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第415話「リオネルは索敵をしながら、進み、どうしても大回りする場合だけ、戦う」

門番をクリアし、遂にフォルミーカの迷宮へ入ったリオネル。


いよいよ探索開始である。


まだ浅い階層なので、擬態させた魔獣ケルベロス、同オルトロスや、

属性の名を冠した強靭なドラゴン達は召喚しない。

引き連れていると、あまりにも目立つからだ。


現在、リオネルが連れて歩いているのは、肩に座らせたピクシーのジャンのみ。

それもジャンは、常人には姿が見えない。

なので、リオネルは単独で探索しているとしか思われない。


そして、地下50階層までは、魔導灯も敷設されているので、

照明魔法『魔導光球』も出さない。


その代わりと言ってはなんだが、

警戒の為、索敵……魔力感知のみを、最大範囲で張り巡らせていた。


こんなリオネルの対応は、真っ当なものかもしれない。


なぜなら地下1階層は多くの冒険者達で満ちあふれ、あまり緊張感がない。


出現する魔物も、大型化したスライムにノーマルタイプのゴブリン、

そして同じく大型化した虫系の魔物ばかりだ。


地下5階層まではそうだから、迷宮内では『初心者向けの領域』といえる。


ただ、いくら『初心者向けの領域』でも『ぼっち』は居ない。


単独行は、やはり危険。

迷宮へ入った冒険者の殆どは、4名以上のクランであり、

リオネルのような単独行動の者は皆無なのである。


また……

いくら冒険者達の間に『荒くれぼっち』の名が通っていようとも……

若い革鎧姿の痩躯な少年が、ランクA冒険者のリオネル・ロートレックだと知る者は居ない。アクィラ王国という異国だから尚更である。


周囲の冒険者達は、そんな『ぼっち』のリオネルをどこの『変わり者』だと、

奇異の目で見ていたが……


中には、「若輩者の駆け出し冒険者だろう」と侮り、体良く下働きにでも使おうと考えたのか、

見ず知らずのリオネルへ、「荷物持ちで同行しないか」と気安く声をかける者も居た。


当然ながら、リオネルは丁重に断り、あまりにもしつこい者には、

軽度の『威圧』で下がらせる。


誘っても、構っても全く応じないので、冒険者達はリオネルをスルーした。


これ幸いとばかりに、リオネルは「さくさく」と先へ進む。


トレーニング代わりに、ジャンを飛ばし、偵察に慣れて貰う事も。

但し、魔物には絶対に接近しないよう厳命する。

ピクシーのジャンは戦闘には全く不向きなのだ。


フォルミーカの迷宮フロアの構造は、仕様こそ違えど、基本的には、

『英雄の迷宮』と『同じ』である。


石造りの入り組んだ通路にいくつもの様々な大きさの部屋。

冒険者達が宿泊、休憩可能な広場『小ホール』

そして、階下へ降りる階段が各フロア、ランダムな位置にある。


リオネルが購入した迷宮の地図は、フォルミーカ支部発行だけあって、

記載が正確で詳しい。


時間を節約し、手間を省く為、

シーフ職スキル『隠形』『忍び足』を使い、

魔力感知で、魔物との遭遇を避けたから、

あっという間に地下2階層へ降りる階段へ。


一旦ジャンを呼び戻し、地下2階層へ降り、

同じように、同じパターンの休憩なしでガンガン進む。

地下3階層、4階層も同じである。


地下5階層で、英雄の迷宮に現れた個体より遥かに巨大。

全長3mもの巨大な『コードネームG』の5体の群れが出現。


避けずに、敢えて戦う事に。

ジャンは怯えて、リオネルの背後に隠れた。


しかし!

『コードネームG』どもと正対しても、リオネルは全く慌てない。


落ち着き払って、風弾の貫通撃で絶命させ、高温度の炎弾で燃やして塵に。

あっさりと討伐完了。


懸念していた『コードネームG』の苦手症は、完全に克服していた。


幼い頃からコードネームGには散々苦しめられ……

冒険者になってからは、カミーユにいじられ、ミリアンにかばわれ、

モーリスには心配された。


記憶の数々を思い出し、苦笑したリオネル。

しかし、そんな黒歴史も、もはや過去の遺物である。


自身の確かな成長を感じ、リオネルは再び歩き出したのである。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


速攻で『コードネームG』を倒したリオネルは早くも、地下6階層へ。


『コードネームG』以外、戦闘を行わなかったリオネルは、消費した魔力もすぐ復活して満タン。

HPと呼ばれる体力も同じく満タンだ。


ちなみに、今のリオネルは、ぼうだいな体内魔力量を誇っている。

魔法発動に伴う魔力消費も、1/10程度。

魔力復活も最高レベルで、99%消費したとしても、ものの10分程度で復活する。

つまり、いくら高位魔法を使おうとも、枯渇の心配は殆どないという事だ。


体力も底なしで、いくら歩いても運動しても疲れないし、

戦う度に、回復魔法『全快』を発動、いつも万全な状態である。


さてさて!

地下6階層から地下10階層は、出現する魔物の様相が少し変わる。

この変化に比例し、危険度も上がる。


ノーマルタイプのゴブリン、大型化した虫系に加え、

ゴブリンの上位種、ゴブリンサージ、ゴブリンソルジャー、

そしてゴブリンシャーマンが現れるのだ。


この階層に初心者は基本、足を踏み入れず、中級者は注意しながら進む事となる。


しかし、リオネルはギフトスキル『ゴブリンハンター』を習得している。

ゴブリンどもの物理攻撃は無効。全く通用しない。


最上位種ゴブリンシャーマンの攻撃魔法、

また虫系――巨大化した蟻、蟷螂の攻撃さえ気をつければ、どうという事はない。


という事で、

リオネルは索敵をしながら、進み、

どうしても大回りして時間を食う場合だけ、戦う。


それも剣を抜く事はなく、『フリーズ』『威圧』『大地の束縛』を織り交ぜながら、

敵の動きを封じた上、風、火、水、地の魔法を使い敵を粉砕した。


こうして……

リオネルは、午前8時過ぎに迷宮へ入り、1時間も経たないうち、

地下11階層へ到達していたのである。

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