第756話「それが良いと思うよ。だって面倒でしょ? あんなしょーもない奴らと話すのは」
「了解です! ではこの場で正式にナタリーさんから、俺が依頼を受けたという事で、早速対応しますね。事は慎重に丁寧に運びますし、ご安心ください!」
リオネルは、きっぱり言うと、柔らかく微笑んだ。
そして、危険回避、安全確保の為、
「基本的にはリオネルの指示に従って貰う」という、ナタリーの了解も得た。
ふたりの話を聞いていたヒルデガルドとミリアンも、
「全面的に協力する」と言ってくれた。
更には厨房から出て来たアンセルムにも経緯を話して協力をお願いし、
「何でもするぜ」と、了解を得たのである。
こうして……
リオネルは、ナタリーを悩ませる、デスタン伯爵の三男、
勘違い男ガエルの岡惚れ、
そしてガエルが陰で糸を引くと思われる、
愚連隊『蠅団』を使った嫌がらせの根本的な解決に、
乗り出す事となった。
ただ、ナタリーが懸念するこれらの案件は彼女の言う通り、あくまで推測。
確たる証拠は無い。
これまた彼女の言う通り、このまま下手に衛兵に訴えれば、
証拠不十分で逆襲を喰らう可能性も高い。
自分だけではなく、冒険者ギルドと周囲を巻き込んで。
だから、まずは決定的な証拠、もしくは証人の言質。
最終的にはガエル本人の自白が絶対に必要である。
しかし! 何よりも最優先されるのはナタリーの安全確保。
以上を、ぱぱぱぱぱ! と、素早く考えたリオネル。
更にリオネルは考える。
自宅を特定されているナタリーをこのまま帰宅させるのは危険。
なので宿泊客が他に居ない事もあり、空き室も有る事から、
宿をしばしの間『貸し切り』として、
護衛を含め、ナタリーをかくまうのがベスト。
でもナタリーはギルドを退勤して着の身着のまま、この宿へ来ている。
服を始め、避難生活をする為の『荷物』をこちらへ持って来なければならない。
ここでリオネルは、放っていた妖精ピクシーの従士ジャンを、
個別限定念話で呼び出す。
『お~い、ジャン、お疲れ様。今、話して大丈夫か?』
『はい、リオネル様、大丈夫だよっ!』
『お前今、どこに居る? 俺の索敵で現在位置は分かるけど』
『ああ、相変わらず王都の街中だけどさ。奴らをつけて行き先を突き止めた後、おいら、移動したんだ』
『そうか! 俺はずっと索敵でお前の動きを追跡していた。つけていった愚連隊の奴らが逃げ込んだ建物からは、結構な距離を移動した街中のようだな』
『さっすが、リオネル様の索敵! いつもながら精度抜群だね! まあ結構な距離を移動たって、おいらが空を飛んじゃえばすぐだけど』
『そうか! スピードと敏捷さ、小回りのきく動きがジャンの持ち味だものな』
『ありがと! リオネル様! おいらを評価してくれて! という事で! おいらの方は、まずリオネル様が威圧で気絶させた愚連隊の奴らのアジトは突き止めたよ』
『おお、良くやった! ご苦労様』
『うん! それでさ! 気絶した兄貴って呼ばれていた奴はさ、眠ったまま建物に運び込まれて、それっきりなんだけど。まだ何かあると思って、アジトの上でしばらく見張ってたら、一緒に居た奴ら4人が、出て来たから後をつけたんだ』
『おお、GJだ、ありがとうな』
『いやいや、こんなの楽勝さ。奴らが行った場所は、何と! 閑静な住宅街の中の、おっしゃれ~なマンションなんだけどさ』
閑静な住宅街の中の、おっしゃれ~なマンション?
もしかしたら、ひとり暮らしのナタリーの自宅ではないかと、
リオネルはピン!と来た。
自宅近辺に蠅団の奴らが、
現れるようになったとナタリーは言っていたが、
やはり、彼女の住所は特定されていたのだ。
『愚連隊の奴ら、目星をつけていたらしい部屋の魔導灯が消えているのを見て、すっごくすっごく不機嫌になったみたい。思い切りしかめっ面になって、ず~っと見張ってるよ』
目当てのナタリーが帰宅しておらず、
蠅団の奴らは間違いなく苛立っている。
もしかしたら、痺れを切らして無理やりナタリーの自宅へ押し入り、
かどわかすつもりなのかもしれない。
その可能性は無いとは言えない。
リオネルの危惧が当たってしまった。
『分かった。悪いが、ジャン。しばらく見張っておいてくれ。後でそちらへ行く』
『了解!』
という事で、ジャンとの会話が終わった。
リオネルはナタリー達3人へ向き直る。
「今、奴らの後を追わせていた俺の従士と魔法で連絡を取りました」
奴らの後を追わせていたリオネルの従士!? 魔法で連絡!?
