第761話「完了致しました!」
冒険者ギルド王都支部ギルドマスターとの打合せが終わったリオネル一行。
事情を知ったギルドマスターの判断と指示により……
安全確保の為、しばしの間、カウンター業務から外れ、
事務所において表に出ない内勤事務を行うナタリーとは、
一旦ギルドで別れる事となった。
リオネル達の尽力、ギルドのケアで、
ナタリーは、さわかやな笑顔を絶やさない、『いつもの彼女』に戻りつつある。
「では、ナタリーさん。打合せ通り、午後5時前に迎えに来ます」
ギルドでは組織上、リオネルはナタリーの上席であり、役職の顧問呼び。
彼女は、しっかりと「わきまえて」いる。
「了解です! リオネル顧問! ありがとうございます! 何卒宜しくお願い致します!」
ここからリオネルは、心と心の会話、念話へと切り替える。
第三者が傍から見れば、見つめ合うだけという趣きだが。
『ナタリーさん、ギルドマスターとは警備員云々の話をしましたが、いつでもどこでも、もしもの際は遠慮無くナタリーさんの心の声――念話で俺達を呼んでください。俺達は他の用足しをする為、基本的には王都内に居ますから』
『分かりました! リオネルさん達も充分にお気をつけて』
聞けば……
ナタリーは、ランチの際も外へ出ず、ギルド内の職員食堂で済ませるという。
リオネル達が迎えに行く夕方までは、ギルドから出ないらしい。
……という事で、「他の用足しをする」とナタリーへ告げた通り、
リオネル達は、ギルド本館内のとある部署へ。
この部署は、『創世神教会』とやりとりをする部署である。
有償による教会からの優秀な治癒士の派遣、
理由あって、教会を退いた治癒士の冒険者としての受け入れ、
他の案件、もろもろの交渉事を行っている。
そしてミリアンとカミーユが育った『孤児院への寄付』も行っていたのである。
リオネルは以前から、自分もこの孤児院へ寄付する事を考えていた。
ただなるべく目立たぬよう、個人名での寄付は避けたいとも。
そこで冒険者ギルドを通じて、ギルドと一緒に寄付をする事を決めていたのだ。
……キャナール村に滞在中、身内のみでの食事中、
モーリス、ミリアン、カミーユへ伝えた時……
話を聞いたモーリス、カミーユは大いに感謝し、礼を言い、
同じく「ありがとうございます連発」のミリアンは大泣きし、
喜んだのは言うまでもなかった。
という事で、某部署へ赴いたリオネルは、所属登録証を提示し、名乗り、
冒険者ギルドが行う寄付へ、全体のバランスが崩れないよう熟考した金額、
自分からの寄付、金貨1,000枚を加えて貰うよう依頼。
そして自分が寄付した事実を決して第三者へ、外部へ漏らさぬように念を押す。
担当の職員は初めて会う、レジェンドたるランクSの顧問へ、
恐縮しながらも、厚く礼を言い、快諾した。
次にリオネル達は本館を出て、敷地内にある冒険者ギルド内の大型直営店へ。
どこのギルドでも、敷地内に直営店があり、
武器防具、、魔道具、魔法ポーション、食料品、生活用品などなど、
『冒険者が必要とする商品』ありとあらゆる品物を数多販売している。
実はワレバッドの総本部、各地の支部へ立ち寄る度、食料、生活用品同様、
リオネルは常に余裕のある備蓄を心掛け、小まめに『買い物』を行っていた。
先述したが、用心深いリオネルは、
どこでも長期に暮らせるよう、常に約5年分の食料、水を、
そして予備用にと、数多の武器防具、資材等々を収納の腕輪へ備蓄している。
ワレバッドの総本部の規模ほどではないが、
この王都支部の直営店も品揃えが充実。
上質で最新の品物を販売していた。
リオネルは思い立ち、数多の武器防具、魔法杖、魔法ポーション等々を数多購入。
お試しで、ギルドの一押しという新製品も。
そろそろ補充しようと思っていた中で、
新型の『魔導発煙筒』も売り出されており、
丁度良いとばかりに、これも大量購入。
当然、購入物は、そのまま収納の腕輪へイン。
驚いた店員達には、空間魔法行使だと伝えておく。
当然所属登録証カードシステムが使用可能だから、
現金不要のキャッシュレス、便利な事この上ない。
従士のブライムがガード役を務め、ヒルデガルドとミリアンも楽しみながら、
リオネルは、無事買い物を終える事が出来たのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
そんな大型直営店における買い物が終わり、現在の時刻は午前10時過ぎ……
リオネル達一行が、ギルドの正門から敷地外、王都の街中へ出れば……
つきまといの蠅団どもは、ナタリーを諦めきれないのか、
監視役?の30人全員が残っていた。
少なくとも2時間以上、見張っていた事となる。
黒幕ガエル?の金払いが良すぎるのか、
若造のリオネル達にコケにされ、プライドを傷つけられた事を怒っているのか、
早朝の市場といい、この凄まじい執念は多分両方であろう。
さてさて!
