第511話「うむ! ムラマサよ! 我が主はな高貴なる4界王様、全員の加護を受けたのだ」
『むむむむ……な、何という事だろう……確かに彼らが持つおびただしい魔力の割には、際立つ雄渾さがないとは思っていましたが……』
冥界の魔獣オルトロス、凍気を吐く上位巨竜フロストドレイク本来の姿を見て、
唖然、呆然とするムラマサ。
際立つ雄渾さがない……
結構失礼な事を言うムラマサだが、リオネルは苦笑し、
『ああ、彼ら本来の姿を見ておいて貰えれば、お前も今後、やりやすいだろう』
『……た、確かにそうです。両名とも、見た目の迫力以上に、とんでもない底力を感じます』
『ああ、改めてあいさつしてくれるか』
『は、はい!』
ムラマサが了解の返事をすると、リオネルは頷き、声を張り上げる。
『お~い! オルトロス! フロストドレイク! インテリジェンスソードのムラマサが改めて挨拶するってよ!』
リオネルが呼びかけると、ツーと言えばカーとばかりにオルトロスは軽く吠え、
念話で話しかけて来る。
『おう! ムラマサ! 宜しくな! さっきのヒュドラを殺った時はしびれたぜ! 結構な切れ味じゃねえか! 気に入ったよ!』
続いて、フロストドレイクも念話で吠える。
『!!!!!!!!』
人間の言葉を発さないフロストドレイクだが、称賛と歓迎の意思を伝えて来た。
猛々しい見た目とは違い、
気さくなオルトロス、仲間には穏やかなフロストドレイクから気遣われ、
ムラマサはホッとした。
『おお! かたじけない! 改めまして! 我はヤマト皇国より、この世界へやって来た太刀のムラマサだ。取り交わした約束を厳守し、リオネル様へ付き従うと誓いを立てた! 今後とも宜しく頼む!』
『おう! 頼むぜ!』
『!!!!!!!!』
『!!!!!!!!』
再びのムラマサのあいさつに応え、オルトロスが、フロストドレイクが
そして、魔獣アスプ20体も歓迎の意思を示した。
ともに食事を摂る事は叶わないが……
オルトロス達が食事を摂りながら、ムラマサも歓談。
やがて夕食が終わり……オルトロスが、フロストドレイクが
そして、魔獣アスプ20体は休憩へ……異界へ、収納の腕輪へと還った。
入れ替わりに……
オルトロスの兄、魔獣ケルベロスが、火竜ファイアドレイクが、鳥の王ジズが、
妖精ピクシーのジャンも、新たな魔獣アスプ20体と鋼鉄製と岩石製のゴーレム各1体ずつも現れた。
ケルベロス達はムラマサに初めて会う。
しかしリオネルがムラマサの出自と邂逅した経緯を話すと、全員が歓迎し、受け入れてくれた。
遥かに遠く離れた、異世界のヤマト皇国から旅をし、100年間、ずっとひとりぼっちで待っていた。
新たな主が現れるのを……
それが何と!
規格外の新たな主どころか、
同じくスケール感たっぷりの仲間まで出来た!
ムラマサは大感激し、喜びに満ちあふれ、新たな仲間達と話したのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
袖すり合うも多生の縁……
つまり、知らない相手と偶然に袖が触れ合うようなちょっとした出会いも、
前世からの因縁によって起きるという意味だ 。
.
因縁んで邂逅したのかは不明であるが……
……リオネルの従士達は、まさに多士済々。
様々なタイプの仲間が居た。
猛々しい魔獣に巨大な竜、小さな妖精、無機物生命体のゴーレムまで居る。
ジズが体長100m超の巨大な姿を見せたのには驚いたが……
これでもまだ小さなサイズの擬態に過ぎないと言われ、絶句してしまう。
しかし!
まだまだこんなものではない!
そう、ケルベロスが言う。
『おい、ムラマサよ、今からしっかりと心構えをしておいた方が良いぞ』
『今からしっかりと心構えをしておく? むむむむ……それはどういう意味かな? ケルベロス殿』
『うむ! 我が主が、全ての属性魔法が行使可能な全属性魔法使用者である事は知っていよう。ちなみに我は地の属性である』
『あ、ああ! その事はマスターから、教えて貰った! その前に天の声からも告げられた! ……確か、この世界では、地・水・風・火の四大元素を司るノーム、ウンディーネ、シルフ、サラマンダーという精霊が存在し、マスターは、加護を受けているという事だな?』
『うむ! その通りだ。しかし主は、更に遥か上の存在から目をかけられているのだ』
『む……更に遥か上の存在? な、何なのだ? 一体それは?』
『うむ! ムラマサよ! 我が主はな高貴なる4界王様、全員の加護を受けたのだ』
『こ、高貴なる4界王様!?』
『うむ! 我が改めて説明しよう。地・水・風・火、4つの元素がこの世界を成立させている。その元素を司るのが4大精霊と呼ばれる至高の存在である。地はノーム、水はウンディーネ、風はシルフ、火はサラマンダー。その4大精霊をそれぞれ統括する大いなる存在が、地界王アマイモン様、水界王アリトン様、空気界王オリエンス様、火界王パイモン様の4名である! ……この4名が『高貴なる4界王』と称され、精霊達の頂点に立つ最上級精霊達なのだ』
『お、おお、そうなのか!』
『うむ! そしてだ! 我が主リオネル・ロートレック様は! まず地界王アマイモン様の愛娘ティエラ様へ、そして『高貴なる4界王』様3人に謁見し、大いなる加護を受けたのだよ』
『むむむ……』
『いずれはムラマサ、お前も主とともに、謁見する事となろう』
冥界の魔獣ケルベロスは胸を張り、
まるで我がことのように、誇らしげに言い放った。
そんなこんなで……
冥界の魔獣ケルベロスの話は、更に続いた。
どれも皆、主リオネルを称賛する内容である。
また高貴なる4界王のようにこの世界の理と紐づく話なので、
良き勉強になると思い、ムラマサは苦ではない。
ケルベロス達と話すうちに、ムラマサには、更に分かって来た事がある。
リオネルに付き従う従士達……リオネルは気の置けない仲間として扱ってくれるが、
全員が主を深くリスペクトし、熱く慕っているのだ。
うむ!
まさに大器!
100年もの間待ち、自分が選んだ主は、間違いなかった!
ムラマサは大いに満足し、心をゆったりと休ませたのである。
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