第727話「やっぱり、リオネル様は凄い!!! 凄すぎる!!!」
上位女神ミネルヴァを連れ、特別地区の官邸へ戻ったリオネルは、
感謝の印と懇親を深める為、ブレンダ、ヒルデガルドとイェレミアスは勿論、
ボトヴィッドにも参加して貰い、夕食会を行った。
唯一、ミネルヴァの正体を知らなかったボトヴィッドだが、
会食前にイェレミアスから、耳打ちして貰い、まさかと驚き、
しばしの間、緊張気味であった。
さてさて!
改めて再度の自己紹介が終わり、夕食会が始まった。
この夕食会は、先日の食事会同様、
特別地区ホテルのレストランからのケータリングである。
ちなみに会話は、席についている者達のみに聞こえる限定念話で行われた。
ミネルヴァは先日の商業指南の際、リオネル、ヒルデガルド、イェレミアスとは、
コミュニケーションを取っており、普通に話せる間柄。
ブレンダも、いろいろやりとりをしたせいなのか、
気さくなミネルヴァに臆する様子がない。
『これまでにヒルデガルドと共に何回か、試食をしたけれど、あのホテルのレストランは結構なレベルね。アールヴ料理、人間の料理ともども美味しいわ』
と笑顔のミネルヴァが言えば、同じくヒルデガルドも笑顔で頷き、
『ミネルヴァ様のおっしゃる通りですわ。そして、この特別地区官邸の厨房も既に稼働はしておりますが、私が見るに、まだまだお客様へお出しするレベルへは達していません』
きっぱりと言い、更に言う。
『なので今回の夕食会は、ホテルのレストランからケータリング致しました。ただ武官、事務官、公社職員への食事はこの官邸専用の食堂で、問題なく充分に提供出来ています』
という事で、上位女神にお墨付きを頂いた料理が振る舞われ、会話も弾み、
ボトヴィッドもやっと緊張が解けたが、いつものような毒舌は皆無。
終始、丁寧な物言いと謙虚な態度であった。
そんな中、ミネルヴァが聞いて来る。
『リオネル、次は何に取り掛かるの? 何だったら、協力してあげるわよ』
『え? ホテル運営お手伝いの件をお願いしているのに、ですか?』
『うん! 最初はティエラの紹介で興味本位に首を突っ込んでみたけれど、これまでのやりとりで、私はリオネルとアールヴ族を気に入ったし、キャパ的に、ブレンダの方との同時進行でも問題無いから』
『ありがとうございます。では遠慮なくご相談しますね。実は以前から、ヒルデガルドさん、イェレミアスさんと相談していたのですが、この国の教育と医療の改革を行おうと考えていまして』
リオネルは、すかさず笑顔でそう答えたのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
そんなリオネルの答えを聞き、ミネルヴァは更に興味津々で聞いて来る。
『へえ! 教育と医療の改革かあ! 具体的にはどうするの?』
『はい、まず教育ですが、現在イエーラ各地には、基礎教育を行う小規模な私設学校が数多あります』
『ふうん。基礎教育を行う小規模な私設学校ねえ』
『はい、この私設学校……基礎学校と呼びますが、生徒数、学習年数、指導内容等々がばらばらで千差万別なんです。個人レベルでやっている小さい私塾が大部分を占めます』
『そっか。で、どうするの?』
『はい、まず基礎学校各校へ補助金を出した上、無償で教科書を配布し、学習年数、指導内容等々を画一化します』
『成る程。学習年数、指導内容等々の画一化かあ。それで?』
『はい、基本的に生徒は、6歳から9年間の15歳までは基礎学校で学んで貰い、卒業後は本人、家族の希望により、そのまま就職もありですが、16歳以上でより学びたい者は、大学校、職業能力開発学校へ進学して貰います』
『そっか! もっと学びたい、勉強したい者は上級の学校があれば、モチベーションがアップするよね!』
『はい! まだ大まかな構想ですが、大学校、職業能力開発学校を、とりあえず都のフェフにひとつづつ作ろうと考えています。そして頃合いを見て、基礎学校各校へ補助金を出して、校舎を始め、設備を充実させ、整備します。その上で大学校、職業能力開発学校もフェフ以外に、それぞれ数校は作りたいですね』
『うんうん! 良いんじゃない、教育制度の充実は!』
『それと気になる受講費用の方は、基礎学校は半額負担。いずれは無償化にしたいと考えています。大学校、職業能力開発学校へも補助金を出し、出来る限り金額を抑えます。支払いに関しては保護者、保護者に準ずる者、もしくは本人が入学前に一括、もしくは在学中に分割で行いますが、成績優秀者対象の特待生制度、奨学金制度も考えています』
『成る程! そうなると、だいぶ金額的な負担が少なくなるわね』
