表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

747/754

第747話「明日は絶対に恩返しなどせず、ゆっくりくつろいでください」

リオネル達の提案で行われたアルエット村立食パーティーは、

キャナール村同様に大好評。終了したのは、午後9時である。


後片付けやらなんやらで、リオネル達が就寝したのは午後11時過ぎであるが、

翌朝4時、元気な姿を見せていた。


そう! リオネルの恩返しはまだまだ続く。


昨日同様、村の自警団へ武術指導を行い、朝の護衛に同行。


帰村後、空き家を借り、回復魔法を行使し、

リオネル、ヒルデガルド、ミリアンは、

このアルエット村でも村民の治癒を行ったのである。


ちなみに、アンナも手伝いを申し出たが、

夜までかかりそうな事、不慣れな事などを理由に説得され、

「じゃあ! 私はママ、おじいちゃんと3人で夕食を作っているね」

と、切り替え、笑顔で納得してくれた。


さてさて!

上級回復魔法を使いこなすリオネルは手慣れたものだが、

回復魔法修行中のヒルデガルドもかなり慣れて来ていて、

スムーズに治癒を施して行く。


ミリアンも初歩の回復魔法でケア。


結果、重病、重傷の者は著しく回復。

軽度の怪我やコンディション不良はほぼ改善され、体力気力とも万全となった。


合わせて魔法ポーション、薬草なども結構な数を贈り、

カントルーブ男爵家、キャナール村同様、

医療体制が不充分だったアルエット村にとっても、

何物にも代えがたい、とても嬉しいケアとなった。


ちなみに、魔法ポーション、薬草などの譲渡はエレーヌと既に話がついており、

先に有償で譲った物資の追加分で、料金変わらずという事になっている。


当初エレーヌは、絶対に代金を払うと言い張ったが、結局リオネル達に説得され、

しぶしぶ飲んだのである。


そして予想通り、治癒は農作業から戻って来た村民へも施され、

全てが完了したのは、何と午後8時。


朝からぶっ通しの『恩返し』となってしまったが……

村民達が健康になり、嬉しそうにしているのを見て、

リオネル、ヒルデガルド、ミリアンも笑顔に満ち溢れている。


「ねえ、リオさん」


ミリアンが呼びかけ、会話は念話へ変わる。

彼女から内緒話にして欲しいという波動を感じないので、

ヒルデガルドを含めた限定念話だ。


『何だい? ミリアン』


『ふたりとも回復魔法を完璧にマスターしているよね。リオさんは上級レベルをガンガン行使するし、ヒルデガルドさんも中級レベルをきっちり使いこなすじゃない』


『まあな』


『でも私はモーリス父さんに手ほどきして貰ったけれど、修行の時間も短かったし、まだほんの初級レベル。だから、もっともっと上達したい! 水属性魔法だけじゃなく、回復魔法もリオさんに修行を付けて貰って構わないかな?』


『ああ、構わない、お安い御用だよ』


『うふふ、やったあ! 私って、治癒士の仕事が好きかも……何か、傷ついた人を癒し、治すのって、楽しいから』


『そうか!』


『うん! 治った人達の笑顔を見ると、すっごく嬉しくなるんだ! ありがとうって言われるのは最高!』


『おお! カフェレストラン経営以外に、やりたい事が増えるのは良いじゃないか。それに、丁度イエーラ富国計画の中に、医療改革があるから、その仕事に携わって貰うのもありだ』


