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第688話「うむ! リオネル・ロートレックよ! お前には感服した。まさにソヴァール王国の誇り、人類史上最強の英雄である!」

腕相撲勝負の後も探索は続き……


イェレミアスの希望した宝箱の『お宝』はおびただしい数をゲットする事となった。

武器防具に魔道具、魔導書、魔法ポーション、魔石、各種インゴット、

古銭を含めた現金、宝石、装身具、骨とう品、などなど……

ドラゴンもたくさん倒したので、収納の腕輪へ搬入した死骸も相当なものだ。

そして、装飾に凝った美品の宝箱も結構な数が回収された。


他にも果実、木材など……

イェレミアスがゲットしたい迷宮の素材は数多あったが、さすがにタイムアップ。


いざとなれば、以前イェレミアスがそうしていたように、

古代都市のゴーレムを使い、採集、発掘、収穫をしても良いのかもしれない。


さてさて!

探索終了後、4人は無事、古代都市居住区へ帰還。


当然、イェレミアスは大が付く満足だが、反面だいぶ心苦しいようだ。


何故なら、魔物討伐はリオネルとアリスティドへおんぶにだっこ状態。

宝箱の中身ゲットはリオネルだけが作業したから。


『あの……リオネル様』


『はい、何でしょうか、イェレミアスさん』


『いつもながら、何から何までお世話になりました』


『いえいえ、どういたしまして。お安い御用ですよ』


『いやあ……冒険者になってから長年望んでいた宝箱のゲット、存分に楽しみました。倒したドラゴンの死骸も含め、収穫は金額的に相当なものですぞ』


『ですね! 今回は中々、上手く行ったと思いますよ。とりあえず今は俺が預かっていますが、後ほど全部イェレミアスさんへお渡しします』


『う、うむ……ですが……クランとして得たもの全てを、私だけへ頂いて本当に宜しいのでしょうか?』


『いえいえ、気にしないでください。ティエラ様、アリスティド様には事前にご了承を頂いています』


『そ、そうですか』


『はい、俺も以前ここで探索した際のお宝も未整理のまま結構な量をキープしています。それにイェレミアスさんは契約した俺をイエーラへ呼ぶにあたり、ご自分の財産を『自腹』で相当持ち出しました。こういう機会にこそ存分に、思いっきり補填してください』


『そんな! 加えてシーフ職スキルの隠形、忍び足までご教授して頂き習得、上達もさせて頂きましたぞ』


『はい、さすがはイェレミアスさんです。設定した課題をクリアしながら、他の良い修行も出来て何よりです』


『むむむ、しかし、ここまでお気遣い頂けるとは……ヒルデガルドには、おじいさまばかりと、怒られそうですな』


『いえいえ、イェレミアスさんは俺のクライアントですから、それくらい当然ですし、ヒルデガルドさんと旅をする際も、その部分は充分に考慮しています。それに彼女は冒険者ギルドに上級ランカーとして所属しているので、何か依頼を完遂すれば、先日のドラゴン討伐の時同様、ギルドからもたっぷり報酬を得られますから』


『成る程……分かりました、ならばお言葉に甘えます』


『はい、それに俺も討伐の経験値を充分積み、レベルが一気に52へアップしましたし、各パラメータも大幅に上がりました。またゴーレムとアスプ、そして新たにガーゴイルを捕獲し、配下の強化もしっかり出来ました。なので持ちつ持たれつで助け合う、ウインウインですよ』


そう、ゴーレムだけでなく、リオネルはアスプも、

更にガーゴイルも新たな配下、従士候補として相当数、捕獲していたのだ。


イェレミアスと話し終わったリオネルは、

ティエラ、アリスティドへ向き直り、深く一礼、


『ティエラ様、アリスティド様、いろいろとありましたが、本日もお疲れ様でした、ありがとうございます。夕飯は、いつもの通り俺が作らせて頂きます』


対して笑顔のティエラは、


『うふふ、じゃあ、いつもの通り私もがっつりお手伝いするわね!』


続いて、アリスティドも、にこにこし、


『うむ! いつもの通り、我も大いに手伝い、美味い料理をたらふく食おう!』


地の最上級精霊とソヴァール王国開祖が上機嫌ならば、何の問題もない。


『分かりました! では! いつもの通り! 全員で夕飯の準備に取りかかりましょう!』


音頭を取るようなイェレミアスの言葉に全員が頷き、皆、作業を開始したのである。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


