第755話「はい! 任せてください! ナタリーさんの話をお聞きした上で、問題の解決に向け、努力したいと思ます」
「分かりました! リオネル顧問と皆様のご厚意に甘えさせて頂きます」
と、ようやく笑顔を取り戻したナタリー。
態勢を整え直し、改めて先頭にリオネル、その後に3人の女子が続き、
アンセルムの宿屋へ。
念の為、リオネルは索敵を最大範囲内で行使。
奴らも含め尾行が無いか、注意しながら、
視認も使い、安全確認をしながら到着した。
時刻は午後5時30分過ぎ……
アンセルムは夕食の支度を終え、リオネル達を待っていた。
「おお、リオ! お疲れさん! 晩メシが出来てるぜ! 俺の得意なソヴァール王国料理だ!」
「ありがとうございます。楽しみです」
「ははは、お安い御用だ……あれ? その女性は?」
「はい、この女性は、俺が冒険者デビューした際、ギルドで、とてもお世話になった方です」
「おお! じゃ、じゃあ!」
リオネルが冒険者デビューした際、ギルドで、とてもお世話になった方と聞き、
アンセルムは、ああ、話に聞いていたリオネルの初恋のあの人か!
そうピン!と来たようだ。
リオネルは小さく頷き、言う。
「です。変な奴らに絡まれていたので、俺達で助け、一旦こちらへ来て貰いました」
「おお! な、成る程! そ、そりゃ大変だったな! さあ、中へ入って貰え!」
「ありがとうございます! ではナタリーさん、どうぞ! ヒルデガルドさんとミリアンも、まずは皆で夕食にしましょう」
リオネル達に連れられたナタリーはアンセルムへ一礼。
「は、初めまして! お世話になります! 冒険者ギルドの職員でナタリー・モニエと申します。何卒宜しくお願い致します」
「ああ、初めましてだな! 俺はこの宿の主人アンセルム。リオとは駆け出しの頃に知り合った。まあ、困った時はお互い様だ。ゆっくりしていってくれ」
「あ、ありがとうございます!」
幸いと言うか、不幸と言うのか、この日の宿泊客はリオネル達3人のみ。
新規の客も来ていないので、『貸し切り』状態。
なので、ナタリーからは、周囲を気にせず話が聞ける。
と、いう事で。
ナタリーを1階の食堂に案内し、席へ座って貰う。
そしてリオネルは、ヒルデガルドとミリアンと共にアンセルムを手伝い、
出来上がった料理を皿に盛り付け、食堂のテーブルへ運んで行く。
恐縮したナタリーが手伝おうとしたのを止め、
夕食のセッティングは完了。
すぐ食事が開始され、美味しい! 美味い! の声が飛び交い……
込み入った話は後でとリオネルが告げ、
アンセルムも入り、5人は、リオネルの冒険者デビュー当時の話など、
他愛もない話題で食事を楽しむ。
やがて食事が終わり……
「俺は後始末を」という気を利かせたアンセルムが厨房へ消えた。
「私達も手伝いを」というヒルデガルドとミリアンだったが、
女子が同席した方が良いという判断で、リオネルが引き留めた。
そんなこんなで、食堂にて話が始まり、リオネルが口を開く。
何故、リオネル達があの場に居たのか?という説明だ。
「ナタリーさん」
「は、はい!」
「冒険者ギルド王都支部を辞去した後、商業ギルドへ赴き、幸いギルドマスターと会えたので打合せを行いました。
1時間ほど打合せを行い、商業ギルドを辞去。
宿泊先であるこの宿へ戻る途中、3人で冒険者ギルドの脇を通ったら、先ほどの尋常ではない奴らが中の様子を伺っていました。
なので気になってしばし見守っていたら、ギルドを出て来たナタリーさんをじっと見ていたので、これは危険だ!と思い、すぐ護衛を申し出たのです」
多少の脚色はあるが、リオネルの話は間違ってはいない。
ナタリーは納得する。
「それで、あの時……」
「はい! 丁度ナタリーさんをフォロー出来て本当にラッキーでした。で、単刀直入にお聞きします。奴らの口ぶりだとナタリーさんを狙い、待ち伏せしていたようですがお心当たりはありますか?」
「………………………………」
「成る程……言い難いのですか? 何かご事情がありそうですね」
「………………………………」
無言のナタリー。
わけありなようだが、このまま放っておくわけにはいかない。
かといって、彼女の心を読むまでの事ではない、とリオネルは判断。
「で、あれば、俺の方で調べ、対応します」
