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第426話「リオネル様の戦い方って、いくら敵が変わっても基本的に同じ。つまりワンパターンじゃない?」

地下51階層から60階層までの探索で……

リオネルはオーガを存分に倒し、ほぼ全てのバトルシミュレーションを行った。


ギフトスキル『オーガハンター』を習得したリオネルにとって、

まさに『狩場』!


愛用の魔導懐中時計を見れば、時刻は午後5時過ぎ。

……ほぼ9時間は戦っただろうか、

繰り返し行使した、各魔法、各スキル、その他もろもろの熟練度はアップ。


更に新たな習得はないものの、レベルは『27』に達していた。


地下61階層から、出現する敵はまたガラリと変わる。

オーガなどのパワー系の敵をフェードアウト。

特殊攻撃を主とする、曲者どもが出現するのだ。


リオネルは、圧勝続きでも慢心しない。

無理をするのも禁物だし、60階層でキャンプを張り、じっくり作戦を練ろうと決めた。

レベルアップしたのも、良い区切りだろう。


リオネルは、柔らかく微笑む。


「ボトヴィッドさん風に言えば、本日の営業は終了……閉店致しました、だな」


そう、本日のリオネルの戦いは終わった。


地下60階層を探索し尽くしたリオネルは、

下り階段付近に『小ホール』を見つけている。


改めて、小ホールへ行くと、誰も居ない。

ここまで来ると、冒険者の数は更に減る。

よほどの上級冒険者揃いのクランでないと、探索は不可能なのだ。


ちなみに、魔法使いのマグヌス・ブラントが率いるクラン、アルゲントゥムは、

地下55階層で追い越していた。


彼らがもし、この60階層へ来るとしても夜半になるだろう。


「ふう」と、ひとつ大きく息を吐いたリオネルは、

無人の小ホールへインし、片隅に陣取った。


サラマンダーに擬態したファイアドレイク、ミニマムドラゴンに擬態したフロストドレイク、アスプ6体、ゴーレム10体を回収。


ケルベロス、オルトロスを巡回に出し、リオネルはキャンプの準備を始めた。

無人且つ危険がないので、収納の腕輪から『一式』を全て一度に出す。


敷物を広げ、寝袋を置いた。

山猫亭の弁当を出し、紅茶の支度をする。


ケルベロス、オルトロス用の肉塊、ジャン用の焼き菓子を出す。


魔獣兄弟の牽制、威嚇により、敵が襲って来る気配は皆無だ。


頃合いと見たリオネルは、ケルベロス、オルトロスを呼び戻し、

ジャンも入れて夕食へ。


とりとめもない話をし、コミュニケーションをとった後、

フォルミーカ迷宮の地図を取り出し、見入ったのである。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


リオネルは、地図を見ながら考える。

身内しか居ないので、肉声で独り言ちる。


例によって、ジャンはリオネルの傍に控え、聞き耳を立てていた。

いつも通り、情報を共有するのだ。


「ええっと、地下61階層から70階層は、睡眠誘因、毒、麻痺、石化など、特殊攻撃を主とする、曲者どもが出現する」


「出現するのは俺がテイムしたアスプ、そしてコカトリス、バジリスク、リザードマンか。リザードマン以外は英雄の迷宮地下7階層毒と石化のフロアと同じだな」


「但しサイズは英雄の迷宮より、ふた回り以上大きいし強靱みたいだ。……良し! 決めた! アスプは使い勝手が良いし、テイム済みの個体を使い、追加テイムしよう! ゴーレム同様、アスプ軍団結成だ!」


「究極防御魔法破邪霊鎧(はじゃれいがい)の効果もビルドアップし、完璧に近づきつつある。奴らの睡眠誘因は無効、毒も無効、麻痺も無効、石化も無効……一切効かない! 石化なんか、思念反射で、倍返しだ! すげえ!」


「という事で、防御は問題なしだ。攻撃方法は、まず遠距離魔法、様々な属性魔法を試そう。『貫通撃』と習得したての『ムービング攻撃魔法』もガンガン使おう! 効果効能のデータ収集もしっかりやっておかなきゃ!」


「次に接近戦。やはりヒットアンドアウェイ……魔法と格闘技を併用する、『俺流魔法剣士』の戦い方でOKだろう。やはり油断は禁物だけど。念の為、ケルベロス、オルトロスも召喚しよう」


そんなリオネルの自問自答、独り言を聞いていたジャン。

「はい!」と挙手をし、発言を求めた。


当然ながら会話は念話へ切り替わる。


『あのさ、リオネル様』


『何だい?』


『リオネル様の戦い方って、いくら敵が変わっても基本的に同じ。つまりワンパターンじゃない? 面白くないんじゃないの?』


対してリオネルは、気にしない。


『確かに同じパターンだけど、気にしない。まずここは迷宮だから、ず~っと迷宮で戦っていたら、戦い方は似て来るよ』


『ふ~ん、そうなんだ』


『ああ、それに構築した俺のバトルスタイルはそう簡単には変えない。変わるとしたら、相手がとんでもなく強いか多い場合だ。もしくは地形の変化で戦い方もガラリと変わると思う』


『成る程ねえ』


戦闘不参加なジャンは、今いち理解出来ない様子であったが……

リオネルは、自身のバトルスタイルを確立しつつあったのである。

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