第753話「これは……まずい!」
ソヴァール王国王都オルドル、冒険者ギルド王都支部で、
ギルドマスター、サブマスター、
そして初恋の女性、ナタリーモニエに再会したリオネル・ロートレック。
共に旅をするヒルデガルド・エテラヴオリ、ミリアン・バザンも加わって歓談し、
全員へ厚くお礼を述べた後、リオネル達3人は辞去。
辞去する前、ナタリーへ、先程誘った、
『私的な懇親食事会開催』の希望日時のメモを渡したのは言うまでもない。
そんなこんなで、時刻は午後3時30分過ぎ……
リオネル達は次に商業ギルドへ向かう事に。
冒険者ギルドのギルドマスターから提供された紹介状を手に、
偶然にも親友づき合いをしているという商業ギルドのギルドマスターへ、
面会のアポイントを求めるのだ。
何故、アポイントを求めて取るというのは、
常識的に考えれば、いきなり今日の今日で会いに行っても、
多忙なスケジュールのギルドマスターに面会が叶わないから。
なので、本日アポイントを取り、後日改めて訪問という趣旨。
さてさて!
冒険者ギルドから商業ギルドは、そう離れてはいなかった。
徒歩で10分もかからない。
加えて、リオネル達3人は日頃の修行により、
普通に歩いても常人よりも遥かに足が速い。
所用時間の半分、5分ほどで到着した。
外観は若干違うが、建物の内部は以前訪ねたフォルミーカの商業ギルドと同じ。
であれば、勝手は分かる。
受け付けへ行き、リオネルは名乗った上、
冒険者ギルド、商業ギルドの所属登録証を両方提示。
加えて、冒険者ギルド、ギルドマスターの紹介状も差し出した。
対して受付の職員は何と何と!
「リオネル・ロートレック様! お待ちしておりました! もしもお時間がおありであれば、今からの面会も可能ですが、いかが致しますか?」
と、リオネル達の到着を待っていたかのように笑顔で応えたのである。
これは多分……冒険者ギルド、ギルドマスターの根回しのお陰であろう。
冒険者ギルドでギルドマスター達と歓談している間に、
商業ギルドへ連絡を入れてくれたに違いない。
そして幸いな事に商業ギルド、ギルドマスターの都合もついた。
リオネル達にとっては、渡りに船、感謝感謝である。
当然ながら、面会を申し込む。
そして10分後……
リオネル達は商業ギルド、ギルドマスター室に居り、
まずは急な訪問とスケジュール調整のお礼を丁寧に述べ、
自己紹介とあいさつをした後、ギルドマスター及びその幹部と打合せを始めていた。
最初は他愛の無い雑談であったが、徐々に本題へ。
ここで、フォルミーカで進行中の、山猫亭プロジェクト計画書が役に立った。
リオネルの立てたアンセルムの宿屋復興計画は、場所、仕様さえ違えど、
山猫亭プロジェクトとほぼ同じやり方だから。
リオネルは笑顔で言う。
「実はアクィラ王国フォルミーカの商業ギルドで、ギルドマスターとこちらの計画書を基に打合せを持ち、計画を進行させております。このソヴァール王国王都オルドルでも同じように進めたいと考えております。場所はこちらです」
と、アンセルムの宿屋の地図も合わせて見せた。
こうなれば、細かな説明はほぼ不要である。
アンセルムの店の改修と増築、隣の空き店舗購入ありきで、
リオネルの要望はすぐに理解され……そこからはぐん!と話が早くなった。
ギルド側からは、必要な、取りまとめる進行役、
そして改修、増築する工事業者の候補がいくつもピックアップ。
プロフィール、実績付きの書類としてまとめられ、リオネル達へ渡された。
渡された書類を見れば、候補者はこのような事業に長けた者ばかり。
心強い限りである。
加えて、渡した山猫亭プロジェクトを基に、総費用の概算も出してくれるという。
これで総予算の目途が立つ。
「リオネル様、まずはアンセルム様の宿屋に隣接するレストランの空き店舗を、当ギルドの不動産部へ依頼し、仮押さえしておきますね」
「はい! 正式な購入でも構いませんよ。レストランの隣接は、このプロジェクトでは最も重要な部分かもしれません。何卒宜しくお願い致します」
その後、後の予定が詰まっているギルドマスターの時間が許す、
午後5時少し前まで打合せが行われ……
不明な部分を確認出来た質疑応答も充分にあり……
リオネル達は厚く礼を言い、商業ギルドを辞去したのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
商業ギルドを午後5時過ぎに出たリオネル達。
再び3人で手をつなぎ、王都の街路を歩いて行く。
