第714話「お母さん、良かったわね。私もリオネルさんから聞いて本当に良いアイディアだと思ったの。リオネルさん、いろいろとありがとうございます!」
テイクアウトの弁当を大量に買い、帰途についた、リオネルとブレンダ。
手をつなぎ会話を交わしながら歩くふたり。
当然、リオネルの索敵は広範囲に張り巡らされ、ず~っと行使継続。
万が一、悪意を持つ者が居たら、即、避けるか排除する対処だ。
そして今後の事を考え、交わす会話は練習を兼ねた、心と心の会話、念話である。
『昨夜のティエラ様の夢魔法、今日の念話、俺の精霊召喚と経験したり、見て貰いましたが、これからイエーラで新生活を送るにあたり、ブレンダさんは今まで以上に様々な魔法に触れる事となります』
『そ、そうなんですか』
『はい、アールヴ族の国イエーラでは、人間族社会より魔法が行使される頻度が遥かに多いですから。俺達の家族、身内間では、更に高位の魔法が行使されます』
『えええ!? わ、私達の家族、身内間では、さ、更に高位の魔法が、こ、行使されるのですか?』
『はい、まだまだたくさん見たり、経験したりしますよ』
『そ、そうなのですか! ず~っと驚きの連続って感じでしたが……まだまだたくさん、ですか。本当に魔法中心の生活となるのですね』
『はい、そうなると思います。なので、まずはこの念話のように使用頻度の高い魔法に慣れる為、随時体験して貰いますね」
『し、使用頻度の高い魔法に慣れる為に、随時私が体験ですか!』
『ええ、今使っている念話にもいろいろと種類があって、家族、身内で主に使うのは指定した複数の者のみとやりとり出来る限定通話、今、俺とブレンダさんのみで話しているサシで話す個人通話、他に全方位への公開通話など、そして術者によっては結構な遠距離でも通話可能です』
『な、成る程! 念話と言っても色々ありますね! TPOで使い分けるって事ですか』
『です! ちなみに、よほどの術者でない限り、今の俺とブレンダさんの会話は傍受不可能、つまり盗み聞きは出来ません』
『す、凄いです!』
『はい、だから今、やりとりしている個人念話は内々の話とか、第三者に聞かれてまずい話をする時など特に重宝します』
『成る程。確かにそうですね』
『です! では、山猫亭へ帰るまで念話を使い、少しやりとりをしましょうか』
『は、はい!』
『良い機会なので、俺、ブレンダさんから内々でお聞きしたい事がいくつかありまして』
『リオネルさんが、私から!? 内々で!? は、はい、何でしょうか?』
『はい、まずお母様、ダニエラさんの件です』
『母の!?』
『ええ、娘を応援するとおっしゃり、ブレンダさんの旅立ちを見送り、親戚の方がお手伝いに来るとはいえ、ひとりで山猫亭を守るとおっしゃいましたよね』
『そうです! 母はリオネルさんと結婚する私の夢が叶った事を心から喜び、笑顔で祝福してくれました』
『ですか。実は最初から考えていたのですが、ブレンダさんとともにダニエラさんも特別地区のホテルの指導役兼実務役として雇用しようと言ったら、どうしますか?』
『そ、それは! 心強いです! 私にとっては願ってもない事です。ただ母には確認しないといけませんが』
『成る程。おふたりで話し合って折り合いが付き、その結果、ご希望があれば、こちらはダニエラさんの雇用はOKです。ただ問題となるのは、おふたりが不在となる間の山猫亭の経営でしょうね』
『確かに! それが心配です。何か良いアイディアはありますか?』
『ええ、少し考えている事が。確か、明日の午後、お手伝いするご親戚の方がいらっしゃるのですよね?』
『はい! 明日の午後過ぎに! 半年以上の長期で勤めて貰えるという条件で、以前手伝ってくれた叔母と従妹が来ます。ふたりとも、ドラゴン討伐をしたリオネルさんがウチで 宿泊していると聞いて、凄く喜び会いたがっていました』
『成る程。それは更に好都合です。では、戻ってから、ダニエラさんとご相談してみましょうか?』
『はい! お願いします!』
そんな感じで、ふたりは道中、念話を使って更にいくつかのやりとりをし、
無事、山猫亭へ戻ったのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
先に戻っていたイェレミアスとボトヴィッド、ゴーレムのアートス。
ちなみにボトヴィッドはアートスとともに、
イエーラへ旅立つまで山猫亭への滞在を決めていた。
そして仕事がひと段落ついたダニエラが揃い、
更に隠形のスキルを解き、姿を見せたイフリートのブライム、
更に召喚されたイフリータのルベルも加わり……
リオネルとブレンダが購入したテイクアウトの弁当で、ランチタイムとなった。
ダニエラはたくましいブライムとルベルがリオネルの忠実な従士であり、
『召喚した人外の精霊』だとも聞き、大いに驚き、緊張していたが……
やりとりをすると、礼儀正しく実直なふたりをすぐに気に入った。
ただ、ブライムとルベルの正体は厳秘であり、
明日来る予定の『親戚』にも伏せておく事となった。
