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第743話「ただいま! アンナちゃん!」

翌朝8時。


朝食を済ませたリオネルとヒルデガルドは、ピックアップしたミリアンを連れ、

キャナール村を出発した。


約束した通り、滞在中の3日間は、師モーリスを始めとして、

リオネルが受けた恩を返すべく、村の為に誠心誠意尽力した日々であった。


食料品を始めとした物資の提供、自警団への武術指導、村民への治療等々、

村民全員が感謝したのは言うまでもない。


扉が開かれた村の正門では、身内たるモーリス、カミーユは勿論、

村長のパトリス、カロル達カフェスタッフ女子、自警団などなど、

村民達が総出で手をぶんぶん打ち振り、見送ってくれた。


ちなみに旅立つ前に、リオネル達3人は村民全員と固く握手を交わし、

また来訪して欲しいと、散々に別れを惜しまれたのである。


手を振る村民達へ、同じく手を振り返し、正門が閉まるのを見届けてから、

走り出した魔獣車の御者台に並んで座る3人。


ちなみに、3人の真ん中で手綱を取るのはリオネル。

次はミリアンから、御者を任せて欲しいと懇願されていた。


さてさて!

次の訪問地はといえば、隣村のアルエット村。

来訪の連絡は魔法鳩便で既に入れてある。


この村もリオネルにとっては懐かしい地。


リオネルが王都を旅立ってからすぐの道中、街道でたまたまオークどもから救い、

世話になったエレーヌ、アンナ母娘、そしてエレーヌの父で村長のクレマン、

仲良くなったドニ達村民へも会いに行くのだ。


そして……このアルエット村へはキャナール村からはそう遠くない距離だが、

当然移動は転移魔法を行使する。


つまりミリアンはここで初めてリオネルの転移魔法を体験する事となるのだ。


3人で交わす会話も、旅立つ少し前から密かに訓練を始めた、

心と心の会話『念話』だ。


地母神になろうかという最上級精霊ティエラは別格として……

リオネル、ヒルデガルド、イェレミアスが『念話』をほぼ完璧に使いこなすと聞き、

同じ魔法使いとして絶対に『念話』を習得したいと、

ミリアンは対抗心を燃やしたのである。


村に滞在中はつけられなかったミリアンの魔法修行も、

リオネル、ヒルデガルドが指導する事となっていた。


という事で、丁度良い頃合いである。


リオネルはミリアンへ新たなカミングアウトをする事にした。


失われた古代魔法、『転移魔法』を習得し、行使可能な事、発動の際の注意。

そして更には同じく失われた古代魔法、

『飛翔魔法』をも習得し、行使している事を初めて伝えたのだ。


『ええええええ!!!???』


対してミリアンは大きく目を見開き絶句。

信じられないという顔をした。


いくらリオネルが規格外の魔法使いだとしても……


瞬時に亜空間を経由し、遠方へ跳ぶ転移魔法習得だけでも、

天地がひっくり返るくらいの驚愕度なのに……

更に広い大空を飛び回る、飛翔魔法までをも習得済みとは……


ただただ唖然とするしかなかった。


『リ、リオさん!!?? しゅ、瞬時にとんでもなく遠くへ移動!? そ、その上、大空も自由自在に飛べるの!? それ!!?? ほ、本当に!!?? と、とんでもないわ、貴方という人は……』


対して、リオネルは柔らかく微笑む。


『ああ、魔法学校ではいつも成績が最下位。どうしようもない劣等生だった俺なのに、自分でもそう思うよ』


『いやあ、リオさんが成績が最下位の劣等生だったなんて、私だって、信じられないけど、それどころじゃない話よ!』


……やがて、何とか落ち着いたミリアンは、


『でもまあ、そのくらいのスケールじゃないと、ブレンダさんや私はともかく、ティエラ様もヒルデガルド様もお嫁さんになろうとは思わないよね……うん! 納得した!』


と言い、笑顔で頷いた。


一方、ミリアンの言葉を聞いたヒルデガルドは、


『はい、ミリアンさんの言う通り、私がリオネル様を好きになった最初のきっかけは、転移魔法を実際に体験した事によるリスペクトでしたわ』


『そ、そうだったのですか?』


『はい! ミリアンさんへは、ティエラ様の夢魔法で初めて会った時にもお話ししましたが、以前の私は人間族をとても侮っておりました。会って話すどころか、見る事、口に出す事さえも嫌で避けておりましたの』


『えええ!? そんなに人間族を嫌っていたのですか? こんなにフレンドリーな今のヒルデガルド様からは考えられないですね』


『はい、自分でもそう思います。私はリオネル様とお会いして、最初に転移魔法を経験し、人間族への認識を改めました』


『と言いますと?』


『はい! 人間族にはアールヴ族最高の術者たる祖父でも行使不可能な魔法を使いこなす、このように素晴らしい方がいらしたと!』


『それ、人間族というか、リオさんが、ですよね?』


『はい! そしてリオネル様と共に行動してから、私は考えが変わりましたわ』


『考えがお変わりに?』


『はいっ! リオネル様は様々な深い知識をお持ちであり、数多の素晴らしい魔法を行使する傑出した術者です。そして知識や魔法だけではなく、ドラゴンをもあっさり倒す強靭さ、先々を読み切る冷静沈着な深謀遠慮さを併せ持つ底知れない実力をお持ちです。それなのに決して驕らず常に手を抜かない努力家たる大器ですから!』


