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第712話「は! かしこまりました!」

「はい! 私、結婚生活に全然不安はありません! 他のお嫁さん達とは上手くやれると思います! 今、緊張しているのは初めて挑戦するホテルの仕事のみですから!」


ブレンダは、ボトヴィッドを真っすぐ見つめ、きっぱりと言い放った。


迷いのないブレンダの物言いを聞き、ボトヴィッドは圧倒される。


「そ、そうか……そこまで言い切るとは……ブレンダさんよ、あんた本当にリオネルを信頼し、惚れ込んでいるんだな」


対して、ブレンダは即答。


「ええ!! それはもう!! 当然ですっ!! リオネルさんの事は全面的に信頼していますし、心の底から愛していますっ!!」


「かあ~、俺も惚れた女にそんな事を言われてみたかったぜ」


そんなやりとりをし、ボトヴィッドはリオネルへ向き直る。


「おい、リオネル、お前今、何歳だっけ?」


「はい、19歳になりました」


「かあ~、たった19歳か!」


「です」


「むうう、お前、知っているか? 英雄色を好むということわざをよ」


「はい、ことわざだけは」


「そうかい。英雄色を好むとは、文武の才に特別優れた人物や非凡な事業を成し遂げる人物は、何事にも精力的な為、好色でもある事が多いという意味だ。悪いが、はっきり言って誉め言葉じゃない」


「ですね」


「そのことわざ通り、古来から多くの妻をめとる男は確かに居た……だが、その年で4人の妻をめとるって、中々ねえぞ」


「ええ、そうかもしれませんね。俺自身も今のこの状況に驚いていますよ。でも(よこしま)な気持ちは皆無ですし、いろいろと話し合い、相談し、全員が納得の上で、家族になろうと出した結論です」


「そ、そうか! 一夫多妻はこのアクィラ王国やソヴァール王国では認められているから、法律的倫理的には何の問題もねえ。イェレミアス、イエーラはどうなんだ?」


いきなりの質問が飛んだが……事情を熟知しているイェレミアスは慌てない。


「うむ、イエーラでも一夫多妻は認められておる」


「そうか! なら完全に問題はねえ! この前会った時から、あまり時間が経ってねえのに、話し合い、相談する時間はあったのか? とか、ここまで急展開なのは何故だ? とか、様々な謎や疑問はさておき、じゃあ、お前の孫娘が正妻になるって事か?」


「いや、残念ながら、ヒルデガルドはリオネル様の正妻にはならんよ」


「はあ~!? 違うのかよ!? じゃ、じゃあ、正妻にはとんでもなく凄い女が居るのか!?」


ここで答えるのは当然、リオネルだ。


「ですね! いずれボトヴィッドさんにもご紹介します」


「うへえ、ご紹介って、そりゃ会うのは楽しみだがよ。とんでもなく凄いって事は、とんでもなく怖そうな女でもあるって事だろうな」


ティエラを思い浮かべながら、リオネルは言う。


「はい、いつもは凄く可愛くて凄く聡明で、そして凄く優しい女性ですけど、怒ると相当怖いと思います」


「むう! リオネルが相当怖いと言うのは、やはり本当にやべえって事だ。機嫌を損ねないよう充分、気を付けるよ」


苦笑したボトヴィッドは、最後にまた「はああ」と大きく息を吐いたのである。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


以上の会話の後……4人はこれからの相談をする。


そう遠くない日に実施するつもりだが、

まだイエーラへ旅立つ日は確定させていない。


出発するまでに、いろいろ手配、確認する事も若干あり、

あと数日はフォルミーカに滞在する予定だ。


それゆえ、とりあえず、ボトヴィッドは山猫亭へ移動し、しばらく滞在。

既に部屋は確保してあるし、当然自動人形型ゴーレムのアートスも一緒に滞在する。


ここで『良い機会』だと考え、

リオネルはボトヴィッドとブレンダへ『念話』を体験して貰う事に。


念話を使う事の出来ないふたりは、話しかける事は出来ないが、

習得者たるリオネルやイェレミアスから話しかければ、会話が可能なのだ。


リオネルとイェレミアスから説明を受け、質疑応答をした上で、

初めて念話を体験したボトヴィッドとブレンダはひどく驚いたが、

やりとりをするうちに慣れて行く……


慣れて話し始めたら、

「念話は第三者には聞かれたくない内々の話には最適なのだ」と納得する。


『おい、ボトヴィッド、これからお前がやる仕事の件で、いろいろと相談がある。山猫亭へ到着し、落ち着いたら私へ時間をくれ』


『ふん! 分かったよ、イェレミアス。良い話だろうな』


『無論だ』


イェレミアスとボトヴィッドは公開念話でそんな話し合いをしていた。

それがどんな内容なのか、リオネルに予想がついている。


ただここで突っ込みはしない。


そしてボトヴィッドは挙手をし、提案をして来た。


「おい、リオネル」


『はい、何でしょう、ボトヴィッドさん』 


『イエーラから帰っても店を続けようと思っていたが、がらんとした店内を見たら、気が変わった。もう『店じまい』しようと思う。かといって譲るあては他にないし、全く知らない赤の他人へ譲り、好き勝手されるのも耐え難い』


