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第717話「もしもこの街で一般市民が職探しをしたら、 このような労働でここまでの待遇の仕事は中々ない」

リオネルがウンディーネのマイムから、

ケルピー100体を受け取ったこの日のお昼過ぎ……

約束通りダニエラの妹でブレンダの叔母イルヴァ、

その娘である従妹モニカが山猫亭を訪れた。


本日から半年以上の長期で山猫亭を手伝ってくれる話となっている。


「こんにちは。姉さん、来たわよ!」


「お、伯母さん!! 邪悪な竜どもを倒した英雄様はどこ!? ドラゴンスレイヤー様はどこ!?」


「いらっしゃい、良く来たわね、イルヴァ。こらモニカ、ごあいさつもせず、行儀が悪いわよ」


姉によく似た風貌のイルヴァはダニエラとふたつ違い、

その娘モニカはブレンダより年下の20歳少し前だとの事。


「お疲れ様です」と言いつつ、ブレンダがリオネル達を順番に紹介すると、

ふたりは真っすぐに、リオネルだけを見つめ、


「ああ!! 貴方様が英雄、ドラゴンスレイヤーのリオネル・ロートレック様!? は、初めまして!! ダニエラ・ビルトの妹でイルヴァ・カディオと申します!」


「わあっ! は、初めまして! リオネル様! イルヴァの娘でモニカ・カディオですっ! ほ、ほらっ! 父さんも!」


興奮した表情で声を張り上げた。


そんなふたりの後に控えていたのは、小柄だが、ガチムチ体格をした、

イルヴァの夫であり、モニカの父ハンス・カディオである。


「は、初めまして! リオネル・ロートレック様! 私は本業がありまして……仕事の合間で、タイミングがあった時。更には雑用くらいでしか山猫亭のお手伝いは出来ませんが、今回はふたりの付き添いで参りました。イルヴァの夫でモニカの父、靴職人のハンス・カディオでございますっ!」


妻や娘と同様に、ハンスもリオネルだけを見つめていた。

付き添いという名目で、打ち合わせに同席し、

ふたりがやる仕事の確認はあるのだろうが、

『英雄たるリオネル見たさ』という事が本音なのだろう。

 

ここでダニエラの教育的指導。


「もう! 3人とも! ここに居るのはリオネルさんだけではないでしょ! 他の皆様にもちゃんと、ごあいさつをして!」


という事で、ハンス以下3人は改めて謝罪し、

イェレミアスとボトヴィッド、

そして人間族に擬態したブライムとルベルへもあいさつをした。

自動人形型ゴーレムのアートスにはびっくりしたが、

アートスから先にあいさつをされ、戸惑いながらも返している。


そんなこんなで、リオネル達も自己紹介し、改めて双方のあいさつが終わった。


これから本題へと入るわけだが、

このような時、冒険者として培ったリオネルの人生の心得。


話し合いが上手く行く為の方法。


それは……相手が話しやすい状況へ持って行く事。

加えて相手のモチベーションアップをはかる事だ。


そこでリオネルは意外にも、ハンスへ話しかける。

将を射んとする者はまず馬を射よ、である。


「ハンスさん」


「は、はい、何でしょうか、リオネル様」


「打合せに入る前に、貴方へお願いがあります」


「わ、私に!? な、何でしょうか?」


「ダニエラさん、ブレンダさんが履いている貴方の作った靴を見て決めていました」


「え!!?? わ、私の作った靴を!!??」


「はい! いきなりのお願いで申し訳ありませんが、この場の全員11名の靴を2足ずつ計22足、オーダーメイドで作って頂けませんか。代金は俺が持ち、予算は合計で金貨150枚(150万円)ぴったりでお願いします」


「えええ!!!??? 靴を一度に22足!!!??? そ、そ、それも金貨150枚でええ!!!??? 1足に金貨6枚以上もかけて!!!???」


ハンスが驚くのも無理はない。

庶民向けに靴を作る彼にとって、販売額は1足につき、

金貨1枚(1万円)どころか、普及品のMAX銀貨5枚(5千円)程度。

ちなみに銀貨2枚ほどで、請け負う廉価版普及品の靴が最も多く、

請け負うオーダーメイドの靴でも金貨2枚なら結構な高級品だったからだ。


それが一気に!