『底知れない実力を持つのに決して驕らず、常に手を抜かない努力家たる大器、ですか。確かに、リオさんのような魔法使いは世界でも唯一かもです』


『はい! そう確信します! 私はそれで偏見を完全に捨て、人間族への見方、考え方をまるっきり変えたのです。更には、優しくて誠実かつ真摯というリオネル様の人間性を知り、種族の垣根を超え、心の底から愛し、惚れ込んでしまいましたわ』


『うっわ! そこまでおっしゃるなんて、ヒルデガルド様は本当にリオさんがお好きなんですね!』


『その通りです! リオネル様が大好きですわ! 私の愛は一点の曇りもありません!』


いつもながら、リオネルに対するヒルデガルドの称賛はもの凄いし、饒舌。

超が付く絶賛と言って過言ではない。


そして実力だけでなく、人間性を愛し、惚れ込んだと聞き、ミリアンは更に納得。


『愛には一点の曇りも無いと言い切るのは凄いですね! 私も強くて守ってくれるリオさんが大好きなんです』


『ですよね? 凄くよ~く分かりますわ』


『そして! 優しくて誠実かつ真摯、というリオさんの人間性を知り、愛し心の底から惚れ込んだって、成る程!! それはヒルデガルド様のおっしゃる通りです!! 文句なく同意します!! 私もすご~く良く分かりますよ!!』


『でしょう? でしょう? 多分ですが、あのティエラ様も素晴らしい術者というだけではなく、リオネル様の人としての懐の深さを好かれたのだと、私は思います。あっさり違うよと、おっしゃられるかもしれませんが、ね。うふふふ……』


自分を巡り、盛り上がる女子達の会話を他所に、リオネルは言う。


『……お話し中、失礼。そろそろ、転移魔法を発動します。カウントダウンします。5,4,3,2,1、ゼロ! 転移(トランジション)!!』


その瞬間!

リオネル達は忽然と、煙のように消え失せていたのである。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


……ということで、瞬時にリオネル達を乗せた魔獣車は、

アルエット村間近の街道上に現れた。


いつもの事ではあるが、事前に索敵で確認しておいたから、

周囲に危険を及ぼす敵は勿論、人影も全くのナッシングだ。


そして幸い、ミリアンは転移魔法の影響で気分が悪くなるなどは無く、

全然大丈夫だと笑顔である。


転移地点からゆっくりと馬車を走らせ、

アルエット村正門前へ到着したのは午前9時前。


リオネルの持つスキル、1km先を見通す『大鷲の視線』が捉えた。


正門後方の物見やぐらに陣取る門番は、やはりあの少年ドニ。

ますます貫禄が付き、大人びて見えるのは、別れてから努力し、

強くなるべく切磋琢磨しているのだろう。


事前に報されていたらしい事もあり、

それゆえ、ドニは御者台に座るリオネル達にすぐ気付いた。


「おお、兄貴いい!! じゃなかったあ!! リオネル様ああ!! ようこそ、いらっしゃいましたああ!!」


とリオネルへ向かって手を振って叫び、ささっと身体の向きを変え、村内へも叫ぶ。


「お~~い!! みんなああ!! リオネル様がいらしたぞお!! 正門を開けろお!!」


という事で……やがて、アルエット村の正門は開き、

そこには最初に出迎えたドニは勿論の事、

エレーヌ、アンナ母娘、そしてエレーヌの父で村長のクレマンも立ち、

ここでもやはり、村民総出という趣きで大きく手を打ち振っている。


リオネルの胸に懐かしさがこみ上げ、同じく大きく手を打ち返す。

以前アルエット村を訪れたミリアンも大きく手を打ち振る。


そして初訪問のヒルデガルドはといえば、「どんな方がお待ちなのかしら?」

などと思っているのか、無言で柔らかく微笑んでいた。


そんなこんなで、魔獣車は村内へ乗り入れ、村民達に取り囲まれる。


一番最初、一目散に駆け寄って来たのは心の底からリオネルを慕うアンナ。


アンナは確か11歳になったはず。


リオネルが出会った時から1年が経っており、少し大人びて来たかもしれない。


満面の笑みを浮かべるアンナは魔獣車へ駆け寄り、

手をぶんぶん!打ち振り、大きく声を張り上げる。


「リオにいちゃあ~~ん!! お帰りなさあいい!!」


「ただいま! アンナちゃん!」


リオネルも同じく笑顔かつ、大きな声で応えた。


と、そこへ自警団の一員なのか、革鎧姿の男の子が駆け寄って来た。


ひどく緊張した面持ちをしている。


この子は、アンナと同年齢くらいかな、とリオネルは微笑むが、


ふうと息を吐いた少年は、


「お、お、おいっ! リ、リ、リオネル・ロートレックう! お、お、俺と勝負しろおっ!」


と、何度も噛みながら、大きく叫び、いきなり戦いを宣言。


拳を突き上げ、御者台のリオネルをにらみつけたのである。

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