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第561話「お、おじいさま!!! な、何故!!! そ、そのような契約を結ばれたのですかっ!!!」

アールヴ族の国イエーラの都フェフへ到着した日、

地界王アマイモンの愛娘ティエラのセッティングで、精霊たちとともに、

ヒルデガルドたちへ、自己紹介をした冒険者リオネル・ロートレック。


その際、いろいろあって、心の距離も縮まり、ヒルデガルドたちアールヴ族と、

気安く話せるようになった。


火蜥蜴サラマンダーに擬態したファイアドレイク以外の精霊たちが、

名残惜しそうに帰った後、リオネルは官邸内へ移動。


ソウェルの執務室において、

ヒルデガルド、イェレミアスとともに、3人で今後についての打合せを行った。


今回の『イエーラ富国作戦』は、腰を据えて行うものであり、

リオネルにとって、間違いなく長期間の滞在となる。


否、滞在ではなく『住み込み』という方が遥かに近い。


それゆえ、衣食住を確保しなければならないだろう。


ただリオネルは、備えあれば憂いなしを、心がけている。


だから『衣』に関しては、これまでの旅で備蓄したものが、

どっさりと収納の腕輪の中に入っている。


『食』も備蓄してはあるが、さすがに自炊ばかりしていたら、

招いてくれたイェレミアスの立場を悪くしてしまう。


『衣』に関しては、

「自前のものがあり、改めて用意して貰う必要はない」

と告げれば、ヒルデガルドはひとつ提案をして来た。


「自分へ仕える仕立て屋、防具屋へ命じ、採寸をし、リオネル様用の、アールヴ族の衣服、防具を用意させます」というのだ。


ヒルデガルドの提案を聞き、イェレミアスも賛成した。


契約の遂行上、リオネルが必要なものは、

イェレミアスの負担で用意すると記載されている為だ。


リオネルも少し考えた上、ヒルデガルドの提案を了承した。


衣服、防具は着慣れたもの、使い慣れたものが一番なのだが、アールヴ族の出で立ちで、事を運んだ方がスムーズに行く場合もあると考えたのだ。


まさに郷に入っては郷に従えである。


次に『食』は、やはりというか、

ヒルデガルドから、官邸において、

イェレミアスも交え、3人一緒に食べようと言われた。


これは即座にOKした。


ヒルデガルド、イェレミアスと一緒に、楽しく同じ食事を摂る事で、

コミュニケーションの円滑化をはかるのは勿論、

打合せを兼ねるのも効率的だと考えたのである。


加えて、食べものに好き嫌いのほとんどないリオネルは、わがままは言わない。


ハーブをふんだんに使ったアールヴ族の料理を食べたいと思ったし、

自身が習得したいとも考えていた。


また、


「良かったら、たまには人間族の料理を振る舞います」


とリオネルが言えば、対してヒルデガルドは勘違いしてか、


「では、特例として人間族の料理人を雇用し、このフェフまで呼び寄せましょう」


と言い出した。


どうやら、リオネルが「人間族の食事を望んでいる」と考えたらしい。


しかし、リオネルは微笑んで首を横へ振り、


「いえ、(つたな)いですが、俺が作りますから、人間族の料理人雇用は不要です」


と言えば、ヒルデガルドはびっくり。


「リ、リオネル様は!? み、自ら料理もされるのですか!?」


「はい、俺、食べるのも、料理するのも好きなので」


「そ、そうなのですか……」


「はい! 元々は俺も、料理はした事がありませんでしたが、家を出てすぐ暮らした宿屋で覚えました」


するとフォルミーカ迷宮で、リオネルの料理を食べた経験のあるイェレミアスが、

喜色満面で身を乗り出し、


「ありがたい!! リオネル様のお作りになるお料理を!! 再び食べる事が出来るとは!!」


などと言い、ヒルデガルドも祖父の言葉に釣られ、


「ぜ、ぜひ!! よろしくお願い致します!!」


と頼み込んでいたのである。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


とんでもない能力を持つとともに、自ら料理までする人間族の少年。


ヒルデガルドは驚きと尊敬、そして自分でも理解出来ない不可思議な感情とともに、

リオネルをじっと見つめていた。


さてさて!

最後の『住』であるが、リオネルは官邸付近に手ごろな空き家があれば、

借り受けたいと申し入れる。


対してヒルデガルドは、即座に却下。


「空き家ではなく、リオネル専用の屋敷を新築する」


と言い出した。


そして「屋敷が完成するまでは、官邸内の客室で仮住まいをして欲しい」とも言う。


これまた少し考えたリオネルは、半分だけ申し入れを受ける事にした。


「では、お言葉に甘え、官邸で仮住まいをさせて貰います。但し、イエーラでの役目を終えたら、俺はまた旅に出ます。なのでわざわざ専用の屋敷を造る事は必要ありません」


と答えた。


ヒルデガルドは、再び、びっくり。


「ええええ!!?? リ、リオネル様には、ず~っと、このフェフにいらして欲しいのですが……」


「いえ、申し訳ありませんが、俺はまだ旅の途中ですので」


リオネルからきっぱりと言われ、困惑したヒルデガルドは、

すがるような眼差しを祖父へと向ける。


「おじいさま……」


「ヒルデガルド、リオネル様とはな、リオネル様ご自身のご判断でこのイエーラを離れる事をOKするというご契約となっているのだ」


「そ、そ、そんな!!!」


「イエーラで、やるべき事を終えたと、ご判断されたら、リオネル様は旅立たれる」


「お、おじいさま!!! な、何故!!! そ、そのような契約を結ばれたのですかっ!!!」


イェレミアスへ喰ってかかるヒルデガルドは完全に取り乱していた。


ここでリオネルは指をぱちんと鳴らし、『全快』の魔法を発動。


全快は、ケガの完全治癒、体力の完全回復だけでなく、

強力な鎮静効果も備えている最上位クラスの回復魔法だ。


「あ、あうう!」


『全快』を受け、短い悲鳴をあげたヒルデガルドは、

みるみるうちに落ち着きを取り戻し、体力と気力がみなぎった。


勿論、全快は、無詠唱の神速発動である。


またもリオネルの能力の一端に触れてしまった。


ずっと、ず~っと、驚きの連続。


そんなヒルデガルドに対し、リオネルは微笑みを変えず、


「俺がイェレミアスさんに代わりお答えします。ヒルデガルドさんが成長し、ソウェルとして、一人前になって貰う為ですよ。俺は通りすがりの冒険者で、単なる助っ人に過ぎませんから」


しれっと、言い放っていたのである。

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