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第442話「ファイアドレイクも思念伝達で、 トレーニングがてらで、楽勝だろう! と告げていた」

フォルミーカ迷宮地下90階層小ホール……

リオネル以外、他の冒険者は見当たらない……

やって来る気配もない。


迷宮の深さに冒険者の実力は比例する。

ここまで来ると、支障なく探索するには、

ランクB以上のランカーである事は勿論、ランクA以上の実力が求められる。


ランクAの冒険者となれば、さすがに人数は限られ、

このような迷宮で探索、修行などせず、

危険度が低く、もっと効率良く稼げる依頼を受諾する者が多いのだ。


夕食を終え、リオネルを中心に車座になる個性際立った仲間達。


人間族はリオネルひとり。


周囲に控えているののは、灰色狼風に擬態した、

冥界の魔獣とうたわれるケルベロス、オルトロスの兄弟。


小さな火の精霊サラマンダーに擬態した巨大な火竜ファイアドレイク。


同じ竜たるファイアドレイクの活躍に刺激されたのか、

「自分も混ぜろ!」と波動でアピールして来た凍竜フロストドレイク。

こちらもサラマンダーと同じくくらい、体長40㎝に満たない、

超小型の竜に擬態していた。


そして人間型の肢体に、昆虫のような薄羽を背に生やした妖精ピクシーのジャン。


後は収納の腕輪に控えている巨大コブラ蛇のような魔獣アスプ56体。


同じく収納の腕輪へ、

岩石製100体、鋼鉄製100体、青銅製300体、ミスリル製300体、銀製200体、

水晶製200体のゴーレム、計1,200体。


先述したが……

リオネルの仲間は多士済々である。

種族、性格などバラバラだが、リーダーたるリオネルの下で統率がとれている。


そんな仲間達に対し、リオネルは自問自答の独り言で、情報を共有していく。

仲間達は無言で聞き、何か不明な点や確認事項があれば、発言したり思念を送る事となっている。


「これから赴く地下91階層から100階層は、獣人、合成魔獣の領域である」


「………………………」 


「出現するのは、ミノタウロス、狼男(ワーウルフ)、リザードマン、キマイラ、マンティコア、コカトリスだ」


「………………………」 


「キマイラ以外、俺は全て戦った事があり、勝利もした。だが決して油断はしない」


「………………………」 


「この領域では、魔法を使う奴こそ居ないが、パワー、俊敏さを基に、物理攻撃力、物理防御力に優れ、毒、麻痺、石化などの特殊攻撃を使う奴も居る。……強敵ぞろいだ」


「………………………」 


「そして、この領域でも、俺は課題を立てて、戦おうと思う」


「………………………」 


「俺の戦い方は、基本的には変えない」


「………………………」 


「簡潔に言うのなら、身体束縛のスキル等を組み合わせた遠距離攻撃魔法、同じく身体束縛のスキル、自身の身体能力向上を組み合わせたヒットアンドアウェイに、のっとった近距離攻撃魔法」


「………………………」 


「更にはそれらに剣技、格闘技も合わせて使う」


「………………………」


「そして地下91階層から100階層の領域では、転移魔法使用の攻撃を加え、念話を応用したサトリ能力を活かした、敵の攻撃を先読みする『見切り能力』も磨きたいと思う」


「………………………」


仲間達から、特に質問、確認の問い合わせはなかった。

リオネルは満足そうに、大きく頷いたのである。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


翌朝……

朝食を摂り、支度をし、リオネルは出発した。

照明魔法の魔導光球、索敵……魔力関知は『お約束』である。


フォーメーションは新たに組み替えた。

帰還したケルベロスを加え、オルトロス、ファイアドレイクという布陣だ。

頃合いを見て、ファイアドレイクはフロストドレイクと交代する予定である。


ちなみに毒、麻痺、石化などの特殊攻撃を怖れ、ジャンは収納の腕輪でお休み。

昨日81階層から90階層で頑張ったので、本日は休養日ということになった。


さてさて!


地下91階層を歩くリオネルに、

先行したケルベロス、オルトロス、ファイアドレイクから念話連絡が入る。


『主よ! 敵発見だ! ミノタウロス3体! 準備運動には丁度良かろう』


『くくく! 主! ミノタウロスなど、ちょちょいのちょいで、倒してしまえ』


『!!!!!』


ファイアドレイクも思念伝達で、

トレーニングがてらで、楽勝だろう! と告げていた。


皆、軽く言うなあ……

苦笑するリオネル。


しかし、実力を対比して、ミノタウロスより能力も体格も上のオーガキングを、

一撃で倒したリオネルが遅れをとるとは思えない。


やがて、通路の奥にミノタウロス3体が現れた!

身長は約4m、体重は300㎏に近いだろう。


軽く息を吐いたリオネルは、だん! と迷宮の床を蹴り、猛ダッシュ。


神速でミノタウロス3体へ肉薄する。


そして!

50cmもない超至近距離から、


どが!


と右拳を急所に叩き込む。


どしゅっ!


左手で風弾を脳天真ん中へ神速発射でぶち込む!


最後は、右手ですっと抜剣。

愛用の強化ミスリル製スクラマサクスで、


しゅばっ!


と、鮮やかに斬り捨てる。


どったああんん!! どったああんん!! どったああんんん!! 


リオネルの攻撃で既に絶命していたミノタウロス3体は全て、

朽木のように、倒れ伏したのである。

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