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第679話「言葉はきつくとも、怒るというよりも激励のコメント」

「にこにこ」と笑顔で手を振るティエラは、

彼女の突然の出現に「おお!」とびっくりするアリスティドを見て、


『あれえ? そっちのはなたれ小僧とは1,000年ぶりかしらね、うふふふふ』


と悪戯っぽく、微笑みかけた。


『う、うお!? ティエラ様か!!』


驚き続けるアリスティドへ、ティエラはぴしゃり。


『そうよ! ティエラよ! 何、驚いてるの!』


きっぱり言い放つと、ティエラの笑顔が一変!

目を吊り上げ、憤怒の表情へと変わり、

ふん!と鼻息を吐いて、腕組みをする。


『ごらアリスティド! いい加減にしなさいっ!』


これは、間違いなく激オコ状態。


本当にヤバいと感じたのだろう、

青くなったアリスティドは、慌てて(ひざまず)く。


『はは~! 久々にご拝顔するティエラ様にはご機嫌麗しく……』


アリスティドは、邂逅した地界王アマイモンとその娘ティエラから、

地の加護を授かり、『弟子』として転移魔法の手ほどきを受けた。

それゆえ、ふたりには全く頭が上がらないのだ。


そんなアリスティドへ、ティエラはガンガン言い放つ。


『久々にご拝顔して、ご機嫌麗しくじゃないわよ! あんた、さっき異界からリオが私や3界王と邂逅するのを見たって言ったわね』


『は、はいっ!!』


『じゃあさ、他にもいろいろ見たでしょ? 自身の修行の傍ら、人々の為に尽くして来たリオが今はイエーラの為に尽力している。あれこれと、奔走しているのも知ってるよね!』


『は、はいい!! ぞ、存じておりますう!!』


『であれば! なぜ超が付くくらい忙しいリオへ無茶ぶりするのよ! いまだに単なる亡霊で上級聖霊にもなれない存在のあんたが、リオの都合もお構いなしで、無理やり高貴なる4界王に会わせろなんて、おこがましいわ!』


『も、申し訳ございませんん!! あ、あれこれ言わず!! リ、リオネルに一切を任せますうう!!』


『分かったら宜しい! それと! あんたが偉そうに、リオへ授けた! っていう転移魔法だけど、元々は、お父様と私であんたへ教えたものでしょ?』


『はっ、はい! ティエラ様のおっしゃる通りです!』


『習得の経緯を口外するのを厳禁としたけれど、リオは口が堅いから、軽々しくは言わないわ』


『で、ですね!』


『リオならば、伝えて良い相手かどうかの見極めもしっかり出来る!』


『は、はいっ!』


『だから! あんたが教えた経緯は勿論! 転移魔法習得者である事を明かす判断も、リオにお任せって事で良いわね?』


『は、はいっ! 宜しいですう!』


『最後に! これだけは言っておくわ』


『な、何でございましょう?』


『リオはさ、生まれ育ったソヴァール王国の開祖たるあんたへ憧れ、敬意を払っているのでしょうけど、あんたの命令に従う下僕じゃなく! 現世に呼んでくれた召喚主なのよ! ちゃんと認識してる?』


『は、ははあ!! に、認識しておりますう!!』


『宜しい! じゃあ! 今後は召喚された守護霊という立場をわきまえ、絶対わがままを言わず、誠心誠意リオへ尽くし、上級聖霊になるべく精進するように! そうしたら私のとりなしで、お父様や他の3界王へ紹介してあげてもいいからね!』


『か、かしこまりましたああ!!』


……という事で、アリスティドの尊大さは完全に消え、

すっかりおとなしくなってしまった。

国民には伝説の英雄と称えられるソヴァール王国開祖の威厳も、

まもなく地母神になろうかというティエラへは、全く通用しないのだ。


ちなみに、これらの念話はわざと第三者にも伝わる公開念話。

ティエラとアリスティドのやりとりと聞き、様子を見て、

リオネルはといえば何とも言えない微妙な顔付きとなっていた。


だが正直、ティエラがびしっ!と、たしなめてくれて助かったのも事実。


いまだ跪いたままのアリスティドへ、

『落としどころ』を提示すべくリオネルは言う。


『あの、アリスティド様』


『お、おお、何だ、リオネル』


『ティエラ様もこうおっしゃっていますし、先ほどああは申し上げましたが、そもそも高貴なる4界王様達に関して、俺自身には特別な権限などありません。アマイモン様にはお目にかかってもしませんし』


