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第680話「わお! やったあ! リオの作る料理がたっのしみ~! よ~っし! 私も手伝うからねっ!」

高貴なる4界王のひとり地界王アマイモンの愛娘ティエラの『教育的指導』で、

リーダーたる心得を叩き込まれたリオネル。


とんでもない存在の方々。

だが、現在はあくまで『クランメンバー』であるティエラ、アリスティド、

そしてイェレミアスに対して、リオネルは遠慮する事なく、

的確かつ迅速に指示を出し、全員が自分の特性を活かし、安全に効率よく戦う。


アリスティドは圧倒的なパワーを発揮、

襲って来るゴーレムどもと組み合い、力づくでねじ伏せた。

ティエラは、ぽんと軽く触れるだけで、

地の精霊らしく、鉱物製たるゴーレムどもの動きを止め、無力化してしまった。

そしてイェレミアスは、得意とする凍結系の水属性魔法を行使。

迫るゴーレムどもを冷気で固め、動きを止めた。


こうなればもうイージーモード。

リオネルは、戦闘不能となったゴーレムの魔法文字をさくっと削るだけ。


更に鋼鉄製、岩石製のゴーレム各500体、先に倒した各100体の計200体を入れ、

トータル1,200体を確保し、この41から50階層エリアでの目的は果たしたのである。


という事で、次は地下71階層へ転移する事に。


71階層から80階層でも青銅製、ミスリル製のゴーレムを、

同じくらいの数で確保するのだ。


度重なる行使で、今や照度調節自由自在な魔導光球で照らされたリオネルは、

仲間内限定の公開念話で呼びかける。


『さあ、皆さん、では次のエリアへ転移しますが、念の為、お伝えします。目的地、フォルミーカ迷宮地下71階層小ホール……位置を確認。小ホールの緯度と経度の座標を確定。目的地に第三者の気配なし、周囲に殺意、悪意の気配もなし……安全の確認が全て取れました。クランメンバー全員へ転移魔法を行使します』


補足しよう。


リスクを軽減し、正確に目的地へ転移する為、

転移前にリオネルは、長距離念話と広範囲索敵を組み合わせた、

『安全確認』を行っている。


この安全確認は、手に取るように把握出来る、

通常の広範囲索敵のクオリティには及ばない。


だが、リオネルが転移魔法の移動距離限界を更新する度に、

精度はアップし、距離も同じく伸びていた。


『カウントダウンします、5,4,3,2,1,転移!』


瞬間!

リオネル達一行は、地下71階層の小ホールへ移動、改めて魔導光球を4つ放つ。


これまた改めて索敵を行使すれば、探索する他の冒険者の数はわずかだ。

41階層同様、ランクB以上ではないと、このフロア71階層の探索は厳しく、

抜きんでた実力を身に着けていないと、たちまち命を失うから。


リオネルはすかさず指示を出す。


『現在位置は目的到達地点と相違なし! 周囲に殺意、悪意の気配もなし! ……安全の確認が全て取れました。無事、地下71階層の目的地小ホールへ到着です。41階層エリア同様、時間を効率的に使用する為、ゴーレム以外は基本的に戦闘を回避する方針を取ります』


「ふう」と軽く息を吐き、リオネルは話を続ける。


『ちなみにここはゴーレム以外には、リザードマン、バジリスク、コカトリスなど毒、石化を武器とする魔物が出現するエリアです。ですがティエラ様は毒、石化を無効化しますし、アリスティド様も同様です。俺とイェレミアスさんは行使した破邪霊鎧の効果でやはり毒、石化を無効化します。但し、全員慢心せず、相手の攻撃には充分注意し、慎重に対応するようにしてください』


『『『了解!!』』』


『では、出発します。一番最寄りの敵は、300m先のバジリスク3体ですが、これらを回避し、500m先のゴーレム10体をターゲットとし、ほぼ無傷で確保しましょう。ターゲット到達ルートの指示はティエラ様へお願いして構いませんか?』


『ふふふ、OK! OK! フォルミーカは地の底の迷宮、勝手知ったる私の庭みたいなものよ! ここから、敵の探知と道案内は任せて!』


『ありがとうございます、ティエラ様。そしてアリスティド様は、ティエラ様のご指示に従い、先頭に立ち、進んでください』


『うむ! 了解だ! 先ほど同様、襲って来るゴーレムどもを、我の力で這いつくばらせてやる!』


『はい、アリスティド様、宜しくお願い致します。そしてイェレミアスさんは最後方から、魔法とスキルで敵を攻撃しつつ、クランメンバーも支援してください』


『分かりましたぞ、リオネル様』


『はい、最後方はイェレミアスさんへお任せしました』


という事で、一行は地下71階層の探索を開始したのである。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


