第724話「重いというのはネガティブな言葉でもあるが、 責任感という言葉に置き換えれば、気力がみなぎって来る」
「夕方に、改めて迎えに来る」と告げ、
リオネルは特別地区の官邸へ戻った。
ブレンダ、ボトヴィッドの引っ越しのアテンドは終了したが、
特別地区官邸への引っ越し作業がこれからである。
リオネル自身の、そしてヒルデガルド、イェレミアスの執務室セッティングも、
しなければならない。
リオネルはそれぞれの執務室、3人共用の特別応接室、特別会議室、同開発室、
同展示室、同資料室へ赴き、
家具、書架、調度品などなどの引っ越し荷物を収納の腕輪から『搬出』した。
それらは全てワレバッド、フォルミーカなどで購入し、
仕舞っておいたものである。
それらをリオネルは自分好みにセッティングし、
ヒルデガルドとイェレミアスは、武官、事務官にセッティングを手伝って貰う。
とりあえず、主な家具のセッティングは終了。
まだ細かい作業は 残っているが、それはまた後。
そんなこんなで、あっという間に夕方となる。
リオネルとヒルデガルドはブレンダを、
イェレミアスはボトヴィッドとアートスを迎えに行き、
全員が官邸で合流し、夕食をともにする事に。
食事を摂りながら、しばし雑談を交わした後、
明日以降のスケジュールの話となる。
ちなみに会話はず~っと念話で行われていた。
念話を行使可能なのは、リオネル、ヒルデガルド、イェレミアスの3人だが、
行使可能な術者から会話を開始さえすれば、誰とも話をする事が出来るから、
全く支障が無い。
『皆さん、俺の明日のスケジュールですが、ヒルデガルドさんとともに、朝一番でフェフへ赴き、公社直営店舗内、倉庫へ販売用商品の納品に行きます。
留守中に品切れの商品が数多出ていると報告を聞いたので在庫補充の為です。
その後に、早番の公社職員達と簡単な打合せもし、報告を受け、新商品販売等の提案も行います。
その次は、この特別地区の官邸へ一旦戻って朝食。朝食後、この特別地区の公社直営店へ行き、商品の搬入と打合せ。搬入後は、ブレンダさんの職場となるホテルへ行きます。ホテル勤務の公社職員達へブレンダさんを紹介し、購入した備品を各所へ納品し、営業開始に向けてのセッティングを行います。
その後に、ブレンダさん製作のマニュアルに基づき、公社職員達へホテルの就業講習会を行います。その後とりあえず2週間の実地研修を行い、仮オープンし、模擬営業を行いますが、模擬営業の内容、結果を鑑みて、問題点を明らかにし、改善して行きます。
話を明日のスケジュールに戻しますと、就業講習会の後は、特別地区官邸の会議室でヒルデガルドさん、イェレミアスさんと打合せです。打合せの内容はここで述べると長くなるので割愛しますが、スムーズに行えるように準備をしておきます』
ここで『はい!』とヒルデガルドが挙手。
『私は政務をおじいさまに引き継ぎ、リオネル様に同行致しますわ! この後、引き継ぎの打合せを致しましょう、おじいさま』
対して、イェレミアスは笑顔で頷く。
『ああ、分かった。私の方は問題ない。何か相談事があれば、リオネル様にご相談しますよ』
ふたりの言葉を受け、リオネルも頷く。
『了解です。もし差し支えなければ、現状の確認という事で、俺も引き継ぎの打合せに参加しますよ』
『うふふ、大歓迎ですわ』
『ありがとうございます。ボトヴィッドさんは、引き続き、新居の片づけと新『クピディタース』の開店準備ですね』
『ああ、開国するとしてもまだまだ先だよな? 新しい環境に慣れるべく、アートスと共に、のんびりやらせて貰うよ』
『了解です。但し開国前にプレオープンし、アールヴ族の公社職員相手に接客のトレーニングはして頂きます』
『おう! それはこっちからお願いしたいぞ』
ここで『はい!』とブレンダが挙手。
『あの……私もリオネルさんとヒルデガルドさんに同行し、フェフへ行きたいのですが、いかがでしょうか?』
ここで『はい!』とヒルデガルドが挙手。
『私は構いません。ついでにフェフの官邸へ立ち寄り、朝早いですが、武官と事務官へブレンダさんの紹介もしてしまいましょう。前もって配下達へは、ブレンダさんの事を周知してあるので問題は無いと思いますわ』
『了解です』
『それとブレンダさんには了解を貰っていますが、私は引き継ぎの打合せ後、今夜は美味しいハーブティーを携え、ブレンダさんの自宅に泊まろうと思います。いろいろと話したい事がた~くさんありますから』
