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第703話「炎の魔人兄妹は、そう言うと凄まじい気合を発した。 限りなく殺意に近いものだ」

いつものようにアマイモン、パイモンが訪れ、

リオネルとティエラがメインで作った朝食を全員で摂り、

地下125階層にある、これまたいつもの砂漠地帯へ。


このところ、とんでもないレベルの者達が巨大な魔力を振るっているので、

さすがにドラゴン、巨人族は怖れ、近寄っても来ない。


さてさて、本日の予定だが……

イェレミアスはパイモンから火属性を加味したスキルの修練を、

アリスティドはアマイモンから上級レベル地属性魔法のビルドアップを教授される。


そしてリオネルとティエラは、自身の裁量に基づき、自習となった。

つまりフリーダムで修行するという事に。


それゆえ、まずはいくつかの違う階層へ赴き、

ヒュドラ討伐を10回行い、ティエラ確認の下、

毒と瘴気に穢された土地の浄化と復元の加護を行った。


その結果、相変わらずリオネルの魔法発動は、円滑かつ正確。

更には効能効果もアップ。


効能効果だけは、さすがにティエラと等しく、

というわけにはいかないが、着実にその域へ近づいているのは間違いなかった。


ティエラのコメントも「太鼓判を押す!」という趣き。


『リオ! 文句なしの合格! 完全にコツを掴んだわね。後は回数をこなせば、効能効果もぐんぐん上がって来るよ』


『はい、ティーの言う通り、地の浄化と加護の行使に自信がつきました。ご指導ありがとうございました』


という事で、まずは昨日の修行の仕上げは完了。


ちなみに、リオネルが教授したシーフ職スキル『隠形』『忍び足』を、

ティエラは完璧に習得し、使いこなしていた。


それもあってか、ティエラが満足そうに頷き、微笑みかけて来る。


『よっし、リオ! 地の浄化と加護の行使に目途が立ったし、私も忍び足を使いこなせるようになったから、新しい課題をクリアしようか!』


『はい! 新しい課題ですね』


『うん! 今、一時的に、私とリオのふたりクランって形でしょ?』


『ですね』


『うふふ、じゃあ、はい! 私から提案!』


と、ティエラは可愛らしく挙手をした。


そんな他愛ない仕草でも、リオネルはぐっと来る。


『テ、ティーからの提案ですか?』


『うん! 折角だから、新規メンバーを使ってみない?』


『新規メンバーをですか?』


『ええ、今回、新たに加わった従士達を加えてクランを組み、迷宮上中層で戦うのよ。念の為、このフォルミーカ迷宮において、私の認識で上中層は、41階から100階くらいかな』


地下40階層までのレベルの敵では、訓練にならないというティエラの判断。


リオネルにも異存はない。


『成る程、了解です。新たな課題をクリアとは、この迷宮上中層で新メンバーとともに戦い、その力量を知る。また今後行う戦闘連携に慣れておくって事ですね』


『その通り! じゃあ、適材適所のスタンスありきで、炎の魔人イフリートのブライムを、そして女子魔人のイフリータも呼ぼう』


『了解です』


『改めて面どおしして、イフリータの名前も聞いておこうよ』


『はい!』


『念の為、このチョイスの理由を言うね』


『ええ、お聞きします』


火蜥蜴(サラマンダー)はファイアドレイクの擬態で使い勝手が分かっているし、ウチのノーム、コボルトは、やれば出来ない事はないけど、元々戦闘向きではない。巨大ワームだって、狭い迷宮上層向きではないからね』


『ですね! 戦闘は勿論ですが、ブライムとイフリータは人間族に擬態させ、通常の業務もフォローして貰おうと考えています』


『ええ、それ大賛成。そもそもブライム、そしてイフリータはパイモン様自慢の従士。知性豊かな魔人達だから、仕事は簡単に覚えるし、アールヴ族、人間族とも上手く接し、自然に振舞えると思うわ』


『はい、ふたりの炎の魔人が、俺、ティーとクランを組み、会話し、行動する事で、実力の理解や戦闘連携訓練だけではなく、人間族と接する訓練も兼ねられます。ふたりの価値観、考え方も分かるでしょうし』


『だね! 一騎当千以上のふたりなら、今、ケルベロス、オルトロスの魔獣兄弟へ頼んでいる護衛業務も楽勝でこなしてくれるわ』


『完全に同意です。とりあえず今日は俺、ティーとふたりの魔人との4人クランで構わないかと。他の従士へふたりの紹介はまた、改めてって事で良いですかね?』


『だね。イェレミアスとアリスティドのブライムへの面通しは済んでいるし、魔獣兄弟とジャンは、ヒルデガルドの護衛でイエーラのフェフに詰めている。それ以外、こっちに居る者はタイミングを見て、随時引き合わせ、面通しさせるって事で構わないんじゃない』


『了解です。では早速、ふたりを召喚しますね』


『OK! よろしくう!』


『はい! ……出でよ! ブライム! そしてイフリータ!』


リオネルが念じると、待っていたかのように空間が割れ、

異界から筋骨隆々の偉丈夫イフリートのブライムが現れた。


忠誠の証を見せるが如く、さっと(ひざまず)いたブライムは、

大きく声を張り上げる。


『リオネル様! ティエラ様! ブライム、ただいま参上致しました!』


そしてもうひとり、空間が割れ、異界から現れたのは、

イケオジなブライムに顔立ちが良く似た、こちらも2m近い身長の筋骨隆々の女子。

きりり!とした印象であり、『女傑』と呼ぶのが言い得て妙。

人間族で言えば、20代半ば、くらいだろうか。


こちらも、さっと跪き、負けじと大きく声を張り上げる。


『初めまして、リオネル様! ティエラ様! ブライムの妹、イフリータのルベルでございます! ただいま参上致しました! 以後お見知りおきを!』


『了解! では、ブライム、ルベル、ふたりとも立ってくれるかな? これから行く階層と出現する敵の説明をした上で、クラン編成と作戦を相談するから』


リオネルは柔らかく微笑み、跪いた「ふたり」を立たせたのである。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


打合せ後、リオネル達一行は、地下41階層へ転移。

リオネルが照明魔法を発動して、探索を開始した。

事前に索敵を使い、到着地点に他のクランや魔物が居ない事は確認済みである。


さてさて!