ちなみに、ブライムとルベルは人間族の食事を摂る事は全然問題なし。
傍らで控えていたアートスもリオネルから新鮮な魔力を貰い、リフレッシュ。
そんな感じで、ランチを食べながら、皆で歓談。
会話を第三者に聞かれないようと『念話』でやりとりをする。
念話を経験して、愛娘ブレンダ同様、母のダニエラも大いに驚いたが、
内々の話をする上では、最適な魔法だとこれまたすぐに納得した。
『ダニエラさん』
とリオネルは、この場の全員のみが聴取可能な『限定念話』で話しかける。
『はい! リオネルさん』
『改めて、お話があります』
『改めて!? な、何でしょう?』
『はい、このたび俺達からのオファーを出した結果、これまで母ひとり、子ひとりの生活をずっと送って来られたのに、ブレンダさんは遠く離れたイエーラへ旅立ち、仕事をしつつ、俺と結婚し、その後もずっとそのまま暮らす事となりますよね』
『で、ですね! とても寂しくはなりますが、素直に娘の幸福を祝いたいと思います』
『成る程。それでご提案です。単刀直入に申し上げますと、ダニエラさんもブレンダさんとご一緒にイエーラで同じ仕事をしてみませんか? お支払いする給金を始め、労働条件等々はブレンダさんに準じます』
『えええ!? そ、それは!?』
『ブレンダさんもぜひ一緒に来て欲しい、心強いと言っています』
『で、ですが……』
『これもブレンダさんと話しましたが、ご懸念されているのは、おふたりが旅立った後の、山猫亭の経営に関してですよね?』
『は、はい! そ、そうです!』
『俺が言うのは何ですが、亡くなられたご夫君と一緒に立ち上げた宿ですから、愛着もおありでしょう』
『は、はい! それは勿論!』
『で、実は俺にいくつかのアイディアがありまして……ご提案したいのですが、聞いて貰えますか?』
『お、お聞きします』
『故郷に居た頃、俺はお世話になった宿屋の手伝いをし、仕事をひと通り、習い覚えました。ここ山猫亭でも、お手伝いをさせて貰いました。それらもあり宿屋の経営には元々興味がありました』
リオネルはそう言い、自分のアイディアを丁寧に詳しく説明した………
対してダニエラは目をまん丸にして驚く。
『え、えええ!!!???』
しかし、じっと考えた後、何度も頷きながら言う。
『リオネルさんのご提案を聞いて、とても驚きました…………でも、よく考えたら、成る程と納得します。ブレンダを先にイエーラへ行かせ、私はしばらくフォルミーカに留まるのですね』
『はい、申し訳ありませんが、ダニエラさんはしばしフォルミーカに留まって頂き、生まれ変わった新たな山猫亭をこれまで以上の繁盛宿にしてください。目途がついたら、必ずお迎えに上がります』
『分かりました。でも、リオネルさんに、そこまでして頂いて宜しいのでしょうか?』
『はい、構いません。俺がブレンダさんと結婚したら、貴女は義理の母となります。俺は亡き母の分も貴女へ親孝行したいですし、この山猫亭もより近しい存在となりますから』
『わ、私をリオネルさんの亡きお母様の分まで……ありがとうございます。でも、そんなにお金を出して頂くのは……』
『いえ、全然構いません。それにこのご提案は山猫亭を末永く経営する為には必要な事だと思います。但し、何度も言いますが、おふたりには思い出深いこの建物のメンテナンスと増改築をご了解して頂きます』
『ええ、経年劣化もあって、どうせこの宿をそろそろ手直ししようと思っていましたし、それは勿論OKです!』
『ですか。ただメンテナンス後かつ改築後のイメージもおありでしょうから、後で行き違いのないよう、事前に設計担当兼務の大工さんを交え、おふたりとご相談させてください』
『ええ! いろいろお気遣い頂き、ありがとうございます。何卒宜しくお願い致します』
『おふたりと身内になる上、この山猫亭にお世話になった個人的な思い入れもあります。ですが、これは身内の為にというだけではなく、俺が出資するビジネスでもあります。なので約束事を含めた内容をしっかりと双方合意の上で契約書にし、利益が出たらいくばくか回収させて頂きます』
『ええ、私は全く異存ありません。それが良いと思います』
晴れやかな表情のダニエラ。
それを見たブレンダも笑顔となる。
『お母さん、良かったわね。私もリオネルさんから聞いて本当に良いアイディアだと思ったの。リオネルさん、いろいろとありがとうございます!』
『いえいえ、で、早速、各所の手配をしましょう。明日、叔母さんと従妹さんがいらっしゃったら、俺も会ってお話ししますね』
という事で話はまとまった。
前振りなくリオネルの提案を聞いたが、OKしたダニエラは勿論、
イェレミアスとボトヴィッドも反対する理由もない。
早速、リオネルはブレンダを伴い、不動産屋へ赴き……
店員に案内をして貰い、念の為に下見をして確認後、
何と何と! 山猫亭の隣でしばらく空き家となっていた、
元レストラン店舗を「購入した」のである。
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