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第548話「わああっ!! リオネルさあん!!」

リオネルは当面の連絡先として山猫亭を告げ……

アウグストのいろいろな条件提示を辞退し、フォルミーカ支部を後にした。


これで当面の予定は済んだ。


冒険者ギルド総本部のローランド・コルドウェル伯爵から連絡が来るまで、

しばらくのんびり出来るかなと、リオネルは思う。


ローランド様から連絡が来て、ランクSに昇格し、所属登録証を改めて貰ったら、

出発する予定である。


どうせアールヴ族の国イエーラへ赴けば、再び忙しくなるのだ。


それまでフォルミーカ滞在中は、休養と充電に充てようとも考える。


フォルミーカの地下街は、相変わらずごった返していた。


人間族、アールヴ族、ドヴェルグ族等々、様々な種族が混在している。


そういえば……と、リオネルは思い出す。


フォルミーカ迷宮で出会ったドヴェルグ族、バルトロメイ・アンドルリークたちを訪ね、ドヴェルグ族の国ロッシュへも赴く事になる。


その際、アールヴ族とのわだかまりを解消する為、

族長ブラーズダ・バルヴィーンとも会い、話をしなければならないだろう。


アールヴ族の国イエーラ行きに備えて、

リオネルは、フォルミーカ地下街の様々な店舗を巡り、買い物を行う。


市場へ行き、食料品、嗜好品をメインに、

また商店街では、資材、武器防具、魔道具、魔法ポーション、雑貨等々、

もろもろを多めに購入する。


必要があれば、一度に樽単位で大量購入をする事もあるが、

リオネルは、こまめに少量ずつ買う事も苦ではない。


このようにして、収納の腕輪には数年分の物資を備蓄をしているのだ。


備えあればうれいなしの心構えが、何度役に立ったか、分からない。


ちなみに冒険者ギルドのカードシステムが、ここフォルミーカにも普及しており、

買い物はとても楽であった。


さてさて!


たくさんの買い物を終えたリオネルは、魔道具店クピディタースへ向かう。


イェレミアスと店主のボトヴィッドの『積もる話』にめどがついていたら、

宿屋・山猫亭へ移動するつもりである。


山猫亭食堂の一角で、リオネル、イェレミアス、ボトヴィッドの小宴を行う予定だ。


「ただいま、戻りましたあ!」


声を張り上げ、リオネルがクピディタースへ戻ると……

イェレミアスとボトヴィッドは、まだ話し込んでいた。


いわゆる「話が尽きない」という状態らしい。


ただ、イェレミアスは古代遺跡の真相については伏せている。

下手に話して、親友をもめごとに巻き込みたくない、

という理由だと告げられ、リオネルも賛成していた。


傍らで、しばし話に付き合うリオネルであったが……

そろそろ頃合いである。


「あのう、イェレミアスさん、ボトヴィッドさん、腹減りませんか?」


盛り上がる積もる話に水を差さないよう、気遣う物言い。


リオネルの気配りに感心したふたりは、すぐ山猫亭への移動を了解したのである。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


戸締りし、クピディタースの出入り口扉に、「閉店」の札を出し、

留守番をゴーレム、アートスに任せたボトヴィッド。


リオネルを先頭にし、3人はしばらく歩き、山猫亭へ到着する。


「ただいま、戻りましたあ!」


リオネルは、先ほどクピディタースへ戻ったのと同じ物言いをし、

山猫亭の出入り口をくぐった。


対して、すぐに反応したのは、これまた外出から戻っていたブレンダである。


ぱああっと、花が咲いたように、満面の笑みを浮かべた。


「わああっ!! リオネルさあん!!」


素直に笑えるって良いな、と思いつつ、リオネルも微笑む。


「こんばんは。ご無沙汰しています、ブレンダさん」


「もう! リオネルさんったらあ! 久々に会ったのに、相変わらず、淡々として超クールなんだからあ!」


と言いつつ、ブレンダはリオネルの背後に居るふたりの老人に目を留めた。


「ええっと、母さんから聞いてるけど、もしかして、この方々が……」


「はい、迷宮で知り合った先輩冒険者のイェレミアスさんと、魔道具店クピディタースの店主、ボトヴィッドさんです」


リオネルがイェレミアスと、ボトヴィッドを紹介すると、


「お待ちしておりました。はじめまして、山猫亭のブレンダと申します。ようこそ、いらっしゃいました」


深くお辞儀をしたブレンダは、にこやかにあいさつした。


イェレミアスと、ボトヴィッドもあいさつする。


「はじめまして、アールヴ族の冒険者イェレミアスです。しばらくお世話になりますよ」


「はじめまして、魔道具店クピディタースの店主、ボトヴィッドだ。同じフォルミーカへ店を出している者同士、今後ともよろしくな」


母ブレンダから聞いていた通り、リオネルの連れて来たのは女子ではなかった。


大いに安堵したブレンダは、改めて満面の笑みを浮かべ、

3人を山猫亭の食堂へと、(いざな)ったのである。

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