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第420話「たったひとりでの探索は完全に常識外れ、信じられない行為である」

オーガに絶対捕まらないよう注意しながら、剣を振るい、シールドバッシュ。

パンチを繰り出し、蹴りを入れ……

まさに蝶のように舞い、蜂のように刺したリオネル。


そして、数十体のノーマルタイプのオーガを倒すと、

ケルベロス、オルトロスが勢子の役目を果たして誘い込み、

『お約束!』いうように、ゴーレム10体が現れた!


リオネルが見やれば、現れたのは鋼鉄製のゴーレム10体。

身長は3mをゆうに超えていた。

英雄の迷宮に現れ、倒し捕獲したゴーレムよりひと回り大きい。


上手く倒し、捕獲。

リオネルが『真理』の魔法文字を刻めば、『良き仲間』となってくれるはずだ。


手順は、英雄の迷宮10階層で行使した通りで良いだろう。

心に刻んである記憶をたぐる。


という事で、戦い方は決まった!

大きく頷いたリオネル。


まず、魔力感知のギアを最大限にあげた!


やっぱり、見える!

奴らの頭部に刻まれた魔法文字が!


真理(エメット)』の魔法文字がはっきりと見える!


納剣していた愛剣スクラマサクスを抜き放ったリオネル。

風の魔力を刀身に宿らせる。


ほぼ同時に、

スキル『フリーズハイ』レベル補正プラス40を連続で、ゴーレムどもへ放つ。


しっかりと狙いをつけ、魔法剣を振るう為に、『(まと)』を固定する!

スキルの効能効果発揮の確認も兼ねて。


ずっしいん! ずっしいん! ずっしいん! ずっしいん! ずっしいんん!


スキルは効力を発揮。

脱力したゴーレム達は、轟音を立てて、迷宮の床に崩れ落ちた。


まさに英雄の迷宮におけるゴーレム捕獲の再現、

こうなると、これまた『まな板の鯉』である。


リオネルは「たっ!」と、軽快に迷宮の床を蹴り、ゴーレム10体の傍へ。


動けぬゴーレムの額へ、じっくりと狙いを定め……

風の魔法剣、風斬剣を振るい、『真理(エメット)』の魔法文字を削除。


リオネルは、ゴーレムの力の根源を破壊すると、

倒したゴーレム10体を収納の腕輪に『搬入』し、回収!したのである。

ちなみに自身の魔法文字を刻むのは、場所を変え、後ほど行うつもりだ。


「よし! これで鋼鉄製ゴーレムは都合20体か! 目標は100体のゴーレム軍団結成だな!」


リオネルの言葉は、有言を遥かに超えた実行となった。


結局リオネルは、地下50階層へ到着するまで、上位種を含めた300体以上のオーガを倒し、葬送魔法で塵にした上……

ゴーレムも岩石製を90体、鋼鉄製を90体も倒し、捕獲。

収納の腕輪へ仕舞う。


これで、リオネルが率いるゴーレム軍団は、岩石製、鋼鉄製が各100体ずつ、

目標の倍、計200体もの強力な軍団となったのである。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


午後6時30分……

約2時間30分かけ、探索終了。


リオネルは、地下50階層へ到達していた。

戦うと時間はかかったが、これは予定通りである。


50階層で探索を終了するのは、最初から決めていたのと、

時間もほぼ予定通りだから。


リオネルはこの50階層でキャンプを張るつもりだ。

ひと晩過ごし、明日の朝、地下51階層へ向け、出発するのだ。


さてさて!

この50階層で、リオネルのようにキャンプを張る者は多い。


地下51階層から、冒険者ギルドが設置した魔導灯がなくなる。

灯りのない暗闇ではフロア探索、攻略の難度は格段に上がる。

視認がしにくいと、魔物に襲われるリスクも同じく格段に上がる。


リオネルは照明魔法を使えるが、使えない者は、革兜に装着した魔導灯やランタン型の魔導灯、最悪、たいまつなども使用される。


また索敵……魔力感知も大いに活用される。

クランメンバーに魔力感知が使用可能な者が居れば、重宝されるのは言うまでもない。


冒険者達は、体力の回復だけでなく暗闇への対策検討も兼ね、

地下50階層で、キャンプを張るのだ。


ここで、リオネルは魔獣ケルベロス、オルトロスを異界へ戻した。

これから赴く小ホールに『人間の気配』を捉えたからである。


いくら巨大な灰色狼風に擬態しても、使い魔だと言っても、

ケルベロス、オルトロスは、他の冒険者からしてみれば、怖ろしい捕食者にしか見えず脅威だ。

変に誤解を招いても宜しくない。

トラブル回避の為、異界へ戻しておくのだ。


ケルベロス、オルトロスを戻し、ジャンを呼び戻したリオネルは、

地下51層への階段近くの『小ホール』へ。


やはりというか、『小ホール』には、老若男女計10名ほどの冒険者達が居た。


この10名は、ふたつのクランのメンバーらしい。


ひとつが、20歳代の男女が4名。

もうひとつが、様々な年齢の男女6名である。


ふたつのクランは、お互い顔見知りらしい。

仲良く談笑していた。


しかし!

『ぼっち』のリオネルが忽然と現れると、皆、驚いた。


一瞬、しーんとなる。


そして、がやがや、ひそひそ、リオネルを見てしゃべる。

じろじろ見る。


えええっ!!?? たったひとりっ!!??

こんな深い層なのに!!??

無謀すぎるだろ!!??


という感じで。


上層でも、同じ反応があった。


通常の冒険者からすれば、

出現する『敵』……オーガの上位種の群れ、頑強なゴーレム達を考えると、

たったひとりでの探索は完全に常識外れ、信じられない行為なのである。


「失礼しまあす」


一礼したリオネルは、片隅に座ると、キャンプの準備を始めたのである。

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