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第595話「分かりましたああ!! おい、誰か!! リオネル様を総本部までご案内してくれ!!」

リオネルとヒルデガルドは、出張の準備を進め、

事前の打合せをたっぷりした上、万全の態勢で、イエーラの都フェフを旅立った。


ふたりの最初の目的地は、ソヴァール王国のワレバッド、

自身で歩く徒歩は勿論、馬車を使ったとしても、気が遠くなるくらいに、

とんでもない長旅となる。


しかし瞬時に移動する転移魔法を習得したリオネルの旅は常人の旅とは全く違う。


普通ならば長時間掛かる旅を一瞬でスキップしてしまうのだ。


というわけで、出発して30分経たないうちに、

リオネルとヒルデガルドの姿は、ワレバッドから約1㎞の街道上にあった。


ちなみに……

リオネルが失われし古代魔法、『転移』『飛翔』を行使する事は、

まだイエーラ国内の、イェレミアス、ヒルデガルドを含め、

フェフ官邸の武官、事務官など、限られた者にしか知られていない。


いずれは人間社会へ伝わり、広まるかもしれないが、

現時点では、「こちらから口外はしない」という方針を、

イェレミアス、ヒルデガルドへ伝え、他言無用を約束して貰った。

また官邸の武官、事務官達へも同じくその方針は伝え、厳守させている。


さてさて!

旅をするふたりの風体だが……


リオネルはいつもと同じ、革鎧をまとった冒険者風。


一方、ヒルデガルドも官邸においてまとう、

ソウェル専用の豪奢な法衣(ローブ)姿ではない。

リオネルに同行した魔境におけるオーク討伐の際にも使った、

彼女の護衛を勤める女子の武官がまとう革鎧姿である。


そして……

いつもの通りというか、お約束というか、

ヒルデガルドたっての望みで、リオネルは彼女と手をつないでいた。


「生まれて初めて訪れる人間社会でも、リオネルと手をつないでいれば、

不安が(やわ)らぎ、落ち着いて行動出来る」からと懇願されたのである。


加えて安全上の問題もあり、リオネルは手をつなぐことをOKした。


笑顔で寄り添い、手をつないで歩く革鎧姿のリオネルとヒルデガルドは、

人間族とアールヴ族の熱々冒険者カップルに見えなくもない。


アールヴ族の中でもとびきり美しいヒルデガルドは、

街道を行き交う多くの人々の視線を集めていた。


そんなこんなで……もう少し歩けば、ワレバッドの町である。


さすがにワレバッドの正門前へしれっと転移するわけにはいかないので、

少し離れた街道脇の雑木林へ転移し、タイミングを見て街道へ出たという次第。


街道をしばし歩くと、ヒルデガルドが話しかけて来る。


「リ、リオネル様」


「はい、何でしょう、ヒルデガルドさん」


「ま、まもなく、ワレバッドの町……ですよね?」


「はい、後10分ほど歩くと、到着しますね」


リオネルが答えると、ヒルデガルドは「ふう」と大きく息を吐く。


「い、いよいよですね! わ、私……生まれて初めての国外への旅で、それも、いきなり人間の町へ行くでしょう? リオネル様と手をつないで頂いていても、とんでもなく緊張していますわ」


「はは、分かります。俺も18年間生まれ育った故郷を初めて出る時は、先行きどうなるか、結構不安でしたから」


「リオネル様もですか?」


「はい、でもその時俺は、たったひとりのぼっちでした。今回ヒルデガルドさんには、俺がついていますから」


「ですね!」


「なので、打合せした通りにして、俺の指示にしっかりと従って頂ければ大丈夫ですよ」


リオネルがそう言うと、


「はい! 頼りにしています! 宜しくお願い致します!」


ヒルデガルドは、元気よく返事をして、にっこり笑い、

握ったリオネルの手へ、ぎゅ!ぎゅ!と力を入れたのである。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


久々に訪れたが、ワレバッドの町の正門は相も変わらず混雑していた。


入場手続きを待つ人々が数多く並んでいる。


リオネルとヒルデガルドが並ぶと、何人もの若い冒険者が話しかけて来た。


「綺麗なアールヴ族のお姉ちゃん、ワレバッドに何の用だい?」

「可愛いねえ! 俺の方がそんな若造より、町の事情に詳しいぜ、案内してやるよ」

「とびきり美味い店があるんだ! 一緒にメシ食わないか? 御馳走するよ!」

「遊びに行こう! 楽しくて良い店知ってるよ!」


などなどなど。


下心ありありの彼らの誘いは、いわゆるナンパである。


当然、人間の男子からアプローチされた事がないヒルデガルドは怯え、

リオネルへ、ひしっ!としがみついた。


対してリオネルは笑顔。


ヒルデガルドを(かば)いながら、ナンパ男子達へ、きっぱりと言う。


「彼女が怖がっていますから、ナンパはお断りです。他を当たってください」


そして、反論の余地を与えず、ぎん!と、彼らを一瞥。

軽めの威圧スキルを使った。


「ひい!」

「うわ!」

「あう!」

「ひええ!」


短い悲鳴をあげ、逃げ出して行くナンパ男子達。


ナンパ男子達が見えなくなると、ヒルデガルドの身体の硬直が取れ、

なよっと脱力した。


リオネルは、ヒルデガルドの身体をしっかりと支える。


「大丈夫ですか?」


支えられたヒルデガルドは、ふう~と大きく、安堵のため息を吐き、


「リオネル様」


「はい」


「彼らが突然、私に近寄り、声をかけて来て、とても驚きました。あれが……ナンパですか?」


「そうです」


「リオネル様に教えて頂いた通りでした。面識ない者に対して、いきなり、公共の場で会話し、まず連絡先交換を持ち掛け、更にデートへ誘い、キス、それ以上へ持ち込む行為。まさに異性をピックアップ、拾うという事なのですね」


「ですね。もし優しい言葉をかけられても、大体が下心ありきですから、うかつに、ついて行かない方が賢明です。危険な場合も多いですから」


「はい、分かりました。勉強になりましたわ。守って頂き、感謝致します」


そうこうしているうちに、順番が来て、

リオネルは、名乗り、冒険者ギルドの所属登録証を見せる。


ミスリル製の所属登録証に燦然と輝く『ランクS』の文字。


ワレバッドの門番は、冒険者ギルド総本部から派遣され、勤務する冒険者である。


リオネルの名を聞き、所属登録証へ記載されたランクSの文字を見て、

びっくり仰天。


無理もない。


『荒くれぼっち』リオネルの名を知っていたのは勿論、

ランクSの冒険者はいわば超が付くレジェンド。


このワレバッドの領主でもある総本部マスター、ローランド・コルドウェル以外に、

世界でも数人しか居ないからだ。


「リ、リオネル様!! ワレバッドへ!! ようこそおいでくださいましたああ!! ど、どちらへ行かれますか!!」


「はい、とりあえず冒険者ギルド総本部へ行こうと思っていますが」


「分かりましたああ!! おい、誰か!! リオネル様を総本部までご案内してくれ!!」


……という事で、門番により冒険者ギルドの馬車が呼ばれ、

リオネルとヒルデガルドは、総本部へドナドナされたのである。

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