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第704話「相手へ高度の技を求めるならば、主として相応のパフォーマンスを」

イフリートのブライムとイフリータのルベル。

炎の魔人兄妹の手並みは鮮やかすぎるほどであった。


威圧のスキルを行使し、ノーマルオーガ10体を全てを行動不能とすると、

得意中の得意と言える火の息で、炭化させ、塵としたのだ。


またシチュエーションを考慮した戦いぶりは称賛に値する。


火の息はピンポイントで放たれ、ノーマルオーガ10体が座り込んだ迷宮の床面が、多少焼き焦げただけ、大きく破損する事はなかったのだ。


先ほどの戦闘同様、状況を考え、完璧に計算されつくした戦い方である。


炎の魔人兄妹には、人間族に擬態し、側近として仕えて貰いたい。

その為には武勇だけでなく、知識、知略も必要だ。

普段の性格が穏やかで、冷静沈着なら尚更良い。


さてさて!

出現した宝箱は罠のみ解除し施錠されたまま、

リオネルは収納の腕輪へ箱ごと搬入した。

他の未処理のものと同様、落ち着いてからじっくりと中を確かめる。

いわゆる、開けてからのお楽しみ、である。


ここでリオネルの索敵に敵が接近する『反応』があった。

敵は鋼鉄製のゴーレム10体。

……距離は約300m。


そんな状況を見越し、リオネル、ティエラが言う。


『ブライム、ルベル、良くやったぞ! 次はお前達のパワーを見たい。ついでに捕獲して再利用するゴーレムの無力化もやって見せてくれ。それぞれのやり方は任せる』


『ええ、ちょうどゴーレム10体がこちらへ接近中だから、まず私達が手本を見せるわね』


事前に打合せておいたので、リオネルとティエラの息はぴったりである。


『は! かしこまりました!』

『こちらでそのまま待機致します!』


リオネルとティエラから、少し離れて控えていたブライムとルベルは、

直立不動で敬礼した。


……しばし経ち、鋼鉄製のゴーレム10体が現れた。


こちらの生体反応に反応しているらしく、手を振り上げ、

どす!どす! と、歩み寄って来る。


()る気満」々という感じだ。


しかし、はい、どうぞと、やられるわけにはいかない。


ふっと、微笑んだリオネルはゴーレムどもへダッシュ!


ひと呼吸置き、ティエラもダッシュ!


リオネルが左手で最初のゴーレムの右腕をはっし!と取り、

ぴたっ!と進行を止めた。


と、すかさず! ティエラがぽん!と軽く鋼鉄製のゴーレムを叩いた。


すると、ゴーレムが脱力し、膝から「がくん」と、その場へ崩れ落ちてしまった。


ドラゴンをも圧倒するリオネルのパワーなら、ゴーレムを止めるのなど朝飯前。


そしてティエラが触れるだけで……

ゴーレムの素材である地から生まれた金属は、

思いのままに、その形状や性質を変えられる。


またゴーレムを生成した術者よりも魔力はティエラが遥かに遥かに高質で超格上。


それゆえ術者が刻んだ真理の魔法文字はあっさりと無効化され、

機能は完全に停止してしまうのである。


という事で、リオネルとティエラは見事なチームプレーで、

次々と同じ『対応』を繰り返し、

あっという間に、かつ自身は全くのノーダメージで、

全ての鋼鉄製ゴーレムを『処置』してしまった。


当然、処置した鋼鉄製ゴーレムもほぼ無傷である。

生じたのは倒れ伏す際に出来た傷くらいだ。


『じゃあ、リオ。さくっと収穫物を仕舞っちゃって』


『了解です、ほいっと搬入』


すると、10体の鋼鉄製ゴーレムが、ぱっ!と消え失せた。

収納の腕輪へ搬入、されたのである。


『よし! これで一丁上がり』


『だね! ブライム、ルベル、ってな感じだけど、見ていたかな?』


『はい! リオネル様、ティエラ様、しっかりと拝見させて頂きました!』

『ええ! おふたりとも見事なお手前でございます!』


『先ほど告げたが、捕らえたゴーレムをなるべく傷つけずに捕獲する。再利用するのが前提だからな』


『そうね! お前達のパワーと手並みをしっかりと見せて頂戴。ほら、また鋼鉄製のゴーレム10体が近づいて来たわ』


そう、リオネルの索敵にも敵が捉えられていた。

距離は約300m。


こちらに気付いたらしく、ずしん!ずしん!と振動も伝わって来た。


やがて、鋼鉄製のゴーレム10体が現れる。


『は!』

『私達へお任せあれ!』


そう言い放った炎の魔人兄妹は、ダッシュ!


現れた先頭のゴーレムの両腕を兄のブライムが両手で掴み軽々と抑え、

妹のルベルが迷うことなく、真理の魔法文字が刻んである額の中央部分へ、

左手を「ぴたっ」と当てた。


瞬間!


