第452話「OK! ゴーレムどもは俺に任せてくれ!」
どごわわわっっっ!!!
振るった腕が半分めり込むくらい、強烈なボディブローを喰らわせ、
リオネルは、最後の狼男をあっさりと即死させていた。
「よし! 狼男レベルの俊敏さとパワーぐらいなら、完全に見切れるし、圧倒出来る。……楽勝だな」
独り言をつぶやいたリオネルは、葬送魔法『昇天』を行使し、10体の死骸を塵に。
「あいつらは、どうかな?」
周囲はしんとしており……
索敵――魔力感知にも、捉えたのはケルベロス達の気配だけ。
任せたミノタウロス3体、マンティコア3体の気配はない。
既に倒しているようだ。
「うん! さすがだ。上手くやったようだ。あいつら、当然だろ、とか言うんだろうな」
これで現れた魔物は全滅!
……と思いきや、やはりここは、地下111階層。
「お! 何だ? 後方か? いきなり現れたぞ」
そう!
お約束の「増援、加勢が現れた」のだ。
リオネルの後方30mに、突如銀製ゴーレム20体が現れたのである。
書物で読んだ事がある。
冒険者ギルドの王都支部の担当職員ナタリー・モニエからも教えて貰った。
一説によれば、魔物は繁殖する以外に、次元の狭間、異界から、この現世へ来ると。
陽も差さない深き地の底たる迷宮で、大量の魔物がどこから湧いて来るのかは不明である。
このフォルミーカ迷宮の魔物も次元の狭間から来た可能性は否めない。
さてさて!
「増援、加勢が現れた」であるが、
リオネルの索敵……魔力感知で即座に捉えたのは勿論、
ケルベロス、オルトロス、ファイアドレイクもゴーレム出現を察知し、
念話で告げて来た。
そして、ゴーレムどもの一番近くに居た、
『伏せ勢』として配置しておいた後方のアスプも、気配を察知し、現場へ急行した。
しかし残念ながら、アスプの毒を注入する牙、睡眠誘因攻撃は、
分厚い銀の装甲をまとった疑似生命体のゴーレムには無効。
無理に攻撃しても、損害が出るだけだ。
状況を想定、認識したリオネルは、アスプ達へ念話で牽制のみを指示。
即座に転移魔法を発動。
ゴーレムどもの背後に現れた。
10体のアスプ達は分をわきまえ、下手に攻撃を仕掛けず、牽制役に徹していた。
ゴーレムどもは、アスプに気を取られ、背後に現れたリオネルに全く気付いていない。
好機とばかり、リオネルは間を置かず、身体機能を奪う地の魔法『大地の束縛』を発動。
地の最上級精霊ティエラから授かった、この魔法はレベル属性など関係なく、
相手を5分以上、大地へ縛り付け、動けなくする万能魔法だ。
リオネルは20体のゴーレムどもを無力化した後、真理の魔法文字を次々と削除。
完全に機能停止させて『捕獲』した。
まだ、「増援、加勢が現れた」があるやもしれない。
油断は禁物である。
前方をケルベロス達に、後方をアスプ達に警戒させながら、
リオネルは、捕獲したゴーレムどもを、収納の腕輪へ、仕舞った。
しばし、増援、加勢がないかと身構えるが……
新手の魔物は現れない。
今回の戦闘は、終了したようだ。
リオネルは構えを解き、軽く息を吐き、脱力してリラックス。
『皆、お疲れ様。ひと休みしたら、探索再開だ』
念話を使い、ケルベロス、オルトロス、ファイアドレイク、
そしてアスプ達20体を労わり、探索の再開を命じたのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
……フォルミーカ迷宮第111階層。
探索の再開をしたリオネルは、
魔獣ケルベロス、オルトロス、火竜ファイアドレイクを先行させ、
アスプ10体、2隊を伏せ勢として周囲に展開させる。
魔導光球のわずかな光を頼りに、リオネルは相変わらず、シーフ職スキルを駆使し、
『隠形』『忍び足』で、すっ、すっ、すっ、と空気の如く進む。
……まもなく降りる階段を発見。
地下112階層へ、移動する。
これもいつものパターン。
……112階層へ降り、約10分ほど歩いたところだろうか。
先行したケルベロス、オルトロス、ファイアドレイクから念話連絡が入る。
『主よ! 敵発見だ! 今度はオール、ゴーレム。ミスリルが10体、銀が10体、水晶も10体の計30体だ! 主、指示を頼むぞ!』
『おう! 主! ゴーレムは出来るだけ捕獲するんだよな! 俺達だと、必要以上にぶっこわしちまう! 主へ任せたぜ! 俺達兄弟とファイアドレイクは、増援と加勢に備える!』
『!!!!!』
ファイアドレイクも思念伝達で、
ゴーレムならば、リオネル様に任せる! そちらへ追い込む! と告げている。
『OK! ゴーレムどもは俺に任せてくれ!』
了解の返事を送ったリオネルは、ケルベロス達に追われて来るゴーレムどもの気配を察知した。
さあ! 更に軍団を増やすか!
頷いたリオネルは、迫るゴーレム30体に備え、
呼吸法で体内魔力を上げたのである。
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