リオネルの言葉を聞いたナタリーだが……わけが分からない、理解出来ない。
「え!? こ、顧問! 従士と魔法で、ご連絡ですか!?」
「はい、その従士の報告によれば、さっきの奴ら、多分、ナタリーさんの自宅前で待ち伏せしていますよ」
「え!? えええ!? ま、待ち伏せ!? わ、私の自宅前!? こ、怖いっ!!」
さすがに、自宅前で待ち伏せと聞いて、ナタリーはすっかり怯えてしまった。
「大丈夫! 俺達がついていますし、ナタリーさんを必ず守ります!」
「は、はい! あ、ありがとうございます! 顧問! 感謝申し上げます」
と、ナタリーはかしこまって言うが、リオネルは首を横へ振る。
「いえいえ、ナタリーさん。もっと気楽に接してください。デビューしたての頃、散々お世話になったんです。ご恩返しさせてくださいね」
すると、ナタリーは自分を見守る柔らかなリオネルの笑顔を見て、
「リオネルさん!! 本当にありがとうございます!!」
と以前のようにさん付けで言い換え、
心の底から嬉しかったのか、「ほろり」と涙を浮かべた。
「ナタリーさん」
「は、はい! リオネルさん!」
「もしかしたら、奴ら、ナタリーさんを脅すだけではなく、さらうなど、遂に実力行使に出るやもしれません」
「わ、私がさらわれる!?」
「はい! 脅かすような言い方で申し訳ありません。しかしこれは現実です。極めて危険なので、ご自宅へは戻らず、申し訳ありませんが、今夜からしばらくこの宿に滞在してください。滞在に必要となるナタリーさんの荷物はこれから取りに行きましょう」
きっぱりと言い切ったリオネルは、柔らかく微笑んだのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
それから更に話をし、準備を整え、新たな宿泊客が来ないよう、
宿に『休業中』の札を出す事を了解したアンセルムを留守番に残し、
リオネル達は再び外出した。
全員が戻って来たら、扉を閉め、施錠する事も、アンセルムに了解して貰う。
今度はナタリーの自宅へ、彼女の荷物を取りに行くのだ。
並びは先頭にリオネル、
その後ろに3人の女子、真ん中にナタリーで左右にヒルデガルドとミリアン。
先頭を行くリオネルへ、ナタリーが、「そこをまっすぐ」とか「そこを右」とか、
声で道案内の指示をするという図式。
そして一番最後には……
身長2m超、張りのある褐色の肌と、太い首に乗った小さな顔。
銅色の短髪、鼻筋の通った彫りの深く濃い顔立ち。
筋骨隆々の肉体を持つ、30代後半の壮年男性。
最後方を固めるという趣きで、
切れ長の目で周囲を睥睨しながら、のっしのしと歩いていた。
そう! この30代後半の壮年男性は、リオネルが召喚した炎の魔人イフリート、
ブライムが擬態した姿である。
リオネルがブライムを召喚すると、初めて彼に会うミリアン、ナタリー、
そしてアンセルムはびっくり。
人間族に擬態した炎の魔人だとも聞き、更にびっくりした。
だが、これから愚連隊蠅団どもが待つ、
ナタリーのマンション行には、心強い味方となる。
まあ、実のところ、街の愚連隊どもなど、
リオネルひとりで、指先ひとつ使わずダウンさせてしまうのではあるが……
そんなこんなで、ナタリーのマンションから約300mの地点。
ここで4人に待つように告げ、ブライムへは女子達を守るよう指示。
そしてリオネルは再びジャンへ念話連絡。
ジャンはナタリーの自宅上空で、蠅団どもを見張っているはずだ。
念の為言うと、ジャンの姿は99%奴らには識別出来ない。
『お疲れ! ジャン! すぐ近くまで来たぞ。俺、ヒルデガルドさん、ミリアン、ナタリーさん、そしてブライム、計5人だ』
『了解! お疲れ様でっす! リオネル様! 愚連隊の4人は相変わらずイライラしながら、待ってるよ』
『分かった! じゃあ奴らの待ち人の俺がおでましになってやるか』
『あはは、奴らの待ち人はリオネル様じゃないでしょ?』
『おお、そりゃ、そうか。じゃあ奴らに会わず、遠くから威圧で気絶させるか』
『それが良いと思うよ。だって面倒でしょ? リオネル様がわざわざ、あんなしょーもない奴らと話すのは』
『ああ、尋問は必要なんだが、今はやる事が別にある。ジャンの言う通り後にするよ。少し離れた場所から威圧を使おう』
『うん! それが良いよ!』
という事で、リオネルは蠅団の4人へ、
100mの距離まで、忍び足&隠形で、こっそり接近。
奴らに分からぬよう、威圧のスキルで1時間は起きぬよう気絶させ……
一旦戻って、ブライムに周囲を監視させつつ、ナタリー達を連れ、彼女の部屋へ。
「あ、ああ……なんて事。リオネルさんの言った通り、やはり、待ち伏せされていたのですね……」
気絶し倒れている蠅団4人を横目で見ながら震えるナタリー。
何とかなだめ、落ち着かせたナタリーに鍵を開けて貰い、
ヒルデガルドとミリアンのみ、ナタリーの部屋へ入り、
蠅団どもが気を失っている間に女子3人で荷造り。
ここでヒルデガルドとミリアンと念話で話しつつ、ナタリーに許可を得て、
リオネルは彼女の部屋へイン。
貴重品を含む荷物一式を収納の腕輪へ搬入すると、部屋の扉を再び施錠。
長居は無用とばかりに、ジャンをピックアップして、
全員で、アンセルムの宿屋へ引き上げたのである。
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