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第758話「はい、理由も無く、自分の身内や仲間を害する者は絶対に許せませんので」

その日の夜。


一番最初に、心身ともに結構な疲れがあったのであろうナタリーが就寝。

そしてリオネルを始め、宿に居る者全員が眠りについたが……


ナタリーとの約束を果たすべく、リオネルは夢魔法を行使。

魔力で生成した架空の街で、ある人物が現れるのを待っていた。


現在、夢の中でリオネルが居るのは、

使い込まれたテーブルが置かれ、同じく年季の入ったカウンターのある、

渋い趣きのレトロな居酒屋(ビストロ)


但し、何故なのか他の客は居らず、何と従業員もナッシング。

全く無人の店内のテーブル席に、リオネルはひとり座っていたのだ。


と、そこへ吸い込まれるように店内へ入って来た革鎧姿の男は、

ナタリーの身内、ワレバッドの冒険者ギルド総本部のサブマスター、

剣聖ブレーズ・シャリエである。


ブレーズは不可解且つ不思議そうな顔つきである。

これは果たして夢なのか?と戸惑っているようだ。


そう! 妻となるティエラほどではないが、リオネルの夢魔法も中々のレベル。


通常の夢とは比べ物にならないリアルバージョン。

風景のクリアさ、質感は言うまでも無く、

見る者は五感まであるというハイクオリティさだ。


表情に少し険しさがあったブレーズではあるが、店内にリオネルが居るのを見て、

柔らかな笑顔を見せる。


「おお、リオネル君! いや! リオネル顧問じゃないか!」


座っていた椅子から立ち上がり、手を振るリオネル。


「はい、こんばんは! ブレーズ様! 気安く、リオネル君で構いませんよ」


「ははは、分かった。この場に限り、リオネル君と呼ぼう。(おおやけ)の席でレジェンドたるランクSの顧問を、リオネル君などと私が呼べばギルドの組織上、示しがつかない」


「ですか」


「ああ、ところで、同じテーブル席に座って構わないかい?」


「どうぞ!」


「じゃあ、失礼するよ」


一礼し、ブレーズは着席。

続いてリオネルも一礼し、着席。


これでリオネルとブレーズは相対する事となった。


「ふむ、いきなり尋ねるが、この不可思議かつリアルな夢は、リオネル君の仕業かい?」


「はい、そうです。夢魔法ですね」


「ほう! 夢魔法か。そんな高難度の魔法まで君は習得しているのか?」


「です!」


「ふうむ……本当に底が知れないな。使う術者の話など聞いた事が無い。夢魔が好んで使う魔法だと古文書で読んだ事があるぞ」


「はい、その通りです」


「ははは、だが、この夢は邪悪な夢魔が見せるみだらな悪夢ではなさそうだ。郷愁を誘うひなびた街のレトロな居酒屋(ビストロ)だものな」


「はい、こういう店が話すのには落ち着くので。自分の夢だから、他の客どころか、スタッフもいませんし」


「私とふたりきりで、じっくり話せるという事か」


「はい!」


「うむ! 実に良い店だと思う。リオネル君の趣味だとすれば嬉しいぞ。私とは同好の士という事だ」


「ですね。古文書をお読みになったのなら、ご存じだと思いますが、夢魔法は時間と距離を超越し、このように話せる便利な魔法です。悪用はいけませんが、上手く使えば有用ですよ」


「ふむ、成る程な」


「で、ブレーズ様、本題へ入ります」


「うむ」


「ワレバッドを旅立ってから、いくつか経由し、自分は現在、王都オルドルに滞在していますが、急ぎお話したい件があり、突然で申し訳ありませんでしたが、ブレーズ様の夢と、つながせて頂きました」


