第706話「うむ! ふたりとも、他の従士どもに負けぬよう、誠心誠意、粉骨砕身で仕えるようにな」
フォルミーカ迷宮地下91階層から100階層は、獣人、合成魔獣の領域である。
出現するのは、ミノタウロス、狼男ワーウルフ、リザードマン、
キマイラ、マンティコア、コカトリスだ。
地下90階層で休憩した際、
リオネルはティエラ以下クランメンバー達へ提案していた。
『いろいろ試して来ましたが、ここから100階層までは魔法、スキル、武器抜き、格闘技のみで倒してみましょうか』と。
ちなみにコカトリスの石化攻撃は、既に無効化が確認済みなので問題はナッシング。
そう、炎の魔人兄妹のパワー、俊敏さは確かめたので、格闘能力も見極めたい。
人間族、アールヴ族のトラブル処理において、過剰防衛を避ける為、
威圧のスキルと、相手に応じ加減の出来る格闘技は、ともに必須だと、
リオネルは考えているからだ。
対して、ティエラは勿論、ブライムとルベルのも快諾した。
そして、今度はリオネルとルベル、ティエラとブライムが組む事に。
と、いう事で……出現する魔物に対し、
リオネルは師モーリス・バザン直伝の破邪聖煌拳で、
イフリータのルベルも独特の動きをする拳法?で、次々と敵を倒して行く。
倒して、絶命した死骸の処理はリオネルが葬送魔法、ルベルは口から吐く火炎で、
ピンポイントでさくさくと塵にした。
そして、ティエラとブライムも、流れるような身のこなしで、
敵を次々と屠って行く。
絶命した死骸の処理はティエラが葬送魔法、ブライムはやはりというか、
妹と同じく口から吐く火炎でピンポイントに、さくさくと塵に。
リオネルは、ティエラ、ブライム、ルベルの格闘能力を、
じっくりと観察。
身のこなし、拳と足技等々、チートスキル『見よう見まね』により、
どんどん自分に無い部分を取り込み、ビルドアップをはかった。
ティエラからは、「また強くなったね」と言われそうである。
さてさて!
これまでの実地試験で分かった。
ブライムとルベルの格闘能力は抜群、威圧もしっかりと使えるので、
いざという時のトラブル処理も任せられる。
そう! 改めて実感した。
パイモンが満を持して送り込んだだけの事はある。
炎の魔人兄妹は、魔獣兄弟に勝るとも劣らない能力を持つ従士なのだと。
そんなこんなで、リオネル達は、あっという間に地下100階層へ到達。
この100階層で、ひとまず休憩。
ブライムとルベルと、アールヴ族社会、人間族社会の話題を織り交ぜながら、
じっくり話す。
リオネルは愛用の魔導懐中時計を見た。
時刻は現在、午後2時過ぎ、だ。
そして、リオネルは記憶をたぐる。
……地下101階層から110階層は、混沌のフロア、
これまでに戦い、倒した敵がランダムに出現する領域。
但し、これまでに戦い、倒した敵と言っても、上層の弱い敵はほぼ出現しない。
出現するのは、アスプ、リザードマン、バジリスク、コカトリスなどの特殊攻撃系、青銅製、ミスリル製、銀製、水晶製の各種ゴーレム、
ゴーレムと同じ疑似生命体のガーゴイル……
そして、さっき戦ったミノタウロス、狼男ワーウルフ、リザードマン、キマイラ、
マンティコアの獣人、合成魔獣のパワー系だ。
これだけ多士済々な奴らが、同族同士とか、セオリー無視の、
予想不能な組み合わせで出現する。
以前もそう思ったし、感じたが……
予測不可能な敵が出て来るのを対処し、生き残るのは、とてつもなく高難度だ。
並みの冒険者なら、相当難儀するだろう。
しかし、リオネルは自身の強さと忠実な従士達の力を合わせ、
戦いを勝ち抜く事が出来た。
更に今のクランは総合力で、遥かに上を行っている。
何か、イレギュラーが起きたり、油断をしなければ、遅れを取る事はないはずだ。
それでも……リオネルは無理をしない。
炎の魔人兄妹の力量は充分に確かめたし、性格は穏やかで冷静沈着。
人間族の擬態――変身能力も見事なもので違和感なく、側近には申し分ない。
一緒に戦いつつ、話し、いたわり、コミュニケーションもしっかり取れた。
