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第736話「おう! 共に頑張ろうぜ、リオネル!」

再会したリオネルとジェロームは、その場で軽く抱擁。


互いの簡単な自己紹介が終わり、リオネルとヒルデガルドは、

カントルーブ男爵家城館の応接室へ案内された。


全世界のアールヴ族の頂点に立つソウェルたるヒルデガルド。


それゆえヒルデガルドはワレバッドでも国賓レベルの扱いを受けただが、

カントルーブ男爵家の面々もそれは十分承知しており、

まるで王族に対するような接し方である。


なので、噂には聞いていたが、そこまで高い身分のヒルデガルドが、

護衛も侍女も連れずに、リオネルとふたりきりで旅をする事にとても驚いていた。


やはり事実なのかと。


だがリオネルは「いつもの事ですよ」と笑顔。

ヒルデガルドも「リオネル様がいらっしゃれば、護衛もお供も不要です」

ときっぱり。


そして案内された応接室で、リオネルと共に、

すらりとしたスレンダースタイルのヒルデガルドが革兜を外すと……

抜けるような白肌の端麗な顔立ちがあらわとなった。


ヒルデガルドの美しく長い金髪はポニーテール風にまとめられており、

アールヴ族特有の小さくとがった耳が髪の間から、ぴょこんと飛び出している。


彼女の小さな顔は彫りが深く、鼻筋がすっと通り、

切れ長の瞳はすみれ色で、薄いピンク色の唇はまるで小さな貝殻のよう。


部屋に居た者達が男女を問わず皆、人間族とは全く違う雰囲気を醸し出す、

ヒルデガルドの透明感あふれる美しさに見とれて、「ほう」と感嘆のため息をつく。


さてさて!

応接室で改めての自己紹介が終わった後、お茶と焼き菓子が運ばれ、歓談へ。

リオネルとジェロームは、「久しぶりだなあ」「また会えて嬉しいよ」と、

改めて旧交を温める。


お互い、話したい事、聞きたい事が山ほどある。

それぞれ自身の人生を選択し別れた後、どうしていたのかと。


ただ、まともに話すと長くなるから、はしょって、あらすじ的に述べて行く事に。


ワレバッドを旅立ったリオネルはアクィラ王国フォルミーカ迷宮へ行き、

迷宮を攻略、踏破し、地上へ帰還。


ランクS冒険者となり、迷宮で知り合った前ソウェルのイェレミアスと契約し、

アールヴ族の国イエーラへ。


政治顧問として腕を振るい、現ソウェルのヒルデガルドとも親しくなり、

共にアクィラ王国のドラゴン討伐を成し遂げた。


現在もイエーラ政治顧問として、イエーラの富国、発展の為、

開国準備を含め、ありとあらゆる施策を行い、ずっと多忙の日々を送っていると。


一方、ジェロームはアロイス・カントルーブ男爵の愛娘エリーゼと婚約。


カントルーブ男爵家へ入り婿し、現在は次期当主として婚約者、義理父とともに、

領地レサン村の復興と繁栄の為、奮闘中との事。


ちなみに気になるふたりの『結婚式』はジェロームが20歳になってからとの事で、

ぜひリオネルを招待したいとも。


加えて……様々な政務に奔走し、農作業を始め、自ら力仕事もいとわず、

先頭に立ち働くジェロームは、家臣、村民から絶大な支持を受けていると、

義父となるアロイスが嬉しそうにかつ誇らしげに語ってくれた。


更に話は、お約束というか、リオネルの冒険譚中心の内容となる。


そう、子供のようにせがんだローランド・コルドウェル侯爵だけではなく、

誰もが『英雄の活躍』を聞きたがるものなのだ。


秘する物も多々あり、全てを話す事は出来ないが……


フォルミーカ迷宮の探索と踏破。

そして、アクィラ王国におけるドラゴン討伐の話を自慢にならぬよう、

リオネルは極めて『控えめ』に話した。


しかし、リオネルにぞっこんのヒルデガルドが、そんなものじゃないと、

まるで我が事のように誇らしく、身振り手振り付きで嬉しそうに話すから、

カントルーブ男爵家の全員が驚いてしまう。


噂では聞いていたが、これほどまでにふたりは仲が良いとはと。


プライドが極めて高く、他種族を全て見下すと、

全世界において認識されていたアールヴ族の、それも長が……

「いくらランクSといえど、人間族の若き冒険者に惚れ込むなど、

ありえないのでは?」と半信半疑であったからだ。


だが、論より証拠。


ヒルデガルドはリオネルにぴったりと寄り添い、彼の話を補足説明する形で、

アクィラ王国におけるドラゴン討伐の偉業を熱く熱く語ったのである。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