「ふむ、私へ急ぎ話したい件か、内々の話かな?」


「はい、実は……」


とリオネルは話した。


途中でミリアンと合流し、3人で王都オルドルへ到着した事。


冒険者ギルド王都支部訪問、恩人たるナタリーとの再会。


彼女の発する心の波動に暗い影があった事。


気になって索敵を張り巡らせていたら、

早めにギルドを退勤するナタリーを確認。

待ち伏せしていた男達の一団が居た事が判明した事。


幸い付近に居たので、すぐナタリーをガードし、

絡んで来たその一団、愚連隊蠅団(ムーシェ)を威圧で撃退した事。


蠅団(ムーシェ)が執拗な雰囲気だったので、

そのままナタリーを自宅まで送らず、

とりあえず、ヒルデガルドとミリアンと共に宿泊している宿屋へ、

ナタリーをかくまった事。


その宿屋でナタリーから事情を聞き、

デスタン伯爵の三男、ガエルの『押しかけ事件』を知った事。


王都支部ギルドマスターの報告により、

ローランド侯爵からデスタン伯爵へ厳重注意が為され、

ナタリーへの接近禁止の誓約書が作成され、彼女へ渡された事。


しかし、それからしばし経ち、

愚連隊蠅団(ムーシェ)がナタリーへ、しつこくつきまとうようになった事。


蠅団(ムーシェ)は、ひたすら「あの方の言う事を聞け」としか言わず、

最近はナタリーの自宅近辺にも現れるようになり、

彼女は精神的に参ってしまっている事。


裏で糸を引くのはガエル以外考えられないが、確たる証拠が無いので、

衛兵には訴えられない事。


困り切ったナタリーが、王都支部のギルドマスターへ相談したところ、

急ぎ護衛の手配をする事、勤務時間を融通して貰う事になった事。


ちょうどこのタイミングで、自分達一行がナタリーを助けた事。


しばし宿屋へ滞在させようと、ナタリーの自宅へ、

当座の荷物をピックアップへ行けば、

蠅団(ムーシェ)どもが待ち伏せしていた事。


リオネルが再び、威圧で奴らを全員気絶させ、

その間に荷物をピックアップした事。


そしてしばらくリオネル達がナタリーの護衛を務める事となり、

彼女からも正式に発注があった事。


誓約書にサインしたのにもかかわらず、蠅団(ムーシェ)を使ってつきまといを続けているらしいガエルの証拠をつかむべくリオネルが動く事。


などなどを話したのである。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


そんなこんなで、ひと通り、リオネルの話が終わった。


対して状況を知ったブレーズは酷く顔をしかめ、渋い表情である。

いつも冷静沈着、表情を滅多に変えないブレーズなのに珍しい。

相当、不機嫌な様子だ。


無理も無い。


侯爵たるローランドから強い叱責を受け、謝罪をし、誓約書も書いたガエルだが、

簡単にそれを反故にした上、自分の身内ナタリーへ害を為そうとしていたからだ。


「はあ~」と深くため息をつき、一転、ブレーズは柔らかく微笑む。


「リオネル君、本当にありがとう! 私の身内であるナタリーが無事なのは君達のお陰だ。彼女を助けてくれて深く感謝するよ」


と厚く礼を告げた。


「いえいえ、ナタリーさんには自分が冒険者デビューしたばかりの駆け出しの時、とてもお世話になりましたから、ほんの恩返しですよ」


「いやいや、ぜひ私から礼をしたい。当然、護衛の報酬も私が支払おう。もしも希望があれば遠慮なく言ってくれないか」


「いえ、礼などは……報酬も不要ですよ」


「いやいや、総本部サブマスターの立場上、そういうわけにはいかない。リオネル君もギルド総本部の顧問という立場なのだから、無料で仕事を()けるべきではないよ」


「分かりました。ブレーズ様のご意向に従います。そして自分の希望は、証拠を集めて行く過程で、デスタン伯爵やガエルが口出し、もしくは妨害する可能性があります。その場合、ローランド様に交通整理をお願いしたいと」


「うむ、分かった! 早速ローランド様へご報告し、ご相談する。ご自分のお顔を簡単に潰されたとお知りになったら、凄くお怒りになり、証拠が取れたらすぐ宰相閣下へご報告を入れられるだろう」


「でしょうね」


「それと護衛の報酬もギルドの規定に(のっと)り、私の判断した金額を、君の所属登録証へ振り込んでおく。そして何かあれば、すぐに連絡して欲しい。即座に対応しよう」


「分かりました。もろもろありがとうございます。ナタリーさんから聞きましたが、王都支部のギルドマスターから、ガエルの件でご報告が行った際、ローランド様は、だいぶお怒りだったようですね」


