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第512話「しかし、リオネルは、初めて会った時と変わらない」

……翌朝も、リオネルは早めに起床した。


手早く身支度をし、仲間と共に食事をし、キャンプをたたみ、出発する事に。


立てた本日の目標は、残っている地下143階層の探索を終え、144階層へ降り、

その144階層を抜け、145階層クリアまで、3階層クリアを目指す。


探索の量としては、少々ペースダウンした、ゆっくりした予定である。


しかし、精巧なゴーレムを自由自在に使役するアールヴ族の魔法使い、

イェレミアス・エテラヴオリと話し、


そして、異世界から赴いた無双の太刀、

インテリジェンスソード、ムラマサとの邂逅という、サプライズも起こり……


リオネルは改めて、焦らず、じっくり探索する事を決めたのである。


ちなみに次のレベル目標は『50』というのは変わらない。


まあ、こちらも探索同様焦る事はないと思っていた。


順調にレベルアップし、レベル43となっているから。


目標までは、あと『7』


このまま順調に修行を続ければ、間違いなく到達するという手ごたえを感じている。


そもそもリオネルは、レベル目標達成にこだわりすぎてはいない。


あくまで目標だし、あくまでも目安。


どちらにしても、レベル50は単なる通過点としか見ていない。


自分は、どのレベルまで到達出来るのだろう。


単純にわくわくする。


同時に達観もしている。


全力を尽くし、出された結果を納得して受け入れるのみだ。


さてさて!

支度は整った。


キャンプ地の跡もきれいに清掃した。


立つ鳥跡を濁さずだ。


頃合いと見て、リオネルは、仲間達へ声を張り上げる。


『よし! 皆、準備はOKだな? ……出発だ!』


『うむ! いつでも良いぞ!』


『準備は万端だ!』


『!!!!!』


対して、仲間全員から、準備OK!の返事を受け……


リオネルは、いつものように、

灰色狼に擬態した魔獣ケルベロス、火の精霊に擬態したファイアドレイク、

大鷹に擬態した鳥の王ジズ、妖精ピクシーのジャン、

そして素のままの魔獣アスプ20体を先行させる。


そしてこちらも、いつものように、リオネルはシーフ職スキルを駆使し、


『隠形』『忍び足』で、すっ、すっ、すっ、と空気の如く進む。


もしも障害物があれば、転移、飛翔の失われた魔法、

ジャンプ、幅跳び、高所からの落下、木登りし樹上にての軽業など、

確信を得た超人的な身体能力を行使し、楽々と進んで行く。


索敵――魔力感知を最大範囲で張り巡らせ、外敵への警戒も怠らない。


まずは基本には忠実に、後は状況などを見て判断し、臨機応変に対処して行く。


残された地下143階層の未探索エリアはわずかであった。


丹念に確認をしたが、リオネルが気になるものは何もない。


襲って来たオーガキングを10体ほど倒して、探索は終了した。


小さく頷いたリオネルは、見つけておいた下層への階段を使い、

地下144階層へ降りて行ったのである。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


地下144階層へ降り立ったリオネル。


ムラマサと邂逅した事で、新たな課題をふたつ立てていた。


まずは剣技の熟練度アップ、


そしてムラマサを発動体とした魔法剣の熟練度アップである。


いくつかの戦いを経て、リオネルはムラマサの破壊力を実感していた。


さすがは魔族に怖れられた退魔刀、凄まじい切れ味だと。


また、先ほどオーガキングを斬り捨てた際、

溶けかかった柔らかいチーズを切るような感覚であった。


ムラマサいわく、鬼を斬る事を得意としたらしいから、

巨人族などには特に優位性があるのだろうと推測する。


心強い味方が加わった!


ムラマサと邂逅し、リオネルは、運が良かった!

そして、「頼もしい」と思う。


一方のムラマサ……


今までの(あるじ)とは、リオネルが違う事をはっきりと感じていた。

再確認したと言って良い。


やはりリオネルは、ムラマサの持つ『力』に溺れない。


ムラマサは思い出す……


先に仕えた冷静沈着なサムライマスターでさえ、ムラマサを得てからは、

たぎる血気にはやった。


ムラマサのあまりにも凄まじい破壊力に心を(とら)われ、

居ても立っても居られないほど、戦闘意欲がMAXに達してしまう。


サムライマスターは、阿修羅のごとく、

襲って来る敵を斬って、斬って、斬りまくったのだ。


さすがに見境なくという無節操さはないが、

サムライマスターは文字通り、常在戦場を具現化した状態になっていた。


これが、ムラマサが妖刀と言われた由来……理由でもある。


しかし、リオネルは、初めて会った時と変わらない。


冷静沈着、泰然自若を貫き、

ムラマサを偏重することなく、他に格闘、魔法、スキルを、

まんべんなく使って敵を倒す。


リオネルは、ドラゴン3体を氷結の魔法オンリーで凍らせ、屠ると……


その次に遭遇した、宙を翔ける飛竜ワイバーン5体を見て、言う。


『ムラマサ』


『はい!』


『先ほど使った水の魔法剣は上手く行った。今度はワイバーンに対し、仲間と連携しつつ、風の魔法剣で行くぞ!』


『はい!』


『お前の持つ切れ味に風の力を足すんだ』


『かしこまりました!』


『よし!』


既にもう息がぴったり。


ツーと言えばカーと言うムラマサにリオネルは、満足そうに頷くと、


『行くぞ! 飛翔(フライト)!』


飛翔魔法を発動し、高く、高く、舞い上がったのである。

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