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第528話「後でイェレミアスと話す時、質問出来る雰囲気ならば、尋ねれば良い」

リオネルは、アールヴ族の魔法使いイェレミアス・エテラヴオリに(いざな)われ、地下150階層のストーンサークルに発生した空間の裂け目に突入。


身体が浮くような不可思議な感覚を味わった後、

到着した階層は何階層なのか全く不明である。

また周囲は荘厳で巨大ともいえる、想定上な地下都市の風景。


……肩へ妖精ピクシーのジャンを乗せたリオネルは引き続き、

先導するイェレミアスの後をついて行く。


現在、自分達一行が歩いているのは、このフロアの主幹道路のひとつらしい。


踏みしめる道路の仕様はといえば、きめ細やかな模様が入ったグレーの石を敷き詰めた、綺麗な石畳。

長さは、はるか遠くまで真っすぐと延びていて、見当もつかない。

幅も約20m近くあるだろう、

正直、広くてゆったりとしていて、とても歩きやすかった。


そして、この道路の両側には、レトロなデザインの、

店舗?らしき趣きのある家屋がびっしりと建ち並んでいる。


しかし店舗の中には、誰ひとり居らず、まるでゴーストタウンという雰囲気だ。


イェレミアスとリオネルが進む中間には、

「もしも、リオネルを害そうとする、ふらちものが居れば、容赦なく一切を排除する!」

と、ばかりに巨大な灰色狼に擬態した魔獣ケルベロスが「のしのし」と歩き、

体長1mほどの、これまた火の精霊サラマンダーに擬態した火竜ファイアドレイクがゆっくりと飛んで行く。

いずれも悠々、または泰然自若という言葉がぴったりであった。


ここで改めて、この広大な地下都市をまじまじと見たリオネル。


さすがにそのスケール感には圧倒される。


リオネルはフォルミーカ迷宮において、121階層から始まる巨大な地下庭園を初めて目の当たりにしたのと同じくらい驚いていたのだ。


おいおい、この街って……

数万人の市民が暮らす俺の生まれ故郷の王都オルドルや、

今まで旅して来たワレバットを始めとした大きな街にまるで引けを取らないぞ。


こんな地下深き場所に、ここまで巨大な都市があるなんて……

だがここも、このフォルミーカ迷宮の単なる『ワンフロア』なんだろうなあ……


そして、いくら進んでも相変わらず、周囲には生身の生命体たる者は確認出来ない。

疑似生命体たるゴーレム達しか見当たらないのだ。


自問自答するリオネルだが……

そんなこんなで、通りをしばらく歩き、一行はある屋敷らしき前に到着した。


多分ここがイェレミアスさんの自宅だろう。


ただ『本宅』なのかは不明であり、

自分のような部外者を招く場合の、別宅な可能性もある。


……高さ10m以上、左右これまた10m以上の、

巨大な正面に金属製の正門を備えた屋敷は、

こちらも15m以上の高い石壁で囲まれ、内部の様子が全くうかがえない。


護衛らしき同型のゴーレムが都合10体くらい、正門前に立っていた。

但し、正門自体は固く閉ざされている。


「お疲れだったな、リオネル君。ようやく『我が家』へ到着したぞ」


リオネルの推測は当たった。


先頭を歩いて来たイェレミアスは振り向くとそう言い、

嬉しそうに二っと笑ったのである。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


笑顔のイェレミアスが門番のリーダーらしきゴーレムへ合図を送ると、


ゴゴゴゴゴ!と低く重い音が生じ、巨大な正門がゆっくりと開いた。


どういう仕組みだろう?

ぜひ知りたい。

何とか習得したい。


疑問に思い、習得欲にかられるリオネル。

何度も述べているが、好奇心&探求心に満ちあふれた魔法使いの(さが)というものだろう。


リオネルは考える。


配下のゴーレム自体に何か『開門』の仕様を任せているのか、

それともゴーレム自体に『鍵』の機能を持たせているのが、現時点では不明である。


どちらにしても『魔法』にひもづけられた、未知の古代技術なのは間違いないだろう。


そうこうしているうちに、ゴーレム2体に守られたイェレミアスは、

「勝手知ったる我が家」という雰囲気で、さっさと門の内側、

敷地内へと入ってしまった。


再び振り返り、笑顔のイェレミアスは言う。


「さあさあ、入ってくれ、リオネル君。遠慮は全く要らん」


「はい! ありがとうございます! 失礼します! お邪魔します!」


元気よく礼儀よく返事をし……

開いた正門からリオネルが足を踏み入れると、中はとても広かった!


王都オルドル貴族街にある公爵クラスの屋敷より遥かに広い……


そして驚いた事に、敷地内は一面の草原。

草は短めに刈られている。


更にその草原に点在するように数多の木々が植わっていて、

小ぎれいな地下庭園という趣きであった。


その地下庭園の先の先に、これまた巨大な主屋がでん!と建っていた。

5階建てで、屋根はこげ茶、壁は白壁である。


リオネルは違和感を覚える。


この主屋だけは、地下都市とは異質である。

そう古代都市の建築物とはデザイン、仕様が全く違う。


リオネルは記憶をたぐった。


確か……この主屋は、アールヴ族が人間の国へ来て住む時に、

好んで建てる家だ。


古代都市とは関係がない。

後から、わざわざ建てた?

どうして?

イェレミアスさんは、古代都市が大いに気に入り、順応して暮らしているんじゃないのか?


いろいろな疑問が湧き起こり、推測も出来たが、ここは根掘り葉掘り聞かず、

沈黙が金。


後でイェレミアスと話す時、質問出来る雰囲気ならば、尋ねれば良い。


しばし歩き、主屋へ到着したリオネル。


先ほどの正門同様、自動で玄関が開き……

リオネルは主屋内へ、招かれ、入ったのである。

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