第497話「謎の解明へ向け、リオネルのモチベーションはますます上がった」
リオネルは未探索の古代遺跡を発見。
「よし、中を調べて、確認だ!」
大きく息を吐き、気合を入れ直した。
……リオネルの前に建ち並ぶ古代遺跡は3棟。
これまでとは少し形状、サイズは違うが、
窓がやや上部に、それも小さなものしかない。
この3棟は、またも倉庫なのだろうか。
建物自体は地味で、目立たないものだが……
今までと違うモノがあった。
古代遺跡3棟の前に、円陣状に並んだ高さ10mほどの直立巨石と、
それを囲む土塁からなる『ストーンサークル』があるのだ。
補足しよう。
ストーンサークルとは、自然石または加工の少ない巨石を環状に配置したものだ。
巨石記念物のひとつであり、『環状列石』
もしくは『環状石籬』ともいう。
ストーンサークルは、巨石の墓など墳墓の外周を取り巻くもの、
そして墓とは直接関係しないものの両者がある。
改めて周囲をじっくりと見ても、墳墓らしきものは見当たらない。
であれば、このストーンサークルは、何かの祭祀に使用されたものかもしれない。
さてさて!
リオネルは、ストーンサークルを丹念に調べる。
円陣状に並んだ直立巨石も相当旧い。
直立巨石からは、結構な魔力を感じるが特に異常はない。
土塁も同様で、魔力を感じるが、特別な仕掛けはなかった。
しかし、ストーンサークルの中央に、リオネルが今まで見た事がない、
特異なマークが地面に埋め込まれた石に刻まれている。
これは、何のマークなのだろう?
気になったリオネルがマークを調べると、
どこかへ延びる地脈とつながっている、不可思議な魔力を感じる。
もしかしたらという、推測は出来るが、はっきりはしない。
地脈を移動する転移魔法をリオネルが使えば、マークからいずこへか、
行けるかもしれない。
だけど、好奇心にかられ、いちかばちか、わけも分からず、
地脈をたどって潜るのは極めて危険。
どこへ運ばれるのか、皆目見当がつかないからだ。
地の最上級精霊ティエラ様が居れば、
このストーンサークルと地脈の関係を教えて貰えるのにと、
リオネルは少し残念であった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
謎めいたストーンサークルであったが……
現状で調べる事はもうなかった。
リオネルは、ストーンサークルの後方にある建築物の調査、確認作業へ移る。
既に、古代遺跡建築物の探索調査は経験済みである。
……とはいえ、リオネルは油断しない。
やり方はいつもと同じ。
まず視認、そして索敵……魔力感知で分かる。
周囲には敵の気配はない。
建築物の中にも当然ない。
無人らしい。
罠が仕掛けられていそうな雰囲気もない。
リオネルは、倉庫らしき建築物3つ並んだうち、
左端の正面、出入り口へ、そっと近寄ってみる。
自分はすぐ入らず、まずは照度を強めにした照明魔法の、
『魔導光球』を潜入させてみる。
すると、真っ暗闇だった室内が、ぱあああっ!と明るくなった。
魔導光球が入っても、室内から特に反応はない。
リオネルは、もうふたつ、真ん中、右側の建築物にも魔導光球を潜入させた。
……3つの建築物とも、やはり反応はない。
更にリオネルは鋼鉄製ゴーレムを搬出。
左側の建築物の入り口から、中へ突入させてみた。
入ったゴーレムは無事であり、中でゆっくり歩きまわっているのが分かる。
更にゴーレムを2体出し、真ん中、右側の建物にも突入させたが、
全く同じで問題はないようだ。
敵もおらず、罠もなく、安全に問題はない。
大きくうなずいたリオネルは、
ようやく向かって左側の建築物の入り口から、中へ入った。
「おお、今までと内装は何か違う。生活臭バリバリ出てる!」
リオネルが驚いた通りである。
石で造られたベッドや戸棚。
棚と思しき壁のくぼみ。
更に石で造られた食料保存用らしき大きな箱も。
大きな箱には……様々な匂いが混在。
使われた痕跡があった。
アールヴの魔法使い、イェレミアス・エテラヴオリが使役する、
ゴーレム達が利用しているに違いない。
イェレミアスはゴーレム達を使い、自然満ちあふれる地下121階層から149階層まで、食料や資材を集めさせている。
そして自身は、誰も知らぬ場所に身を潜め、暮らしているのだろう。
……今回の探索のように謎のいくつかは判明して来た。
しかし、至宝『ゼバオトの指輪』の唐突な出現。
地下151階層以降、どのような未知の世界があるのか……謎はいくつも残っている。
謎の解明へ向け、リオネルのモチベーションはますます上がった。
……その後、古代遺跡の調査を終えたリオネルは、再び探索を再開。
地下143階層、そしてその先へ向け、元気よく出発したのである。
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