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第723話「生まれて初めてのひとり暮らしが素敵な新築マンション!」

アクィラ王国とのとの国境、唯一の入国エリア特別地区へ入ったリオネル達一行。


あいさつに、簡単な紹介を行うと、

武官、事務官達に先導され、特別地区の官邸へ向かう。


特別地区の完成度は約90%強。

完成した建物は多いが、建設中の物も目立つ。

一応、立てた工事計画通りに進んではいるが、やる事は山積み、

開国はまだまだ先となる。


イエーラを初めて訪れるブレンダとボトヴィッドは、初めて見る建築様式や、

アールヴ族だらけの見慣れない光景が新鮮なのか、きょろきょろしていた。


……5分ほど歩き、官邸へ到着する。


ヒルデガルドから連絡があった通り、3階建ての官邸は完成していた。


リオネルが提案した仕様はフェフの官邸をふたまわりくらい大きくし、

ところどころに人間族のテイストを入れたデザイン。

ただフェフの官邸と決定的に違うのは行政機能と商業的な機能が混在するところだ。


1階には特別地区の住民登録等々、各種届出、手続きを、

イエーラの事務官が受ける大カウンター。

事務官が仕事を行う執務スペース、お客を迎える応接室に、

打合せを行う大中小の会議室もあり、行政的な機能を担う。


2階は、公社職員が仕事をするオフィスと1階と同じくお客を迎える応接室に、

打合せを行う大中小の会議室、

開発室、展示室、資料室もあり、商業的な機能を担う。


3階はヒルデガルド、イェレミアス、リオネルの寝泊り可能な執務室、

3人共用の特別応接室、特別会議室、同開発室、同展示室、同資料室等々。


そして敷地内には、巨大な倉庫が数棟建てられていた。


また官邸内外を担当の武官が常に巡回し、安全面をケアしている。


リオネルはとりあえず3人とブライム、アートスを3階の特別応接室へ入れ、

待機させ、転移魔法でフェフの庁舎へ跳んだ。


事前に連絡を入れ、フェフの官邸でスタンバイし、

リオネルの帰還を歓喜するヒルデガルドをピックアップ。

折り返して、また応接室へ戻って来た。

護衛役のケルベロス、オルトロスの魔獣兄弟に、

妖精ピクシーのジャンも勿論一緒だ。


アールヴ族、準礼装の法衣(ローヴ)を身にまとった才色兼備なヒルデガルドは、

落ち着いていて、透明感にあふれ、たおやか、優雅であり、

『麗人』と呼ぶのが相応しい。


久しぶりにひとりで政務を執り行う事により、

貫禄も身に着けたらしく、堂々ともしていた。


ボトヴィッドは悪態をつき合う『親友の孫娘』が、

『ちょっとくらいは綺麗なお姉ちゃん』だと予想しており……


ここまでの『絶世の美女』とは思っていなかったようで、

驚愕して、大きく目を見開き、口をぽかん。


全員の視線を受け、ヒルデガルドは微笑み、涼やかな声で呼びかける。


先ほどまでリオネルの帰還に大喜びし、子供のようにはしゃいでいたのが、

嘘みたいな変わりようだ。


ヒルデガルドは、今後の事も考え、念話を使う。


『皆様、長旅お疲れさまでございました。おじいさま、お帰りなさいませ。そして初めましてボトヴィッド様、ブレンダ様、ようこそ我がイエーラへいらっしゃいました。心の底から歓迎致しますわ。