1足につき金貨6枚以上22足という超高額発注。


しかし、それだけではない。

驚いたイルヴァとモニカも声を張り上げる。


「えええ!!!??? わ、私達3人の分も!!!???」


「オーダーして頂けるんですかあああ!!!???」


そう!

リオネルがオーダーしたのは『この場の全員』だったから。


「はい、とりあえず都合22足を。確約は出来ませんが、更に願いするかもしれません」


「あ、ありがとうございます!! お話の後でお時間を頂き、皆様の足のサイズを測らせて頂きます!! 材料も予算が許す範囲内で最高級の物を用意し、誠心誠意!! 心を込めて作らせて頂きます!!」


「あ、あなた!! す、凄いわ!! に、22足もなんて!! よ、良かったわねええ!!」


「お父さん!! 頑張って!!」


効果はてきめん。

元々、3人はドラゴンを討伐したリオネルの大ファンだとダニエラから聞いていた。

更にこの超高額発注で、一家は潤い、気分良く打合せ出来るのは間違いない。


「では、話の本題へ入りましょうか」


リオネルは柔らかく微笑み、場の全員へ打合せの開始を告げたのである。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


事前にダニエラとブレンダから、カディオ一家へ話は通っていた。


イエーラの政治顧問たるリオネルのオファーにより、ブレンダが旅立ち、

向こうで働く事を。


だがリオネルの提案により、新たな説明と交渉が必要となった。


「イルヴァさん、モニカさんへ、ダニエラさんから、ブレンダさんのイエーラ行きに伴うお手伝い要請の話が来ているとは思いますが、このたび俺が山猫亭へ出資する事となり、状況が大きく変わりました。まずひと通りお話ししますので、どうかお聞きください。質問は後程、受け付けます」


リオネルはこう言うと、説明を始めた。


「若干、はしょってお話ししますが、山猫亭の隣にある元レストランの3階建て店舗を買い取りました。


まずそこを改装し、新たに設備を整え、系列店となるレストラン山猫亭をオープンします。


ちなみにレストラン山猫亭はここアクィラ王国の料理は勿論ですが、俺の故郷ソヴァール王国、そしてイェレミアスさんの故郷イエーラ、計3国の料理が食べられる多国籍料理店にする予定です」


ええええ!!??と驚愕するカディオ一家。


実のところ、山猫亭を改装、増築ぐらいはするかもしれないと思っていたが、

まさかの隣にレストラン山猫亭新規オープンにびっくり仰天。


「ふう」と息を吐き、リオネルは話を続ける。


「レストラン山猫亭をオープン後、メンテナンス、増築の為、宿屋山猫亭は、しばしの間休業し、工事終了後、リニューアルオープンします。


その工事の際、宿屋山猫亭とレストラン山猫亭を通路でつなぎ、レストラン山猫亭が宿屋山猫亭の食堂も兼ねる形となります。


そして倉庫となっている3階の屋根裏部屋をメンテナンスの上で客室に改装。ちなみに山猫亭の倉庫はレストラン山猫亭の倉庫を増築拡大し兼用します。


また今、俺達が居る食堂はロビーと売店、従業員が使う仮眠兼宿泊用の部屋、地下室も増設し、予備倉庫とする予定です。ここまでは宜しいでしょうか?」


驚きを抑えつつ、無言で頷くイルヴァとモニカ。


その様子を見て、リオネルは話を続ける。


「まずイルヴァさんとモニカさんには予定通り山猫亭の従業員として入って頂き、以前の経験を活かして働いて頂きます。


おふたりは山猫亭の勤務経験が既におありだからご存じでしょうが、勤務時間は朝4時から交代休憩ありの午後10時までで、多少の残業もあり結構ハードですから給金は考慮します。