『ですか』


『ああ、以前もお前には言っていたし、今回のイエーラ行きもあって決めていたが、今言おう。中身のない空き店舗とはなったが、この魔道具店クピディタースをお前へ譲る。イエーラへ旅立つまではお前達と同じ山猫亭へ泊めて貰おう』


これはリオネル的には、想定内の展開。

実のところ、人通りの多い路面店たるクピディタースの再利用も考えていたから、

すぐにOKを出す。


『了解です。では別途いくばくかの譲渡金をお支払いします』


『おお、ありがとよ。このように閉店しちまうから、店の譲渡金は当初の契約内にある休業補償費込み1か月手取り金貨400枚の給金に、若干乗せてくれれば構わん。必要な生活費はこれからイエーラで稼ぐよ』


もしかしたら……ボトヴィッドは、親友イェレミアスの故国へ赴き、

そのまま人生を全うする覚悟を決めたのかもしれない。


とリオネルは感じ、ある提示をする。

ボトヴィッドには、至宝『ゼバオトの指輪』と邂逅させて貰えた恩がある。

そして、彼の持つ知識とイェレミアスの親友という立ち位置から、

今後イエーラにおいてキーマンのひとりでもあると確信している。


ここは、金額を惜しむべきではない。


『分かりました。ではクピディタースの譲渡金込みで、最初の給金は、金貨5,000枚(5,000万円)を前払いしましょう』


『はああっ!!?? き、き、金貨5,000枚を前払いだとっっ!!?? と、とんでもない金額だぞっっ!!』


『ですね。加えて、2か月目以降も双方の折り合いがつけば、休業補償費は無しとなりますので、それ以外の条件は同じで月額金貨300枚で雇用は継続したいと思います。ちなみに契約の終了は事前に双方の話し合いにより納得した上って事で、契約書は後程作り直しましょう』


『おお、最初に前払いで金貨5,000枚! 以降は月、金貨300枚の給金か! 更に家賃は無償、生活費も別途支払い、店の売り上げも俺が受け取って構わないな』


『はい』


『分かった! これで文句を言う奴が居たら、そいつは大バカ者だ! 俺は300%全然文句なしのOKだ! その提示受けるぜ! 新たな契約を結ぼう! イエーラの為に粉骨砕身で働いてやるぜ!』


『ありがとうございます。但し、新たな契約を結ぶにあたり、条件がいくつかあります』


『お、おお、条件か? 聞かせてくれ』


『はい、店へ来るお客様やスタッフである公社職員のアールヴ族と上手くやるのは勿論ですが、俺の嫁になる4人全員をもろもろバックアップして頂く事』


『おお! わ、分かった!』


『そして先ほど好き勝手されるのは嫌だとおっしゃいましたが、譲って頂いたこのお店を魔道具店以外の用途でも使わせて頂く事。他にもいくつか出て来るかもしれませんが、その時は改めてご相談します。とりあえず以上2点です』


『分かった!! お前の嫁達をしっかりとフォローするし、もし何かあれば、気軽に相談してくれ。俺が見込んだお前ならば、この店を好き勝手されても構わん! ふたつとも全然、お安い御用だっ!』


『もろもろ、ありがとうございます。今は10時30分少し過ぎですか。俺はこれから冒険者ギルドフォルミーカ支部へ行き、用足しをし、各所で買い物をしてからお昼までに山猫亭へ戻ります。3人はこのまま山猫亭へ戻ってください。ああ、昼食は何かテイクアウトのお弁当を俺が人数分、買って帰りますね』


ここでブレンダの視線を感じた。


自分を連れて行って欲しいと心の波動が訴えている。

いつも希望を聞き入れるわけにはいかないが、

本日はブレンダを同行させても問題はない。


『じゃあ、ブレンダさんは俺と一緒に行くって事で』


『はいっ!』


こうして、話はまとまった。


イェレミアスとボトヴィッドは、アートスを伴い、山猫亭へ移動する。


念の為、リオネルはイェレミアス達に護衛をつける事にした。


3人へ「従士を呼びます」と断った上で、

炎の魔人イフリートのブライムを呼び出す。


リオネルの魔法は無詠唱で神速発動。


いきなりぱっ!と現れた身長2m超、がちむちの偉丈夫に、

面識があるイェレミアスは平気だったが、

ブレンダとボトヴィッドはまたも大いに驚く。


リオネルが肉声で声を張り上げる。


「ブライム!」


「は! リオネル様!」


「お前に任務を命ずる。人間の街に慣れる事を兼ね、イェレミアスさん、ボトヴィッドさんのおふたりとゴーレムのアートスを護衛しろ。姿は消せるな?」


「はい!」


「イェレミアスさん、ボトヴィッドさんに先導して貰い、後方からつかず離れずで、ともに宿屋山猫亭へ行け。もしも危険があれば、相手に存在を悟られぬよう、姿を消したまま、威圧で排除するように。そして到着しても、そのまま、山猫亭近辺で張り込みを続行せよ」


「は! かしこまりました!」


という事で、ブライムは姿を消し……


全員で外へ出て、ボトヴィッドが施錠。


各自はそれぞれの方向へ歩いていったのである。

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