そしてブライムは新たに加わる良き従士だと、リオネル様から聞き及んでおります。

フォルミーカに残った妹のルベルと共に、ここにも居る既存の従士達と仲良く、力を合わせ、お仕えしてください。


アートスも、ボトヴィッド様に良く仕えているそうですね』


ヒルデガルドは、ティエラの夢魔法により、既にブレンダに会っている。

そして同じリオネルの妻として、いろいろと話し、気心も知れ、

まるで姉妹のように仲良くなってもいる。


しかし現時点でヒルデガルドはリオネルのクライアント、

ブレンダはリオネルのビジネスパートナーという立ち位置。


内情を(おおやけ)にするのはまだまだ先。

ティエラと夢魔法など明かせない事実もある。


ここで事前の打合せ通り、リオネルの指示により、『お疲れ様』という事で、

ケルベロスとオルトロスの魔獣兄弟、ブライムが一旦、異界へと帰還。

ジャンもリオネルの収納の腕輪へ。


従士達が動いたのが、次の予定開始の合図である。


『ちょうどお昼となりました。改めて正式な歓迎会は行うという事で、まずは、この官邸の1階に武官、事務官、公社職員を全員呼んでありますから、おふたりをご紹介致します。その後は、特別会議室にランチの準備をしましたので、気楽な食事と致しましょう」


笑顔のヒルデガルドは、そう言い、全員を(いざな)ったのである。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


発した言葉通り、1階において、

集合したこの官邸のスタッフ全員へ、

ボトヴィッドとブレンダを紹介したヒルデガルド。


そして、紹介した後、ヒルデガルドに促され、

ボトヴィッドとブレンダは、あいさつを行う。


年の功なのか、ボトヴィッドは無難にこなしたが、

大勢のアールヴ族の前で、ブレンダは上がってしまい、言葉を嚙んでしまう。


すかさずリオネルがフォローし、何とかあいさつは終わった。


その後は、特別会議室へ……


全員を案内したヒルデガルドは柔らかく微笑む。


『料理は特別地区のホテルのレストランからケータリングしたのですよ』


何と何と! 特別会議室のテーブル上には、先日山猫亭で試食会を行った、

アールヴ料理、アクィラ王国料理、そしてリオネルの故国ソヴァール王国料理の、

全く同じメニューとプラスアルファが並んでいた。


『特別地区のホテルのレストランはフェフの官邸から副料理長を赴任させ、新たに料理長となって貰いました。レストランの厨房には調理機器と食器、ホールへはテーブルと椅子、倉庫には食材を既に運び入れております』


笑顔で告げるヒルデガルドは更に言う。


『リオネル様がイエーラへいらしてから頂いているレシピ、そしてご多忙の中、数多のレシピをフォルミーカから新たに送って頂き、フェフの官邸の料理長達と相談し、日々、人間族の料理の研鑽を重ねておりました。


食は、音楽などと共に、様々な種族の心の絆を結ぶ有効な手段のひとつ、というリオネル様のお考えには料理長以下が、大いに共感しましたので、皆が前向きに取り組み、レパートリーは多岐にわたるようになりました。