仕事内容は受付、案内、客室対応、精算業務等々の接客、調理、配膳、清掃、買い出しその他ですが、ご理解されていますよね?」


更に無言で頷くふたり。


「そしてレストラン山猫亭がオープンした際は、宿屋山猫亭が休業中となりますのでそちらで働いて頂く事となります。


宿屋山猫亭の工事が終了したら、ご相談の上、

どちらで働きたいか希望を出してください。


またレストランを併設し、規模を大きくしますから人手不足になる事は確実です。


早めに募集をかけ、山猫亭営業中に、調理、接客担当とも、

人柄、能力ありきで新たな人財を確保するつもりです。

新規の方からも、もし希望があれば宿屋の方への配置転換も考えています」


そしてリオネルから待遇も提示された。


基本的には……

これまでブレンダが働いていた月額金貨30枚の同額給金にプラス諸手当。

目標以上の利益が出ればボーナスも出す事に。

更には昇給もありだし、新たな人が来れば適性ありきで役職もつけるという。


但し基本的に1年以上勤務する事。

退職の際は1ヶ月以上前に申し入れする事なども伝える。


ここフォルミーカの街において金貨20枚もあれば、

ひとりで小規模な一軒家を借り、1か月間は余裕の生活を送る事が可能だ。

月々の貯金も充分に可能であろう。


もしもこの街で一般市民が職探しをしたら、

このような労働でここまでの待遇の仕事は中々ない。

しかも目標数値をクリアすれば、昇給、ボーナスなど、

報酬にしっかりと反映されるのだ。


そして、以前手伝った時もそうしたらしいが……

ハンスが午後6時過ぎに仕事を終え、

午後8時過ぎに山猫亭へ夕飯を食べに来て、そのまま滞在。


夕飯の片づけ等をハンスも手伝い、午後10時に仕事が終わった後、

イルヴァ、モニカと3人で自宅に帰るとの事。


これでイルヴァ、モニカの夜半帰宅の際の心配はなくなった。


念の為、釘が刺される。


多額の出資を行う事もあり、

リオネルが『共同経営者』として「監督指導を行う」と告げたのだ。


良くある、身内たるゆえの甘え、馴れ合いを出させない為の処置であると。


しかし憧れの英雄リオネルからの依頼かつ、高額の給金&好待遇。

その場で前払いをしたハンスへの発注もあり、

いくつかの質疑応答も為されたが、カディオ一家は満面の笑みを浮かべ快諾。


「誠心誠意! 一生懸命に働きます!」と全員が気合充分。


用意の良いリオネルは、内容を記載したサイン済みの契約書を用意していたので、

イルヴァとモニカへ渡した。


ふたりは「内容を改めて見てから、サインしてすぐにお戻しします」との事。


こうして……打合せが順調に早く終わったので、

早速、調理実習と夕食の支度も兼ね、

リオネルは自らソヴァール王国とイエーラの料理をレクチャー。

久々に腕前を披露した。


幸いイルヴァもモニカも超が付く料理好き。


お客様へ出す前に全員で試食をし、文句なしの大好評。


未知であるソヴァール王国、イエーラの料理を見て食べて大興奮!


食べた事のなかった味だけど、凄く美味しい!

ぜひ自分でも作ってみたい!

これらの料理でお客様をもてなしたい!

もっと新しい料理を習得したい!などなど。


更にモチベーションは大幅アップ!


レストラン山猫亭オープンへの手ごたえもつかみ、

面白おかしく楽しみながら、午後3時過ぎで早い夕食兼の調理実習となった。


実習で作った食事を摂った後……

ダニエラとブレンダの指示の下、

イルヴァとモニカは改めてお客様用の夕食の支度へとかかり……


一方、リオネルは、イェレミアスとボトヴィッド、アートス、

ブライムとルベルを引き連れ、山猫亭から徒歩5分ほど離れたハンスの店兼自宅へ。


足型のなかった6名の測定をして貰い……

更にあれやこれやと革のサンプルを見せて貰い、靴の製作を依頼したのである。

いつもご愛読頂きありがとうございます。


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