41階層から、50階までは、ノーマルタイプのオーガ、ゴーレムが出現する。


先頭に立つのは、ブライム、ルベル、の炎の魔人兄妹である。

まずは、炎の魔人の力を(あるじ)へ見せたい!と兄妹が懇願したのだ。

また索敵が使えるから、盾役、攻撃役とともに、

シーフ職もこなせると強く強くアピールした。


対してリオネルは、『戦い方も含め、任せる』とシンプルに返事を戻した。


ブライム、ルベル、は公開念話、個人念話が使える。

なので、クラン間のやりとりは基本的に公開念話である。


『リオネル様、ティエラ様、ノーマルオーガ10体をキャッチしました』

『これぐらいの敵、殲滅は私達兄妹にお任せください』


『了解、任せるよ』

『お願いね』


『は!』

『かしこまりました!』


リオネルとティエラへ返事を戻した炎の魔人兄妹は頷き合うと、

オーガどもへ猛ダッシュ!


ふたりの口から吐く息で超高音のスチーム攻撃。


ぶっしゅううう!! ぶっしゅううう!! ぶっしゅううう!!

ぶっしゅううう!! ぶっしゅううう!! ぶっしゅううう!!


もうもうとした水蒸気が立ち込め……


ぎゃうううっっ!!?? ぎゃうううっっ!!??


うわちちち!!! と、悲鳴をあげるノーマルオーガども。


そして兄妹の手には、いつの間にかオレンジ色に燃え盛る炎の剣が握られている。

炎の魔人の魔力が転換され、物質化した破壊力抜群の魔法剣である。


火傷の痛みに悶えるノーマルオーガどもへ、炎の魔法剣が容赦なく振るわれる。


ずばしゅう!! ぼうっっ!! ずばしゅう!! ぼうっっ!!


ずばしゅう!! ぼうっっ!! ずばしゅう!! ぼうっっ!!


さすが炎の魔人が行使する魔法剣。

圧倒的な火力である。


ずばしゅう!!とまっぷたつにされた10体のノーマルオーガどもは、

全てがぼうっっ!! と燃え上がって炭化し、あっという間に塵となってしまった。


この間、わずか3分足らず。


ノーマルオーガどもを塵とした炎の魔人兄妹は、

手に持つ炎の剣を消滅させると、ぱっと転移。


リオネルとティエラの下で(ひざまず)いていた。


『リオネル様、ティエラ様』

『我々の手並み、いかがだったでしょうか?』


炎の魔人兄妹は、さすがパイモン自慢の従士である。


リオネルが『了解、任せるよ』と伝えただけで、ふたりは迷宮の仕様と相手を考え、

ダッシュで身体能力を、高熱のスチーム攻撃でスキルを、

そして炎の魔法剣で魔法と剣技を、そしてダメ押しとばかりに転移魔法を、

たった一度の戦いで、持てる能力をこれでもかとばかりに見せたつけたのだから。


そして強さだけでなく、作戦の立案力、瞬時の判断力も兼ね備えている。

やはり炎の魔人兄妹は頭脳明晰、いわゆる脳キンではなかった。


『さすがだな』

『中々のものね』


『は! お褒め頂き、光栄の極み』

『スチームはもっと温度を上げられますし、火炎も自由自在に吐けます。まだまだ、こんなものではありませぬ』


そうこうしているうちに、接近する気配がある。

またも、10体のノーマルオーガだ。

こちらとの距離は約300m。


『よし! では次の戦いは戦法をリクエストしても構わないか』

『うふふ、リオの指示通り戦ってくれる?』


『御意!』

『何なりと!』


『よし! お前達は威圧のスキルは使えるかな?』


『『使えます!』』


リオネルの問いに対し、炎の魔人兄妹は揃って即答した。


更にティエラが、フォローする。

リオネルの意図をすぐに察し、息はぴったりと合っていた。


『良いかしら、ブライム、ルベル。人間やアールヴの社会ではね、過剰防衛って言葉があるの。反撃はやり過ぎてはいけない。敵対する相手を傷つけずに無力化する……これから、お前達が上手くやる上で、威圧のスキルはとても便利なのよ』


ティエラの言う通りだ。

基本的に、彼ら精霊や魔物の戦いでは、一旦戦いが始まれば、

手加減はしないだろう。

また戦いに、やり過ぎという概念は無いのである。


『成る程!』

『理解致しました!』


『よし! 指示を続けよう。威圧でノーマルオーガどもの動きを止め、お前達の火の息で倒してくれ。どうだ?』


『かしこまりました!』

『たやすい事でございます!』


やりとりをしているうちに、ノーマルオーガ10体が現れた。


『行きます!』

『ご覧あれ!』


炎の魔人兄妹は、そう言うと凄まじい気合を発した。

限りなく殺意に近いものだ。


うがっ!? がっ!? うがっ!? がっ!? うがっ!? がっ!?


ブライム、ルベルの気合を感じ、硬直。

ノーマルオーガ10体は行動不能となる。


その瞬間!

炎の魔人兄妹は、転移魔法を発動!


ふたり揃って、ノーマルオーガ10体の目前へ赴くと、口をすぼめ、


ごおおっ! ごおおっ! と、猛炎を吐き出したのである。

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