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第661話「うふふ、まるで世界の原初の時代のようね。神が直接教えを授けるなんて」

アクィラ王国王都リーベルタースへ赴いていたリオネルとヒルデガルドは、

当初の目的を達成し、無事イエーラへ帰国した。


都フェフの官邸へ戻ったリオネルとヒルデガルドは、ひと休みして、

早速イェレミアスへ報告と打合せを行う。


リオネルとヒルデガルドは、ドラゴン討伐に付随し、アクィラ王国王家、貴族達とのつながりを作った事、宰相、経済担当大臣と交易のおおまかな取り決めをした事、

実際の交易相手であるリーベルタースのいくつかの商会とのやりとりを伝えた。


また打合せをした商会からは今後使えそうな数多の物資や特産品をたっぷり購入。

アクィラ王国の事を学ぶべく、ふたりでリーベルタース市内を、

じっくりと見学した事も伝える。


そしてリオネルは、今回のドラゴン討伐報奨金と売却で得た総額金貨13万枚のうち、自身の取り分と立て替えたふたりの滞在経費を合わせ、金貨4万枚のみを受け取り、ヒルデガルドへは、ワイバーンの討伐報奨金として多めの金貨3万枚を渡した。


今回の自分の働きには見合わない過分な金額だと、

最初は固辞したヒルデガルドであったが、リオネルが説得し、しぶしぶ受け取った。


だが、冒険者として生まれて初めて稼いだ『自分のお金』だと改めて実感し、

ヒルデガルドがとても喜んだのは言うまでもない。


これで残額は金貨6万枚。


そしてリーベルタースにおける商会の物資購入分5万枚分を差し引いた、

残りの金貨1万枚を、イエーラの国庫へ『収入』として入れたのである。


ヒルデガルドとイェレミアスは、リオネルの取り分が少なすぎると異を唱えたが、

「仕事の流れで得た臨時収入なので、イエーラへ還元します」と返されてしまう。


誠実なリオネルの性格が表れている金銭処理だと言えよう。


という事で……

当初の目的はほぼ達成された報告を聞き、大いに満足したイェレミアスは、

ふたりが不在中だったイエーラ国内の状況を教えてくれた。


どうやらイェレミアスは、ソウェル代行として、

しっかりと執務を行ってくれたようだ。


まずイエーラ全50か所の町村支援が終了。

リオネルが原野を開いた新開拓地ともども、地の加護の力も加わり、

小麦と野菜、ハーブ等、作物の生育は順調との事、

秋の収穫が本当に楽しみであり、販売分を出しても、

大幅な食糧備蓄が見込めるだろうと。


フェフ市内にある公社直営3店の売り上げは相変わらず絶好調。

第一号店の売上げがダントツなのは当然なのだが、日によって多少差はあるものの、

3店とも完売の報告が随時あるそうだ。


また直営店の売れ筋は物珍しさから国外品の売り上げが特に好調だが、

国内品の売上げも劣らず順調に伸びているという。


頑張って多く生産し、公社に納品すれば確実に売れ、

それに見合う充分な利益が得られる。

国内の様々な生産者のモチベーションも上がっているだろう。


国外品もリオネルとヒルデガルドが、ワレバッドとリーベルタースで大量購入した物資の半分以上を公社販売用分にしたので、品切れという心配は当分なさそうである。


拡張工事したフェフの中央市場も大盛況。

新設した露店効果もあり、毎日活気に満ち溢れているという。


露店はアールヴ族の料理だけではなく、リオネルが教授したソヴァール王国と、

アクィラ王国の料理店も開店し、物珍しさと美味しさから観光名所のようになっているらしい。


またリオネルが舗装化した街道により、フェフだけではなく、

イエーラ国内の人、物の流れがとても円滑だという。


ヒルデガルドが命じた人間族型のオーダーメイドベッドの注文も絶好調で、

彼女と祖父イェレミアスが実際に使用しているのが口コミで広まったらしく、

人気がもの凄いとの事。

その為、生産が需要に追い付かず、納品は1年先の状態らしい。

ベッドを作る職人の育成が急務だという話も3人の間で出た。


そして交易の窓口となる建設中の特別地区も遂に完成したという報告も来たという。

将来を考え、増築、拡張が可能な仕様にしたこの特別地区は、

いくつもの商館、市場、ホテル、飲食店などを備えたアールヴ族建築仕様のものであり、特別地区の上下水道、魔導システムによる動力と照明など、ライフラインもばっちり完備。


