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第585話「うわべだけのおべっか、美辞麗句のみでなく、相手の誠実さ、いざという時の行動を見るようにしましょう」

剣を構えたその武官は、


「うおおおおお!!!」


と、雄叫びをあげ、リオネルへ向かって来た。


剣を振りかざし、リオネルへ一撃を入れようとする。


しかし、リオネルはあっさりと(かわ)した。


「く! くう!! お、おのれっ!」


悔しがる若い武官は、第二撃、第三撃と続いて攻撃するのだが、

同じく、リオネルにあっさりと躱されてしまう。


リオネルは、読心のスキル――心を見通すサトリの能力を有しており、

その能力を使い、相手が隠している弱点を露呈させ、攻撃する。

そして相手の意思を読み取り、行動を先読みして、攻撃を回避する事も可能だ。


しかし!

サトリの能力を使うまでもなかった。


武官の動きは隙だらけ。


リオネルは読心を使うまでもなく、武官の身体の動きのみで攻撃を見切り、

3回の攻撃全てを、簡単に躱したのだ。


焦る武官が、第四撃を入れようとした瞬間!


リオネルの雷撃剣が、武官へ振るわれる。


びしっ!


と武官の革鎧を打つ音。


その音とともに、びりっ!びりっ!びりっ!と、

軽度の雷撃が武官の心身を襲い、


「ぎゃあ!」


と短い悲鳴をあげた武官は、自身の剣を放し、ぺたんと地へ座り込んでしまった。


呆然とする武官。

初めて受ける雷撃に、相当ショックを受けたようだ。


「大丈夫ですか? 俺も初めて経験した時に感じましたが、結構な衝撃ですよね」


リオネルは手を差し伸べ、ゆっくり武官を立たせると、

すかさず『全快』の魔法を発動。


武官の体力は完全に回復。

雷撃の痺れも取れ、失われた気力も戻った。


「え!? えええ!!??」


初めてリオネルの魔法を体感する武官は、 驚き戸惑っている。


全てが常識外。

最高位クラスの回復魔法を行使する為には、難解な言霊、複雑な動作、長い時間が必要なのに、リオネルは無詠唱、予備動作なし、神速であっさりと発動させたからだ。


「お疲れ様でした。貴方は離れて少し休んでいてください。……では、次!」


一番若い武官とはいえ、それなりに鍛えており、

剣技に関してのみいえば、結構な腕前。


それが、まるで子ども扱いされ、一撃で膝をついた。


その上、回復魔法まで……


……その様子を見ていた武官たちも、

最初に手合わせした若い武官同様、驚き呆然としていたが、


しばし経ち、何とか、落ち着きを取り戻すと、目を見合わせ……


「つ、次は自分が!」


と、自身を鼓舞し、絞り出すように声を出して、雷撃剣を構えると、


「お、お願いしますっ!! だああああっっっ!!!」


大声を出し、突っ込んで来たのである。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「ま、参りました!」


この官邸に詰める武官は、約300人。

警備等々、任務もあるから、全員ではないが、訓練場へ来たのは200人余り。

ざっと2/3の武官が、リオネルへ模擬戦を挑んだ事となる。


その200人余りの誰もが、リオネルへ一撃も入れる事が出来なかった。


最後に挑んだ武官たちの長――従士長も全く同じであった。


最初に挑んだ若い武官同様、三撃入れて、(かわ)され、

カウンター気味に一撃を入れられ、従士長もあっさりと膝をついたのである。


「はい。では、従士長さんにも全快をかけておきますね」


「は、はい……ありがとうございます」


リオネルのペースは全く変わらない。


一撃で倒し、最高位の回復魔法、全快を行使するのだ。


剣技も完璧、魔法も完璧。


息ひとつ乱れず、魔力が切れる気配もない。


リオネルへ、付け入る隙は皆無である


最後に戦った従士長は言う。

悔しさをにじませながら。


「リオネル様!」


「はい」


「ソウェルをお守りすべき任務に就く、我々武官の力不足をとても痛感致しました。ある程度想定はしておりましたが、完全に子供扱いされ、一方的に遊ばれてしまうとは……」


オークキングどもの死骸を見つめ、ふうと息を吐き、従士長は更に言う。


「しかし、ここまで酷く惨敗しても、我々はみじめではありません」


「………………………………」


「なぜならば、長年にわたり、我がイエーラが悩まされて来たオークどもを、リオネル様、貴方はいとも簡単に、たった半日で倒してしまわれた」


「………………………………」


「この結果も合わせ見て、まさに我々とはものが違う。実力差がはっきりしている。持ちうる器が違いすぎると認めざるをえません」


「………………………………」


無言のリオネルは、従士長の話をじっと聞いていた。


従士長は、リオネルを見つめつつ、なおも話を続ける。


「我々はこれまでの考え方を改めます。アールヴ族が、数多ある中で、極めて優秀な種族だという誇り――矜持を胸に抱きつつも」


「………………………………」


「この世界は広いのだと! 人間族を始めとして、他の種族にも、我々が知りえなかった貴方様のように、素晴らしい逸材、大器はまだまだ居る。そんな尊敬の念を持ちたいと思います」


ここでようやく、リオネルは口を開く。


「良き考えだと思います。ちなみに俺は適材適所という言葉が大好きです」


「え? 適材適所……ですか?」


「はい! 適材適所です! つまり種族にこだわらず、年齢性別身分にもこだわらず、能力や特徴に応じて、それに相応しい地位や任務につける。これこそ、これからのイエーラに必要なスタンスだと思いますから」


「な、成る程!」


「そんなスタンスありきで、従士長さんのおっしゃる通り、互いに尊敬の念を持ちたいと思いますよ」


「はいっ! ですね!」


「但し、性根が腐った悪い奴はどこにでも、どんな種族にも居ます。魂が汚れている奴に、付け込まれないよう、陥れられないように注意しないといけません」


「はい!」


「国交を開けば、これから様々な相手に出会い、やりとりする事になりますが、うわべだけのおべっか、美辞麗句のみでなく、相手の誠実さ、いざという時の行動を見るようにしましょう」


「はいっ! 理解致しました! 警備担当たる者、重々、気を付けます」


という従士長との会話が終わった、その時……


「リオネル様ああ!! 商人たちとの、宝箱――戦利品の確認と価値の計上が終わりましたわああ!! 私にも武術指導をお願いしま~すうう!!」


満面の笑みを浮かべたヒルデガルドが、駆け寄って来たのである。

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