『う、うむ……』


『召喚するまでここまでお待たせしてしまい申し訳ありませんでしたが、折を見て、ティエラ様だけではなく、俺からも高貴なる4界王様達に面会のお伺いを立ててみますよ、それで構いませんか?』


『わ、分かった! よ、よしなに頼む! こ、今後我は、お前の指示に一切従おう!』


『そうして頂ければ、本当に助かります、こちらこそ宜しくお願い致します。それとアリスティド様の武器防具は既に装備されておられるようですが、改めて支給する必要はありますか?』


『う、うむ! 剣、防具を始めとした装備品や装飾品は生前に使っておったものを、記憶を手繰った上で、リオネル、お前の魔力で近い物に復元しておる。更に必要なものがあれば、改めて復元するか、お前に現世のものを見せて貰うなりして、新たに再現しよう』


リオネルは敢えて言わなかったが……

アリスティドの出で立ちは現代のものとだいぶ違っており、

クラシックな雰囲気があった。


『了解です。英霊の装備品って、そういう事だったのですね。勉強になりました』


と、そんなこんなで、場は収まったが……次はティエラへの対応が肝心である。


まずは、商業の指南役として女神ミネルヴァ紹介取次の礼を言わねばならない。


『あの、ティエラ様』


『なあに?』


『講師役を引き受けて頂いたミネルヴァ様の件、助かりました。本当にありがとうございました』


『うふふ、どういたしまして! アールヴ族の信仰心の深さと勤勉さに、ミネルヴァ様も凄くお喜びのようだったから、私もご紹介のしがいがあったわ』


『そうおっしゃって頂けると嬉しいです。それでティエラ様はどうしてこちらへ?』


『最近リオはヒルデガルドとつるんでばかりじゃない? だからたまにはさ、私もリオと一緒に冒険がしたくなったのよ。単刀直入に言えば、このクランの臨時メンバーにしてくれない?』


『成る程! それは大歓迎です。ティエラ様に加わって頂ければ探索は万全です。……という事でアリスティド様、イェレミアスさん、宜しいですね』


対して、アリスティド様は勿論だが、

公開念話を聞き、ティエラへやり込められた経験のあるイェレミアスも、

反対をするなど、出来るはずもなかったのである。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


リオネルの後で、イェレミアスもティエラへ来訪の礼を述べ、

改めて仕切り直しを行う事に。


『ティエラ様』


『なあに? リオ』


『異界でお聞きになっていたかもしれませんが、本日の探索の予定を申し上げますね』


『うふふ、お願い♡』


『はい、本日の探索は150階層のストーンサークルの転移装置経由で、41階層へ転移。41階層から50階層で鋼鉄製、岩石製のゴーレムを、次いで地下71階層へ転移。71階層から80階層で青銅製、ミスリル製のゴーレムを、次いで地下81階層へ転移。81階層から90階層で、銀製、水晶製のゴーレムを、それぞれのエリアで捕獲します』


リオネルは探索予定を再度繰り返した上で、更に全員へ告げる。


『ティエラ様が加わりましたので、改めてポジションと役割の変更を行います。まずティエラ様は、俺とともに中堅に位置して頂き、シーフ補佐&攻撃、そして回復役もお願いします』


『うふふっ、私は3役をこなすのねっ! りょ~かいっ!』


『アリスティド様は、イェレミアスさんの警護役を変更し、最前列にお立ち頂き、盾役&攻撃役をお願いします』


『うむ、分かった! 先頭は任せろ!』


『イェレミアスさんは、最後方へ位置して貰い、魔法攻撃&支援、回復役をお願いします』


『おお、私も3役ですな。分かりましたぞ』


『そして俺、クランリーダーのリオネル・ロートレックは、中堅に位置し、シーフを始め、臨機応変に全ての役割をフォローする総合職でクランを率います』


役割分担を告げたリオネルは軽く息を吐き、


『という事で探索を開始しますが、改めて言いますと今回の探索の第一目的は出現する各種ゴーレムを再利用する為に破壊せず、ほぼ無傷で捕獲する事。探索、移動、戦闘に関しては、時間ありきで出来る限り効率良く行い、夕方には帰還しようと思います』


