙版、電子版、ご注意!第8巻のみ電子書籍専売です》
(ホビージャパン様HJノベルス)
※第1巻から8巻の一気読みはいかがでしょうか。
◎コミカライズ版コミックス
(スクウェア・エニックス様Gファンタジーコミックス)
既刊第1巻~5巻大好評発売中!
《紙版、電子版》
何卒宜しくお願い致します。
コミックスの第1巻、第3巻、第4巻は重版しました!
皆様のおかげです。ありがとうございます。
今後とも宜しくお願い致します。
また「Gファンタジー」公式HP内には特設サイトもあります。
コミカライズ版第1話の試し読みも出来ます。
WEB版、小説書籍版と共に、存分に『魔法女子』の世界をお楽しみくださいませ。
マンガアプリ「マンガUP!」様でもコミカライズ版が購読可能です。
お持ちのスマホでお気軽に読めますのでいかがでしょう。
最後に、
⛤『冒険者クラン新人選択希望会議でドラフト1位指名された無名最底辺の俺が、最強への道を歩みだす話!』《完結済み》
⛤『帰る故郷はスローライフな異世界!レベル99のふるさと勇者』《連載再開!》
⛤『頑張ったら報われなきゃ!好条件提示!超ダークサイドな地獄パワハラ商会から、やりがいのあ
る王国職員へスカウトされた、いずれ最強となる賢者のお話』《完結》
⛤『異世界ゲームへモブ転生! 俺の中身が、育てあげた主人公の初期設定だった件!』《完結》
も何卒宜しくお願い致します。




