第628話「ですよねえ! やるべき事がまだまだい~っぱいありますから! うふふふっ♡」
翌日から、リオネルとヒルデガルドは、通常業務を再開した。
官邸の事務官武官の管理職達へ集合をかけ、会議を行う。
旅の疲れはないのかという懸念が配下達からあったが、心配ご無用。
リオネルは打合せ後に、ヒルデガルドとイェレミアス、
そして自身へ全快の魔法を行使。
3人は万全の態勢で執務に臨むのだ。
まず取り掛かったのは、イェレミアスから報告のあった、
既存農地を耕作する農場主達からの不満処理である。
リオネルが魔法で開拓した新規の農地に対する国の手厚い支援を知り、
こちらにも支援がないのは不公平だと、イェレミアスへ要求があったのである。
そうなる事態を想定済みだったリオネル、対策を立てていたイェレミアス、
話を聞き、しっかりと自身の考えを述べたヒルデガルド。
打合せの結果、話はまとまり、支援の実行を決定した。
まずは、各所に同一の支援を行うと決めたのである。
先方から指定された1か所の農地に防護壁を建設する事。
そして、鍬、鋤、鎌、スコップを1セットにした1,000セットの無料貸与も行う事に。
ちなみに防護壁は、お約束とも言えるリオネルの地属性魔法を行使、
貸与用の農機具セットは、リオネルがワレバッドの街で大量購入したものを使う。
更にリオネルは、ゴーレム軍団による労働力の貸与も考えていた。
対して、まだまだ足りない、ここをああしろ、あれをこうしろなど、
農場主達からまだ不満が出る可能性はある。
だが、何でもOKして受け入れていてはきりがなく、
却って地域による格差が生まれてしまう。
あくまでも国からの、好意的な支援である事で押し切る。
確かに新規の農地開拓に比べれば、至れり尽くせりではないが、
農場主にとって、ありがたい話である事には違いない。
所変われば品変わるという。
その土地土地で、求める要望は違って来るだろう。
なので、支援をする際、不平不満のリサーチをしておけば、
町村の現状が見えて来る。
リオネルとヒルデガルドは、共通の支援をする事は決めたが、
それ以外にも土地土地の要望に対し、
ケースバイケースで対処して行こうとも考えたのである。
そんな内容をまとめ、書類にし、会議に参加した配下達へ配布しておく。
……という事で、会議の開始を告げたリオネルは、すぐ本題へ入ると告げる。
ちなみに、ひと通り説明した後に、質問を受け付けるとも告げた。
「いいですか、皆さん。農場主達から、直訴という形でいろいろ不満が来ていますが、個別に対応するときりがないので、窓口を町村の首長にします。書類に記載されているように今回の仕事は、各町村の首長達と会い、国からの共通支援策実施を告げ、打合せをする事です。訪問予定日、国からの支援の内容を記載した書類、先方で記載する地域における要望書等々を、事前に魔法鳩便で各町村首長宛へ送ります。もしも首長達の都合が悪い場合、折り返し訪問の希望日を送って貰います」
リオネルはそう言うと更に話を続ける。
「書類内容の確認も兼ねて、俺から説明をしますが、首長とすり合わせをして決めた訪問日に皆さんは出張という形で、事務官5名、武官5名、計10名で1チームとなり、イエーラの全町村の50か所へ、交代で赴いて貰います。訪問開始から10日もあれば、50の町村が全てが回れるでしょう」
「………………………………………………………………」
事務官、武官達は、書類を見て、メモを取りながら、
リオネルの話を真剣に聞いていた。
質問は後でと告げていたから、口をはさむ者は皆無であった。
「………………………………………………………………」
「共通支援の内容は、町村が希望する農地1か所への防護壁の設置、農機具1,000セット貸与のふたつです。現地では首長達から、記載済みの要望書を受け取り、それを基に打合せをし、追加事項等を更に記載して、官邸へ持ち帰るのです。また現地への移動手段ですが、俺の転移魔法で送り届け、帰りは指定の時間に迎えに上がります」
「………………………………………………………………」
「皆さんが戻ってから段取りを組み、今度は俺とヒルデガルドさんも同行し、支援実施の為、町村を回ります。俺が指定された農地で防護壁を地属性魔法で生成し、ヒルデガルドさんからは首長達へ農機具セットを1,000渡します。農機具を貸与扱いにするのは新規の農地の時と同様、大切に使って貰う為です」
「………………………………………………………………」
リオネルは他にもいくつか話をし、説明を終えた。
その後、事務官、武官達と質疑応答を行い、会議は終了した。
さあ!
『戦闘開始』だ!
めまぐるしい日々が幕を開ける。
リオネルの指示で、会議参加の管理職はそれぞれの部下に声をかけ、
イェレミアスの判断と指示で事務官、武官は5人ずつ計10人がチームを組み、
計20チームが出来た。
このチームが交代で、イエーラの町村50か所を回るのだ。
更に訪問する地域の担当が決められ、事務官は早速書類の作成を始める。
武官達は訪問先の状況確認を行い、安全確保の為の手立てを考える。
訪問スケジュールの作成は、イエーラの地理と内情に詳しい、
ヒルデガルドとイェレミアスが担当した。
一方リオネルは、官邸別棟の数部屋を借り、ワレバッドで購入した家具一式を入れ、
仮の公社事務所としての体裁を整えると、応募があった公社職員の書類審査を行った。
書類と言っても、氏名年齢職業住所と性格特技等を書いた簡単なものだが。
応募者の年齢は下は16歳、上は70歳まで、
職業も、商業経験者だけではなく、農民、職人、猟師、漁師、冒険者など、
千差万別でバラエティーに富み、人数も相当な数であった。
意外にもというのか、やはりというのか、
先日オーク宝箱の買い取りに躊躇した商店からの応募が結構あった。
気概に欠け、旧態依然とした商店の行く末に見切りをつけ、
転職を覚悟したのかもしれない。
公社の仕事や取扱商品は膨大で、人手が必要である。
リオネルはあまりにも問題があるという者以外、年齢、身分、職業に関係なく、
面接を行う事にしたのだ。
念の為、面接予定者の書類をヒルデガルドとイェレミアスにも見て貰った。
いわゆるセカンドオピニオンである。
ふたりのチェックで、更に数人が除外され、リオネルは事務官に頼み、
第一次選考通過の通告をして貰った。
そうこうしているうちに、書類が出来上がり、校正の上で完成。
同時進行していたスケジュールも出来上がり、魔法鳩便で書類を一斉に送付。
返事が来るまでに、事務官武官達のチームと綿密な打合せ。
更に公社職員の書類選考通過者達を呼び、リオネル、ヒルデガルド、イェレミアス、
そして事務官長、武官長同席の上で、第一次面接を行った。
いくつかの質問を投げかけ、能力、人柄、やる気の有無等を確認するのだ。
第一次面接でふるいにかけ、次の二次、
そして最終面接で、公社職員一期生が決定する。
そんな日々の中、ヒルデガルドは言う。
「リオネル様」
「はい」
「毎日毎日が、本当に忙しいですね!」
「ええ、これから更に忙しくなりますよ」
「ですよねえ! やるべき事がまだまだい~っぱいありますから! うふふふっ♡」
やる気満々のヒルデガルドは、多忙ながらも充実した日々を送り、
心の底から嬉しそうに笑ったのである。
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