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第683話「これは失礼致しました! ティエラ様!」

3体のノーマルドラゴンを倒し、

限りなく無傷に近いその死骸を回収したリオネル一行。


さて、次の討伐だが、張り巡らせたリオネルの索敵に反応がある。


クラン一行が居る位置から更に1㎞ほど離れた場所に居るのは、

亀のような甲羅を持つ、南方の動物ワニのような6本足のドラゴン、

タラスクス5体だ。


一瞬考えたリオネルだが、このタラスクス5体をターゲットにすると決めた。


リオネルが、その旨を話せば、ティエラが反応。


『リオ、次はタラスクスと戦うの?』


『はい』


『そっか! あいつの甲羅と皮は、ドラゴン皮と同じくらい鎧の材料として人気があるのよね』


『ですね! 最近ドラゴンの死骸を若干数、アクィラ王国へ売却したので、しばらく売り控えようと。なので収納の腕輪内にあるストック分と合わせ、今度はレアなタラスクスを売却して利益を上げようと思っています』


『うふふ、さっすが、リオ。確かにドラゴンの死骸ばかり出回れば、市場価値は下がる恐れがあるからね。このタイミングでタラスクスを売るのは賢明だわ』


『はい、ティエラ様のおっしゃる通りです。ご存じとは思いますが、タラスクスは背の甲羅がすこぶる頑丈で動きがそこそこ素早く、口からは毒を吐きます。ですが、俺達の動きにはついてこれませんし、毒も効きません。なので対タラスクス戦も、今のノーマルドラゴンと同じ戦い方で構いませんか?』


『ええ、近寄って殴打すれば良いだけで、私は楽させて貰ってるし、全然オッケー。勿論アリスティドも構わないわね?』


『は、はい! ティエラ様の仰せの通りに!』


『ありがとうございます。では次の現場まで転移します。イェレミアスさんも、宜しいですね?』


『うむ、了解ですぞ、リオネル様』


という事で、リオネル達はタラスクス5体から100mの位置へさっくりと転移。


まずは先ほどと同じく、イェレミアスは凍結系水属性魔法で、

リオネルは威圧と大地の束縛を使い、タラスクスどもを行動不能とした。


これで準備完了である。


『では、ティエラ様は2体、その後でアリスティド様は3体へ、急所へのピンポイント殴打攻撃をお願い致します。但し、万が一の場合もありますから、油断は決してしないでください』


今回はティエラが2体、アリスティドが3体という振り分け。

小さな気遣いだが、地味でもこういうフォローが大切なのだ。


『よし! 行っくよお!』


気合を入れたティエラは先ほど同様にぶわっと飛び、何と何と何と!


1体目のタラスクスの眉間の真ん中をびしっ!とデコピン!

2体目も同じくびしっ!とデコピン!


すると!

デコピンされた2体は白目をむき、あっさりと絶命してしまった。

たかがデコピンと笑うなかれ、まさに恐怖のデコピンである。


しかしリオネルは見抜いていた。

このデコピンは大地のパワーオンリーではない。


リオネルが使う『貫通撃』同様、

デコピンの瞬間、タラスクスに傷をつけぬよう、

ティエラの強力な魔力で脳天を撃ち抜いたと。


ぶわわっ!と戻って来たティエラへ、リオネルは、


『お疲れ様です、ティエラ様。さすがですね、勉強になります』


とシンプルに労わった。


対してティエラも、にっこり。


『うふふ、さすがリオ。私がどうやって攻撃したのか、すぐ分かっちゃったのね』


『はい!』


と元気よく返事をしたリオネルは、


『ありがとうございます。ティエラ様の攻撃を今後の学び今後の戦いに活かしたいと思います。ではアリスティド様、残りの3体をお願い致します』


リオネルはいつでも前向きで勉強熱心。


そんなリオネルに気圧されたようになったアリスティドは、


『う、うむ! 分かった! 行って来るぞ!』


と、こちらもティエラに負けじとばかり、駆け出して行ったのである。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