リオネルの冒険譚で盛り上がったところで、ランチタイムとなり、

全員が大広間へ移動。

既に大広間には、料理と飲料が運ばれており、そのまま昼食会となった。


貴族の会食は、ある程度しっかり席次が決められているが、

今回は久々の再会で、たくさん話せるようにと配慮。


リオネルはジェロームの対面、そしてリオネルの隣に座ったヒルデガルドは、

ジェロームの隣に座るエリーゼの対面。


乾杯が終わった後、ジェロームがリオネルへ声をかける。


国賓たるヒルデガルドの高貴さと美しさに、

最初は大いに緊張し、気後れしていたジェロームではあったが……


リオネルの冒険譚に気持ちがほぐれ、

ヒルデガルドのフレンドリーさもあり、『いつものジェローム』に戻っている。


「おい、リオネル!」


「何だ? ジェローム」


「いくら、お前がランクSのレジェンドで、ドラゴンスレイヤーなどという、もの凄い奴になったとしても、俺とお前の仲だ。ストレートに聞くぞ」


親友同士、ぞんざいな言葉遣いのやりとりが懐かしい。


そう思ったリオネルだが、


いくら親友だといっても、失礼ではないのかしら? 大丈夫なのかしら?

とエリーゼは、はらはら。


しかしそんな婚約者の心配をよそにして、


「お前は、ヒルデガルド様と、ご結婚するのか?」


と、ジェロームはいきなり『ど直球』な質問を投げ込んで来た。


対して、リオネルは苦笑。


「おいおいジェローム……本当にストレートだな。その質問は、アクィラ王国でもコメントしたが、ヒルデガルド様は俺のクライアントであり、お互い高め合う間柄なんだ」


しかし、ジェロームは首を横へ振り、一刀両断。


「いや、そういうのは、ノーサンキュー。要らない情報だな」


「ははは、要らない情報か。現時点では、結婚の可能性は高いとしか言えないが、答えはそれで構わないか?」


「結婚の可能性は高いとしか言えない? おいおい、リオネルらしくない、煮え切らないコメントだぞ」


ジェロームも苦笑し、


「ヒルデガルド様は、こんな、リオネルの四角四面かつ曖昧コメントを許せますか?」


と、軽く突っ込んだ。


でもヒルデガルドは泰然自若。


柔らかく微笑むと言う。


「うふふ、ジェローム様。全く問題はありませんわ。何が起ころうとも、私はいつでもスタンバイ状態ですから」


「え!? ヒルデガルド様が、何が起ころうとも、いつでもスタンバイ状態!?」


「はい、リオネル様から、いつプロポーズをされてもOKという事ですわ」


「な、成る程!」


「リオネル様と私は愛し愛され、信頼しつつ、固く深い心の絆でしっかりと結ばれております。私達はいずれ家族となり、家族の数は更に更に増えるでしょう」


ここまで、きっぱりと言われたら、ジェロームは何も言い返せない。


「わ、分かりました!」


「ジェローム様はリオネル様が助け合った同世代のご親友とお聞き致しております」


「いえ、ヒルデガルド様! リオネルは親友である以上に、師匠であり、大恩人です! 自分が一方的に助けて貰いました!」


「うふふ、分かりました。私ともども、今後も宜しくお願い致しますわ」


「と、当然です! こ、こちらこそ! 何卒宜しくお願い致します!」


私達はいずれ家族となり、家族の数は更に更に増える……


はっきりと明言はしなかったが、ヒルデガルドの発した言葉には、

『結婚』と『子供』を思わせるコメントが含まれていた。


そう!

告げている事に噓偽りは無い。


しかし結婚と子供は勿論、自分と同じ『妻』も増える事を示唆しているとは、

カントルーヴ男爵家の者達は誰も気付いてはいなかった。


勿論、リオネルだけはヒルデガルドの発した言葉の真意を読み切ってはいたが。


……ただジェロームは、ヒルデガルドの言葉を聞き、素直に親友の幸せを喜んだ。


かつて……ふたりで願った想い人とのめぐりあいがそれぞれ見事に成就したから。


「リオネル!」


「おう! 何だ、ジェローム!」


「うん! 俺だけ先に幸せになって心苦しかったが、これで気持ちが楽になった。本当におめでとう! お前がつかんだ幸せを心から祝福させて貰うよ」


「ありがとう! ジェローム! だが俺達はこれからが人生の新たなリスタートだ」


「ああ、その通りだ!」 


「そして、改めて実感した。これまでみたいに、自分だけ成長して良かれの人生じゃないと。課せられた仕事を、もっともっと一生懸命に頑張り、想い人を始めとして、自分とかかわる数多の人々を幸せにして行こうってな」


自分だけ成長して良かれの人生じゃない、

リオネルの言葉にはシンプルだが重みがあった。


立場は違えど、互いにリーダーとして、

自分にかかわる多くの人々の人生を担う責任があると。


「おう! 共に頑張ろうぜ、リオネル!」


約20年の人生の中で、出会い共に過ごした時間は短い。

だが、ふたりは改めて、確かな『心の絆』を感じていた。

こいつこそが、俺の生涯の友だと。


ふたりは立ち上がって、身を乗り出し、拳を突き合わせ、

久々のフィストバンプを行う。


常識的に見れば、食事中に何と行儀が悪い、という事になるだろう。


しかし、その場の全員がとがめるなどせず、微笑ましく見守り、

これからも長きにわたるであろう、

ふたりの男子の固い友情をしっかりと感じていたのである。

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