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第590話「これは、村民もやる気になりますよ!」

任せて欲しい!

というように、ゴーレムは吠えると、一斉にまめまめしく働きだした。


リオネルが出動させたゴーレムは身長2mから3mくらいまで。

大巨人というまではいかないが、人間以上の体格でパワーは充分。


人間ほど機敏ではないが、原野に転がる大中小の岩を軽々と持ち上げ、

どんどん防護壁の外へ運んで行く。

あっという間に、大量の岩が片付けられ、

防護壁に囲まれた広大な原野は、凹凸のある何もない空き地となった。


……しかし、まだまだ作業は序の口である。


「よし! お前達、次はこれを装着し、整地作業をするんだ」


リオネルが収納の腕輪から「搬出した」のは、特注のゴーレム用アタッチメント。


ゴーレムがいろいろなシーンで、多種多様な任務に対応出来るよう、

様々な町で、リオネルがこまめに魔道具店で買い求め、

いくつかには改良を加えているものだ。


このアタッチメントには、戦闘用、作業用等々、

用途により、いろいろなバリエーションがあるが、

リオネルが有するゴーレムの大部隊に合わせ、とんでもなく大量で種類も多い。


今回は整地は勿論、耕作する為、(すき)、スコップなど、

農機具を模したものを搬出していた。


リオネルが命じると、ゴーレム達は、自身で腕にアタッチメントを装着し、

一斉に整地を始めた。


ひたすら土を掘り返し、ひたすらならすという力仕事。

人間より膂力に優れ、疲れ知らずの疑似生命体ゴーレム達にはぴったりの仕事だ。


掘り返して出た、地中の岩も片付けられ、みるみるうちに整地は終了。

リオネルは更に、ゴーレムへ肥料まき、畝づくり、を命じ、

片隅に、井戸も掘り、農業用水用の水源を確保。


こうして荒涼な原野は、肥沃な農地へと変貌。


最後にリオネルが地属性魔法で、「(めぐみ)よ、あれ!」と、

ティエラばりに、植物が元気よく繁茂する地の加護を与えた。


開拓したばかりの農地は、聖なるまばゆい光に包まれ、

作業は完全終了したのである。


作業開始から、ここまで約1時間。

通常の作業ならば、作業人数の問題はあるが、最低1か月はかかる仕事であろう。


リオネルは、ゴーレム達を呼び、収納の腕輪へ『搬入』した。

大量のゴーレムが一気に消えるのは、まるで手品のようだ。


アールヴ達が唖然とする中、リオネルは、ヒルデガルドへ話しかける。


「ヒルデガルドさん」


「は、はい!」


「まだ調整、もしくは改善の余地はありますが、ご覧の通り、とりあえず、開拓作業は終了しました。村長さん達にも一部始終を見て貰いましたが、再度農地をじっくりと確認して貰い、その上で、何を作付けするか、要望等を話し合い、相談しましょう」


「わ、分かりました!」


ヒルデガルドは武官、事務官へ命じ、村長以下、村民達を農地へ招き入れた。


全員で、農地を散策する。


ゴーレム200体の迫力に気圧されていた村長達も、実際に土に触れてみて、

確かな手ごたえを感じたようである。


感極まった村長が駆け寄り、跪くが、

ヒルデガルドは、立って対面で話すように告げる。


村長は恐縮しながらも、ゆっくりと立ち上がる。


「では、失礼して、立ってお話しさせて頂きます! ヒルデガルド様!」


「うふふ、いいわよ、村長、何かしら?」


笑顔のヒルデガルドへ、村長は声を張り上げる。


「はい! 国の施策という事で立ち合いに参りましたが、ここはウチの村に近くて、広いし、土の質も素晴らしいです。頑丈な防護壁もあり、安全に農作業が出来ます。本当に3年間は、あらゆるものを国から無料で提供して頂き、土地使用代も一切徴収しないのでしょうか? 村民は身体ひとつで働けばよろしいと」


「ええ、その通りよ。身体ひとつで働けるわ。まあ無料といっても念の為、農作業着、農機具は要返却の無料貸与で、種、苗、肥料などは無料提供。土地代も徴収しない。ここまで好条件だと、貴方達もやる気になるでしょ?」


「はい!」


農作業着、農機具が要返却の無料貸与なのは、ある程度の期間、

大事に使用して欲しい為の方策。

種、苗、肥料などが無料提供なのは、完全に消耗品であるからだ。


ここでヒルデガルドは笑顔から一転、きりっと真剣な表情となる。


「但し、いくら必要物資がタダだからといって、不足を偽っての不正申請は厳罰になり、罰金、耕作権没収、責任者、当事者の収監など、重いペナルティが課されるからね」


そう、国から支給される物資を不正に悪用したら、容赦なく処罰される事は、

村長以下へ認識させなければならない。


「は、はい! じゅ、重々! こ、心得ておきます!」


ヒルデガルドは、厳しくリアルな現実がある事も、村長へ念を押す。


「良い話だけでなく、厳しい条件もあるわよ。諸経費が大幅に軽減される代わりに、初年度からまる3年間は収穫高に応じて、半分の50%という高率の税金を納めて貰うから。でも4年目から税率は30%へ下がる。10年目以降で国からの補助が一切不要というのであれば、税率は更に、通常農地同様、15%へ下がるわ」


「はい! 厳しい事も、もろもろ認識しております! ですが10年間、規定の収穫高を上げれば、11年目にはこの素晴らしい土地を村へ譲って頂けると! これは、村民も大いにやる気になりますよ!」


「ええ、その通りよ。目標さえ達成すれば、この土地は村へ無償で譲渡する。詳しくは契約書を見て、確認して。質疑応答も行うから、何でも聞いて頂戴」


「はいっ! かしこまりました!」


「さあ、村へ戻り、作付けも含め、相談しましょう」


ヒルデガルドは微笑むと、村長達へ帰村するよう促したのである。

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