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第405話「現状の力でも、全然満足しねえ、もっともっと高みを目指すって事かよ?」

「あ、ああっ! の、呪いが消えていやがるっ! 解呪されてるぞっ!!」


ボトヴィッドは、思い切り叫んだ。


対して、あくまでもリオネルは沈着冷静。


「上手く行ったようで、良かったです」


そんなリオネルの反応に、ボトヴィッドは苛立ちを隠せない。


「どうして、そんなに落ち着いていられるんだ? おかしいじゃねえか」


「はあ、まあ、いつもこんな感じですよ、俺」


と言いながら、リオネルは自分でも変わったと思う。


魔法学校を卒業して冒険者になるまでは、魔物が怖くて怖くて、戦うどころか、

見たくもないほど小心者だった。


最初は、スライムを倒すのがやっとだった。


それからゴブリン、オークと戦歴を重ね、実力と度胸をつけて来た。


「それより、ボトヴィッドさん、この指輪、購入させて貰いますね」


「お、おお、良いぜ。約束通り、金貨1枚で売ってやらあ!」


「ありがとうございます。じゃあ先に買った魔法杖とこの指輪で、金貨6枚お支払いします」


「おう! 俺もよ、お前みたいな物の価値が分かる上客とやりとり出来て嬉しいぜ」


「で、ボトヴィッドさん。魔法杖の由来は先ほどお聞きしたんですが、指輪の方をお聞きしても良いですか?」


「ああ、良いぜ。教えてやるよ。ああ、そうだ。リオネル、お前、まだ時間はあるか?」


「大丈夫です」


「そうか! じゃあ、茶でも入れてやるって。お前といろいろ話したい……いけねえ! 紅茶の茶葉を切らしてたか!」


「あ、俺、茶葉ありますし、焼き菓子もありますよ。支度しますから、台所を貸して貰っても構わないっすか?」


「おう、問題ねえ! 奥が台所だから、自由に使ってくれ。魔導コンロと、ポット、カップもな」


「じゃあ、失礼します、入らせて頂きます」


……という事で、ボトヴィッドの許可を得たリオネルは、

魔道具店クピディタースの台所へ入った。


手早く湯を沸かし、ポットとカップを温め、収納の腕輪から茶葉と焼き菓子を出した。


湯をポットとカップへ入れ、温める。

一旦お湯を捨てた後、茶葉をポットへ入れ、しばし経ってから、

紅茶をカップへ注ぐ。


良い香りが辺りに立ち込める。


「お待たせしました!」


「おお、悪いな! 客にそんな事やらせてよ」


「いえ、全然OKっす」


「予備の椅子も出すから、座ってくれ」


「はい!」


「じゃあ、気が変わらんうちに、リオネル、お前に魔法杖と指輪を売っておくぞ」


「ありがとうございます。嬉しいです。じゃあ、これでお願いします」


リオネルは、代金の金貨6枚を支払い、

ボトヴィッドから、魔法杖と解呪した指輪を受け取った。

どちらも、迷宮攻略に役立つに違いない。


呪われていた指輪の効能効果は、まだ不明ではあるが……


ここでボトヴィッドが言う。

まじめな顔つきである。


「悪いんだけどよ、リオネル。指輪の話をする前に、お前の素性を教えてくれ、何者なのか、改めて聞かせてくれよ」


そんなボトヴィッドの願いに対し、


「了解です」


リオネルはOKし、柔らかく微笑んだのである。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


リオネルには、他者へ明かせない秘密が多い。


4大精霊に加護を受けた全属性魔法使用者(オールラウンダー)である事は勿論、

習得した魔法、スキルも明かせないものが多い。


出自だって、簡単には明かせない。


名乗っているのが本名ではない事。

本来の家族達、実家を追放された事。


申し訳ないと思いながら、差しさわりのない事柄を選び、

言葉にも気をつけながら、ボトヴィッドへ話すしかなかった。


ふたりは紅茶を飲み、焼き菓子をつまみながら話す。


「先ほどもお伝えしましたが……俺リオネル・ロートレックは、ソヴァール王国王都オルドル出身の18歳。父や兄達も魔法使いだったので、魔法使いとなりましたが、全くダメでした。それで一念発起し、家を出て、冒険者になりました」


「ほう」


「王都オルドルを旅立ち、冒険者の街ワレバットで修行し、英雄の迷宮で経験を積み、このフォルミーカへやって来ました。迷宮で修行し、一人前になりたいんです」


「リオネル、お前、冒険者ギルド所属の冒険者なのか?」


「はい」


「じゃあ、ギルドの所属登録証を見せてくれ」


「はい、これです」


リオネルが提示した所属登録証を見て、ボトヴィッドはびっくり。


「おいおいおいっ! お前、ランクAの超一流冒険者じゃねえか! それで一人前じゃねえってか!?」


ボトヴィッドの問いに対し、リオネルはきっぱりと言い切る。


「はい、俺的にはまだまだです」


「現状の力でも、全然満足しねえ、もっともっと高みを目指すって事かよ?」


「はい!」


「………はあ~あ、リオネル。やっぱり底が知れない奴だよ、お前は」


ボトヴィッドは、呆れたように言い、


「売ったその指輪、お前こそ、持つのにふさわしいかもしれんな」


と更に言い、にやりと笑ったのである。

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