第499話「ドラゴンどもの生命反応は消えてはいない。 殺されてはいない」
「うんうん」と納得したように頷くリオネルは、再び探索を開始した。
アールヴの魔法使い、イェレミアス・エテラヴオリとの接触が成功。
自動人形の如く、作動し、会話が可能な高性能ゴーレムを使役し、
地下141階層から現れる『庭園』において、食料、資材を収集。
謎めいた古代遺跡を、倉庫や休憩所?等に利用していると思われるイェレミアス。
……そのイェレミアスと、地下150階層で会う約束をし、
ボトヴィッドから託された手紙を届ける目途はついた。
それゆえ、リオネルは改めて、いくつかの課題を立てる事が出来たのである。
基本ベースとなる修行、ドラゴン族、巨人族などの魔物を討伐し、
魔法、武技の熟練度を上げつつ……
スキルと修行で得た、超が付く人間離れした身体能力を活かし、
あらゆる地形をクリアして行くのは変わらない。
まずは古代遺跡の謎の解明……
宝物の出現等もあるが、特に気になるのはストーンサークルの機能の解明だ。
リオネルは、ストーンサークルのマークポイントを起点にして、
隠された方法で起動させれば、迷宮内の様々な場所、秘密の場所へ行けるのでは?
と推測していた。
何か機会があれば、もしくは、更に解明が出来れば、
ぜひ試してみたいと思う。
いつものように、リオネルはケルベルスの弟魔獣オルトロス、
ミニマム竜に擬態したフロストドレイク、魔獣アスプ20体を先行させ、
少し離れた場所を軽快に走って行く。
30分弱ほど走り、リオネルの索敵……魔力感知に反応があった。
これって……!?
捉えた相手の……複数の魔力反応を感じ、リオネルは驚いた。
複数のうち、魔物の反応は……ノーマルタイプのドラゴンが3体である。
そしてリオネルが驚いた原因、ドラゴンの近くから感じた別の魔力反応は、
間違いなく、先ほど出会ったモノ。
この魔力反応は……イェレミアスが使役するゴーレム。
果実を収穫していた、自動人形の如き少年少女ゴーレム4体であった。
これって……さっき会ったのと全く同じゴーレムか、それとも別の同型か?
もしも前者ならば、リオネルの推測が当たっている可能性もある。
ゴーレム達が階段を降りた気配は感じられず、
リオネルを追い越した様子もないからだ。
もしかしたら、この先のどこかに、ストーンサークル付きの、
同じタイプの古代遺跡があるのかもしれない。
そして地下123階層で出会ったーレムが、
ストーンサークルのマークポイントを起点にして、
隠された方法で起動させ、俺の居る階下の地下124階層に現れた……
……と考えれば辻褄が合う。
まあ、良い。
どちらにしても、ドラゴンどもがゴーレムを破壊する前に、駆けつけよう。
リオネルは駆けて、移動しながら、オルトロス以下、仲間へ指示を入れたのである
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
リオネルが仲間へ入れた指示とは……
『お前達! ドラゴンどもとは絶対に戦うな! 牽制して、遠回しにし、距離を取るんだ!』
という指示。
下手に仲間を、現場に突入させたら、乱戦となり、
イェレミアスのゴーレムが破壊されると考えたからだ。
オルトロスの咆哮でドラゴンども麻痺させるという手も考えたが、
それは最後の手段。
咆哮が通用しない可能性もある。
ちなみに、転移魔法を使わないのは、現場の状況が充分に分からないからだ。
地形に完全に慣れたリオネルの俊足は、すぐに現場へ到着した。
木陰からリオネルは、様子をうかがう。
仲間達も指示を守り、距離を取り、控えていた。
果たして!
ノーマルタイプのドラゴン3体と対峙する
自動人形の如き少年少女ゴーレム4体は、
リーダーの少年ゴーレム以下の風体、装備している魔法杖から、
先ほど出会ったものだと分かる。
決定的なのは、リーダーの少年ゴーレムの右足にある銀貨大の『へこみ』
1km先を見通す『大鷲の視線』を習得したリオネルは、
その『へこみ』をはっきりと確認していたのだ。
そう!
間違いなく、イェレミアスが使役するゴーレムである。
ゴーレム4体と、ドラゴンども3体の距離は約20m。
よし!
スキル『威圧』か、『フリーズハイ』で、ドラゴンどもを行動不能とするか!
ダメだったら、地の魔法『大地の束縛』だ!
行動不能の間に、ゴーレム達に撤収して貰おう。
リオネルがスキルを行使しようとした瞬間。
リーダーの少年ゴーレムがおもむろに魔法杖を抜き放ち、
ぼしゅ! ぼしゅ! ぼしゅ!
魔力の塊を発射した。
すると!
ゴーレム達へ襲いかかろうとしていたドラゴンどもは3体全て、
ぴくぴくと身体を震わせ、動かなくなってしまった。
ドラゴンどもの生命反応は消えてはいない。
殺されてはいない。
魔法杖には、麻痺の魔法か何かが込められていたに違いない。
動かなくなったドラゴンどもを見たリーダーの少年ゴーレムは手を挙げ合図。
ゴーレム4体は素早く、「さささっ」と走り、森の奥へ消えてしまったのである。
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