「え!? 顧問の方で対応ですか?」
「はい、すぐ対応します。俺はギルドの顧問という責任ある職にあります。だから、さしたる理由もなく職員に害為す者どもが居ると知ったからには、事情を確認した上で、断固たる処置をしますよ」
「断固たる処置を……」
「はい、それに俺は王都でやりたい事もあります。なので、その邪魔をしでかしそうな、奴らみたいな反社的存在はマイナスになりますから」
もしも自分が話さずとも、リオネルは独自で調査し、動いてしまいそうだと、
理解したのであろう。
ナタリーは、事情を話す決意をしたようである。
「そうですか……分かりました。ではお話します。何故、私があいつらに狙われるのかを」
「お聞きしましょう」
きっぱりと言い切ったリオネルは、俯くナタリーをじっと見つめたのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「まず、私をつけ狙う奴らですが、団員が末端まで入れると数百人という、結構な勢力を持つ王都の愚連隊『蠅団』の連中ですわ」
ナタリーが説明を始めた。
ヒルデガルドとミリアンは、
とりあえず、リオネルとナタリーのやりとりを見守る事にしたようである。
「ふむ、蠅団というのですか。やはり愚連隊だったのですね、成る程」
「はい」
「だが何故、愚連隊がナタリーさんをあれだけの人数でつけ狙う事になったのですか?」
「はい、当然と言えば、当然ですが……そもそも私は蠅団とは全くかかわりがありませんでした。奴らは、とある日、突如、帰宅途中の私を数人で取り囲み、自分達は、蠅団だと名乗り、あの方の言う事を聞けと、脅して来ました」
「あの方の言う事を聞け、ですか?」
「はい、見た目はいかつい奴らですし、怖くて怖くて……あの方とは誰だ? と何度尋ねても奴らは答えず……最初は何が何だか訳が分かりませんでした。しかし、度々奴らにつきまとわれ、ひとり暮らしをしている私の自宅近辺にも姿を見せるようになり、よくよく考えると思い当たるふしがありました」
リオネルの懸念は的中、やはり、ナタリーの自宅は特定されていた。
危険度は相当なものである。
「ナタリーさんのご自宅近辺にも姿を見せるとは、とんでもないですね……そして思い当たるふし、ですか?」
「はい、あくまでも推測ですが、蠅団の奴らは自分の意思で、私をつけ狙っているわけではありません。命令に従って動いていると思います」
「ほう、命令に従って、ですか。誰の命令ですか?」
「はい、これも推測ですが……多分、王都在住のデスタン伯爵の三男、ガエルですわ」
「デスタン伯爵の三男、ガエル……そいつが何故、ナタリーさんを」
「はい。そもそもデスタン伯爵は冒険者ギルド王都支部のお客様で、年に数回、自領地内の魔物討伐をご依頼して来るのです。その他にもいくつかのご依頼をされる上得意です」
「成る程」
「で、とある依頼の打合せの際、いつもは執事に一切を任せるのに、何故なのか、三男のガエルも出席しておりました。そして、たまたまお茶を出した私を見て、気に入ったようでした。それで、前振りなくいきなりアプローチして来たのです」
「え!? お茶を出しただけのナタリーさんへ、いきなりのアプローチ、ですか?」
「はい、それが翌日の朝、いきなりギルドの業務カウンターへ押しかけ、お前が気に入った! 独身だと聞いたぞ! 俺の女になれ! お前は平民ゆえ嫁には出来ないが、でかい屋敷を買ってやるからそこへ住め! と。その時私は業務中で、ある冒険者さんと打合せ中でしたが、無理やり割り込み大声をあげたのです」
「何ですか、それ? それまで直接には何のかかわりも無く、仕事で1回会っただけなのに、貴族たる自分の愛人になれって事ですか? とんでもなく呆れた奴ですね」
「はい、私は勿論、その時、周囲に居た者全員がドン引きでした。当然、きっぱりとお断り致しました。そして騒ぎを聞きつけたギルドの警備員により、ガエルは強制的にギルドを退出させられたのです」
「まあ、そうなるでしょうね。で、迷惑をかけたガエル本人及びデスタン伯爵から、ナタリーさんへ謝罪はあったのですか?」
「いえ、ガエル本人はそれっきりで、父親のデスタン伯爵からは執事を介して、結構な金額の追加依頼がギルドへありました。それで『謝罪』という落としどころとしてくれと」