『はい! お客様用のベッドもありますから、OKです! 私もフォルミーカから持って来た美味しい焼き菓子でヒルデガルドさんをおもてなししますよ』
『フォルミーカから持って来た美味しい焼き菓子!! わあ!! 凄く楽しみですわ!!』
そんなふたりのやりとりを、リオネルは笑顔で見守っていたのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
夕食が終わり……
ブレンダはそのまま官邸で待機する事に。
お泊りするヒルデガルドとともに帰宅するのだ。
リオネルが送ってくれる事となったので、心強く嬉しい。
ブレンダは待機する時間も無駄にせず、
自身が製作したマニュアルのチェックも行う。
山猫亭の業務を基にして制作したもので、ホテル運営に通用するのか不安もあるが、
頑張ろうと決意を新たにする。
ボトヴィッド、アートスは、今夜、この特別区の官邸に宿泊する事に。
イェレミアスが、イエーラについてのレクチャーをするらしい。
そのイェレミアスはヒルデガルドと引継ぎの打合せを行う。
リオネルも参加し、現状の確認とアドバイスと提案を行った。
一緒に明日の打合せについての相談も行う。
これですぐ本題へ入る事が可能となる。
そして約1時間後、打合せは終了。
身支度をし、リオネル、革鎧姿となったヒルデガルドはブレンダと合流。
ブレンダの『自宅』へ向かうべく官邸を出た。
ヒルデガルドとブレンダは、リオネルと手をつないで歩く。
リオネルの右手をヒルデガルドが、左手をブレンダが、
しっかり握って歩いているのだ。
ヒルデガルドが念話で話しかけて来る。
『リオネル様! 本当は3人一緒にお泊りしたいです!』
すぐにブレンダも応える。
『本当ですねっ! あ~! 早く結婚したいなあ!』
『ブレンダさんに激しく同意ですわっ!』
そんなふたりにリオネルは柔らかく微笑み、結婚生活を想像する。
自分の両親と比べて……だ。
美しく優しかった亡き母は、滅私奉公という言葉がぴったり、
傍若無人な父に召使いのように仕えていた。
そして徐々にやつれて行った……
果たして、ふたりの間に愛情はあったのか?
結婚した当初はどうなのか、分からないが、
リオネルが物心ついた時に、見て聞いた様子からすると、
甚だ疑問である。
そして、あんな父みたいな横暴な夫には、絶対になりたくない!
と、子供心にず~っと思っていた。
……それから成長し、大人への階段を上りつつ、
厳しくリアルな現実を知った時に、
自分が結婚出来るなどと、全く考えてはいなかった。
劣等生で臆病な陰キャ、運動苦手、イケメンにはほど遠い……
長所ナッシングの自分みたいなダメ男を好きになる女子は、
この世界には皆無だと確信していたからだ。
しかし!
人生は何が起こるのか分からないとは良く言ったもの。
ボッチで女子に無縁だった自分が、何と何と! 4人もの美しい妻をめとる!
加えて、4人の誰もが優しく誠実で、自分を心から愛し、信頼してくれている!
それがたまらなく嬉しいと感じる。
ふと、親友ジェローム・アルナルディの事を思い出した。
……自分以上に薄幸な生い立ちだったジェロームは、
ひょんな事からリオネルと出会い意気投合。
共に冒険者生活を送った末、
可憐な貴族令嬢エリーゼ・カントルーブと巡り合い結婚。
カントルーブ男爵家の入り婿となり、現在は次期当主として、
幸せに暮らしているはずである。
その際にリオネルは自問自答した。
自分はジェロームの人生において『良き脇役』になれただろうかと?
結婚する4人の妻に対してもそうだろうか、とリオネルは考える。
しかし、すぐ考え直した。
妻と親友は全く違うと。
4人の妻にとって、自分は彼女達のパートナー。
これから助け合い共に人生を歩んで行く『最重要人物』であり、
決して『脇役』などではない。
そう!
俺は『夫』であり『家族』という、もっともっと近くて重い存在なのだと。
重いというのはネガティブな言葉でもあるが、
責任感という言葉に置き換えれば、気力がみなぎって来る。
俺は外道な父のようにはならない!
絶対に家族をいたわり、大事にする!
妻達、そして生まれて来るかもしれない子供達!
家族全員には、幸せを実感する人生を送らせたい!
そして、ありとあらゆる外敵から必ず守る!
更に更に! 頑張ろう!
リオネルは、決意を新たにしたのである。
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