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第691話「1,700歳余りの私もまだまだ! これからだ! もっともっと新たな事を学び得よう!」

「座持ちが良い」という言葉がある。

『座』とは座る場所、地位などの意味もあるが、

ここでいう『座』とは多くの人が集まっている席、集会の席――宴席、

「座持ちが良い」とは、その宴席の興をさまさないよう客をもてなす事である。


ティエラの父アマイモンは訪問した客という立場ではあるのだが、

座持ちを良くする能力に長けているようだ。


精霊、アールヴ族、人間族という異種族混合で初対面同士の者も含む宴が、

先ほどの会話で、一気になごんだのだから。


ティエラはリオネルの努力と成長を励みにして地母神の修行に臨んでいると言われ、

恥ずかしそうにしながらも、嬉しそうに笑みを浮かべていたし、

勤勉さを褒められたリオネルも喜びを隠さない。


愛孫のヒルデガルドがティエラと同じく頑張っていると言われ、

イェレミアスも誇らしいし、リオネルの成長に寄与していると言われ、

アリスティドも感激している。


そんな中、唯一蚊帳の外だったパイモンだが……

そこは、かつて『ぼっち』だったリオネルが空気を読み、すかさずフォローする。


『あの、パイモン様!』


『うむ、何だ、リオネル』


『はい、機会があればぜひ御礼をお伝えしたいと思っていました。従士としてつけて頂いたファイアドレイクは戦闘時は勿論、火蜥蜴(サラマンダー)化させ、迷宮探索等にも重宝させて頂いております。ありがとうございます』


リオネルの『礼』を聞いても、パイモンは少し渋い表情である。


『ふむ、ファイアドレイクを重宝か。……しかし地属性の魔獣兄弟ケルベロス、オルトロスに比べれば、がしがし使い倒すとまではいっていないようだな』


ケルベロス、オルトロスの魔獣兄弟の出動頻度に比べれば、

ファイアドレイクはあまり重用されていない。


パイモンはそう言いたいのだろう。


やはり精霊間の競争意識は相当高いらしい。


しかしこういう『突っ込み』もリオネルは想定済み。


『はい、パイモン様。仰る通り各従士の出動要請頻度には差があります。ご不満かもしれませんが、全て、自分の判断において適材適所で起用しております』


『ほう、リオネルの判断において従士達を適材適所で従士どもを起用か』


『はい、自分の未熟さを棚に上げ、思い上がった物言いで申し訳ありませんが』


『いやいや、納得だ。適材適所ならば出動要請頻度に差があるのも筋が通っておる! 謝る事ではない! では、小回りのきく火属性の従士達を改めてお前へ用意しようぞ』


適材適所の方針に同意してくれたパイモンは、それならと、

リオネルへ新たな従士を派遣するという。


『え? 小回りのきく火属性の従士達を改めてご用意して頂けるの……ですか?』


『うむ、そうだ。選り抜きの新たな火属性従士2体を(つか)わそう。加えてファイアドレイクの擬態ではなく純正の火蜥蜴(サラマンダー)100体もな』


『おお! それは本当に嬉しいです、ありがとうございます。それであの、話は変わりますけど、パイモン様へお願いがあるのですが……』


『む? 私にお願いがあるだと?』


『はい、以前から考えて決めていました。立てた課題を優先してクリアした後、この迷宮地下庭園の延焼の心配のない場所――砂漠、荒れ地で思い切り火属性魔法の訓練をしようと』


『ふむ、延焼の心配のない場所で思い切り火属性魔法の訓練とな。成る程、従士どもの起用同様、我が火属性魔法も適材適所を考え、気を遣いつつお前は行使していたのだな』


『はい、ご理解を頂きありがたいです。パイモン様はお気づきになっていると思いますが、火属性の上位魔法はその破壊力から来る波及効果を考えますと、使う機会と場所が限定されてしまいます。人間族やアールヴ族の数多住まう場所、いえ害無き魔物や動物に対しても、むやみやたらと使うわけにはいきませんから』


