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第513話「リオネル様は妖精王オベロン様でも敵わないかも……それに、もっともっと強くなる気がするよ!」

リオネルは、満足そうに頷くと、


『行くぞ! 飛翔(フライト)!』


飛翔魔法を発動し、高く、高く、舞い上がった。


舞い上がったのとほぼ同時、リオネルの言葉通り、風の魔力が送られ、

ムラマサの刀身に付呪(エンチャント)された。


その瞬間!


ぴいいいんんん!!!


辺りに鋭い異音が響き、ムラマサの刀身が「ぱああっ」とまばゆくきらめいた。


『お、おお! この颯々(さつさつ)たる魔力! ま、まさしく! か、風の力だっ!』


風の魔力に刀身を満たし、感極まるムラマサ。


『ムラマサっ! 行くぞっ! 先ほど同様! お前の破邪の魔力! 最大出力う!』


『はっ! はいつ!! 承知い!!』


リオネルの気合によって我に返ったムラマサ。


主の言葉を聞き、自分が何をすれば良いのか、即座に悟った。


先に倒したヒュドラ、そしてドラゴン同様……


習得した対不死者魔法アンチアンデッドマジック剣技、


破魂剣(はこんけん)』を発動するのだと。


そう!

破魂剣(はこんけん)は、不死者以外にも通用する。


斬り捨てた敵を死骸も残さず、塵にしてしまう。


つまり、斬り捨てた死骸が不死(アンデッド)化する前に、

とどめを刺してしまうのだ。


しゅおおおおお~っ!!!


鋭く風を切り、飛翔するリオネルは、凄まじい速度で一直線に、

ワイバーンめがけ向かって行く。


対して、ワイバーン5体もはっきりとリオネルを認識した。


だが、5体のワイバーンは戸惑う。


たったひとりの!? 飛べるはずがない人間が!?


自分達めがけ飛んで来る!?


まさか!!?? 

飛竜たる自分達へ!!?? 

空中戦を挑んで来るのか!!??


驚愕の波動をまっ正面から受け、リオネルは更に更に、飛翔速度を上げる。


もはや!

ワイバーン達の動体視力で捉える事は不可能。


反射神経も追いつかない。


リオネルは、ムラマサをしゅば!と抜き放つと、


電光の如く、一閃(いっせん)する!


しゅばばばっっ!!!!! ずばああっっっっ!!!!! 


しゅばばばっっ!!!!! ずばああっっっっ!!!!! 


しゅばばばっっ!!!!! ずばああっっっっ!!!!! 


更に!

リオネルは、凄まじい速さで飛翔。

次々とワイバーンどもを容赦なく斬る! 斬る! 斬る!


都合5回の斬撃……


目にもとまらぬ早業(はやわざ)とはこの事。


「かまいたち」たる、風の力に満たされたムラマサの刃は何の抵抗もなく、

あっという間に、5体のワイバーンを斬り捨てていた。


そして、ちん! と、リオネルがムラマサを、さやに納めた瞬間。


ぼっしゅううううっっっっ!!!!!


ぼっしゅううううっっっっ!!!!!


ぼっしゅううううっっっっ!!!!!


『不死化』状態となっていた再生中のワイバーンは、


ムラマサに宿る破邪の魔力により、魂を破壊された。


それゆえ再生不可能、細かな塵となり、消失していたのである。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


細かな塵となり、消失して行くワイバーン……


ムラマサをさやに収めたリオネルは、ワイバーンが消えて行くのを見届けると、

小さく頷き、すたっ、と大地へ降り立った。


ふうと軽く息を吐く。


リオネルは、大いに満足していた。


愛用したスクラマサクス以上に、ヤマト皇国の太刀ムラマサは、

手にしっかりと馴染むのである。


そして、火、水に引き続き、風の魔力を付呪(エンチャント)した破魂剣(はこんけん)も、全く問題なく使えると分かったからだ。


加えて、剣技の熟練度アップもはっきりと認識出来た。


ツーと言えば、カー。


何も言わずとも、手出しや加勢は無用だと判断し、

遠くから見守っていた仲間達も、リオネルとムラマサの下へ駆け寄って来た。


全員が圧倒的な強さを見せた、リオネルとムラマサのコンビを称賛する。


『うむ! 今の(あるじ)とムラマサならば、冥界の上位悪魔でも圧倒するだろう』


ケルベロスが満足そうに言い放つと、


『!!!!!』


『!!!!!』


その通り!

という同意の波動を放ちながら、

ファイアドレイクも嬉しそうに短く炎を吐き、

大鷹に擬態したジズも喜び、軽快に飛び回る。


『うわあ! すっげえ! ……リオネル様は妖精王オベロン様でも敵わないかも……それに、もっともっと強くなる気がするよ!』


感極まったジャンが嘆息すれば、


『!!!!!』


アスプ達も、勝利の凱歌とばかりに尾をぶるぶると震わせた。


全員が負傷もなく、体調は万全。

探索は順調。


言う事なし。


リオネルも当然笑顔である。


『よし! みんな! 引き続き地下144階層の探索を行うぞ! 済んだら、145階層へ移動だ! 念の為に言うが、相互連絡を徹底し、油断は禁物だぞ!』


『うむ! 了解だ!』


『!!!!!』

『!!!!!』


『リオネル様! おいら、充分に注意するよ!』


『!!!!!』


ケルベロス、ファイアドレイク、ジズ、ジャン、アスプ達が応えるのを聞き、感じたリオネルは、


『OK! じゃあムラマサ! 行くぞ!』


『はい!』


最後に、気合に満ちたムラマサに声をかけ、再び出発したのである。

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