「むう、ナタリーさんへ直接まともな謝罪は無しですか? 親子ともども、本当に呆れますね」
「ですね。この件は王都支部のギルドマスターからワレバッドの総マスター、ローランド様へご報告が行き、お怒りになったローランド様からデスタン伯爵へ、直接、手紙で厳重注意があったようです。その結果か、どうなのか、ギルドマスターからは、改めてガエル本人からの謝罪文と彼が二度と私に接近しないという誓約書を頂きました」
「成る程。それで一件落着。決着がついたと思ったら、そうではなかったと」
「はい、謝罪文と誓約書を受け取ってから、しばらくして、私は突如、蠅団の奴らにつきまとわれ、あの方の言う事を聞けと、何度も脅されるようになりました」
「成る程。ガエル本人は誓約書通り、近付いていないし、蠅団の奴らはあの方の言う事を聞けと言うだけで尋ねても具体名を言わない。だから、ガエルから指示を受けている証拠が無い。ずる賢い奴ですね」
「そうです。両者がつながる証拠はありません。衛兵には、つきまといをされていると申し入れて、数回パトロールして貰いましたが、どこからか見ているのか、そんな時、奴らは絶対に姿を見せない。衛兵が居なくなったら、再び現れる……」
「むう……」
「私は本当に困ってしまい、再びギルドマスターへ相談したら、急ぎ護衛をつける手配をする。とりあえず勤務時間は融通も利くようにするから、夜間の帰宅は避けるように。危ないと思ったら早く帰って構わないと言われました」
「成る程。そして本日早めに退勤し、たまたま俺達が通りかかって、護衛。蠅団の奴らを撃退したと」
「はい、その通りですわ」
「事情は認識し、理解しました。しかし何故、最初、俺への事情説明をためらったのでしょう?」
「はい、先ほども申し上げましたが、あくまでも私の推測で、確たる証拠が無いからです」
「成る程……確たる証拠ですか……」
「はい、相手は上級貴族の三男で冒険者ギルド王都支部の上得意。さすがのリオネル顧問でも、ガエルと愚連隊とのつながりを証明するのは困難だと……下手にお願いすれば、リオネル顧問へご迷惑をおかけしてしまいますし……」
「むう、そして上級貴族ならば、衛兵も捜査がやりくいかもしれませんね」
「はい、おっしゃる通りです。もしも衛兵へ訴え出ても、証拠不十分で、ガエルに上手く言い逃れされたら、逆にギルドと私が名誉棄損で訴えられ、罰せられるかもしれませんし」
「成る程、多分ガエルはそこまで計算に入れていますね」
「はい、もしそうなれば王都支部とギルドマスター、そして総マスターであるローランド侯爵様、私の身内であるシャリエ騎士爵様にも多大なご迷惑がかかり、更には私の両親も嫌な思いをするでしょう」
「それで、嵐が通り過ぎるのを待つ、現状では逃げてスルーするしかないのだと考えていたのですね?」
「はい、これだけ断っていれば、いずれガエルも諦めるかもしれませんし」
ナタリーはそう言うが……
そこまで執着心の強いガエルが簡単に諦めるとは思えない。
〇〇のように執念深い男、という形容もある。
ガエルは多分、そんな男だとリオネルは感じた。
「……分かりました。俺の方で対応します」
「え!? リオネル顧問がご対応を!? 今の私の話を聞いた上でですか!?」
「はい! 任せてください! ナタリーさんの話をお聞きした上で、問題の解決に向け、努力したいと思ます」
「ですが……顧問にお願いして本当に宜しいのですか?」
「はい! この問題で心底困っているのでしょう? 大丈夫ですよ、ノープロブレム、全く問題はありません」
「……わ、分かりました。で、では、何卒宜しくお願い致します」
「了解です! ではこの場で正式にナタリーさんから、俺が依頼を受けたという事で、早速対応しますね。事は慎重に丁寧に運びますし、ご安心ください!」
リオネルは、きっぱり言うと、柔らかく微笑んだのである。
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お持ちのスマホでお気軽に読めますのでいかがでしょう。
最後に、
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