『ふむ』


『更に申し上げれば、自分の火属性魔法の使用頻度を考えますと、初心に帰るという復習精神で基礎魔法から最高位魔法まで丁寧に訓練をやり直したいと思います』


『おお、そうか! 基礎からやり直し復習か、原点回帰というわけだな!』


『はい、原点回帰です。それでお願いと申しますのは明日以降、パイモン様のご都合の宜しい時に、自分へ火属性魔法の修行をつけて頂きたいのです』


『分かった! リオネルよ! 良き心がけである! お安い御用だ! 明日以降、私が直接お前に修行をつけてやろう!』


と、ここでアマイモン、ティエラ父娘が声を張り上げる。

リオネルとパイモンの会話をしっかりと聞いていたようである。


『おいおい! リオネル! ちょっと待てや! 俺とティーもお前へ直接、地属性魔法の修行をつけてやるぜ! それと新たな地属性の従士も大量追加だ!』


『そうそう!』


パイモンより火属性魔法の修行をつけて貰え、

新たな火属性従士を数多派遣されるだけではなく、

アマイモン、ティエラ父娘からも地属性魔法の修行をつけて貰え、

これまた新たな地属性従士が大量に派遣される事に。


……とても、とてもありがたい話だ。


そしてリオネルは更に、


『宜しければ、アリスティド様にも火属性魔法、地属性魔法の修行をつけて頂き、イェレミアスさんへも何か有意義なスキルのご教授をお願い頂けますか』


と、この場の全員が精霊達から何かを学べるよう、丁寧に精霊達へ頼んだのである。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


パイモン、アマイモン、ティエラの3精霊が師匠役になると決まり、

……リオネル達の宴は、盛に盛り上がった。


このリオネルのフォローで大いに気分が良くなったアリスティドが、

笑顔でまめまめしく立ち働き、更に座持ちを良くしたからである。


アリスティドは地属性、火属性の複数属性魔法使用者(マルチプル)だが、

剣技と格闘技、馬術に重きを置き、

魔法は嫌いではないのだが修行はあまりしていない。


それがたまたまアマイモン、ティエラと邂逅し、修行。

地属性の転移魔法を授けて貰った。


その後、ソヴァール王国を建国。

政務も加わり、一層多忙となって魔法の修行をする暇などなかった。


それが今……

心の底から邂逅を望んでいた火界王パイモンにも修行をつけて貰える。


極めてプライドの高いアリスティドではあるが、さすがに、こうなったのは、

リオネルのお陰だとはっきりと認識していた。


クランのリーダーであり、自分よりも遥かに能力が上なのに……

リスペクトを忘れず、丁寧に接してくれて、全員の世話まで焼いてくれる。


初心に帰るという復習精神で基礎魔法から最高位魔法まで丁寧に訓練をやり直したいという言葉も響いた。


リオネルを見ていると、アリスティドは若かった自分の下積み時代を思い出し……

覇を唱えた王という驕りを捨て、

雑用もいとわず引き受けようという謙虚な気持ちにもなった。


そんなアリスティドを見て、イェレミアスも改めて刺激を受けた。

自分も謙虚になり、労をいとわず頑張ろうと。


またイェレミアスもアリスティド同様、

リオネルが発した「初心に帰るという復習精神で」という言葉を聞き、

ソウェルとして、否、魔法使いとして、

自分も「初心に帰ろう」という気持ちとなった。


そもそも……イエーラを旅立ち、冒険者となり、ここフォルミーカ迷宮まで来たのは、新たな知識を得ようとした探求心からである。


結果、エテラヴオリ家にあった古文書に記されていた通り、

人間族の造った失われし古代都市を発見。


未知の魔法科学に触れ、新たな知識を得る事が出来た。


ただ……「それで十分だ」と思っていた気持ちが正直あった。


しかし、そんな半端な満足感を思い切りぶち壊してくれたのがリオネルである。


若き頃より緩和されたとはいえ……

イェレミアスがいまだ見下していた人間族に、

自分達アールヴ族を遥かに超越した、凄まじい大器が現れた。


それが目の前に居る人間族の魔法使いリオネル・ロートレック。


リオネルは全てにおいて規格外なのに、

驕らず誇らず、謙虚で誠実、全てにおいて丁寧であり優しく気配り上手。

基本的に安全第一でとても慎重な性格のに、決断力に優れ、時には大胆。


今接しているのは、地界王アマイモンとその娘ティエラ、

更には火界王パイモン。

また自分、前ソウェルのイェレミアスに、

故国ソヴァール王国開祖の英霊アリスティド。


イェレミアスから見ても、とんでもないメンバーなのに、

リオネルは全く臆さず、それでいて礼を尽くし、好かれてしまう。


改めて思う。

本当に本当にとんでもない人間族だと。


そしてイェレミアスが一番好むリオネルの長所。


リオネルは、新たに学ぶ事を全く怖れない。

つい学ぶ事に弱気になった自分を、

「寿命が遥かに長いアールヴ族が羨ましい」と笑う。


人間族には「60の手習い」という言葉があるという。


そう、人間族の寿命はMAXで約100年。

「60の手習い」とは、学問や習い事をするのに年齢制限などなく、

たとえ晩年に始めても遅すぎるということはないという意味が込められている。


古代のアールヴ族には7,000年生きた者も居たという。


1,700歳余りの私もまだまだ! これからだ!

もっともっと新たな事を学び得よう!


ふたりの界王、ティエラと楽しそうに話すリオネルを見て、

イェレミアスは決意を新たにしたのである。

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