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第766話「勿論だが、マチアス。お前にも存分に体験して貰うぞ。これでも軽い罰だよ」

あけましておめでとうございます!


皆様のご愛読と応援に深く深く感謝致します。


頑張って書いて行きますので、

今年も、引き続き、何卒宜しくお願い致します。

愚連隊蠅団(ムーシェ)のボス、マチアス・バタイユを尋問。


簡単には口を割らなかったマチアスではあったが……

さすがに心を偽れず、リオネルに真実を見抜かれ、

遂にデスタン伯爵の三男ガエルと交わした契約書の存在を明かしてしまった。


ここぞ!とばかりに、リオネルは一気に押す。


契約書を受け取ると、奪われぬよう、即座に収納の腕輪へ仕舞い、


「お前ら、もう少し自由に動けるようにしてやろう」と、

治癒の魔法をかけ、回復した幹部以下の団員達に命じ、

現在、アジトに居ない団員達を全員、急ぎ連れて来るように命じた。


まだ、ぎこちないが、のろのろなゾンビウォークよりは、

ましになった団員達が出発、仲間を探し、王都市内を回っている間に……


リオネルはマチアスに自白形式の陳述書を書かせ、日付の記入&サインをさせた。

また肉声で同じ内容を言わせ、

新たに開発した『魔導映像&音声録画水晶』にも記録する。


この『魔導映像&音声録画水晶』は、

フォルミーカ迷宮でイェレミアスが使っていた、

魔導水晶の視点に、映像&音声の録画機能を持たせた、コンパクトな魔道具。


見た目は単なる水晶の装飾品、壁掛けを含め、どこにでも設置可能。

リオネルの魔力で、オンオフの遠隔操作が可能な優れもの。


以前、リオネルは、英雄の迷宮探索中に、

経験の浅い冒険者を専門に狙う強盗『ルーキーキラー』に襲われた。


その際、『魔導音声録音水晶』を証拠に活用した経験を活かし、

今後、そういう事もあろうかと、リオネルがイェレミアスのアドバイスを貰い、

先日のフォルミーカ滞在中に、作り上げたものだ。


これで『蠅団(ムーシェ)』から得られる証拠は完璧にゲットした。


さあ、次は蠅団(ムーシェ)どもの矯正及び人畜無害化だ。


陳述書を書き終え、一気に脱力。

ぽか~んとして、呆然自失状態のマチアスへ、リオネルは呼び掛ける。


「おい、マチアス」


「は、はい……」


「出払った団員達が戻る前に、俺と力比べをしようか」


リオネルの言葉を聞き、目を大きく見開き、驚くマチアス。


「へ!? 力比べ!? あんたとか!?」


「ああ、ガタイの良いお前は腕力及び体力が自慢だろう? だから、これだ」


リオネルはそう言うと、収納の腕輪から大きな酒樽を出した。


「う、うわ!? い、いきなり!? な、何もない所から、さ、酒樽が出た!? こ、これも魔法ですか!?」


「まあな」


「そ、それを持ち上げるので?」


「ははは、残念、不正解だ。中身が入っていない空の酒樽は、たった15㎏弱しかない。それじゃあ、持ち上げたって、大した自慢にはならないだろう」


「たった15㎏って? え、ええっと、そ、それは、まあ……そうですが」


見た目は細身のリオネルをチラ見したマチアスはおどおどした表情で頷いた。


しかし、リオネルがひょいと酒樽を持ち上げ、部屋の片隅に置くと、

少し驚いたようである。


「え!? えええ!?」


「ははは、マチアス。驚いているな? 見た目はお前より遥かに華奢(きゃしゃ)な俺だが、そこそこ力があるのは意外だろう」


「は、はあ……」


「今、お前が大人しく俺に従っているのは、俺の使う魔法に屈し、脅威だと思っているからだ。しかしそれは大いなる誤解だと教えてやろう」


「へ!? 大いなる誤解!? それはどういう意味で!?」


「ああ、魔法だけではない。俺には違う一面もある」


「ち、違う一面……」


「ああ、俺にはお前に匹敵する腕力、体力もある。それをしっかり教えてやろうと思ってな、腕相撲で」


「え、えええ!? 腕相撲!? そ、そうか! 分かった! 酒樽の上蓋を使うんだな!」


「ああ、正解だ。念の為、言っておくが、身体強化などの魔法は一切使わん。俺の素の力でお前と勝負だ。やる気が出るよう、賞金もつけてやる」


「え!? しょ、賞金!?」


「ああ、これだ」


次にリオネルが収納の腕輪から出したのは、

まぶしく光り輝く、(おびただ)しい枚数の金貨である。


「こ、これはああ!!」