『『『了解!!!』』』


……こうして4人は役割分担を決め直し、古代都市の居住区を出発。

居住区内の転移装置を使い、表向きの最下層150階層のストーンサークルへ。


そこからリオネルの転移魔法で、地下41階層へ転移。

とあるクランが普通に探索しているように振舞うのだ。


この地下41階層は訪れる人数は少ないとはいえ、

ランクB以上のランカー達がクランを組み、探索を行う場所でもある。


各自が索敵を行使し、要らぬ接触は回避しているとはいえ、

もし第三者が傍から見れば、リオネル達は多士済々の個性的なクランに映るだろう。


リオネルの行使した照明魔法の光を受けているのは……

褐色の肌を持つ小柄な美少女、金髪碧眼でたくましい筋骨隆々のイケメン青年、

そしてアールヴ族の気品ある老魔法使いという、

全くタイプの違う組み合わせだからだ。


そんなキャラが立ったクランメンバーを束ねるのが、

容姿が平々凡々で短髪、栗色髪をした人間族の青年19歳であれば、

そのアンバランスさに「何故?」と疑問を持ち、

「あいつらは誰だ? 何者だ?」と、好奇心が大いに刺激されるのは間違いない。


さてさて!

朝から開始した探索は順調。

時間節約の為、うろつくノーマルオーガどもを出来る限り避け、

遭遇したら、あっさりと瞬殺しながら、フロアを探索。

ちなみに、時間が早いせいか、幸いというか、他のクランには遭遇しなかった。


結果、リオネルは地下50階層まで探索し、鋼鉄製、岩石製のゴーレムを、

魔法とスキルを駆使して、それぞれ100体ずつ、戦闘不能にして捕獲。

刻まれた真理の文字を削り、無事、従士候補として確保する事が出来た。


しかし、ここでティエラの『教育的指導』が入る。


臨機応変に全ての役割をフォローするリオネルは、

仲間や従士達を連れていてもあぐらをかいたりせず、

自分で出来る事はこまめに自分でやるし、それ以上の事もさっさとやってしまう。


つまり仲間や部下へ『丸投げ』を絶対にしないのだ。


だが、ある意味、ティエラはそんなスタンスが不満らしい。


『リオ! クランリーダーならば、少しはメンバーにお任せしちゃいなさい!』


『ええっと、でも、ですね。俺、自分でやれる事は出来る限り自分で……』


と、リオネルは柔らかく反論するが、

ティエラは皆まで言わさず、さえぎり、


『だめ! でもじゃないの! リオの立場なら、何でもかんでも自分でやらない! 貴方が自発的で優しく思いやりがあるのは分かる! しかし、過ぎたるは及ばざるが如しなのよ!』


ティエラの言葉を聞き、一瞬考えこんだリオネル。

納得したように小さく頷く。


『……成る程、クランリーダーの俺が、仲間の為に何でもやるのが、過ぎたるは及ばざるが如し。それはまあ確かに、ティエラ様のおっしゃる通りですね』


『でしょ? 仲間だけじゃなく従士にだってそうよ! ある程度、仕事を任せてしまいなさい。これから従士の数を増やすなら尚更。指示だけしっかり出して、お前達へ任せた! って、リオは主人らしく堂々としていなさいっ!』


言葉はきつくとも、怒るというよりも激励のコメント。


ここは素直に受け入れる事をリオネルは決めた。


『分かりました、ティエラ様。今後は、リーダーたる自分の立場をわきまえ、任せられる部分は任せるようにします』


『ええ! それで良いわ。リオの器なら、いずれ私やお父様たち高貴なる4界王を使いこなし、いえ、それ以上の存在からも助力して貰えるようになるわ!』


すっかり機嫌が直ったティエラは、リオネルへ向け、

満面の笑みを浮かべたのである。

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