後、1時間だけ探索を続け、タイムリミットとなれば、
120階層へ達せずとも、その場から転移し、イェレミアス達が居る、
125階層へ行く事をリオネルが提案し、相談の上、全員一致で決めたのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
時間も限られているし、混沌のフロアにおいては、
さすがに縛りは設けなかった。
つまり、戦い方に制限はかけない事にする。
但し、戦いの余波で迷宮を壊す事は厳禁とした。
迷宮を壊さないのみで、縛りをかけない各自の戦い方は、
更に強さを際立たせた。
特にリオネルの『ムービング攻撃魔法』は、遮蔽物を盾に身を守る敵をあっさり倒し、併せて撃つ『破魂貫通撃』は、魂をも砕き、死骸を塵にした。
人間族のレベルを遥かに超えた底知れないリオネルの強さを、
ティエラは頼もしそうに見つめ、ブライムとルベルは畏怖した。
ここまでの戦いで、リオネルは、ゴーレム、ガーゴイルを数多捕獲、
アスプもたっぷりテイムした。
そして、ガンガン敵を倒したので、宝箱もこれまたたくさん出た。
時間節約の為、やはり罠のみを解除、施錠状態のまま、収納の腕輪へ放り込む。
結局、1時間経って午後3時過ぎ、リオネル一行は125階層の『砂漠』へと戻る事に。
ちなみに探索終了時、一行は118階まで進んでおり、そこから転移魔法で跳ぶ。
わずか、2階層。
もう少しで区切りの良い?120階層であったが、そんな事にはこだわらない。
決めた通り、リオネルはあくまでも『時間』を優先したのである。
『お疲れ様です! ただいま、戻りました!』
という事で、125階層の砂漠地帯に現れた一行。
クランリーダーのリオネルが声を張り上げると、ティエラ以下3人も追随する。
『『『お疲れ様です! ただいま、戻りました!』』』
イェレミアスはパイモンから火属性を加味したスキルの修練を、
アリスティドはアマイモンから上級レベル地属性魔法のビルドアップを教授される事になっていたが、それぞれ既に終了したらしい。
4人は撤収準備を済ませ、既にくつろいでいて、
リオネル達の帰還を待っていたからだ。
『おう! ティー、婿殿、お帰り!』
『うむ、ブライムとルベルを呼び出したようだな』
アマイモンとパイモンが応えれば、
イェレミアス、アリスティドも続く。
『リオネル様、ティエラ様、お帰りなさい』
『うむ、全員、かすり傷ひとつない』
ここで、リオネルが一歩、前へ出た。
『報告します! ティーと自習し、ご覧の通り無事、帰還致しました。ティーの提案で、ブライムとルベルを召喚し、共に戦い、よしみを通じつつ、ふたりの実力は充分に見せて貰いました。パイモン様へはふたりを派遣して頂いた事に、改めて御礼申し上げます』
続いて、ティエラも告げる。
『ええ、リオの言う通りです。補足すると、自習は万事上手く行き、ブライム、ルベルとのコミュニケーション、及び得た物資、様々な収穫がありました』
ふたりの報告を聞き、
『うむ!』
とアマイモンは笑顔で返し、そしてパイモンが、
『ブライム、ルベル、お前達、どうだ、リオネルは?』
と呼びかけ、対して、ブライムとルベルも、
『は! リオネル・ロートレック様は、我ら兄妹の新たな主として、ご気性、お力とも、相応しい御方でございます!』
『パイモン様! 兄の言う通りですわ! 私達は、心より忠実にリオネル・ロートレック様にお仕え出来ます!』
『うむ! ふたりとも、他の従士どもに負けぬよう、誠心誠意、粉骨砕身で仕えるようにな』
『は!』
『は!』
そんなパイモンとブライム、ルベル、のやりとりを見ていたアマイモンは、
『婿殿よ、次は俺が与えた従士どもも使ってくれや』
と尋ね、
『はい! 適材適所で!』
とリオネルが返事をすれば、
『おお、だな! じゃあ、戻ってメシにしよう。詳しい話はそれからだ』
と、にっこり微笑んだのである。
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