「大体、10万枚(10億円)ある! 俺に勝てば、お前に全て進呈しよう」


「き、き、金貨!? じゅ、じゅ、10万枚!!?? す、す、全てええ!?!?」


「ははは、力自慢、度胸自慢のお前なら、こういう賭けは、凄く燃えるシチュエーションだろう? やるか?」


「やる!! やりますよ!!」


「おお、やるか。大した度胸と決断力だ。さすがはボス、お前は単なる脳キンではない。


だが、負けたら、蠅団(ムーシェ)の団員は勿論、このアジトを始め、資産ごと俺が貰う。必要な時には、今回の件を、しっかり証言もして貰う。そしてお前は一生、死ぬまで俺の忠実な配下だ。もしも裏切ったら死、あるのみだぞ」 


「わ、分かった!! やります!! やってやりますとも!!」


今回の件で下手を打っても、配下を全て失っても……

金貨10万枚あれば充分に巻き返せる。


それに身体強化魔法等々を使わない『素の力だけ』なら、

この俺が、ひ弱な魔法使いに負けるわけがない。


とマチアスは、計算したようだ。


ここまで基本的には力と度胸で、ボスまで、のし上がったマチアスだが、

計算力にも優れ、開き直り、割り切り方も大したもの。


もしも悪に染まらなかったら、ひとかどの人物になっていたかもしれない。


リオネルは柔らかく微笑む。


「では、早速やろうか? ストレッチが必要なら5分だけ待ってやろう」


「あ、ありがてえ!!」


それから約5分……腕を何度も曲げたり、丁寧にマッサージしていたマチアス。


人生を懸けたとも言える勝負なのだから、さすがに念入りである。


「勝負だ!!」


と声を張り上げ、気合い充分に、酒樽の上蓋へ右ひじを置いた。


そこへリオネルも近付き、同じように右ひじを置いた。


がっしりと組み合った両者! ひと呼吸置き、


「ゴー!」というリオネルの声が発された。


果たして勝負は……


だが、すぐさま、「う、動かねえええ!!!」


というマチアスの絶叫が部屋に大きく響いたのである。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


マチアスが「う、動かねえええ!!!」と絶叫する通り、

どんなに拳に力を入れても、腕を振ろうとしても、

フルパワーを使っても、リオネルの腕は全く動かない。


一方、リオネルは「ず~っと」柔らかな笑みを絶やさない。


余裕のよっちゃんという雰囲気だ。


「ははは、動かないのか? マチアス」


問いかけに対し、マチアスの声は悲痛なものへと変わって行く。


「あ、ああ!!! く、くっそおおお!!! 全然動かあ~ん!!! こ、こんなバカなああ!!!」


ここで、ちらっと、リオネルは部屋の壁にかかった魔導時計を見る。


「もう少しで団員が戻って来るだろう。では、そろそろクロージングさせて貰おうか。お前を含め、蠅団(ムーシェ)の全てを俺に譲るとな」


リオネルの言葉を聞き、やけくそ気味にマチアスは叫ぶ。


「うおおおお!!!」


「おう、でかい声だな、マチアス。お前の気合は評価するが、それだけで叶わない事も数多ある。リアルな現実を認識しろ」


リオネルは、そう言い放つと、ぐいっと拳と腕を動かした。


すると!

マチアスの腕は呆気なく倒れ、だあんん!! と大きな音を立てた。


これで、勝負あり! だ。


ショックなのか、腕を倒したまま、マチアスは(うつむ)いて、

微動だにしない。


「ふう」と軽く息を吐いたリオネルは、マチアスと握った拳を解き、

腕をすっと抜き、何度か、軽く振った。


そして、出していた金貨10万枚を再び、収納の腕輪へと戻す。


収納が終わると、俯いて動かないままのマチアスへ、リオネルは言う。


「マチアス。これでチェックメイトだ。お前を始め、蠅団(ムーシェ)の全ては俺リオネル・ロートレックの物だ。書面を交わさず、口約束だが、今更、異論は認めんぞ」


リオネルの言葉を聞き、顔を上げたマチアス。

渋い表情のマチアスだが、発する心の波動が『降参』を告げていた。


「……分かった! 分かりました……リオネル・ロートレックさん、あんたにゃ、何をやっても、(かな)わねえ! 良く分かったよ、巷で聞いて、大嘘だと思っていたあんたの噂は本当だったんだって……


素手でドラゴンを殴って気絶させたとか、オーガを拳一発で倒したとか、絶対に嘘だと思っていた。でも、本当だった!! そんな人に、俺なんかじゃあ、到底勝てやしねえ! 新たなボスはあんただよ!」