最近はまだまだ未熟ながら、私自身も何種類か作れるようになりましたわ』


種明かしをするヒルデガルドの言葉を聞き、全員が頷く。


楽しく話しながら美味しい食事を摂り、「美味しいね」と共感する事で、

いろいろと話すよりも早く、コミュニケーションが取れる。


リオネルが作った料理を食べた事のある全員が実感していたのだ。


本当に初対面なのはヒルデガルドとボトヴィッドのみ。

後は何度も会い、山猫亭でともに暮らした気心が知れた同士である。


料理の味の共感も手伝い、皆が楽しそうにしゃべっていた。


こうなると話題はいくらでもあった。


「おい、イェレミアスよ」


「何だ? ボトヴィッド」


「心の底から驚いたぜ。お前の孫娘、とんでもなく別嬪(べっぴん)だな!」


「ふん! だから、そう言っただろう」


「いや、まあ確かに聞いたが、所詮は、孫可愛さのじじのひいきめだと思ったんだよ」


「なんじゃ、そりゃ。まあ、リオネル様と出会ってから、元々美しかったヒルデガルドは、より一層美しくなったとは思うがな」


「ふん! やはり親馬鹿ならぬ、ジジバカではないか!」


「ははは、ジジバカか。まあ、少しくらいは認めよう」


「しかし、あの凄い美女がリオネルの正妻じゃないって……やはり、とんでもないのか、正妻は?」


「うむ、それは私の口からは何とも言えん。一切ノーコメントだ」


「むうう……」


「まあ、いずれ分かるし、お前にはある程度話す。心して待つが良い」


「わ、分かったよ……」


というボトヴィッドとイェレミアスの肉声による会話とか、


『ブレンダさん』


『は、はい! 何でしょうか? ヒルデガルド様!』


『私もいろいろ商いをしてみたいと思っていて、ご相談に乗って貰えるかしら?』


『商い、ですか?』


『ええ、リオネル様のご尽力で、既に食料を中心に扱う公社のお店はオープンし、国民が大喜びして、売り上げも絶好調なのですけど、私は更に新しいお店を出したいのです』


『更に新しいお店を? ですか?』


『ええ、私、リオネル様と一緒にソヴァール王国のワレバッドへ赴いた際、いろいろなお店に行きましたの。レストランは勿論、化粧品とか、洋服とか、アクセサリーとか、家具とか、たくさん連れて行って頂いたのですわ』


『ええ、夢の中でお会いした時、そうおっしゃっていましたよね』


『はい! それで、その際、たくさん商品も買って今も愛用していますけど、イエーラにもそんなお店があったら、国民が凄く喜ぶと思っているのですよ』


『成る程』


『当然リオネル様にご相談していますけれど、ブレンダさんにも、いろいろとアドバイスして欲しいのですわ』


『分かりました! 私は宿屋の娘で美容もファッションもそこそこの興味ですし、所詮素人ですけど、その前提で何かお役に立てれば』


『わあ! ありがとうございます!』


というヒルデガルドとブレンダの念話の会話とか、


そんなこんなで、食事は大いに盛り上がり、終わったが……


まだまだやる事がたくさん残っていた。


まずは3人の引っ越しである。


リオネルはふたりに家賃無料の『社宅』も用意していた。

公社所有の職員用住宅である。


ブレンダの社宅は、女子武官が管理人を務める女子専用マンションの一室。

3LDKのタイプなのでひとり暮らしには充分すぎるくらいだ。


加えて3階建ての角部屋なので眺めも良い。


イェレミアスとボトヴィッドを官邸に残し、

リオネルはヒルデガルド、女子武官とともに、ブレンダを案内する。


アールヴ族様式の新居を見たブレンダはひと目で気に入った。


生まれて初めてのひとり暮らしが素敵な新築マンション!


ブレンダは心の底から嬉しそうに満面の笑みを浮かべる。


ここでリオネルは収納の腕輪から、

仕舞っておいたブレンダの引っ越し荷物一式を出してあげた。

更にフォルミーカでリオネルが同行し、彼女が新たに購入した家具も出して、

セッティングもしてあげる。


すると女子武官が気を利かせ、手伝いを申し出たので、

ブレンダの了解を貰った上で任せる事に。


少し寂しそうな表情になったブレンダだが、リオネルは超多忙。


了解してくれたので、ブレンダの職場への案内は明日以降となると告げておく。

夕方に改めて迎えに来るとも。


……という事で、官邸に戻ったリオネルは、

今度はイェレミアスとともに、ボトヴィッドとアートスを案内する事に。


行った先は、立地が良さそうな商店街の一角、住宅兼用店舗の一軒。

アールヴ族様式の平屋だが、

結構な広さで、店の奥が3LDKの住宅、倉庫となっている。

こちらも公社所有の建築物だ。


そう!

ここがボトヴィッドの新居であり、魔道具店、新『クピディタース』ともなるのだ。


新居を見て、ボトヴィッドも、ブレンダ同様に気に入ったようである。


リオネルがの引っ越し荷物一式を住居へ、

更にブレンダ同様、フォルミーカで新たに購入した家具も出して、

確認の上で、セッティングもしてあげた。


こちらの家具はお任せだとボトヴィッドから言われたので、

リオネルの判断で購入した渋い家具である。


そして旧クピディタースから運んで来た『販売用の商品』も倉庫へ入れておく。


ここではイェレミアスが手伝いの為、残ると申し出た。

自動人形型(オートマタタイプ)ゴーレムのアートスも一緒なので、

力仕事も問題無く、手伝い要員は充分であろう。


「夕方に、改めて迎えに来ます」と告げ、

リオネルは特別地区の官邸へ戻ったのである。

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