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第600話「でも論点はそこではなく、私も料理を作りたいって事ですわ」

「人間の社会を知り、確実に一歩も二歩も前へ進んだ。私、成長しているのですね?」


リオネルの言葉を繰り返し、問うヒルデガルド。


対して、柔らかい笑顔のまま頷き、肯定するリオネル。


「はい、間違いなく成長していますよ」


「うふふ♡ ありがとうございます。嬉しいです。リオネル様にそうおっしゃって頂き、元気が出て来ましたわ」


「ええ、全てにおいてトライアルアンドエラーですよ。いろいろ試行錯誤しながら、元気良く、確実に一歩ずつ前へ進んで行きましょう」


「はいっ!」


「というわけで、そろそろ打合せを兼ねた夕食にしましょう。クロディーヌさんへ、この部屋からルームサービスを取れるよう手配をお願いしてありますから」


「へえ、ルームサービスですか? 私は初めて聞きますが、一体どのようなものでしょうか?」


「はい、説明します。ルームサービスとは、食事や飲料などを客室まで届けて貰う事が出来るサービスで、このホテルは、レストランが対応しています」


「な、成る程」


「ここにメニューがありますから、ヒルデガルドさんの好きな料理、飲料を頼みましょう。レストランの担当者が、この部屋まで持って来てくれますよ」


「わあ! それはとても便利ですね! リオネル様、メニューを見せて貰えますか?」


「了解です。どうぞ!」


メニューはこの世界の共通語で記載してあった。

クローディーヌとエステルの気配りである。


しかし、文字は読めて識別は出来ても、

ヒルデガルドには、全く料理の内容が分からない。


ひと通り眺めてから、諦めてヒルデガルドは苦笑。

料理だけでなく、飲み物も含め、リオネルへオーダーを任せると告げた。


「分かりました。じゃあ、俺の判断で選び、オーダーします」


という事で、魔導通話機を使い、リオネルはレストランへオーダー。

話はやはり通っていて、レストランの担当者は、「出来る限り早くお届けします」

と言ってくれた。


……料理と飲料が届くまで、若干の時間がある。


リオネルは、クローディーヌとエステルから貰った本部の案内図を、

ヒルデガルドへ見せ、今日案内して貰った場所のおさらいと補足説明を行う。


更にフロントで受け取ったホテルのパンフレットも、見せる。


「しばらくはこのホテルにお世話になりますから、おいおい館内の設備等を見学しておきましょう。同じものを造るとは限りませんが、特別地区に建設するホテル、宿の参考になるかもしれませんから」


「な、成る程! 本当にいろいろと勉強ですね!」


リオネルの深謀遠慮は半端がなく、立ち回りも無駄がなく、そつがない。


ヒルデガルドは改めて、そんなリオネルを頼もしく思ったのである。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


念の為、リオネルはヒルデガルドへ究極の防御魔法『破邪霊鎧』をかけた。


習得済みのリオネルと違い、時間限定、効果効能も万全とは言えないが、

物理的、魔法的なダメージだけでなく、

呪い、石化、そして毒物などにも有効だからだ。


今の状況で、悪意の第三者が毒を盛るなどとは考えにくい。

だが、万が一ヒルデガルドに相性の悪い素材があり、彼女のコンディションが損なわれる事への懸念に備えての事である。


対策を充分に取った上で、祖国の料理をヒルデガルドへ楽しんで欲しいという、

リオネルの気配りでもある。


そうこうしているうちに、料理と飲料が部屋へ届いた。


受け取ったリオネルヒルデガルドは、テーブルへ並べて行くが、

のりきれないくらい結構な量である。


「うふふふ、リオネル様とたったふたりきりで食事なんて、初めてですね」


「ははは、そういえばそうですね。官邸ではイェレミアスさんを始め、誰かが居ましたし、農地開拓の際も武官、事務官の方々が一緒ですものね。ふたりで赴いたオーク討伐の際は昼食前に帰還しましたし」


「です!」


並び終えた二人は乾杯。


気が利くリオネルはいくつかの小皿へ料理を取り分け、

いちいち説明をし、ヒルデガルドへ勧める。


全く食べた事のない料理に躊躇していたヒルデガルドであったが、


意を決し、恐る恐る口へ入れてみた。


ひと口、ふた口噛み、味を感じると、


「お、美味しい!!」


「お~、良かったです」


こうなると、ヒルデガルドは止まらない。


並んだ料理全てに興味津々。


逆にリオネルへ質問の嵐。


素材、調理方法、そして味など、尋ねては食べ、尋ねては食べの無双ぶり。


「ははは、肉や魚だけではなく、サラダも食べ、スープなど飲み物も摂った方が良いですよ」


「はいっ!」


素直に返事をするヒルデガルドは、自分が信じられなかった。

好き嫌いが若干あるのに、食べたくないという料理が皆無なのだ。


一方、食べながら打合せをしようと考えていたリオネルであったが、

予定は、所詮未定のスケジュール変更。


食事が終わり、お茶を飲みながら打合せをする事にした。


料理を食べながら、ヒルデガルドが話しかけて来る。


「リオネル様」


「はい」


「そういえばリオネル様はご自分でも料理をされるとおっしゃっていましたね。お忙しいから、中々厨房にお立ちになれないようですが、このような料理も作るのですか?」


「ええ、多少は……味はプロに到底及びませんが」


「ご謙遜を! おじいさまは、とても褒めていましたわ。リオネル様のお陰で、フォルミーカ迷宮の底で素晴らしい御馳走を食べられたって」


「いやいや、そういうのは社交辞令ですよ」


リオネルが否定すると、ヒルデガルドはいたずらっぽく「うふふ♡」と笑う。


「でも論点はそこではなく、私も料理を作りたいって事ですわ」


「成る程、そう来ましたか」


「はい! そう来ました! 私、これまで料理人に作って貰ってばかりでしたから、これからは自分でアールヴ族の料理は勿論、このような異国の料理もぜひ作ってみたいです!」


「おお、前向きですね」


「はいっ! リオネル様に、私の料理が美味しいっておっしゃって頂きたいのです! こちらも何卒! ご教授をお願い致します!」


ヒルデガルドはきっぱりそう言うと、にっこりと花が咲くように微笑んだのである。

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