奴らはまず、出て来たリオネル達をじ~っと凝視。
そして冒険者ギルド本館出入口も凝視した。
しかし、リオネル達は奴らを無視し、華麗にスルー。
その間、リオネル達の会話は念話である。
『ヒルデガルドさん、ミリアン、注意してください。相変わらず蠅団どもが居ます。油断せず充分に気を付けて』
『はい!』
『注意します!』
『OK。奴らはルール無用のならず者ですが、さすがに数多の人々が行き交う冒険者ギルド前で俺達を襲うほど愚かではないでしょう。だから何も無いとは思いますが、世の中に絶対はありませんので』
『了解ですわ、リオネル様』
『まあ、普通ならばそうだよね、リオさん。でもさ、あいつらが、常識を無視した論外のあたおかで、もしも襲って来たらどうする?』
『ああ、ミリアン、奴らが襲って来たら却って好都合さ。俺が周囲の通行人へ声掛けし、複数の証人を確保。威圧で行動不能とし、取り押さえ、衛兵を呼び、即、現行犯逮捕だな』
『うふふ、リオネル様なら、しれっと簡単スムーズにやりそうですわ』
『あはは、そのと~り! リオさんなら、あんな奴ら、秒殺でしょ!』
『ええ、排除自体は、ほぼ問題無いと思います』
『ですよね!』
『だよね!』
『はい、そして昨夜、想定し、皆には話しましたが……ナタリーさんが終業時間までギルド内に居ると分かったら、焦れて警護役の俺達へ接触して来る可能性は高いと思います。またはナタリーさん見張り組、俺達の尾行組、半々に分かれて動くとか、ですね』
『成る程……接触って……私達を脅すつもりなのでしょうか? ナタリーさんの護衛から手を引けとか』
『でも脅されたって、ノープロブレムでしょ? 無敵のリオさんが居るし、ブライムさんも加勢してくれるし、そもそも私達だって愚連隊くらいなら撃退出来るし』
黙ってリオネル達3人の会話を聞いていたブライムが、ここで「うんうん」と頷く。
そんな念話を交わしながら、リオネルは敢えて威圧を使わず、
すすっと蠅団どもの傍らを通り過ぎる。
そしてリオネル達一行は速足で歩いて行くと……
案の定というか、予想通り、蠅団どもは半々に分かれ、
15人ほどがリオネル達の尾行を開始した。
物陰に隠れたり、他の通行人達に紛れようとしたり……
だが、フォルミーカ迷宮深層階を、ドラゴンや巨人族に気付かれぬよう、
シーフ職スキルを駆使したリオネルから見れば、下手過ぎる尾行である。
振り向かずとも、索敵で蠅団どもの気配を捕捉したリオネルは苦笑。
『やはり奴ら……尾行して来ますね』
『どうしますか? リオネル様』
『リオさん、あんな奴らについて来られると、めっちゃうざいから追い払う?』
ヒルデガルドとミリアンの問いに対し、リオネルは柔らかく微笑み、
余裕しゃくしゃくで言う。
『ああ、奴らの動きは予想通りで、情報収集の為の尋問は必要なのですが、それは後程。俺に策がありますから、任せてください』
『リオネル様に尋問の策が?』
『へえ、どんな尋問なの? リオさん』
『今はまだ内緒です。それよりも今日は市場、冒険者ギルドと来たから、後は王都市内での買い物を先に済ませてしまいましょう』
『『了解!』』
そんなリオネル達の会話を聞き、最後方を歩くブライムが声を掛けて来る。
『リオネル様!』
『ああ、何だい? ブライム』
『提案です! 私の威圧で、奴らを足止めさせましょう』
ブライムの提案を聞き、リオネルは即決。
正当防衛云々の兼ね合いがある人間族との戦いに威圧は最も有効。
この提案は訓練と経験値の積み重ねにもなるという理由だ。
ちなみに炎の魔人イフリートのレベルは軽く80を超え、
古代龍並み、85前後だと思われる。
低レベルな人間族の愚連隊どもなど、ひとにらみでOKであろう。
『おお、そうか。じゃあ頼むよ。但し石化させるとか、やり過ぎはダメだぞ』
『かしこまりました! お任せください!』
そう言い放ったブライムは、ぴたっ!と立ち止まり、回れ右。
ひたひたとついて来た蠅団ども15人へ対し、
鋭い魔力の眼光を、ぎん! ぎん! ぎん! ぎん!と放射!
その瞬間!
蠅団どもは全身が、びきびきびきっ! と硬直。
何と何と! 15人が全員立ったまま、その場から動けなくなってしまった。
『完了致しました! 行動不能状態は約10分後に解除されます!』
『お~、ブライム! ありがとう! いつもながら見事な手際だ』
『お安い御用です! リオネル様!』
15人ものならず者が直立したまま、一斉に行動不能!?
おいおいおい!
いきなり!
一体、何が起こった!?
通行人達が、異変を感じ、大騒ぎする中……
リオネル達は、落ち着き払い、ゆうゆうとその場を去ったのである。
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最後に、
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