「よし! では俺が蠅団(ムーシェ)の新たなボスとして、最初の指示を出す。団員達が戻って来たら、まずアジトの地下にある、大浴場に湯を沸かすよう命じるんだ。お前の命令を聞くようにはしておくから」


「は!? 風呂の準備!? どういう事ですか、ボス!?」


「重罪を犯したお前達には、償う為、重い罰を受けて貰うと言っただろう? 罰を受け、怖くて漏らしたらすぐに洗える為だよ」


意味ありげなリオネルの言葉。

当然だが、マチアスには何が何だか、全く分からない。


「こ、怖くて漏らす!? え、ええっと、そ、それは……」


そうこうしているうちに、団員達が戻って来た。


リオネルが新たなボスになった事を知らされ、反抗する者も居たが、

全て威圧により、鎮圧され、大浴場へと運ばれた。


この大浴場、仕事を終えた蠅団の団員達が使用するもので、

一度に50人入浴可能な大きさを誇る。


リオネルの威圧により、気絶し、行動不能とされた者は約50名、

更に指示が出て、即、衣服を脱がされ、大浴場へ運ばれ、全員、床へ転がされた。


まさか、俺達を全裸でリンチ!?


と、大いに、びびるマチアスであったが……


「そのまま50人を見守れ」


というリオネルの指示の下、大浴場入り口で見ていたら……


「うっわあああ!! 痛い!! 痛い!! 痛い!! 身体が引き裂かれるうう!!」

「ひえええ!! た、助けてくれええ!!」

「ぐあああ!! い、いっそ、殺してくれええ!!」


と、眠ったままの50人が凄まじい絶叫を上げ、

苦しそうに、うなされ、身もだえした。


どうやら、悪夢を見ているらしい。


中には恐怖のあまり、脱尿、脱糞する者も数多居た。


そう! 

リオネルは、団員が威圧で気絶した際、

同時に怖ろしい悪夢を見せる、夢魔法を行使したのだ。


「肉体的なダメージは、相手の罪によりほどほどにとどめ、もしくは無しですが、精神的なダメージは、全員が相当きついものとなるでしょう」


と、ブレーズヘ告げた通りに。


「リアルな夢世界で、荒涼とした地獄へ堕とされ、おびただしい数の悪魔どもから、よってたかって責めを受けるとしたら、どうなりますか」


を、容赦なく実行したのである。


ヒルデガルドとミリアンを同行させなかったのは、動きやすい事もあるのだが、

このように実施する処罰があまりにもえげつないから、

「自分ひとりで行うよ」と、説得したのだ。


そして、このタイミングで、

『作戦は半分まで成功。蠅団(ムーシェ)どもを懲らしめ、掌握した。証拠も手に入った』と、リオネルはヒルデガルド達へ、念話で連絡を入れた。


ヒルデガルドとミリアンがリオネルの無事を知り、

大喜びしたのは言うまでもない。

ちなみに、ブライムは「当然です!」という表情だったようである。


と、言う事で!


眠ったまま、苦しみ泣き叫ぶ配下達。

悪臭が立ち込める大浴場。


まさに地上の地獄、である。


あまりの惨状に、マチアスが頭を抱える。


「ボ、ボス!? こ、これはっ!?」


「ああ、マチアス。散々悪事を働いたお前達に、罰として、夢でリアルな地獄を体験して貰おうと思ってな」


「ええ!? ゆ、夢で!? リ、リアルな、じ、地獄を!? こ、これも魔法ですかっ!?」


「ああ、魔法だ。今頃、こいつらは架空の地獄で悪魔どもに滅茶苦茶いたぶられているはずさ。まあ所詮は夢だから、肉体的なダメージはほぼ無い。ただメンタルは相当やられる。死ぬまで、もう二度と悪事を働かないと決意するくらいにな」


「そ、そこまで……」


「ああ、ただメンタルが、リミッターを越え、人格が完全に崩壊しないようケアはしてある」


「う、うお……」


「勿論だが、マチアス。お前にも存分に体験して貰うぞ。これでも軽い罰だよ」


「これでも軽い……あわわわわ」


「そうさ! 軽い罰だ! お前達、蠅団(フーシェ)は散々非合法な事を行い、王都の人々を泣かせ、苦しめ、大金を稼いで来た。これは、その戒めであり、みそぎだ。全員、みそぎを済ませたら、俺の下で新たな結団式を行い、お前達は更生し、真人間に生まれ変わるんだ」


怯えるマチアスを真っすぐに見据え、

リオネルは、きっぱりと言い切ったのである。

いつもご愛読頂きありがとうございます。


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