『え? イエーラの医療改革?』


『ああ、詳しい事はおいおい話す。ティーにフォローして貰い、改革は既に始動しているが、ミリアンが回復魔法を上達してくれれば、大いに助かるよ』


リオネルが言えば、話が大きくなってプレッシャーを感じたのか、

ミリアンが口ごもる。


『で、でも……』


『どうした?』


『うん、そこまで期待されちゃうと……やっぱり上達出来ないかもしれないし』


『良いさ、それでも。トライアルアンドエラーの精神だよ。挑戦する事が大事なんだ』


そんなふたりの会話を聞いていたヒルデガルドが無言で微笑む。


既にヒルデガルドへは、ミリアンが自分へのライバル心を燃やし、

高みに行きたい、それゆえ修行に参加すると伝えてあった。


以前のヒルデガルドならば、嫉妬心を燃やしたに違いない。


だが、今のヒルデガルドは全く違う。


ティエラの仕切りで、ともに妻となり、家族となるミリアンには、

寛容力を持ち、姉のような気持ちで接している。


一緒に修行し、術者として、更に上を目指そうという気持ちになっていたのだ。


リオネルとの邂逅と様々な経験により、心身とも成長したヒルデガルド。


地母神修行の為、現世と異界を行き来、留守がちな正妻ティエラに成り代わり、

新たに家族となり、自分が統治するイエーラで暮らす者達を、

「私が守らねば!」という強い気概を持っている。

一種の『母性』かもしれない。


ヒルデガルドは思うのだ。

妻達の中では魔法が使えないブレンダへも、何かケアを考えたいと。


そして……リオネル達はエレーヌ宅へ戻り、

何度も何度も礼を言うエレーヌ、アンナ、クレマンの作った料理で、

仲良く遅い夕食を摂ったのである。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


楽しい夕食が終わり……エレーヌ宅はお茶を飲みながらの歓談タイム。


こんな機会は滅多に無いと、

好奇心旺盛なアンナは、リオネルの旅の話を聞きたがる。


そんなアンナの要望に応え、リオネルは差し障りの無い範囲内で、

話をしてあげた。


様々な町村の話……

ワレバッド、アクィラ王国のフォルミーカ、リーベルタース、

そしてイエーラのフェフ、これから住まう特別地区などなど。


様々な冒険の話。


親友ジェローム・アルナルディ、

否、ジェローム・カントルーブとの出会い、友情と冒険譚。

フォルミーカ迷宮の探索と魔物との戦い。

ヒルデガルドの祖父イェレミアスとの出会い、イエーラ行き。

現在の暮らしなどなど……


目を輝かせ、リオネルの話に聞き入っていたアンナであったが……


ふいっとミリアンを見て、いきなり直球を投げ込む。


「ねえ、ミリアン姉ちゃん!」


「な、なあに?」


「ミリアン姉ちゃんは、初恋の相手、リオ兄ちゃんと結婚するの?」


「え!?」 


唐突に投げ込まれたド直球。


虚をつかれた形となったミリアンは口ごもりつつ、

アンナへ嘘は言えないと、曖昧に明かす。


「……ええっと、まあ、考えてはいる、かな」


「ふうん、考えてはいるの? でもさ、ミリアン姉ちゃんが、ヒルデガルドさんとも、そんなに仲が良いって事は、もしかして、ふたりで一緒にリオ兄ちゃんのお嫁さんになるの?」


女子は勘が鋭い、と(ちまた)では言われる。


アンナも多分に漏れず、そうらしい。


「ええっと、まだ詳しく言えないけれど、そうなるかもしれない」


曖昧な答えを聞いたアンナだが、ピンと来たようだ。


「やっぱりね! うふふ、言葉を濁すその感じだとまだ秘密って事で、言っちゃダメって事だよね? 良いよ、内緒にしておく」


ここでようやく態勢を立て直したミリアン。


「ありがとう! お願いね」


「絶対幸せになってね、ミリアン姉ちゃん、そしてヒルデガルドさんも」


そしてアンナは軽く息を吐き、更に言う。


「私ね、リオ兄ちゃんから今後の話を聞いて決めたわ。約束を破ってごめんなさい」


「約束を破ってごめんなさいって、どういう事?」


「ミリアン姉ちゃんと一緒にした5年後の約束の事。私、姉ちゃんと話したよね? 5年後、大人になったアンナと再会したら、リオ兄ちゃんは結婚を考えてくれるって。そしたら、一緒に結婚しようねって」