……4人でやれば夕食の準備は早い。


リオネルの料理の腕前はプロ級レベルだが、

ティエラは更に上を行く上級プロレベル。

アリスティド、イェレミアスも自炊生活の経験ありで、手伝いを苦にしない。


そんなこんなで、協力し合い……

出来上がったのはソヴァール王国、アクィラ王国、

そしてイエーラのアールヴ族料理である。


ここでひとつ気になるのが、ティエラが普段食べている『地元』の料理が無い事だ。


なのでリオネルは言う。


『宜しければ今後は、ティエラ様のお好きな料理もお作りします。ただ精霊界の料理だと、食材、調理法が全く未知ですので教えて頂ければチャレンジします』


思いやりあるリオネルの言葉にティエラは、にっこり。


『良いの、良いの、私の好きな郷土料理はいつでも食べれるし。人間界の、それもリオの手料理なんて、滅多に食べられないもの』


『そうですか、もし気が変わったらいつでもおっしゃってください』


『うふふ、ありがと♡』


……という事で、4人はいつもの通り、陶器製マグカップを鳴らし合って乾杯。

エール、ワインを飲みながら、舌鼓を打った。


酒はリオネル厳選の逸品。

料理はプロが作った美味なるもの。


食が進み、気分が良くなるのは必然である。


中でも、劇的に態度が変わったのがアリスティドだ。


リオネルとの魔法、スキルなしの魔物の倒しっこは、100戦して100引き分け。


ただ審判役のティエラ、イェレミアスの判定に不満たらたら。


しかしティエラから、その『勝負の内幕』を知らされた上、

最後には直接タイマン勝負の腕相撲を行い、

天と地ほどの実力差をはっきりと思い知り、大いに納得。

結果、リオネルの器の大きさを認めたのである。


元々竹を割ったような性格で、すっかりと素直になったアリスティド。


リオネルへ親愛の情を示し、何度も酒を勧めて来る。


後輩の実力を認めた大先輩として、いろいろと話をしたいらしい。


『リオネル!』


『はい、何でしょうか、アリスティド様』


『ふむ! 魔法、スキルでは、お前に到底敵わない。だから力だけは負けぬぞ!と思い、ソヴァール王国建国開祖の意地を見せたかったが……お前のパワー、地界王アマイモン様に匹敵するのか! とんでもないな!』


『はあ、俺もティエラ様にご指摘されるまで全く気付きませんでした』


『ふうむ、気付かなかったとは何故だ?』


『いえ、思いっきりフルパワーの攻撃なんて、最近はあまりやりませんでしたから』


『ほう! そうなのか?』


『はい、俺のバトルスタイルは魔法、スキル、剣技、格闘技を織り交ぜるのですが』


『ああ、見ている限り、そうだな』


『はい、それで力押しする際も、急所へのピンポイント攻撃や貫通撃を使って、全てのパワーを使わず、迅速に効率良く、そして的確に倒すよう心掛けていましたので』


『成る程、本当に素晴らしい! 今のお前は、はっきり言って攻防において完全無欠、弱点など見当たらぬな』


『いえいえ、アリスティド様が仰るように、完全無欠でありたいと思いますが、俺は発展途上で修行中、レベルも52だし、まだまだですよ』


『ふうむ、相変わらず控えめだな。英雄の迷宮で初めて会った時と変わらず、お前は全然ブレない』


『ですか? まだまだ俺は高みを目指したい。アリスティド様からはぜひ闘気の使い方を学びたいと思っているのですが』


『おお、我の闘気術を学びたいのか?』


『はい、ぜひ!』


『ふむ! 貫通撃を習得しているのに、闘気もか! 学ぶ事にどん欲だな! 良いだろう、教授する!』


『ありがとうございます』


『いや、こちらこそだ、お前からは学ぶ事が多い!』


『はい! 実は俺もアリスティド様から学びたい事はたくさんあります!』


『うむ! リオネル・ロートレックよ! お前には感服した。まさにソヴァール王国の誇り、人類史上最強の英雄である! 改めて約束しよう! 我はお前に付き従い、忠実な従士となろうぞ! 遠慮せず、どんどん使い回してくれ!』


と、いう事で……ふたりは完全に意気投合。


ソヴァール王国開祖の英雄アリスティド・ソヴァールは、一切何のわだかまりなく、

リオネルを守護する『英霊』として付き従う事を、改めて約束してくれたのである。

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