……アリスティドは、ティエラと同じくタラスクスの眉間を攻撃し、

これまた外傷を負わせず、あっさりと3体を屠った。


こちらもリオネルは、どのように攻撃したのか見抜いていた。


機敏に駆け戻って来たアリスティドへリオネルは言う。


『お疲れ様です、さすがですね、アリスティド様。勉強になります』


『うむう……勉強になるか。ティエラ様と同じく、我の攻撃も見抜いているのか? リオネル』


『はい、完璧にではありませんが、大体は』


『ぬぬぬ、では申してみせい!』


『はい、アリスティド様は闘気をお使いになりました』


と、リオネルはあっさりと言い切った。


補足しよう。

この世界では、全ての生物が体内魔力を持っている。

中には、その体内魔力を戦う波動、気合――闘気に変換。

更にその中には稀に、アリスティドのように、

その闘気を、敵へ攻撃可能なエネルギーを持つ力へ昇華する者も居るのだ。


リオネルにズバリ指摘され、驚くアリスティド。


『む! 見抜いておったか!』


『はい、アリスティド様がタラスクスの急所へ拳を当てられるのと同時に闘気を込め、外皮を傷つけずに撃ち抜いたのが、伝わる波動から分かりましたので』


『むむむ、リオネル。その通りだ。……もしやお前も闘気を使いこなし、攻撃仕様とする事が出来るのか?』


『いえ、出来ません』


『な、何? では何故、見抜けたのだ?』


『はい、俺は元々、師匠の武闘僧(モンク)破邪聖煌拳(はじゃせいこうけん)の手ほどきを受けまして、上達するにつれ、一応ですが闘気を使えるようにはなりました』


『おお、そうだったのか。で、一応使えるとは何だ?』


『はい、一応というのは、俺、闘気は使えるのですが、気合によるメンタルアップのみのレベルに留まり、アリスティド様のように闘気を攻撃仕様には出来ません。ただその代わりにと言ってはなんですが、魔力を攻撃仕様に変換する貫通撃を習得しました』


『ほう! 貫通撃を習得したのか! それは大したものだ』


『はい、貫通撃ならば結構な遠距離から放つ事も可能となりました』


『何!? 貫通撃を遠くからか!! そ、それはどれくらいの距離から放てるのだ?』


『はい、それはですね……』


……と、盛り上がる会話、ここでティエラの教育的指導が入る。


『ごらあ、スト~ップ! 魔法談義、バトル談義は後! 戻ってからにしなさい!  今はドラゴン討伐の時間でしょ? さあリオ! 次の指示を出して!』


傍らで「うんうん」と、イェレミアスが納得したように頷いていた。

自分もリオネルと魔法談義を始めると熱が入り過ぎ、長丁場となってしまうので、

アリスティドの言動に共感を覚えるらしい。


しかし、ここは素直にリオネルは謝罪する。


『これは失礼致しました! ティエラ様!』


そして謝罪の後、すかさず指示を出す。


『……500m離れた地点にノーマルドラゴン2体を確認しました。まずこのタラスクス5体を回収し、何も問題が無ければ、そのまま転移します。皆さん、宜しいでしょうか?』


『うふふふ、問題なしよ!』


『おう! 全く問題なしだ!』


『ですな! タラスクスを回収し、次の現場へ赴きましょう』


『皆さん、了解です。ではタラスクスを回収します』


リオネルはそう言い、タラスクス5体を収納の腕輪へ搬入。


そして転移し、次の『現場』にてノーマルドラゴン2体を倒して回収。


更に転移して移動し、今度は両頭のレッドドラゴンである、

アンフィスバエナ3体を倒し回収。

更に更にヒュドラ1体をも倒し、氷漬けにして回収。


このタイミングで、ジズに牽制させつつも、まとわりつくワイバーンの群れを、

貫通撃で次々と気絶状態で撃ち落とし、

ティエラとアリスティドに止めを刺させ回収。


フロアを移動し、次のフロアでも出現したドラゴンどもを、

まんべんなく、ガンガン!ガンガン!倒しまくり……遂に目標討伐数に達した。


そんなこんなで、ぶっ通しで倒し続け、時間も夕方。


ここでリオネルは、スルーしていた巨人族どもとの戦いを解禁。


各自が思い切り通常戦闘して、『ガス抜き』を行い、

すっきりしたところで、全員で古代都市居住区へ戻ったのである。

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