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第734話「ルームサービスを取り、再び夕食会形式である」

冒険者ギルド秘書としての適性に悩みに悩み……

上司が秘書に推薦してくれたという人間関係の兼ね合いからも、

元の部署には戻りがたく……


いっそ新たな仕事をと、転職をも考えているエステルの気持ちを見抜き、

「ならば、イエーラでともに働いてみないか?」と誘ったリオネルとヒルデガルド。

 

「前向きに考えます」という返事を戻したエステルに対し、

「後3日はワレバッドへ滞在するので」と伝え、

「3日後が返事の締め切りとは決めず、ゆっくり考えれば良い」と伝えた。

また「不明な点があれば答えるし、気軽に相談して欲しい」とも。


……という事で、食事会終了後、

エステルをホテルから自宅まで依頼した馬車で送らせ……

イレギュラーなエステルのヘッドハンティングは、彼女の返事待ちとなったので……


リオネルとヒルデガルドは、

予定していたワレバッドにおける用事を、さくさくっと済ませる事に。


翌日、起床し、ホテルのレストランで朝食を済ませると、

目立たぬよう革鎧の冒険者姿で、ワレバッドの街中へ。


このワレバッドで済ませる最大の用事はやはり、『買い物』である。


世界中から冒険者が集まる迷宮都市フォルミーカもそうであるが、

このワレバッドはギルド総本部のある『冒険者の聖地』


それゆえ冒険者ギルドが推奨する所属登録証カードシステムが、

最も広く深く浸透しており、キャッシュレスで、簡単、スムーズに、

様々な買い物を行う事が出来る。


なので、このワレバッドで出来る限り買い物を済ませておこうと、

ふたりの意見が一致したのだ。


概してどの世界でもそうだが、

最も必要で、すぐに不足する物は、やはり食料と生活物資。


深謀遠慮、備えあればうれいなしがモットーのリオネルは、

冒険者デビュー以来、時間を作っては、まめに購入するスタンスを貫いている。


先のフォルミーカへの旅では、イェレミアスが買い物に同行したが、

今回も当然、ヒルデガルドが同行。

彼女は祖父以上に買い物に関して前向きであり、真剣。


そしてヒルデガルドの商品購入の視点は直感的で極めてシンプル。


国民の生活の為に役に立つか、喜ぶのか、それをまず考える。

そして自分が気に入るかどうかである。


それからリオネルと共に、売値、仕入れ値、仕入れルート、生産コスト、

国内生産可能性の可否などを確認して行く。


結果、必要不可欠であれば、大量購入。

お試しのサンプル的にならば、少数で購入。


また原料となる資材も大量に購入。


書店へも赴き、資料用として様々な本も買う。


記憶力抜群のふたりは、購入品を全て記憶しているが、

第三者の為にと、こまめに目録を作っておく。


そして購入品は、お約束の収納の腕輪へイン。


何度も言うが、収納の腕輪は、5万人が暮らす王都クラスの収容量なので、

どんなに大量購入してもキャパは全然余裕である。


そんな買い物を行いながら……

ヒルデガルドは、改めてワレバッドの街を視察というか、じっくり観察をする。


人間の街のサンプルとして、イエーラと対比。

もしも必要、有用な部分があれば、

今後のフェフ、特別地区、そして各町村の街造りへ取り入れようと考えたのだ。


リオネル主導による各種の施策……

魔境のオーク討伐と巨大防護壁生成で治安は著しく良くなって、

農業振興で生産力は上がり、公社設立で商業は活気づき、

都フェフ周辺の道路拡張石畳化で、交通事情も著しく改善された。


開国に備え、特別地区の建設を行いつつ、

ドラゴン討伐を行う事で隣国アクィラ王国王家とよしみを通じ、

教育、医療の各改革の布石も打った。


リオネルとヒルデガルドがワレバッドの中央広場へ足を踏み入れると、

吟遊詩人、楽団、手品師、踊り子、軽業師などなど、

様々な芸人達が見事なスキルを披露し、市民達を楽しませていた。


そんな光景を見ながら、ヒルデガルドが話しかけて来る。


『リオネル様』


『はい』


『リオネル様もそうでしょうが、魔法使いの私には分かります。芸人達の見事な技を見て、人々は皆、感動し、心の底から楽しんでいますわ』


『ですね!』


『イエーラにも芸人は居ますが、披露する技のレベルが全然違います。そしてこのワレバッドの街には、人々が楽しむ、いろいろな施設がありますね。学術的な物だけではなく、娯楽的なも含めて。国民は学び、働くとともに、癒し、憩いも必要かと思います』


『全くの同意です!』


『リオネル様、学び、働く事に関してはいろいろな試作を計画し、実施も致しました』


『ですね』


『加えて、人間族社会の癒し、憩いで、何か我がイエーラに取り入れられそうな物はありますか? 以前、私が見学して、感動し、学ぶ事が出来た博物館、美術館、図書館はフェフに造りたいと思いましたが』