がくん!と膝から崩れ落ちる鋼鉄製ゴーレム。


『うふふ、さすがね! ルベルは超高熱となった手を、焼きごてのように使い、術者が刻んだ魔法文字を無効化したわ』


『成る程、考えていますね。ゴーレムを難なく抑えたブライムのパワーもなかなかです』


『確かに!』


そんな会話をリオネルとティエラが交わす中、

炎の魔人兄妹は、10体の鋼鉄製ゴーレムを、

あっという間に行動不能としたのである。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


聞けば、パワーは少しルベルが劣るが、役割が逆でも全く問題なしとの事。


という事で、結果は文句なしの及第点獲得!


リオネルとティエラが望んだ通り、ふたりには側近としての充分な資質がある。


武勇、知略は勿論、普段の性格が穏やかで、冷静沈着と、

求める要素を有していたのだ。


知識に関してはその都度確認すれば良いし、分からない事は教える。

謙虚で控えめだから、こちらの言葉を素直に受け入れそうだ。

アールヴ族、人間族の社会に関しても教えつつ、実際に経験を積めば行けるだろう。


だがリオネルとティエラは、もう少し、『試験』を続ける。


炎の魔人兄妹と連携し、クラン戦闘を行うのだ。


とりあえず、倒した鋼鉄製ゴーレムを搬入し、リオネル一行は出発。


次の階層へ進み、探索を続行していると、索敵に反応があった。

距離は現地点から約500m、ノーマルオーガ10体である。


『ブライム、ルベル、先ほどルベルが炎の魔法剣を使ったが、普通の剣も使えるな?』


リオネルが問うと、炎の魔人兄妹は即答。


『『勿論!』』


『ティーも構わないですか?』


『剣? うんうん! 全然OKよ、リオ! 実は剣技は得意なの! 任せといて!』


『了解です。では、まず俺がブライムと組み、手分けして剣技でオーガ計10体を倒します、ブライム、行けるな?』


『御意!』


『こちらに気付いたようだ、来るぞ』


『はい!』


リオネルが腰から提げたムラマサを見やれば、

ブライムの手には、刀身が湾曲した白銀の剣シミターが現れる。

これでブライムが空間魔法か、それに相当する魔法も使いこなせる事が分かった。


ちなみに……

迷宮内をリオネル一行が普通に探索しても、

跋扈する魔物どもは気配を察し、避け、逃げてしまう。

それゆえ、こういう時は魔力を抑え気味にし、敵には敢えて接近をさせているのだ。


『では、ティー。行ってきます』


『ええ、宜しく。次は私とルベルで組むから』


……そうこうしているうちに、ノーマルオーガ10体が現れた。


『俺が先に5体を倒す。残りの5体を頼むぞ』


『は! リオネル様! 承知!』


ブライムの返事を聞くと同時にリオネルはダッシュ!


しゅばっ!


常人では、到底目に見えぬ速さで、ムラマサを抜刀し、振るった。


があっ!


短い悲鳴をあげたオーガは胴体を()ぎ払われ、

まっぷたつにされ、絶命した。


よし! と満足そうに頷くリオネル。


(おぼ)えている方も居るかもしれない。


これは冒険者ギルド総本部サブマスター、剣聖ブレーズ・シャリエの剣さばき、

東方の剣技『居合』を取り入れた抜刀術である。


ブレーズの戦いぶりを見た者が居れば、「そっくりだ!」とひどく驚くに違いない。

リオネルの有するチートスキル『見よう見まね』の効用である。


『おお!! リオネル様!! 見事な剣さばきです!!』


『す、素晴らしい!!』


思わず感嘆の声を上げる炎の魔人兄妹。


ティエラは当然とばかりに「うんうん」と満足そうに頷いていた。


しかし、これだけでは終わらない。


しゅばっ!しゅばっ!しゅばっ!しゅばっ!


間を置かず繰り出された剣撃。


があっ!があっ!があっ!があっ!


短い悲鳴をあげたオーガはども4体は、またも胴体を()ぎ払われ、

まっぷたつにされ、絶命する。


ごおおっ!ごおおっ!ごおおっ!ごおおっ!


斬られたノーマルオーガの傷口からは紅蓮の炎が吹き上がった。


ブライムとルベルは、再び感嘆。


『おお!! 炎の魔法剣を!!』


『ほ、本当に素晴らしい!!』


5体のノーマルオーガを斬り捨てると、ぱちん!とムラマサを納剣。


するとすると!

リオネルが倒したノーマルオーガども5体は、全てが塵となり、四散してしまった。


今までともに居た仲間が斬り倒され、跡形もなく塵となってしまった。


残された5体のノーマルオーガは、一瞬の出来事に呆然としている。

そのまま動けない。


一方、余りの手際の良さに、炎の魔人兄妹は大きく目を見開く。


『お、おおおっ!! ひ、火属性魔法だけでなく!! 葬送魔法まで斬撃と同時に仕込まれていたかっ!!』


『す、凄いですわっ!!』


相手へ高度の技を求めるならば、(あるじ)として相応のパフォーマンスを。


ぱちん!と、ムラマサを納剣したリオネルは転移魔法で撤退。


ブライムの傍らへ、ぱっ!と現れ、


『てな感じだ、ブライム。残りの5体は任せた! 宜しくな!』


と、笑顔で告げたのである。

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