第503話「おのおのがた! ……初めてお目にかかる!」
「持った感じ、いつも使ってるスクラマサクスとは全然バランスが違うな……少しずつ慣らして行こう」
リオネルはつぶやくと、ひゅお!ひゅお!ひゅお!と軽く3回ほど振った。
使い勝手は悪くはない。
刀身が大気を切り裂く音が心地よい。
『なあ、ムラマサ』
『うむ』
『お前が居た世界の事は良く分からないが、この世界は剣と魔法の世界、そして俺は魔法剣士だ。剣の刀身へ魔力を込め戦う。お前の刀身へ属性魔法を込めて構わないか?』
『ふむ、属性と言うと、地・水・風・火の四大元素か? 天なる声に教授されたが、この世界では確か、それぞれの属性に、ノーム、ウンディーネ、シルフ、サラマンダーという精霊が存在するはずだ』
ムラマサは即座に答えた。
インテリジェンスソードだけあって、相当な知識があるらしい。
『ああ、ムラマサ。その通りだ。実は俺、全ての属性魔法が行使可能な全属性魔法使用者なんだ。相手により弱点の属性魔法を使い分け、付呪し、攻撃する。ダメージを増大させ、斬り捨てる為だ』
淡々と告げるリオネルに、ムラマサは驚いたようである。
『うむむ、我の居た世界では、基本的に術者ひとりに各ひとつの属性が、才ある上級者でも、せいぜい、ふたつ……精霊が加護を与えておった。この世界でも、ほぼ同じだと、天なる声から教授されたぞ』
『ああ、こちらの世界もほぼ同じだ。でも俺は、地・水・風・火の四大元素、全ての属性魔法が行使可能だ』
『成る程!! 全ての属性魔法が行使可能な……全属性魔法使用者か!! ……う~む。リオネル、やはりお前は我が見込んだ通り、凄い奴だったのだな』
『いや……話はまだ終わらないぞ。支援や破邪葬送の魔法を付呪する場合も良くある。4大属性とともに、お前に魔力を込める事に、問題はないのか?』
『ふふふふふ……』
『ん? 何が可笑しい?』
『うむ、わくわくしておるのだ!』
『わくわく?』
『うむ! 凄まじい力を持つお前と旅をするのがな。我を導いた天なる声によれば、我の居た世界より、この世界の方が魔族や魔物は多いらしい。質も量も圧倒的に上だと聞いた』
『そうなのか?』
『ああ! 不死の悪魔も居るというし、お前が倒した竜、巨人など強敵だらけ、我がヤマト皇国で散々斬った鬼など中、下級の魔族にすぎぬ。我はお前と共に戦うのが楽しみでたまらぬわ!』
『そうか。で、お前へ魔力を込める方は大丈夫か?』
『ああ、多分大丈夫だ。我には破邪の魔力が元々備わっておる! そしてな! 我は天からの雷をまとい、鬼を斬り倒した事がある! それに業火の中で焼かれても、全く平気であったぞ!』
熱く語るムラマサ。
その話によれば……ムラマサは雷撃剣としての経験があるらしい。
そして火には耐性があるという。
魔力を込めた魔法剣は何とか、行けそうだ。
『そうか! じゃあ、ムラマサには大いに期待しよう!』
『うむ、善は急げだ。早速魔力を込めてくれ! お前の懸念を解消するのだ! 敵も居ないようだしな!』
モチベーションアップのムラマサはひどく積極的である。
リオネルはまず地を、そして風、水を、火を、各属性の魔力を、
ムラマサの刀身へ込めた。
当然、最初から100%ではない。
30%……3割程度しか、負荷をかけてはいない。
『うむ、問題ない! 力がみなぎるぞ!』
リオネルは引き続き、地を、風、水を、火を、各属性の魔力を、
50~60%の力で、ムラマサの刀身へ込めた。
『全然平気だ! まだまだいける!』
一気にほぼ倍の魔力となったが、ムラマサは問題がないようだ。
多分これなら80%、約8割くらいの魔力でも問題ない。
リオネルはその後、属性魔法以外、貫通撃、葬送魔法当も同じ加減で試し、
『安全運転』を確認したのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
古代遺跡を探索していたはずのリオネルが、
巨大な波動を発する何者かと一緒に居る。
しかし、その波動に敵意は全くなく、リオネルを主として、
忠実に付き従う!と申し立てている。
一方のリオネルも、心を縛られたり、怖れて、助けを求めている様子は全くない。
やがてリオネルは、一緒に居るその何者かへ、様々な魔力を込め始めた。
一緒に居るのは一体、何者?
特殊な杖か何か、魔法行使を補助する発動体なのか?
という、判断をしていた、ケルベルスの弟魔獣オルトロス、ミニマム竜に擬態したフロストドレイク、魔獣アスプ20体の仲間達。
探索を継続していたが、リオネルから参集要請がかかった。
『了解!』
と返事をし、リオネルの現在地とある『古代遺跡』前へ駆けつける。
オルトロス以下、仲間全員が揃ったところで、リオネルは腰から提げた剣の黒さやをぽんぽんと叩く。
その見慣れない形の剣がどうした?
と、いぶかしげな反応の仲間達……
リオネルは声を張り上げる。
とはいっても、ここは心と心の会話、念話を使う。
『皆、紹介しよう! 目の前のこの古代遺跡で出会った! 新しい仲間だ!』
『????????』
『????????』
『彼は俺と約束した! お前達にも改めて徹底しておくぞ』
『……………………』
『……………………』
『彼は俺の指示に従い、約束を守る。仲間たる精霊、妖精、魔物とは争わず、相手を尊重して礼を尽くし、力を合わせ助け合い、仲良くする。俺とかかわり、絆を結んだ者を種族を問わず、守る……以上』
『……………………』
『……………………』
『今の約束を厳守すると誓った彼が、異世界ヤマト皇国より、この世界へやって来たインテリジェンスソード、太刀のムラマサだ。さあ! ムラマサ! 仲間達へあいさつしてくれ!』
リオネルから促され、
『おのおのがた! ……初めてお目にかかる! 我はヤマト皇国より、この世界へやって来た太刀のムラマサだ。先ほどの約束を厳守し、リオネルへ付き従うと誓いを立てた! 今後とも宜しく頼む!』
気合の入ったムラマサは、はきはきとあいさつをしたのである。
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