「ああ、珍しく激オコだった。普段は冷静沈着なローランド様が憤怒の表情になられたのを久々に見たよ。今回はその何倍どころか、何十倍、何百倍もお怒りになるだろう」


「ええ、ぜひローランド様からも鉄槌を下して頂ければと。という事で、ブレーズ様。ナタリーさんへ圧をかけた蠅団(ムーシェ)は勿論、つきまといの元凶たるガエルは絶対に許せません。一番のキーとなる証拠集めなのですが、はっきりした言質を取る為、懲らしめる事も含め、少々荒事となるかもしれません」


「ふむ、少々荒事になるのかい?」


「はい、肉体的なダメージは、相手の罪によりほどほどにとどめ、もしくは無しですが、精神的なダメージは、全員が相当きついものとなるでしょう」


「ふむ、精神的なダメージは相当きついか……術者の奥義につながる事だからあまり突っ込んで聞けないとは思うが、差しさわりの無いレベルで教えて欲しい。どういう事かな?」


「はい、様々な方法があります。状況により、取る作戦は変わりますし、いくつかの方法を考えています。例えばですが、この夢魔法を使います」


「ふむ、夢魔法をかい?」


「はい、ケースバイケースですが、自分は冒険者リオネル・ロートレックとして奴らを問いただす事もありますし、足がついて各所にご迷惑をかけぬよう、夢魔法内では姿を変え、身元不明となる場合もあります」


「ふむ、夢の中では、全く違う別人となる場合もあるわけだな」


「はい、堂々と名乗る場合もありますし、必要があれば別人となり、臨機応変に対応します。どちらにしても奴らを容赦なく糾弾し、処罰しますよ」


「ふむ。どちらにしても奴らを容赦なく糾弾し、処罰するのか」


「はい、更にご説明します。現在、我々が居るのは、素朴で、ひなびていて、のんびりした街にある居酒屋(ビストロ)の店内ですが、俺の容姿同様、夢魔法で自由自在にシチュエーションも変えられます。ここが一転、荒涼とした地獄に変わるとしたらどうでしょうか?」


「う……この、のんびりした街が、怖ろしい地獄にか……」


「はい、このリアルな夢世界で、地獄へ堕とされ、おびただしい数のおぞましき悪魔どもから、よってたかって怖ろしい責めを受けるとしたら、どうなりますか」


「ぞっとする……あまり考えたくないな。まだ原野や迷宮で魔物と戦っている方がマシだ」


「確かにそうですね。ちなみに奴らの態度と行動次第で、責めのレベルは変わります。尋問に対し、素直に白状し、明白な証拠を差し出して、衛兵隊へ自首し、罪をつぐなえば それで完了です」


「まあ、そうなるな」


「しかし嘘をついたり、抵抗したり、逃亡したら、徹底的にやります。自首した方が、いえ、死んだ方がマシという気持ちになって貰います」


容赦無いリオネルの言葉を聞き、ブレーズは少しだけ苦笑。


「ああ、リオネル君を本気にさせたら、まずいという事が改めて分かった。ドラゴンや巨人族を圧倒する強さと共に、怖ろしい魔法も使いこなし、メンタルも破壊するのだからな」


「はい、理由も無く、自分の身内や仲間を害する者は絶対に許せませんので」


「分かった! リオネル君ならば上手くやって、ナタリーを必ず助けてくれると信じている。何卒宜しくお願いしたい」


「はい、任せてください。……ええっとそろそろ時間です。ブレーズ様とは、まだまだお話ししていたいですし、(うたげ)をしたいという気持ちもあるのですが、とりあえず、乾杯して終わりにしましょう。ワインが良いですか? それともエールにしますか?」


「おお、そういう事も出来るのか。では冷えた赤ワインをお願いしたい」


「了解です。ほいっと」


リオネルが自由自在に夢の中をセッティング可能というのは本当らしい。


テーブル上には、冷えた赤ワインが並々と入ったグラスがふたつ、

忽然と現れたからだ。


「ブレーズ様、どうぞ」


「ああ、ありがとう! 美味そうだ!」


こうして、ふたりはワイングラスを取ると、双方がグラスを掲げ、

乾杯を行ったのである。

いつもご愛読頂きありがとうございます。


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