第562話「はい! 俺が魔物を倒す間、同時進行で進めた方が効率的ですから」
その後も、リオネル、ヒルデガルド、イェレミアス3人の打合せは続けられた。
一国に対し、町や村。
スケールは全く違うが、方法は踏襲出来るとリオネルは考えたのである。
控えめに言葉を選びながら、リオネルは自身が経験した、
『町村支援施策』について、話をしたのだ。
そして論より証拠。
話だけでなく、以前、モーリスたちと相談し、
作成した『企画書』もふたりへ見せる。
その全てを実施済みだとも伝えた。
リオネルから差し出された数枚の書類。
ヒルデガルド、イェレミアスは『企画書』に熱心に目を通す。
様々な魔物の討伐、治安回復。
町村自警団への武技の指導、昼夜の警備方法の指導、
及び周囲のパトロール方法の指導。
外敵から防ぐ防護用の岩壁の建設と整備。
救援資材の輸送と搬入、または依頼地からの荷物送付。
農地の開拓、開墾、畝づくり、作物の種付け、植え付けの各手伝い、
灌漑設備建設の協力。
墓地の除霊、浄化。
企画書には、各項目が箇条書きで記され、
具体的な方法の簡単な説明も付けられていた。
以前話を聞き、企画書を見た事のあるイェレミアスは、
納得してうんうんと頷いていたが……
初めて話を聞き、企画書を見たヒルデガルドは驚愕し、大きく目を見開いていた。
まさか、ここまでとは思わなかった。
ヒルデガルドの気持ちをシンプルに表せば、こういう事だっただろう。
最上位ランク冒険者のリオネルは、底知れぬ魔法とスキルで魔物を倒し、
加護を受けた精霊の力で、今よりも更にイエーラを自然豊かな国にしてくれる……
……くらいの認識と期待しかなかったからだ。
「企画書に記載されている以外、他にも、もろもろやりますが、商業的な指導、支援も行った事があります」
と、リオネルは言い、
「自国だけでなく、他国からも人が来るような商店の企画、運営、店舗レイアウトのデザイン提案と建設、商品の仕入れルート開拓、販売、売上管理の指導なども行いました」
そう言いながら、リオネルはキャナール村の店舗開店の事を思い出していた。
モーリス、ミリアン、カミーユは元気に暮らしているのかなあとも思う。
そんなリオネルの言葉に対し、ヒルデガルドは言う。
「……リ、リオネル様、古来よりこのイエーラは地産地消、自給自足を旨とし、出来る限り、他国の力を借りずにやって来ました。そして基本的には最低限の国交しか行わずに、鎖国をモットーとしています」
「成る程。イェレミアスさんから事前に聞いて、その方針と歴史は理解しています。ただ全ての物資を自国で賄うのは厳しいと認識しているのなら、まずは輸出入を盛んにし、イエーラ国内の物資を豊富にする事を考えてみませんか」
「物資を……豊富に」
「ええ、イエーラ国内で自給自足が不可能な物資は、数が少ないと割高になって国民生活を圧迫します。逆にイエーラの名産品をどんどん売り、外貨をたくさん稼ぐ事も考えましょう」
「な、成る程……」
ガンガン、ぐいぐい来るリオネルに、ヒルデガルドは完全に圧倒されていた。
傍らで見守るイェレミアスは、孫娘の動揺ぶりを見て、
面白そうにニヤニヤしていたのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
リオネルは、更に言う。
「ヒルデガルドさん、何事もトライアルアンドエラーです。全てが完璧に行くなどありません。行動しなければ何も起こりません」
「は、はい」
「まあ失敗しすぎは良くないですが、リスクの少ない方法で、試行錯誤しながらやって行きましょうね」
「は、はい」
「ここでひとつ提案します。まずは、イエーラ国内の魔物の害を無くし、治安を回復しましょう。国民が安心して暮らせるようにするのです」
「で、ですね。リオネル様のおっしゃる通りですわ」
「ありがとうございます。俺の考えでは、被害が大きいところを優先し、片っ端から、処理して行きたいと思いますが、もし行き先の希望があれば言ってください。ちなみに明日、朝一番で出撃します」
「え? 明日朝一番?」
ヒルデガルドは驚きっぱなし。
まだ到着した当日である。
疲れを取ってからとか、少しイエーラに慣れてからと、
リオネルが言うと思ったのだ。
「はい、魔物の害を放置してはおけませんから。俺は朝の4時に起床し、5時くらいには出たいと思います。現地の案内と討伐見届けの立ち合い人として、事務官、武官の方を何人か、お借りしますね」
「現地の案内と討伐見届けの立ち合い人として、事務官、武官を何人か、借りる……」
「はい、急で申し訳ありませんが、急ぎヒルデガルドさんの方で人選を行い、本人たちへ通告し、スケジュール調整をお願いします」
「りょ、了解です」
「明日、俺が魔物討伐に行っている間、ヒルデガルドさんとイェレミアスさんで、開拓可能な原野等をリストアップしておいてください。農地等へ変えるべくゴーレムに作業させます」
「げ、原野を!? 農地へ!?」
「はい! 俺が魔物を倒す間、同時進行で進めた方が効率的ですから」
「は、はいっ!! わ、わ、分かりましたああ!!」
果断なく、提案をしてくるリオネル。
ヒルデガルドは自分のペースが全くつかめず、ず~っと驚き、
戸惑いっぱなしだったのである。
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