ただ実際に使ってみないと、勝手がわからない部分もある。


なので、アクィラ王国との交易を開始してから、

現場担当から、使い勝手のリサーチをしようという話になっていると。


イェレミアスの報告を受け、リオネルとヒルデガルドは早速動いた。


特別地区の完成に伴い……事前に本人達の希望は取ってあったが、

公社幹部を交えて、公社職員の人事配置の打合せを行ったのである。


まずは各所へ仮配族を行い、正式な交易開始の前に『研修』を実施、

出来うる限り適材適所となるようなテストをする事に。


店舗販売に関して、冒険者ギルドの商人テキストを教科書にし、

実務経験を積んだ公社職員達ではあったが、

商会の実務は全く勝手が違い、理解と習得に苦戦を強いられた。


かと言って、いつもなら「どんと来い」のリオネルも、

自身が商会の実務に長けているわけではない。


「困りましたね、どうしましょうか? リオネル様」


心配したヒルデガルドが問いかけるが……


「いえ大丈夫、上手く運ばない場合も想定内で、対策済みです。どちらにしてもお願いするつもりで講師の手配は完了しています。事後報告になりますが、これからその件でご相談させて貰えますか?」


と、リオネルは全く動じず、柔らかく微笑んだのである。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


全ての段取りが組まれてから……1週間後。


リオネルの『対策済み』は、ヒルデガルドとイェレミアスの了解を得ていた。


そして、ここは特別地区の商工会議所大会議室。


商会研修の初日当日、『特別講師』として、ある女性がやって来た 。


すらりとした抜群のスタイルを持つ、

30代前半と思しき金髪青眼の端麗な女性であり、

特にその瞳は特徴的で、輝く銀のような明るい碧眼だ。


にこやかに微笑む女性は、張りのある綺麗な声で、『生徒』達へ自己紹介をする。


「うふふ、皆さん、初めまして。私はティエラの紹介で来ました。ミネルヴァと申します。宜しくお願い致しますね」


地の最上級精霊ティエラの紹介で来たというミネルヴァという女性

やはりというか……人間族ではなかった。


ここでピンと来た方も居るかもしれない。


まさか!?と思った方も居るだろう。


そう! 何と何と何と! 

講師役の彼女――ミネルヴァは、見かけこそ人間族の女性に擬態していたが、

その正体は……

音楽・詩・医学・知恵・『商業』・製織・工芸・魔術を司る上位女神である。


ミネルヴァは、地母神見習い中であるティエラの大先輩にあたり、

リオネルから受けた相談から、問い合わせて貰ったところ……


妖精の末裔アールヴ族と異種族の人間族が協力し合うことに大いに興味を示し、

イエーラの商業研修の『特別講師役』を引き受ける事を快諾してくれたのだ。


「うふふ、まるで世界の原初の時代のようね。神が直接教えを授けるなんて」


と、ティエラから相談を受けたミネルヴァは大層面白がっていたという。


リオネルから、『上位女神が講師役』を打ち明けられたヒルデガルドとイェレミアスは、文句なく了承というか、断るなど畏れ多いと仰天した。


尽力し、話をまとめてくれたティエラへ大感謝し、

発案したリオネルをさすがだと思ったのは言うまでもない。


ちなみに御礼は、特別地区に造った商館の1軒を改築してミネルヴァの神殿とし、

彼女を交易の守護神として末永く、崇め奉る事。


イエーラの国教は、神々の長たる創世神教なのだが、

ティエラ曰はく問題は全くないそうだ。


「では、講義を始めます」


使用する教科書は、リオネルとヒルデガルドが持ち帰った、

冒険者ギルド講座の商人用テキスト各種。


という事で、商工会議所大会議室には公社幹部、職員だけではなく

最前列には、リオネル、ヒルデガルド、そしてイェレミアスまでが着席し、

真剣に商業の講義を受講。


その頃には、隣国アクィラ王国においてリオネルとヒルデガルドが、

ドラゴン討伐を行った事も、官邸の事務官、武官から公社職員達へも知れ渡り……


モチベーション上げ上げ状態の中、商業の基礎から、商会の実務まで……

1か月にわたって、徹底的に叩き込まれたのである。

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