……それからもリオネル一行は、ティエラのサポートで、

順調にゴーレム捕獲を続けた。


71階層から80階層で、青銅製、ミスリル製のゴーレムを、

同じく各600体のトータル1,200体、


81階層から90階層で、銀製、水晶製のゴーレムを、

これまた同じく各600体のトータル1,200体、


全てを行動不能にして確保し、収納の腕輪へ放り込んだ。


ただ新たに捕獲したゴーレムはそのままでは従士としては使えない。


しっかりとしたメンテナンスを施した上で再起動しなければならない。

またアタッチメント装着のカスタム化も必要ではあるが……

リオネルはそんな作業も苦にせず、逆に楽しくやってしまうから全く問題がない。


こうして……作業は残っているが、立てた目標は達成され、

リオネルのゴーレム軍団は更に総数を増し、


結果ゴーレムは、岩石製1,000体、鋼鉄製1,000体、青銅製1,100体、

ミスリル製1,100体、銀製1,000体、水晶製1,000体となり、

2,600体から倍以上に増え、計6,200体の『巨大軍団』に。


……結局、この探索では、他のクランには出会わなかった。


高レベルの敵と戦い、自身の実力を高めるのを第一目的とした冒険者以外、

迷宮の深層階へは立ち入らないからだ。

ドラゴンや巨人族が跋扈(ばっこ)する121階層以降の地下庭園では尚更である。


迷宮深層階で命を懸けるリスクを冒すよりも、

比較的安全な地上で、身の丈に合った依頼をこなし、効率良く稼いだ方が賢明。

そう考える冒険者の方が圧倒的に多いのだ。


さてさて!

他の魔物との戦闘を避け、この豪華クランメンバーで効率的にやっととはいえ、

これだけの数である、途中、1時間の昼休憩をはさんだが、朝早く出発したのに、

気が付けば時刻はもう午後4時過ぎとなっていた。


リオネルは本日の『幕引き』を宣言する。


『さあ、ゴーレム捕獲目標数をほぼ達成しましたし、そろそろ探索を終了します。皆さん、ありがとうございました。本当にお疲れ様でした』


リオネルは仲間をいたわり、深く頭を下げた。

ティエラには教育的指導を受けたが、自分の仕事の手伝いだし、

親しき中にも礼儀ありである。


『この場から俺の転移魔法で150階層を経由し、古代都市居住区へ引き揚げましょう。そして今日は俺が晩飯を作りますね』


そんなリオネルの言葉を聞き、『はい!』と挙手したのがティエラである。


『わお! やったあ! リオの作る料理がたっのしみ~! よ~っし! 私も手伝うからねっ!』


すかさず……リオネルはピンと来た。

常識的に考えれば、地の最上級精霊に手伝って貰うなど、

(おそ)れ多いのだが……

ここは下手に断らず、素直にOKした方が良いのだと。


『了解です! 申し訳ありませんが、ティエラ様、お手伝いをお願いします』


『は~い! 喜んでええ!』


こうなると、アリスティドやイェレミアスも黙ってスルーするわけにはいかない。


『わ、我も手伝おう! 何、冒険者時代はたまに自炊をしていたからな!』


『わ、私も! 出来る事はお手伝いしよう!』


『おふたりとも、ありがとうございます……では、地下150階層へ戻りますね。カウントダウンします、5,4,3,2,1,転移!』


それから……150階層よりストーンサークルの転移装置を使い、

リオネル一行は、古代都市居住区へ。


……ひと休みした後、収納の腕輪から食材を出し、広いイェレミアスの屋敷で、

リオネルを中心に夕食の支度を行い、ソヴァール王国、アクィラ王国、

そしてイエーラ都合3国の料理が山のように並べられた。


ちなみに英霊のアリスティドは、リオネルの高魔力でかりそめの肉体を得ており、

食事を摂るのは全くのノープロブレムで問題ナッシング。


更にとっておきのエール、高級ワインも出て……饒舌となったアリスティドが、


『リオネル!』


『はい! 何でしょう、アリスティド様』


『頼みがあるのだが、聞いて貰えるか?』


『何でしょう、仰ってください』


『うむ! お前に装備の事を言われ、考えたのだが……』


『アリスティド様の装備ですか?』


『ああ、我が装着している装備は、分かるものが見れば、アリスティド愛用の武器防具、装身具だと分かってしまう。そうなると、あいつは何者だ?と要らぬ詮索を招く怖れがある!』


『成る程』


『でだ! お前が装着しているような今風の仕様に変えても構わないか?』


『はい、全然OKです』


『うむ! 悪いが、良く見させて貰っても構わぬか?』


『はい! 他にも予備がありますから、宜しければそちらもお見せします』


『おお、そうか、そうか!』


そんなこんなで……4人は楽しい宴を存分に楽しんだのである。

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