本日の予定は終了。
アンセルムの宿屋へ戻るのである。
3人が交わす会話はやはり、心と心の会話、念話だ。
急な訪問で対応して貰った事に、リオネルは恐縮しているようである。
『いやあ、商業ギルドのギルドマスターには申し訳なかった。アポ無しで、こちらがいきなり押しかけたのに、1時間も打合せの時間を頂いてしまった』
対してヒルデガルドとミリアンも言葉を戻す。
『ですが、リオネル様。ギルドマスター殿は嬉々として、私達にご対応されていましたわ』
『そうだよ、リオさん! ギルドマスターさん、ノリノリで凄く嬉しそうで、テンション高かったもの』
『ああ、確かに、気合が入って親切丁寧な対応だった』
『こちらの質問に全てお答え頂き、ひとつひとつ丁寧に優しくいろいろと教えて頂きました』
『ギルドマスターさんだけではなく、サブマスターさん達も同じくね』
『そういえば商業ギルド、冒険者ギルドの両ギルドマスターはとても仲が良くて、幼い頃からの親友というのは本当だった。今も、しょっちゅうふたりで飲みを兼ねた食事に行くとおっしゃっていたから』
『ええ、その席で毎回、冒険者ギルドのギルドマスター殿は、リオネル様のお話をされていたらしいですわ』
『うん! リオさんがウチの支部からデビューした自慢の天才冒険者だと、冒険者ギルドのギルドマスターさんはいつも鼻高々。そう商業ギルドのギルドマスターさんが言ってたもの』
『で、度々自慢を聞かされた商業ギルドのギルドマスターも、そこまでの人物かと、好奇心が大いに湧き、俺に会いたくなって、今回の訪問は渡りに舟って事だったと』
『そういう事ですわね』
『まあ、今回の訪問は、いろいろ運が良かったと思うよ。冒険者ギルドと商業ギルドの、ギルドマスターさん同士が親友だったり、上手くスケジュール調整が出来たとかさ』
『ああ、冒険者ギルドと商業ギルドのギルドマスターには大いに感謝しよう。で、3日後の午前10時に、商業ギルドへ再訪してくれたら、今回上がった宿題をクリアし、進行役と工事業者の候補者も連れて来るって、商業ギルドのギルドマスターが自信満々におっしゃっていた』
『ええ、当日、更に詳細を詰め、候補者とも面会して欲しいとおっしゃっていましたね』
『じゃあ! 3日後の午前10時、冒険者ギルドでの打合せを、もう私達のスケジュールへ入れておこうよ』
話が盛り上がる3人。
今日は全てが上手く行ったので、皆、笑顔。
さてさて!
商業ギルドからアンセルムの宿屋へ戻る途中に、冒険者ギルド王都支部の横を通る。
と、その時!
リオネルの張り巡らされた広範囲の索敵にナタリーの反応が!
どうやら、仕事を終え、支部から出て来るようだ。
普通なら、「お疲れ様です」と声を掛けたいところだが……
ただ、おかしい。
現在は午後5時15分を少し回ったところ。
この時間は完遂報告をする冒険者達で、朝の時間と共にラッシュと呼ばれる時間帯。
ナタリーが担当する業務カウンターは、大混雑。
大忙しのはずである。
猫の手も借りたい状況だろうに、退勤するのは変だなあ……と気になるリオネル。
そして支部を出て来たナタリーは帽子を目深に被り、
顔を隠すような仕草をしているようだ。
合せて彼女の心の波動も伝わって来た。
だいぶ、怯えているらしい。
そして!
ナタリーを執拗に探し、待ち構えているらしき複数らしき何者かの気配も感じる。
こちらも索敵で判明……そいつらは若い男達、である。
それも発する心の波動で分かるが、だいぶガラの悪い男ども。
愚連隊と言っても、間違いではない。
もしかして、ストーカー、つきまといの類だろうか。
これは……まずい!
そんなリオネルの緊張が、心の波動としてヒルデガルドとミリアンへも伝わった。
『リオネル様!?』
『リオさん! どうしたの?』
『ああ、先ほど冒険者ギルドで会ったナタリー・モニエさんだが、様子がおかしい。そして彼女につきまとう挙動不審の変な奴らが居る』
『まあ! それは大変ですわ!』
『すぐに助けないと!』
『ああ、仕事を終えた彼女は丁度、支部の出入り口から退勤するところだ。つきまとう奴らが接触する前に、急ぎ俺達でガードしよう』
『了解ですわ! リオネル様!』
『早く行こう! リオさん!』
気持ちは、はやるが、
さすがに王都の街中、人の目のある場所で、転移魔法を行使するわけにはいかない。
リオネル達3人は、冒険者ギルドの正門へ向け、ダッシュで走り出したのである。
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