「ええ、確かにそう約束したわね」


「うふふ、5年後じゃなく、ずっと早くリオ兄ちゃんはアンナへ会いに来てくれた。凄く嬉しかった。けれど……」


と言葉をつなぎ、アンナは話を続ける。


「私は、リオ兄ちゃんと結婚したら遠くへ行くと思っていた。

それが当たり前で、全然平気だって。


元々、私は王都で生まれ育ったし……


でもママの故郷(ふるさと)であるこの村で、

おじいちゃんも一緒に3人で暮らしていたら、気持ちが変わって来たの。


この村が心の底から、凄く好きになったの……離れたくないって。


そして遥かな遠い国イエーラで暮らすであろう、

リオ兄ちゃんとは結婚出来ないって、思った。


このアルエット村でず~っと暮らし、ママやおじいちゃんを助け、大好きなこの村を良くして行くって決めたから」


ミリアン同様、アンナはリオネルが初恋の相手。

そして一途に想いを持ち続けていたのも同じ。


だが、恋するリオネルが遠く離れた異国で暮らして行くと聞き、

葛藤が生まれ、大好きな村を離れる事に、思い悩んでいたに違いない。


対してミリアンは柔らかく微笑む。


「分かった。アンナちゃんがそう決めたのなら、尊重する。ただもう少し時間が経ったら、改めて考えてみて。それで最終的な答えを出せば良いと思うよ」


そんなミリアンのアドバイスを聞き、アンナは、ぱあっ!と顔を輝かせる。


「ありがとう! ミリアン姉ちゃん! そうする! ごめんね! リオ兄ちゃん! その時には相談してくれる?」


対してリオネルも微笑み、


「分かった、アンナちゃんの相談には必ず乗るよ」


と、シンプルに答えた。


結婚とは当然だが、まず相手があっての事。

ふたりの意思は最優先だが、

相手の身内関係、都合、事情等々、様々な要因も絡んで来る。


聡明なアンナは、そこまで言わずとも理解しているはず。


理解が及ばずとも、リオネル達が去った後、母、祖父と話をするだろうから。


そして話の成り行きを見守っていたエレーヌからは、


「明日は絶対に恩返しなどせず、ゆっくりくつろいでください」


と懇願され、その言葉に従い……


翌日、リオネル達は朝の訓練に参加したものの……

後はエレーヌ宅において、交代でアンナの勉強を見たりとか、

料理のレシピを教えたりとか、のんびりと疲れを癒したのである。

いつもご愛読頂きありがとうございます。


※当作品は皆様のご愛読と応援をモチベーションとして執筆しております。

宜しければ、下方にあるブックマーク及び、

☆☆☆☆☆による応援をお願い致します。


東導号の各作品を宜しくお願い致します。


⛤『魔法女子学園の助っ人教師』

◎小説書籍版既刊第1巻~8巻大好評発売中!

《紙版、電子版、ご注意!第8巻のみ電子書籍専売です》

(ホビージャパン様HJノベルス)

※第1巻から8巻の一気読みはいかがでしょうか。


◎コミカライズ版コミックス

(スクウェア・エニックス様Gファンタジーコミックス)

既刊第1巻~5巻大好評発売中!

《紙版、電子版》

何卒宜しくお願い致します。

コミックスの第1巻、第3巻、第4巻は重版しました!

皆様のおかげです。ありがとうございます。

今後とも宜しくお願い致します。


また「Gファンタジー」公式HP内には特設サイトもあります。

コミカライズ版第1話の試し読みも出来ます。


WEB版、小説書籍版と共に、存分に『魔法女子』の世界をお楽しみくださいませ。


マンガアプリ「マンガUP!」様でもコミカライズ版が購読可能です。

お持ちのスマホでお気軽に読めますのでいかがでしょう。


最後に、

⛤『冒険者クラン新人選択希望会議でドラフト1位指名された無名最底辺の俺が、最強への道を歩みだす話!』《完結済み》


⛤『帰る故郷はスローライフな異世界!レベル99のふるさと勇者』《連載再開!》

⛤『頑張ったら報われなきゃ!好条件提示!超ダークサイドな地獄パワハラ商会から、やりがいのあ

る王国職員へスカウトされた、いずれ最強となる賢者のお話』《完結》

⛤『異世界ゲームへモブ転生! 俺の中身が、育てあげた主人公の初期設定だった件!』《完結》

も何卒宜しくお願い致します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