『はい! また16歳以上の学生へは、生活費支援策として、公社直営店舗を始め、アルバイト先を斡旋します。職業能力開発学校に関しては、親方に弟子入りする見習い的なアルバイトも紹介しますよ』
『完璧じゃない! 素晴らしいわね! でもさ! 新たな体制の基礎教育を受けず、大学校、職業能力開発学校へいきなり入りたいと言う、頭脳明晰かつ器用な入学希望者も居るでしょう? そこらへんの対応は?』
『はい、どちらにしても大学校は入学する為の高難度筆記試験を行いますから、年齢にかかわらず合格したら入学可能となります。逆にこの試験に合格しないと入学は出来ません。職業能力開発学校も筆記と実技の入学試験を行います。こちらも大学校と同様ですね』
『うふふ、良いんじゃないかしら。で、医療の改革は?』
『はい、こちらも現在、イエーラ各地には、軽度なものから、重度のものまで治療を行う小規模な私設診療所が数多あります。ただ勤務する治癒士により、治療に差が出ますし、難病を患った者は、近くに上級治癒士が居なければ、遠方へ行かねばならない状況です』
『成る程。で、どう対処するの?』
『はい! バランスを取るべく、治癒士の回復魔法を上限ありきで増幅させます。
ティーの癒しの加護を受けた特製魔法杖をイエーラの治癒士全員へ、有償でレンタルするんです。これで新人が行使する回復魔法も上級並みに強力となります。つまり上級治癒士にはあまり効果が無い魔法杖ですね』
『そっか! となれば治癒士の能力が均一化され、腕の差があまり無くなる。そして、とんでもない難病以外は、ほぼ治せる。精霊ティエラの加護を受けた特別な魔法杖を国の指示で使うのならば、新人、初級者が使っても不満が出にくいでしょうね』
『です! 加えて、中、上級治癒士で、魔法杖使用者へは、特別手当を別途、国から支払います』
『あら! では新人、初級治癒士と、中、上級治癒士には、魔法杖を使って同じ治療を行っても、給金面で結構な差が付くのね』
『はい、そうです。中級もそうですが、特に上級治癒士は、効能効果的には魔法杖を使うメリットがありません。ですが、魔法杖を使い、魔力が増幅されると、自身の消費量が相当抑えられる仕様ですから、治癒士全員へ、お勧めなのです』
『成る程』
『ちなみにレンタルするこの魔法杖は、盗難や不正使用を防ぐ為、その診療所の治癒士以外には使用が不可になるような仕様にしますよ』
『うふふ、何故、新人、初級者が自分達と同じレベルの回復魔法を使えるようにするのか! という中、上級治癒士の不満を特別手当で解消しつつ、魔力消費量の節約というメリットも与え、更にはズルもさせないようにするのね』
『ですね!』
『結果、イエーラのどこの診療所でも上級レベルの治療が受けられると』
『はい! その通りです! 日々の治療と研鑽で新人、初級治癒士がランクアップすれば、その都度、その当該治癒士へ国から特別手当を支払いますし、中、上級治癒士へも勤務年数と実績により特別手当が加算され、給金が上がりますから、治癒士全体のモチベーションも上がるでしょう』
『うんうん、良いね! 素敵!』
『そしてフェフには最高の治療が可能な大病院を新設します。学校も併設し、治癒士を目指す新人の教育、育成は勿論ですが、中、上級治癒士へのランクアップを希望する者へは、スキルアップの訓練も行います。また育成した治癒士へは希望を聞いた上で地方への派遣も行います』
『良いじゃない! 良いじゃない! 上手く出来ているわよ! その提案乗った! 医療改革をティエラがサポートするのならば、教育改革はこの私、ミネルヴァがしっかりバックアップしてあげるわ!』
『ありがとうございます! ミネルヴァ様! 何卒宜しくお願い致します!』
リオネルとミネルヴァの会話をその場の全員が聞き入っていた。
長年続いた鎖国をやめ、開国をし、アクィラ王国と輸出入をする。
それだけでも、とんでもなく大変な事。
やらなければならない事は多岐にわたる。
だが!
それだけではない。
治安回復、農地開拓、農業と商業の振興推進、道路工事に続き、
教育、医療においても、イエーラへ大改革が為されようとしていた。
そしてその殆どが、政治顧問たるリオネルのアイディア、提案。
それらが、ヒルデガルドとイェレミアスに承認され、
リオネルが具体化し、リオネルにより実施された。
更にこれから実施するのも当のリオネル自身。
この教育、医療の改革提案も当然リオネルから出たものだ。
やっぱり、リオネル様は凄い!!!
凄すぎる!!!
ヒルデガルドは、頼もしそうにリオネルを見つめ、
大きく頷いたのである。
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