『はい、ヒルデガルドさんが言う通り、その3つはいずれ造ろうと俺も思います。後は演劇や音楽会を見せる劇場が良いと思いますよ』


『演劇や音楽会を見せる劇場、ですか! な、成る程!』


『まあ、ハコはそれなりに造れるとは思います。肝心なのは中身の方ですね』


『確かにそうですね!』


と、いつもながらリオネルとヒルデガルドの会話は盛り上がっていたのである。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


……翌日も朝からリオネルとヒルデガルドのふたりはワレバッドの街を散策する。


昨日の話の続きで、博物館、美術館、図書館、劇場建設の話とはなったが、

計画から始まり、段階を踏み、進めなければ、完成はしない。

クオリティの高い物を作るのなら、尚更である。

さすがのリオネルでも、しれっと造るわけにはいかない。


まずは手ごろな値段で皆が手軽に楽しめるものをと、チェスを始め、

数多のボードゲームを購入、合わせてルールブックや攻略本も購入した。

加えて、子供向けの玩具、遊具、書籍も。


『リオネル様。以前、オーク討伐の際、作戦説明をチェスの駒で行いましたわね』


『ええ、確かに。そのままではなく、作戦説明用に少し改造した駒ですけどね』


『うふふ、チェスはおじいさまあたりが、はまりそうですわ。ほんの少しだけ、やった事があるとおっしゃっていました』


『ですか。チェスは奥深く良いゲームです。俺はそんなに強くありませんが、魔法学校時代に良くやりましたし、研究もしました。ちなみに今回購入した中にある東方のボードゲームは奪った敵の駒を味方として使えるそうです』


『敵の駒を味方として使うのですか? それは面白そうですね! 購入した各ゲームはルールブックや攻略本も合わせて購入しました。まず官邸の事務官、武官、使用人達へ教えて、私の周囲で流行れば、イエーラにおいての国内生産もありですわね』


『です! 古来からあるゲームならば、イエーラで製作し販売しても問題は無いので、公社で販売という形へ上手く持って行きましょう。良質の物が出来れば、逆に輸出もありです』


そんな会話を交わしながら、ワレバッドを歩くふたり。


敢えて触れていないが、ヒルデガルド目当てのナンパは皆無。


リオネルが全てのナンパ男を威圧スキルであっさりと追い払ってしまうので、

安全に散策を行っている。


『ええっと……リオネル様、あのお店は?』


パン屋の隣にある、ヒルデガルドが指さした店を見て、リオネルが答える。


『はい、あれは風呂屋、ですね』


『お風呂屋さん? ですか?』


『はい、多分ですが、あのパン屋が副業で経営していると思われます』


『パン屋さんが副業で』


『はい、自分の店の窯設備を二次利用しているのでしょう』


『な、成る程!』


『風呂屋は巨大な湯舟、もしくは蒸し風呂、または両方を備え、料金と引き換えに、男女別の仕様で、入浴を楽しんで貰う店です』


『へえ、自宅にお風呂が無い人々が使う店なのですか?』


『いえ、風呂が無い人々は利用しますが、自宅に風呂があっても、利用する人は大勢居ます』


『そうなのですか?』


『はい、風呂屋の風呂は、基本的には自宅の風呂より遥かに大きいですから、ゆったりのんびりと入浴出来て、身体を清潔にするだけではなく、気分転換にもなります。

また店にもよりますが、天然の温泉をひいていたり、食事、マッサージなど入浴以外のサービスも楽しめますからね』


『わお! それは楽しそうですわね!』


『はい、ああいう風呂屋は概して市民の良質な社交場になっていますが、中には違法行為を許容する、いかがわしい店もあるそうです』


『ですか! では! いかがわしい店は絶対に厳禁で、良質なお風呂屋さんを公社がイエーラ各地に造るのもありですわね!』


『ですね! まだ朝早いですから、風呂屋は開店前だと思いますが、店主へ、いくばくかお金を渡し、見学が可能か聞いてみましょう』


『はい! ぜひ!』


という事でリオネルとヒルデガルドはパン屋へ行き、聞いてみると、

やはりこのパン屋が風呂屋も経営しているとの事。


改めてふたりが名乗り、理由を話し、備蓄用も兼ねたパンを数多購入した上で、

プラス若干の見学料を提示すると、笑顔の店主は「開店前の時間ならば」と快諾。


リオネルとヒルデガルドは質疑応答をしつつ、風呂屋の仕様を表裏から、

じっくりと見せて貰った。


結果、記憶力の良いリオネルは風呂屋の知識の全てを得た。

加えて上手く魔法を使えば、

燃料等の問題もクリア出来るとのアイディアも思いつく。


そして念の為、風呂屋の外観、内観ともの仕様、及び必要な用品も合わせ、

全てを丁寧に書き留めておく。


とまあ、そんなこんなで、散策を終え……

夕方ホテルに戻り、くつろいでいれば、エステルから連絡が入り、

「オファーの件、おふたりとじっくりお話したいです!」と、

3人で、改めて話す事となった。


まあ、話が話なので、ホテルの部屋で内々に話す事にした3人。


ルームサービスを取り、再び夕食会形式である。


そして食事を摂りながら、リオネルとヒルデガルドから、

更に詳しく、仕事内容と雇用条件を聞いたエステルは、転職を決意、

「ぜひ! お世話になりたいです!」と、快くイエーラ行きをOKしたのである。

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